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過
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よ
ふりがな文庫
“
過
(
よ
)” の例文
まもなく、江のまん中を、斜めに
過
(
よ
)
ぎるうち、
芦
(
あし
)
の茂みを
透
(
す
)
いて、チラとべつな一隻が見えた。すると、こっちから阮小二が呼んだ。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
少年の時、嘗て一村院を
過
(
よ
)
ぎり、壁上に詩あるを見る。云ふ、夜涼疑
レ
有
レ
雨、院静似
レ
無
レ
僧と。何人の詩なるやを知らざる也。
放翁鑑賞:07 その七 ――放翁詩話三十章――
(新字旧仮名)
/
河上肇
(著)
何を考えていた時に、そんな奇怪な陰が
過
(
よ
)
ぎったのか? 彼はたしか、最初の神ラーの未だ生れない以前のことを読み、且つ考えていた。
セトナ皇子(仮題)
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
朝
(
あした
)
より
夕
(
ゆうべ
)
に至るまで、
腕車
(
くるま
)
、
地車
(
じぐるま
)
など一輌も
過
(
よ
)
ぎるはあらず。美しき
妾
(
おもいもの
)
、富みたる
寡婦
(
やもめ
)
、おとなしき
女
(
め
)
の
童
(
わらわ
)
など、夢おだやかに日を送りぬ。
照葉狂言
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そのうちに焼け残りの立木のそばを
過
(
よ
)
ぎる小径へひよつこり出るから、その小径についてずんずん先きへゆきなされ……。
ディカーニカ近郷夜話 前篇:06 紛失した国書
(新字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
▼ もっと見る
嘉永三年彼が二十一歳の時、九州漫遊の途に上るや、熊本に行き横井小楠の塾を
過
(
よ
)
ぐ。門人彼が年少にして風采揚がらざるを見て、彼を
軽易
(
けいい
)
す。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
ずっと先きを電車が
過
(
よ
)
ぎった。この町はどこかわからない。一軒の家の軒に某検閲官御宿泊所という貼紙が白く見える。
小さき良心:断片
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
ときどき小鳥が、そんな私達の頭とすれすれのところを、
幽
(
かす
)
かな羽音をさせながら、よろめくように
翔
(
と
)
んで
過
(
よ
)
ぎった。
晩夏
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
深い苦痛の色がイエスの
面
(
かお
)
を
過
(
よ
)
ぎりました。一人の者が走って往って、海綿に酸き葡萄酒——「酸き葡萄酒」というのは兵卒が飲んだ下等の濁酒です。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
遜志斎は吟じて曰く、聖にして有り西山の
饑
(
うえ
)
と。孝孺又其の
瀠陽
(
えいよう
)
を
過
(
よ
)
ぎるの詩の中の句に吟じて曰く、之に
因
(
よ
)
って
首陽
(
しゅよう
)
を
念
(
おも
)
う、
西顧
(
せいこ
)
すれば
清風
(
せいふう
)
生ずと。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
彼女が現われたのは、あたかも道に迷った太陽の光が、自ら気づかないで突然
闇夜
(
やみよ
)
を
過
(
よ
)
ぎったがようなものだった。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
その裏門の外は広い道で、そこから停車場へは真っ直で、街道を
過
(
よ
)
ぎるよりは早く
往来
(
ゆきき
)
する事が出来るのである。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
それから夏季休暇は松山で過ごして碧梧桐君と相携えて東京を
過
(
よ
)
ぎり仙台に遊んだのは九月の初めであった。
子規居士と余
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
道人様のお住居はな、螢ヶ丘の北を
過
(
よ
)
ぎり、木場の屯所の南を過ぎ、七面岩の絶壁を上り、さてそれから……
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ダ風流/
過
(
よ
)
ギル時ハ感ズルヲ
休
(
や
)
メヨ白河ノ暮/到ル日ハ
須
(
すべから
)
ク
観
(
み
)
ルベシ松島ノ秋/語ヲ寄セヨ厳冬大雪多カラン/一領ノ白狐ノ裘無カル可ケンヤ〕となすものを
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
彼の家から、東は東京、南は横浜、夕立は滅多に其方からは来ぬ。夕立は矢張西若くは北の山から来る。山から都へ行く途中、彼が住む野の村を
過
(
よ
)
ぎるのである。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
「あすの勝負に用なき盾を、逢うまでの
