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誰彼
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たれかれ
ふりがな文庫
“
誰彼
(
たれかれ
)” の例文
まだ発車には余程
間
(
あいだ
)
があるのに、もう場内は一杯の人で、
雑然
(
ごたごた
)
と騒がしいので、父が又
狼狽
(
あわ
)
て出す。親しい友の
誰彼
(
たれかれ
)
も見送りに来て呉れた。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
一體
(
いつたい
)
誰彼
(
たれかれ
)
といふ
中
(
うち
)
に、さし
急
(
いそ
)
いだ
旅
(
たび
)
なれば、
註文
(
ちうもん
)
は
間
(
ま
)
に
合
(
あは
)
ず、
殊
(
こと
)
に
少
(
わか
)
い
婦人
(
をんな
)
なり。うつかりしたものも
連
(
つ
)
れられねば、
供
(
とも
)
さして
遣
(
や
)
られもせぬ。
雪の翼
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
天狗
(
てんぐ
)
にでも
撈
(
さら
)
われるように思い、その壻殿が自分の内へ這入り込んで来るのを、この上もなく窮屈に思って、平生心安くする
誰彼
(
たれかれ
)
に相談したが
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
決して
誰彼
(
たれかれ
)
を
怨
(
うら
)
むわけではないが、……もし怨むとすれば時勢を怨むというよりほかにないが、……明治十年前後、僕が学校ざかりの時分には
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
関門屯所の
柵門
(
さくもん
)
の前で、駕を降りた。すぐ、役宅へ入って、
誰彼
(
たれかれ
)
を招いて、
夜半
(
よなか
)
の時間や、警衛の
諜
(
う
)
ち
合
(
あわ
)
せだった。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
殊に少し酒が
廻
(
まわ
)
っていると、君僕の交際範囲が広くなる。そこで
一旦
(
いったん
)
君僕で話をした人に、跡で改まった口上も使いにくい。とうとう
誰彼
(
たれかれ
)
となく君僕で話す。
世界漫遊
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ユリウス・ダビット
(著)
何時
(
いつ
)
も若い友達と一緒になっていられる幸福のために、かえって、
死
(
しに
)
もの狂いであった
誰彼
(
たれかれ
)
なしの過去に、ひたと、
面
(
おもて
)
をこすりつけられたような思いだった。
遠藤(岩野)清子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
このことは当人宮川氏にも、また病院内の
誰彼
(
たれかれ
)
にも話してない秘密なんだから、そのつもりでいるように
脳の中の麗人
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
自分の
介抱
(
かいほう
)
を受けた妻や医者や看護婦や若い人達をありがたく思っている。世話をしてくれた
朋友
(
ほうゆう
)
やら、見舞に来てくれた
誰彼
(
たれかれ
)
やらには
篤
(
あつ
)
い感謝の念を抱いている。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
勿論
(
もちろん
)
、
何
(
なん
)
の
事
(
こと
)
もなく
疑
(
うたが
)
ひだけで
濟
(
す
)
んだのだが、一
夜
(
や
)
を
思
(
おも
)
はぬ
所
(
ところ
)
で
明
(
あ
)
かしてしまつた
誰彼
(
たれかれ
)
、あまり
寢覺
(
ねざ
)
めがよかつた
筈
(
はず
)
も
無
(
な
)
いが、
何
(
なん
)
でも
物事
(
ものごと
)
の
先驅者
(
せんくしや
)
の
受難
(
じゆなん
)
の
一卷
(
ひとまき
)
とすれば
麻雀を語る
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
「まご/\して居ると、市ヶ谷の富藏親分が、
誰彼
(
たれかれ
)
の見境もなく縛つてしまひますよ」
銭形平次捕物控:110 十万両の行方
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
その晩は近所の
誰彼
(
たれかれ
)
さそひあはせて五六人づれで出かけました。夜ふけのことでお湯はもうすき/″\してゐました。おばあさん達はゆつくりと
身体
(
からだ
)
をのばして
湯槽
(
ゆぶね
)
にひたりました。
狐に化された話
(新字旧仮名)
/
土田耕平
(著)
今、私の愛児は、幼年紳士は、急斜面の弧状の、白い石の太鼓橋を
欄干
(
らんかん
)
につかまり
遮二無二
(
しゃにむに
)
はい登ろうとしている。一行の
誰彼
(
たれかれ
)
が
哄笑
(
こうしょう
)
して、やんややんやと
背後
(
うしろ
)
から押しあげている。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
町中
(
まちじゅう
)
なんとなく人の気が立っている。
誰彼
(
たれかれ
)
となく家の中に落ち着いてはいられないので往来へ出ているらしく思われる。その
雑沓
(
ざっとう
)
の間を、印の付いた服を着た唱歌会員が通っている。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
彼は東京にある知人の
誰彼
(
たれかれ
)
が意見をもそれとなく聞いて見るために町を出歩いた。何も飛騨の山まで行かなくとも他に働く道はあろうと言って彼を引き止めようとしてくれる人もない。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
ある処にて秋のはじめつかた毎夜村の若衆
抔
(
など
)
打ち寄りて
辻角力
(
つじずもう
)
を催すに、力自慢の
誰彼
(
たれかれ
)
自ら集まりてかりそめながら大関関脇を気取りて
