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首途
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かどで
ふりがな文庫
“
首途
(
かどで
)” の例文
そして何となく
首途
(
かどで
)
らしい感慨に打たれて、危ふく熱くなりかゝつた瞼を抑へながら、かうなる迄の自分の位置を默想し始めた。——
受験生の手記
(旧字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
その時こそは下宿や渡世もやめさせまして、かつては母子の
首途
(
かどで
)
を笑ひてし故郷人に、方様のお名を誇らばやなど、心構へし折も折。
葛のうら葉
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
われ浮世の旅の
首途
(
かどで
)
してよりここに二十五年、南海の故郷をさまよい出でしよりここに十年、東都の
仮住居
(
かりずまい
)
を見すてしよりここに十日
旅の旅の旅
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
「それは、ご苦労様でしたね。旅の
首途
(
かどで
)
から機嫌わるくすると、しまいまで不機嫌がつづくというから、仲をよくして出かけましょう」
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
武者修業の
首途
(
かどで
)
にのぼつたジーグフリードが、先づ森の鍛冶屋を訪れて、剣を打ちはぢめた意気である——といふのであつた。
南風譜
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
▼ もっと見る
これらはその日記の中に見える
首途
(
かどで
)
の吟で、人をいたはり、又みづからをいたはる病後の思ひがにじむばかりに出てゐる。
桃の雫
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
さようなら。机よ、カーテンよ、ギタよ、ピエタよ。みんな、さようなら。泣かずに、僕の
首途
(
かどで
)
を笑って祝福しておくれ。
正義と微笑
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
五反町
(
ごたんまち
)
にある江崎満吉の家では、玉井家を襲撃するために、子分たちを
鳩合
(
きゅうごう
)
した。昼間から、準備をして、
首途
(
かどで
)
に鏡を抜く四斗樽まで買いこんだ。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
玄奘法師
(
げんじょうほうし
)
は、その十七年の長い旅の
首途
(
かどで
)
において既に、この北の沙漠に路を失い水に
渇
(
かつ
)
え、命からがら
哈密
(
ハミ
)
のオアシスに
辿
(
たど
)
り着いたのだそうである。
『西遊記』の夢
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
ああ母の国を離れたこの南海の孤島で、わが少年と少女は、戦の
首途
(
かどで
)
を前にして、今夜どんな夢を見ることだろうか。
昭和遊撃隊
(新字新仮名)
/
平田晋策
(著)
五年
前
(
ぜん
)
、六月六日の
夜
(
よ
)
であった。明直にいえば、それが、うぐい亭のお藻代が、白い手の
幻影
(
まぼろし
)
になる
首途
(
かどで
)
であった。
古狢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
誰
(
たれ
)
でも
左樣
(
さう
)
だが、
戰爭
(
いくさ
)
の
首途
(
かどで
)
とか、
旅行
(
たび
)
の
首途
(
かどで
)
に
少
(
すこ
)
しでも
變
(
へん
)
な
事
(
こと
)
があれば、
多少
(
たせう
)
氣
(
き
)
に
懸
(
か
)
けずには
居
(
を
)
られぬのである。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
四幕目にキニゼイと云ふ妙な名の若侍が彌五郎の娘である
許嫁
(
いひなづけ
)
の愛情に
絆
(
ほだ
)
されて、
今宵
(
こよひ
)
に迫る
仇打
(
かたきうち
)
の
首途
(
かどで
)
に随分思ひ切つて非武人的に未練な所を見せる。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
柴田が仙台を立ちましたのが二十五日、それと同時に涌谷どのも、その在所において
首途
(
かどで
)
の祝宴を催しました。
樅ノ木は残った:04 第四部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
恐らくこれを台にして死の
首途
(
かどで
)
へ上ったらしいその空箱が、この場合そのまますぐ役に立つのであった。
釘抜藤吉捕物覚書:10 宇治の茶箱
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
思案外史の巻頭の辞を
首途
(
かどで
)
の祝言として
鹿島立
(
かしまだち
)
した『我楽多文庫』は四六倍判十六頁の表紙なしの
畳放
(
たたみぱな
)
しで、今は
廃
(
すた
)
れてるがその頃
流行
(
はや
)
った
清朝
(
せいちょう
)
活字の四号刷であった。
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
