)” の例文
さて官事のいとまあるごとに、かねておおやけの許しをば得たりければ、ところの大学に入りて政治学を修めんと、名を簿冊ぼさつさせつ。
舞姫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
同じ頃野口君が札幌の北鳴新聞に行かれた事を、函館で或雑誌を読んで知つたが、其頃は唯同君の二三の作物と名をしてゐただけの事。
白石文集、ことに「折焚おりたしば」からの綿密な書きぬきを対照しながら、清逸はほとんど寒さも忘れはてて筆を走らせた。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
さてすべき事とはにぞ、そは妾の身体の普通ならずして、牢獄にありし二十二歳の当時まで、女にはあるべき月のものを知らざりし事なり。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
女仙外史じょせんがいしに、忠臣等名山幽谷に帝をもとむるをする、有るがごとく無きが如く、実の如く虚の如く、縹渺有趣ひょうびょうゆうしゅの文をす。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ついで路地の出入口をし、その分れて那辺に至り又那辺に合するかを説明すること、たなごころすが如くであった。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
日々海をながめて暮らした。海の魔力まりょくが次第に及ぶを感じた。三等船客の中に、眼がわるいので欧洲おうしゅうまわりで渡米する一青年があって「思出おもいで」を持て居た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
とあって、その次行に「」としるし、それから博士のいわゆる「十五年満期」の「長期性時限爆弾」を「装填シアル物件」が十二個ずらずらと列記してあるのであった。
たとえば曲亭馬琴きょくていばきんの『烹雑にまぜ』という随筆に、佐渡さどしまの記事がやや詳しく載せられ、浜に流れ寄るくさぐさの異郷の産物の中に、椰子藻珠やしもだまなどが有ることをしるしている。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
かかる卑吝ひりんするは或は耻ずるが如きも、然れども未開地に於て成効を方針とするに於ては、尚此れよりも衣喰に於ける幾多の困難に当るを以て、甘じて実行せざるべからず。
関牧塲創業記事 (新字新仮名) / 関寛(著)
わが吉利支丹キリシタンの徒の事蹟をせるを以て、所謂いはゆる「南蛮もの」を蔵すること多からんと思ふ人々もなきにあらざれども、われは数冊の古書のほかに一体のマリア観音くわんおんを蔵するに過ぎず。
わが家の古玩 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
その翌日よくじつ——十六夜いざよひにも、また晩方ばんがた強震きやうしんがあつた——おびえながら、このをつゞる。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
以上するところは、皆予が一身いっしん一箇いっこの事にして、他人にこれをしめすべきものにあらず。またこれをしるすとも、予が禿筆とくひつ、その山よりもたかく海よりもふかき万分の一ツをもいいつくすことあたわず。
白石はくせき先生の『折焚柴おりたくしば』を読みてそぞろに感ずる所あり、先生が若かりし日、人のさかしらに仕を罷めて浪人の身となりさがりたる時、老いたる父母を養ひかねて心苦しく思ふを人も哀れと見て
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
堂に法華ほっけと云い、石に仏足ぶっそくと云い、とう相輪そうりんと云い、院に浄土と云うも、ただ名と年と歴史をして吾事わがことおわると思うはしかばねいだいて活ける人を髣髴ほうふつするようなものである。見るは名あるがためではない。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
探検たんけんつひて得たる利益の大要をすれば左の如し。
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
須磨寺すまでら寝詣ねもうでの
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これは「武鑑」、こと寛文かんぶん頃より古い類書は、諸侯の事をするに誤謬ごびゅうが多くて、信じがたいので、いて顧みないのかも知れない。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
昔は貧乏御家人ごけにん跋扈ばっこせし処今は田舎いなか紳士の奥様でこでこ丸髷まるまげそびやかすの、元より何の風情ふぜいあらんや。然れどもわが書庫に蜀山人しょくさんじんが文集あり『山手やまのて閑居かんきょ
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ふえきこえずや、あはれのあたりにわか詩人しじんめる、うつくしき學士がくしやあると、をりからのもりほしのゆかしかりしを、いまわすれず。さればゆかしさに、あへ岡燒をかやきをせずしてをつくる。
森の紫陽花 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いささ所思しよしして拙答に代ふ。高免かうめんかうむらば幸甚かうじんなり。
娼婦美と冒険 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
この土蔵のかぎは枳園が自ら保管していて、自由にこれに出入しゅつにゅうした。寿蔵碑に「日々入局にちにちきょくにいり不知老之将至おいのまさにいたらんとするをしらず殆為金馬門之想云ほとんどきんばもんのおもいをなすという」としてある。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
橘南谿たちばななんけい東遊記とういうきに、陸前国りくぜんのくに苅田郡かつたごほり高福寺かうふくじなる甲胄堂かつちうだう婦人像ふじんざうせるあり。
甲冑堂 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しばらくして後考こうこうつ。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
女主人おんなあるじは抽斎の四女くがで、長唄の師匠杵屋勝久きねやかつひささんがこれである。既にしたる如く、大正五年には七十歳になった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
して此に至つた時、わたくしは的矢の北条氏所蔵の霞亭尺牘一けふを借ることを得た。思ふにわたくしは今よりこれを検して、他日幾多の訂正をしなくてはなるまい。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)