形身
(
かたみ
)
と残す。試合果てて再びここを
過
(
よ
)
ぎるまで守り給え」
薤露行
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼は、燃え擴がつてゆく廊下と
競
(
きそ
)
ひ、彼のはうに熱くなつて倒れてくる扉をくぐり拔け、彼を焦がさうとする階段を
過
(
よ
)
ぎり、漸くにしてその狂ひに狂へる建物から逃れ出た。
旗手クリストフ・リルケ抄
(旧字旧仮名)
/
ライネル・マリア・リルケ
(著)
黒吉は、さっきの危うく身を粉々にしようとした、恐ろしい瞬間に、案外平気な顔をしていた、むしろ妖しい笑いさえ浮べていた葉子の好奇の眼が、スーッと網膜を
過
(
よ
)
ぎると
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
戸は開かれて我は迎へ入れられしが、老畸人の
面
(
おもて
)
を見ず、之を問へば八王子にありと言ふ、八王子ならば車を駆つて
過
(
よ
)
ぎり
来
(
き
)
しものを、この時われは呆然として為すところを知らず。
三日幻境
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
長沮
(
ちょうそ
)
・
桀溺
(
けつでき
)
耦
(
なら
)
びて耕す。孔子之を
過
(
よ
)
ぎり、子路をして
津
(
しん
)
を問わしむ。長沮曰く、
夫
(
か
)
の
輿
(
よ
)
を執る者は誰と為すと。子路曰く、孔丘と為すと。曰く、是れ魯の孔丘かと。曰く、是なりと。
論語物語
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
恐ろしい閃きが頭を
過
(
よ
)
ぎった。村田の熱っぽい鋭い眼付が俄に不安になった。
反抗
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
大き鳶たわたわと來て
過
(
よ
)
ぎるとき穗にあざやけき丹波栗の花
白南風
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
そして焚火の側を
過
(
よ
)
ぎって、雪渓のほうへ行った。
烏帽子岳の頂上
(新字新仮名)
/
窪田空穂
(著)
そして淋しさうに表の硝子障子の前を
過
(
よ
)
ぎつた。
死線を越えて:02 太陽を射るもの
(新字旧仮名)
/
賀川豊彦
(著)
過
(
よ
)
げとこそ
船
(
ふね
)
をまつらめ
孔雀船
(旧字旧仮名)
/
伊良子清白
(著)
遠い
疎林
(
そりん
)
の方から、飛鳥のような迅さの物が大庭を
過
(
よ
)
ぎって、客殿の北端れにある
水仕
(
みずし
)
たちの
下屋
(
しもや
)
の軒下へさっと隠れこんだようだった。
私本太平記:07 千早帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
予、蜀に入る、往来皆な之を
過
(
よ
)
ぎる。韓子蒼舎人、泰興県道中の詩に云ふ、県郭連
二
青竹
一
、人家蔽
二
緑蘿
一
と。欧公の句に
因
(
ちな
)
めるに似て而かも之を失す。
放翁鑑賞:07 その七 ――放翁詩話三十章――
(新字旧仮名)
/
河上肇
(著)
ときおりそんな自分の目のあたりを、その稲光りとともに、何処かの山路で
怯
(
おび
)
えている道綱の蒼ざめ切った顔が一瞬間
閃
(
ひらめ
)
いて
過
(
よ
)
ぎったりするのだった。……
かげろうの日記
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
誰人も
傍
(
かたえ
)
を
過
(
よ
)
ぎらんをだに忌わしと思うべし、道しるべせん男得たまうべきたよりはなしとおぼせという。
知々夫紀行
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
この一時の希望の
漠然
(
ばくぜん
)
たる震えの一つが、最も意外な時に、シャンヴルリーの防寨を突然
過
(
よ
)
ぎった。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
細君は「うそですよ/\。
皆
(
みんな
)
自分であんな事言ふのですよ」と言つて急がしく三藏の顏色を窺ふ。増田は一寸齒をむいて笑つたが、斯んな問題は鳥の影が
過
(
よ
)
ぎつた程にも其頭には殘らぬ。
俳諧師
(旧字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
而して一鳥
過
(
よ
)
ぎらず
片雲
(
へんうん
)
駐
(
とど
)
まらぬ
浅碧
(
あさみどり
)
の
空
(
そら
)
を、何時までも何時までも眺めた。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
大き鳶たわたわと来て
過
(
よ
)
ぎるとき穂にあざやけき丹波栗の花
白南風
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
屋根の
埃
(
ほこり
)
も
紫雲英
(
げんげ
)
の
紅
(
くれない
)
、
朧
(
おぼろ
)
のような汽車が
過
(
よ
)
ぎる。
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と
一
(
ひ
)
ト
頃
(
ころ
)
、里は
暗澹
(
あんたん
)