房々と白い花房を垂れ、日向でほのかに匂う三月の白藤の花の姿は、その後間もなく時代的な波瀾の裡におかれた私たち夫婦の生活の
首途
(
かどで
)
に、今も清々として薫っている。
白藤
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
足袋
(
たび
)
行縢を取り出し、洗濯衣、古肌着など取り出でて、
綻
(
ほころ
)
びを縫い破れを
綴
(
つづ
)
り、かいがいしく立ち働く、その間に村人は二人の
首途
(
かどで
)
を送らんと、濁酒鶏肉の用意に急ぎぬ
空家
(新字新仮名)
/
宮崎湖処子
(著)
芳一には出世の
首途
(
かどで
)
の際、はなはだ貧しかったが、しかし助けてくれる深切な友があった。
耳無芳一の話
(新字新仮名)
/
小泉八雲
(著)
野村のためにそれは喜ぶべき
首途
(
かどで
)
なのに、そして又、閑子だとてそれで一そうはっきりしたわけなのに、何のための涙だろうか。やはり閑子をあわれんでいるからなのだろうか。
妻の座
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
結果は夫や兄弟あるいは愛児の
首途
(
かどで
)
を激励するために、一同うちそろって付近の山林で
縊死
(
いし
)
することになった。マヘボ社蕃婦の全部、及びボアルン社蕃婦の一部がこれに参加した。
霧の蕃社
(新字新仮名)
/
中村地平
(著)
あの恐ろしい犯罪への
首途
(
かどで
)
としては、余りにも似合わしからぬ陽気さではなかったか。
虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
夏はジエノワにとゞまり、冬はミラノに往き給ふなるべし。我は來ん年の試驗にて、「アバテ」の位を受けんとす。人々は
首途
(
かどで
)
に先だちて、大いなる舞踏會を催し、我をも招き給ひぬ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
横死した父の
怨
(
うらみ
)
を晴らし、一度取潰された井上家を起して、立身の
階段
(
かけはし
)
に足を踏み掛けようという、孝道第一の
首途
(
かどで
)
に、企みに企まれた罠に
陥
(
お
)
ちて「秘巻」を敵の手に奪い取られたことは
江戸の火術
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
アツボットいわく、マセドニア人、
首途
(
かどで
)
に蛇を見れば不吉として引き還すと。
十二支考:04 蛇に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
なに、坊や、うん、俺も昔は恩愛の絆に縛られて、女々しい気にもなった。もう今の支倉にはそんなものは用はない。そうだ、今日生きながら悪魔になろうと誓った
首途
(
かどで
)
の犠牲に、そいつを
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
彼女はいよいよ出発するに当って
首途
(
かどで
)
を祝うために祝盃をあげようではないかと言い出し、自ら立って戸棚から一個の盃と白葡萄酒の瓶を持って来た。グレージーが葡萄酒の栓を抜いたとき
変な恋
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
伯父にとつては恐らく最後の新しい
首途
(
かどで
)
の前に、斯うした不幸が突然起つて、その
幸先
(
さいさき
)
を
挫
(
くじ
)
かれたので、何か不吉な前兆ででもあるかの如く、彼をしてこの新事業の前途を危ぶみ怖れしめた。
世の中へ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
何もできもしない百姓の
分際
(
ぶんざい
)
で、金があるからといって、生意気な奴だと思った。初めての教員、初めての世間への
首途
(
かどで
)
、それがこうした
冷淡
(
れいたん
)
な幕で開かれようとはかれは思いもかけなかった。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
こういう所作を
首途
(
かどで
)
にしてわたくしは池上の寮へ移りますと、池上は大悦びで寮の家の自分がしょっちゅういる客座敷をわたくしに明渡すと言いますのを、流石に女のわたくしは遠慮しますと
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
ウルリーケが
首途
(
かどで
)
の贈り物に、「ニーベルンゲン
譚詩
(
リード
)
」をもってした真意は、判然としないが、彼女はそのうちの一節に紫鉛筆で印しをつけ、かたわらの艇員の眼を怖れるようにして
余
(
よ
)
に示した。
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
お前は大坂や京や江戸の町へ、商ひのために
首途
(
かどで
)
につく。だが、ヒエロニモよ。よく考へてみるがよい。お前はなぜ商ひにでかけるのか。そのわけが分つてゐるかね。お前はお金をもうけるためか。
わが血を追ふ人々
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
聞で
出懸
(
でかけ
)
しまゝ私しも病氣ながら
起上
(
おきあが
)
り止る
桐油
(
とうゆ
)
の
袖
(
そで
)
振切
(
ふりきり
)
首途
(
かどで
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
夏山に足駄を拝む
首途
(
かどで
)
かな
続芭蕉雑記
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
