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阻
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はば
ふりがな文庫
“
阻
(
はば
)” の例文
「数日を、龍王寺に御滞在。それから再びお旅立ちの朝、
万喜頼春
(
まきよりはる
)
の家中のものが、道を
阻
(
はば
)
めて、敢て先生のお刀をわずらわしました」
剣の四君子:05 小野忠明
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
現に我々の親・おおじの通って来た
路
(
みち
)
が是であり、今でも一部の同胞が天然に
阻
(
はば
)
まれて、なお脱却しかねている境涯も是だからである。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「万民の志を遂げしむる」という理想を
阻
(
はば
)
んでいるものは、政治においても経済においても、自己の利益または特権に執着する心である。
蝸牛の角
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
うっ! と呻いてのけ反る父へ、駈け寄ろうとする千浪は早くも、中之郷、山路の二人に、左右の手を取られて
阻
(
はば
)
まれていた。
煩悩秘文書
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
ついて帰れないというようなことも多少彼女の心を
阻
(
はば
)
んだのであろうが、いつものびのびした
処
(
ところ
)
に意の趣くままに暮らして来た彼女なので
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
▼ もっと見る
黙示図において、易介の屍様を預言しているその一句は、誰の脳裡にもあることだったけれども、妙に口にするのを
阻
(
はば
)
むような力を持っていた。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
この驚くべき世界を覗いているにも
拘
(
かかわ
)
らず、我々の方は何の用意もなく、また一般人間の肉体的制約に
阻
(
はば
)
まれて、断片的に捕捉し
難
(
がた
)
い知識以外には
奇談クラブ〔戦後版〕:14 第四次元の恋
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
地殻に
阻
(
はば
)
まれた地球の情熱が
僅
(
わずか
)
に必死と噴き出したものがこれらの山である以上、先生が同気相求めてこの山に結ぶのは、当然ではありますまいか。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
ながいこと相離れていた父と子の心が、いまこそ
紙一重
(
かみひとえ
)
の
阻
(
はば
)
むものもなく、ぴったりと互いに触れあうのを感じた。
城を守る者
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
是故にその見ること新しき物に
阻
(
はば
)
まれじ、是故にまたその
想
(
おもひ
)
の分れたる爲、記憶に訴ふることを要せじ 七九—八一
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
が、光秀が山崎の隘路を
扼
(
やく
)
して秀吉の大軍を
阻
(
はば
)
まんとしたのは戦略上、当然の処置であり、秀吉の方も亦山崎に於ての遭遇戦を予期していたのであろう。
山崎合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
太子
讃仰
(
さんぎょう
)
の念に偽りがあるとは思っていないが、しかしそれを
唯
(
ただ
)
一筋の道として進むことを
阻
(
はば
)
むものがあるのだ。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
寒くて湿気の多いこの土地では、土壌は苛烈な風化作用を受けて強い酸性となり、植物の生長を
阻
(
はば
)
もうとする。
ツンドラへの旅
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
彼
(
か
)
れもし行きめぐりて人を
執
(
とら
)
えて
召
(
めし
)
集
(
あつ
)
め(すなわち裁判官が巡回して犯罪人を捕え集めて裁判する如くし)給う時は誰かよくこれを
阻
(
はば
)
まんや、彼は偽る人を
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
王はおん
自
(
みずか
)
ら
太刀
(
たち
)
を
振
(
ふる
)
って防がれたけれども、ついに
賊
(
ぞく
)
のために
斃
(
たお
)
れ給い、賊は王の
御首
(
みしるし
)
と神璽とを
奪
(
うば
)
って
逃
(
に
)
げる
途中
(
とちゅう
)
、雪に
阻
(
はば
)
まれて
伯母
(
おば
)
ヶ
峰
(
みね
)
峠
(
とうげ
)
に行き暮れ
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
そのうえ、実物をつくって実行してみると、机の上では、とても気がつかなかったような困難な問題がひょこひょことびだしてきて、
行手
(
ゆくて
)
を
阻
(
はば
)
むものである。
未来の地下戦車長
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
たまたま雷雨に
阻
(
はば
)