としていたが、なんのことはない、例年のごとく牧の馬や牛を引いた
博労
(
ばくろう
)
が、ぞくぞく
伯耆
(
ほうき
)
平野を
過
(
よ
)
ぎりはじめてもいる。
私本太平記:06 八荒帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
本當の人生への道は悲しみを
過
(
よ
)
ぎりながら通つてゐる。その悲しみを浪費したり、その果てるのを欲したりしてはならない。そしてそれを大事にしなければならない。
心の仕事を:或未知の友への手紙
(旧字旧仮名)
/
堀辰雄
(著)
内心にさしてきた
嫌悪
(
けんお
)
すべき光に彼は
戦慄
(
せんりつ
)
を覚えた。
慄然
(
りつぜん
)
たる一つの観念が彼の精神を
過
(
よ
)
ぎった。自分にあてられてる一つのおぞましい宿命を、未来のうちに
垣間
(
かいま
)
見た。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
節
(
せつ
)
に死し族を
夷
(
い
)
せらるゝの事、もと悲壮なり。
是
(
ここ
)
を以て後の正学先生の墓を
過
(
よ
)
ぎる者、
愴然
(
そうぜん
)
として感じ、
泫然
(
げんぜん
)
として泣かざる
能
(
あた
)
わず。
乃
(
すなわ
)
ち
祭弔
(
さいちょう
)
慷慨
(
こうがい
)
の詩、
累篇
(
るいへん
)
積章
(
せきしょう
)
して甚だ多きを致す。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
松山からの帰途須磨、大阪を
過
(
よ
)
ぎり奈良に遊んだが、その頃から腰部に
疼痛
(
とうつう
)
を覚えると言って余のこれを新橋に迎えた時のヘルメットを被っている居士の顔色は予想しておったよりも悪かった。
子規居士と余
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
水気の少い野の住居は、
一甕
(
ひとかめ
)
の水も
琵琶
(
びわ
)
洞庭
(
どうてい
)
である。太平洋大西洋である。
書斎
(
しょさい
)
から見ると、甕の水に青空が落ちて、其処に水中の天がある。時々は
白雲
(
しらくも
)
が浮く。空を飛ぶ
五位鷺
(
ごいさぎ
)
の影も
過
(
よ
)
ぎる。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
成都に遊ぶに及び、木行街を
過
(
よ
)
ぎりしに、市肆に大署して曰ふあり、郭家鮮翠紅紙鋪と。土人に問うて、乃ち蜀語の鮮翠は猶ほ鮮明と言ふがごとくなるを知る。東坡蓋し郷語を用ひて云へるなり。
放翁鑑賞:07 その七 ――放翁詩話三十章――
(新字旧仮名)
/
河上肇
(著)
薄雲にひらめく月の光かも風にかもあれや我が眼
過
(
よ
)
ぎぬる
黒檜
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
さっきからその高氏は、
掖門
(
えきもん
)
ノ
廊
(
ろう
)
に
床几
(
しょうぎ
)
をおいて、
内苑
(
ないえん
)
の梅でも見ている風だったが、ふと
過
(
よ
)
ぎりかけた部将の佐野十郎へ、こう呼びかけた。
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
漸
(
ようや
)
くそれが
過
(
よ
)
ぎり終えたらしい雪の高原の果ての、もう自分には殆ど見覚えのない最後の林らしいものが見る見る遠ざかって行くのを、菜穂子は半ば怖ろしいような
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
「きれいだ、しかし
服装
(
なり
)
はよくない。」それは一陣の風のような神託であって、彼女の
傍
(
かたわら
)
を
過
(
よ
)
ぎり、やがて婦人の全生涯を貫くべき二つの芽の一つを彼女の心に残したまま
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
道のべに
雉子
(
きゞす
)
あらはれ
美
(
うつく
)
しき尾を曳き
過
(
よ
)
ぎる春ふけにけり
雀の卵
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
と駈け
過
(
よ
)
ぎる騎馬をみるたび、手をあげていたが、耳をかす一騎もない。すべて逃げ退いてゆくらしかった。
私本太平記:08 新田帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
恐るべき幻がマリユスの脳裏を
過
(
よ
)
ぎった。何事ぞ、彼らはその若い娘を奪ってここへは連れてこないのか。あの怪物のひとりがその娘を暗黒のうちに運び去ろうとするのか。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
悪くさせるかそれすら分らないような何物かが——一滴の雨をも落さずに村の上を
過
(
よ
)
ぎってゆく暗い雲のように、自分たちの上を通り過ぎていってしまうようにと
希
(
ねが
)
っていた。
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
過
常用漢字
小5
部首:⾡
12画
“過”を含む語句
過失
通過
過日
過去
過般
看過
経過
行過
過言
過程
過誤
經過
打過
過多
好過
遣過
擦過傷
過激
過不及
正午過
...