首途
(
かどで
)
いらい、兄は、この自分を変ってきたといっていたが、兄のほうこそ、どうかしている。いまのは正気の言であろうか。
私本太平記:07 千早帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
首途
(
かどで
)
の乾杯を挙げ、靴を光らせ、そして妻の腕を執り、口笛の、お江戸日本橋——の吹奏に歩調を合せながら、この武者修業のテープを切つた。
日本橋
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
いつ成るとも判らぬこのやくざな仕事の
首途
(
かどで
)
を祝い、君とふたりでつつましく乾杯しよう。仕事はそれからである。
玩具
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
恐らくは、弟も、この腑甲斐のない兄の再度の
首途
(
かどで
)
に、何を云つていゝか解らなかつたのであらう。考へて見れば自分は、既に弟に追ひつかれてゐるのだ。
受験生の手記
(旧字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
「
首途
(
かどで
)
に、くそ
忌々
(
いまいま
)
しい事があるんだ。どうだかなあ。さらけ
留
(
や
)
めて、一番新地で飲んだろうかと思うんだ。」
鷭狩
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
江崎満吉というのは、派手な奴でなあ、自分も大酒飲みじゃが、喧嘩の
首途
(
かどで
)
にゃ、どんな小人数のときでも、新しい四斗樽を買いこんで、景気をつけよった
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
今日の二勇士の
首途
(
かどで
)
を見んと、四方から
雪崩
(
なだれ
)
のごとく押しよせて、すでにその日の九時頃には、さしもに広き公園も、これらの人々を持って埋まって
終
(
しま
)
った。
月世界競争探検
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
百難を排し千艱を衝いても、やがては天下に濶歩すべき、この大健児の、
首途
(
かどで
)
を見よやといはぬばかり。
誰が罪
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
攘夷の
首途
(
かどで
)
として
男山八幡
(
おとこやまはちまん
)
の神前で将軍に節刀を賜わるであろうとのおうわさも報じてある。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
その十畳には死人の
首途
(
かどで
)
が早や万端
調
(
ととの
)
って、三吉が御用の声もろとも襖を蹴倒した時には、線香の煙りが
縷々
(
るる
)
として流れるなかに、女房一人が身も世もなく涙に
咽
(
むせ
)
んでいるばかり
釘抜藤吉捕物覚書:04 槍祭夏の夜話
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
(永見はその後参謀部の有数な秀才と歌われていたが、惜しい事に大尉で
若死
(
わかじ
)
にしてしまった。福島大将と同時代であったそうだ。)二葉亭は運悪く最初の
首途
(
かどで
)
に
失敗
(
やりそこ
)
なってしまったが
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
今年正月、幕府に召された柴田外記から、涌谷の安芸さまに対して、出府すべしという内命が伝えられた。安芸さまは在所で
首途
(
かどで
)
の酒宴を催し、なお菩提所の円同寺に石水和尚を訪ね、法名を
樅ノ木は残った:04 第四部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「
首途
(
かどで
)
に旗が折れるなどは——どう考えても吉兆ではありません。——ひとつ、日を改めては
如何
(
いかが
)
なものか」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
人生の
首途
(
かどで
)
。けさは、本当にそんな気がした。途中、電車の中で、なんども涙ぐんだ。そうして昼ごろ、ぼんやり家へ帰って来た。なんだか、へとへとに疲れた。
正義と微笑
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
さて、
取
(
と
)
るものも
取
(
と
)
りあへず
福井
(
ふくゐ
)
の
市
(
まち
)
を
出發
(
しゆつぱつ
)
した。これが
鎭守府
(
ちんじゆふ
)
の
病院
(
びやうゐん
)
に、
夫
(
をつと
)
を
見舞
(
みま
)
ふ
首途
(
かどで
)
であつた。
雪の翼
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
想ひを寄せる勇士の頭上にふりかけながら彼等の
勲
(
いさほし
)
を乞ひ希ふ「
首途
(
かどで
)
の泉」として、また、凱歌を挙げて引きあげて来た戦士が、「市の歓迎の
辞
(
ことば
)
」を享ける表象として
山彦の街
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
“首途”の意味
《名詞》
出立すること。旅立ち。門出。
(出典:Wiktionary)
首
常用漢字
小2
部首:⾸
9画
途
常用漢字
中学
部首:⾡
10画
“首”で始まる語句
首
首肯
首尾
首級
首領
首垂
首魁
首筋
首縊
首枷