まれて車を駐めたその店がちょうど船橋と同じ格好である。そんなわけから、その店が菓子屋であったということを、今だに疑わずにいる。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
カサコソと彼の坐っている前を、
皺
(
しわ
)
になった新聞紙が押されて行った。小石に
阻
(
はば
)
まれ、一しきり風に堪えていたが、ガックリ一つ転ると、また運ばれて行った。
ある心の風景
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
不幸にしてそのたずぬる物語のある頼朝公の尼寺というのを探し当てる以前に、例の宮前の黒船騒ぎの波動が、お銀様をして前方へ進むことを
阻
(
はば
)
みましたから
大菩薩峠:32 弁信の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
最後までそれで通して行こうとしたのが、何か気が
阻
(
はば
)
んだのだ。一本気だけに絶望の底は深かった。
松井須磨子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
その仕事への無意識の関心が彼を自殺から
阻
(
はば
)
む役目を
隠々
(
いんいん
)
のうちにつとめていたことに気がついた。
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
ある場合には十日も二十日も風浪に
阻
(
はば
)
められて、ほとんど
流人
(
るにん
)
同様の
艱難
(
かんなん
)
を
嘗
(
な
)
めたこともあったろう。ある場合には破船して、
千尋
(
ちひろ
)
の浪の底に葬られたこともあったろう。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
その神の怒りは不義をもて真理を
阻
(
はば
)
む人の、もろもろの
不虔
(
ふけん
)
と不義とに
対
(
むか
)
いて天より
顕
(
あら
)
わる。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
何か砂利のようなものが脚につまって、それが私の歩みを
阻
(
はば
)
むようであった。大通りを避けて見知らぬ露地から露地へ私は
蹣跚
(
まんさん
)
と歩き廻った。見覚えのある路を何度も通った。
風宴
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
年がら年じゅうこづきまわされている彼らは、これだけは自分の自由意志だと思いこんだものがぐわんと
阻
(
はば
)
まれるその刹那に、想像できないほどの
敵愾心
(
てきがいしん
)
を
煽
(
あお
)
られるのであった。
白い壁
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
しかもその快活な気分は、母親におけると同じく、最近の
喪
(
も
)
に
阻
(
はば
)
まれたためさらにつのっていたのである。しかし彼女はもう、家畜ほどにもクリストフを気にかけていなかった。
ジャン・クリストフ:04 第二巻 朝
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
欣七郎は紳士だから、さすがにこれは
阻
(
はば
)
んだので、かけあいはお桂さんが自分でした。
怨霊借用
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
頼豪に何でも望みをかなえやろうと仰せられ、すなわち請うて三井寺に戒壇を立つ、叡山から極力これを
阻
(
はば
)
んで事ついにやんだので、豪、面目を失い、死して四歳の皇子を取り殺し
十二支考:11 鼠に関する民俗と信念
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
私を
苛
(
いじ
)
め、さいなみ、あらゆる自由と独立とを私から奪い、私のよいところを片っ端から打ち壊し、私の成長を
阻
(
はば
)
み、私を
撓
(
ね
)
じ曲げ、
歪
(
ゆが
)
め、ひねくれさせ、そしてしまいにはとうとう
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
此
(
ここ
)
に
於
(
おい
)
て太祖
密
(
ひそか
)
に
儲位
(
ちょい
)
を
易
(
か
)
えんとするに
意
(
い
)
有りしが、
劉三吾
(
りゅうさんご
)
之
(
これ
)
を
阻
(
はば
)
みたり。三吾は名は
如孫
(
じょそん
)
、
元
(
げん
)
の遺臣なりしが、博学にして、文を
善
(
よ
)
くしたりければ、洪武十八年召されて
出
(
い
)
でゝ仕えぬ。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
地勢はこのへんから急に
昇
(
たかま
)
って、石に
阻
(
はば
)
まれたり窪地で途切られたりする、曲りくねった
小径
(
こみち
)
が一筋かすかに続いているばかり。漆のような闇の中から突然浮び出す白骨のような樺の朽木。
ノンシャラン道中記:02 合乗り乳母車 ――仏蘭西縦断の巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
実際にそれが脱出を頑強に
阻
(
はば
)
む石の壁の如きものであり、且つ、当人に脱出の情熱があるとすれば、当然期待される行為は、その壁に頭をごつんごつん打ちつけることでなければなるまい。
チェーホフ序説:――一つの反措定として――
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
まるで手籠めにでもなるのを
阻
(
はば
)