威張
(
いば
)
りに威張りつつ面白き夜を
篝火
(
かがりび
)
の側に
更
(
ふか
)
しける。
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
「
誰彼
(
たれかれ
)
と
容赦
(
ようしゃ
)
はない、不義は同罪、娘から先へ斬る、観念しろ」
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
同志の中の
誰彼
(
たれかれ
)
の心弱さを憎みつつ
詩
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
親戚
(
うから
)
誰彼
(
たれかれ
)
孔雀船
(旧字旧仮名)
/
伊良子清白
(著)
ただ、万綱はじめ、手下の
誰彼
(
たれかれ
)
幾十人、一人として影を見せず、あとは
通魔
(
とおりま
)
の
鳴
(
なり
)
を鎮めて、日金颪の
凪
(
な
)
ぎたるよう。
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
好きは好きだったが、しかし友人の
誰彼
(
たれかれ
)
のように、今直ぐ其真似は
仕度
(
した
)
くない。も少し先の事にしたい。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
「かつてはその人の前に
跪
(
ひざまず
)
いたという記憶が、今度はその人の頭の上に足を
載
(
の
)
せさせようとする」といった先生の言葉は、現代一般の
誰彼
(
たれかれ
)
について用いられるべきで
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「まごまごしていると、市ヶ谷の富蔵親分が、
誰彼
(
たれかれ
)
の見境もなく縛ってしまいますよ」
銭形平次捕物控:110 十万両の行方
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
一族の者はもとより村の
誰彼
(
たれかれ
)
へも、お通と又八との、かつての古証文は、きれいに破棄して、やがてお通の良人たる人は、武蔵でなくてはならないと、自分の口からいうほどに変っていた。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
喧騒
(
けんそう
)
の
中
(
うち
)
に時間が来て、
誰彼
(
たれかれ
)
となくぽつぽつ席を立ち始めた。クレエムを食った
femme
(
ファム
)
omineuse
(
オミニョオズ
)
もこの時棒立ちに立って、蝙蝠傘を体に添えるようにして持って、出て
行
(
ゆ
)
く。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
吾思う人の為めにと
箸
(
はし
)
の上げ下しに云う
誰彼
(
たれかれ
)
に
傚
(
なら
)
って、わがクララの為めにと云わぬ事はないが、その声の
咽喉
(
のど
)
を出る時は、
塞
(
ふさ
)
がる声帯を無理に押し分ける様であった。
幻影の盾
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「あら苦し、
堪難
(
たへがた
)
や、あれよ/\」と叫びたりしが、次第にものも
得
(
え
)
謂はずなりて、夜も明方に到りては、
唯
(
ただ
)
泣く声の聞えしのみ、されば家内の
誰彼
(
たれかれ
)
は藪の中とは
心着
(
こゝろづ
)
かで
妖怪年代記
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
手を貸したのは諸方に浮浪していた一族の
誰彼
(
たれかれ
)
、南部家下屋敷の隣、昔
数寄者
(
すきしゃ
)
が建ててそのままになっていた庵を手に入れて、ここまで仕事を運んだのを平次に見破られたのです。
銭形平次捕物控:025 兵糧丸秘聞
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
ポンと飛び降りてきた
俵
(
たわら
)
同心、力をあわせてお十夜の側面へかかる。わっと、総立ちになったのは
甲比丹
(
かぴたん
)
の三次をはじめ
荷抜屋
(
ぬきや
)
の
誰彼
(
たれかれ
)
、
脇差
(
わきざし
)
を
閃
(
ひらめ
)
かす者、戸惑う者、かけこんで
錆鎗
(
さびやり
)
を
押
(
お
)
っ取る者。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それに非常に人懐こくて、門前を通掛りの、私のような犬好が、気紛れにチョッチョッと呼んでも、
直
(
すぐ
)
ともう尾を
掉
(
ふ
)
って飛んで行く。
況
(
ま
)
して
家
(
うち
)
へ来た人だと、
誰彼
(
たれかれ
)
の
見界
(
みさかい
)
はない、皆に喜んで飛付く。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
彼
(
かれ
)
は
學友
(
がくいう
)
の
誰彼
(
たれかれ
)
に
萬遍
(
まんべん
)
なく
安井
(
やすゐ
)
の
動靜
(
どうせい
)
を
聞
(
き
)
いて
見
(
み
)
た。
然
(
しか
)
し
誰
(
だれ
)
も
知
(
し
)
るものはなかつた。たゞ
一人
(
ひとり
)
が、
昨夕
(
ゆうべ
)
四條
(
しでう
)
の
人込
(
ひとごみ
)
の
中
(
なか
)
で、
安井
(
やすゐ
)
によく
似
(
に
)
た
浴衣
(
ゆかた
)
がけの
男
(
をとこ
)
を
見
(
み
)
たと
答
(
こた
)
へた
事
(
こと
)
があつた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
何
(
なに
)
をしよう、
彼
(
かに
)
をしようと
云
(
い
)
ふのが、
金主
(
きんしゆ
)
、
誰彼
(
たれかれ
)
の
發案
(
さうだん
)
で、
鳥屋
(
とりや
)
をする
事
(
こと
)
になつた。
廓そだち
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
誰
常用漢字
中学
部首:⾔
15画
彼
常用漢字
中学
部首:⼻
8画
“誰彼”で始まる語句
誰彼時