むもののように床の中で次郎吉は、必死になって身悶えした。バタバタ手足を振り動かした。いつ迄もいつ迄も繰り返した。繰り返してはまた繰り返していた。
小説 円朝
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
するとあたかも
白鷺
(
しらさぎ
)
の大群のような真白な軍隊が道を
阻
(
はば
)
めて待っていた。見れば、姜叙、楊阜以下、すべて白い
戦袍
(
せんぽう
)
に白い旗をかかげて
三国志:09 図南の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
阻
(
はば
)
まれれば阻まれるほど燃えたつのが男女恋情のつねならば、夜泣きの刀にひた向く相馬大膳亮のこころは、ちょうどそれだったといわねばなるまい。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
とにかく信長の方では三重にも柵を構え、それに依って武田の猛将勇士が突撃するのを
阻
(
はば
)
み、武田方のマゴマゴしている所を鉄砲で打ち
萎
(
すく
)
めようと云うのである。
長篠合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
それでも、それがアクチニオ四十五世の
一団
(
いちだん
)
であることを認めた。博士は急に元気づき、その方へ足を早めていった。博士は、間もなく高い壁に行方を
阻
(
はば
)
まれた。
霊魂第十号の秘密
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
阻
(
はば
)
めて打ち出し得ない。遂にしくしく泣き出す。阿難の泣くのを見て娘も悲しくなり袖を眼に当てる。
阿難と呪術師の娘
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
罪業になやまされる自己を「かかるあさましき身」と観じ、その罪をにくみ、恥じ、苦しむ「心」のあるところには、もはや救いを
阻
(
はば
)
む何らの
障礙
(
しょうがい
)
もないのである。
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
主人次郎右衛門や奉公人たちの立ち騒ぐ中を、三輪の万七とお神楽の清吉が、得々としてお秀を縛って行くのを、どうしても
阻
(
はば
)
みようがなかったのです。その時後ろから
銭形平次捕物控:116 女の足跡
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
彼らはあらゆる努力をもって、ようやく山の中腹には達したが、凡庸な生活に
阻
(
はば
)
められて、もはやそれより上へは登ることができず、人知れぬ献身のうちにひそかに焦慮している。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
けれどその、苦悩から生れた貴い勇気も、
直
(
すぐ
)
に
阻
(
はば
)
むような悪いことがつづいた。
豊竹呂昇
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
老婦人はこれより
前
(
さき
)
、
惨絶残尽
(
さんぜつざんじん
)
なる一
場
(
じょう
)
の光景を見たりし
刹那
(
せつな
)
、心
挫
(
くじ
)
け、気
阻
(
はば
)
みて、おのがかつて光子を
虐待
(
ぎゃくたい
)
せしことの非なるを知りぬ。なお且つ
慙愧
(
ざんき
)
後悔して孝順なる新婦を愛恋の念起りしなり。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
視る力
阻
(
はば
)
まれず忘るゝことあらずば何ぞまた憶ひ出づべきことあらむ
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
そして、その場で進行を
阻
(
はば
)
んでしまうことは明らかだった。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
それなのに東海岸への足を
阻
(
はば
)
もうとするのは何であろう。
日の果て
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
町の入口で立ち
阻
(
はば
)
め、入れる入れない、といったような事から、乱暴が始まり、ついに、本ものの戦闘になってしまったものです
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この土手と柵とに拠って武田勢の進出を
阻
(
はば
)
み、鉄砲で打ちひしごうと云うのであるが、岐阜出陣の時、既に此の事あるを予期して、兵士に各々柵抜を持たしめたと云う。
長篠合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
裏手には確かに三つの出入口があったが、いずれも重い小鉄扉が下りていて、侵入を
阻
(
はば
)
んでいた。しかも錆ついていて、ここ何年かそれらの扉が開かれたことがないのを語っていた。
千早館の迷路
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
といふ観方で、
強
(
し
)
ひてかの女を
阻
(
はば
)
みもしなかつた。
夏の夜の夢
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
“阻”の意味
《名詞》
(ソ)(古)険しいこと。険しい所。
(出典:Wiktionary)
阻
常用漢字
中学
部首:⾩
8画
“阻”を含む語句
悪阻
阻喪
険阻
阻止
阻害
阻礙
阻碍
險阻
阻隔
阻塞気球
惡阻
阻塞気球隊
阻塞
阻格
破阻
市街阻絶
阻絶
阻道
嶮阻
阻隘
...