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螫
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さ
ふりがな文庫
“
螫
(
さ
)” の例文
忽
(
たちま
)
ち、チクリと右の手の甲が痛み出した。見ると毒虫にいつの間にやら
螫
(
さ
)
されていた。駕龍の中には
妙
(
たえ
)
なる名香さえ焚いてあるのだ。
怪異黒姫おろし
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
「さう言つたつて、これでも
蚤
(
のみ
)
の
螫
(
さ
)
した
跡
(
あと
)
よりはでかいでせう。——一體そんなことを言ふ親分こそ身體を汚したことがありますかい」
銭形平次捕物控:007 お珊文身調べ
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
そしてきつと
螫
(
さ
)
すでせう。蜘蛛はそれを勘づきます。で、自分の糸嚢から糸をひき出して、大急ぎで蜂の上に糸をひつぱりまはします。
科学の不思議
(新字旧仮名)
/
ジャン・アンリ・ファーブル
(著)
妓女四散遊戯して側にあらず、樹下の穴より毒蛇出て王を
螫
(
さ
)
さんとすると、樹上より鼠下り来りて鳴くごとに蛇が穴に退き入った。
十二支考:11 鼠に関する民俗と信念
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
「細君」と「丸善」とは学校教員が住むでる世界の二大人格だが、蚤は
昨夜
(
ゆうべ
)
二人ともそれに
螫
(
さ
)
されて、とうと寝付かれなかつたからだ。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
▼ もっと見る
黒犬に
腿
(
もも
)
を
咬
(
か
)
まれて驚いたなどという下らない夢を見る人は、
窹
(
さ
)
めていても、
蚤
(
のみ
)
に
猪
(
い
)
の目を
螫
(
さ
)
されて騒ぐくらいの下らない人なのである。
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
『今昔物語』に蜂と
蜘蛛
(
くも
)
と戦う話があった。一たび蜘蛛の
擒
(
とりこ
)
になったのを人に助けられた蜂が、仲間を
催
(
もよお
)
して蜘蛛を
螫
(
さ
)
しに来る。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
四条大橋を渡るとき、顔にぶつかった蚊もどきと呼ぶ
螫
(
さ
)
さぬ蚊(?)が、いかにも力なくなっているのを掌の上にのせて見た。
幽霊を見る人を見る
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
夢の中でも、私は、強情な植物共の
蔓
(
つる
)
を引張り、
蕁麻
(
いらくさ
)
の
棘
(
とげ
)
に悩まされ、シトロンの針に突かれ、蜂には火の様に
螫
(
さ
)
され続ける。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
「蝎いい虫じゃないよ。僕博物館でアルコールにつけてあるの見た。尾にこんなかぎがあってそれで
螫
(
さ
)
されると死ぬって先生が云ったよ。」
銀河鉄道の夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
最後にその蜂がぶんぶんと飛び出して、殿さまや
家来
(
けらい
)
を
螫
(
さ
)
したので、もうこらえてくれとあやまった、などという笑いの結末にもなっている。
母の手毬歌
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
自分は三千代を、平岡に対して、それだけ罪のある
人
(
ひと
)
にして仕舞つたと代助は考へた。けれども
夫
(
それ
)
は左程に代助の良心を
螫
(
さ
)
すには至らなかつた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
左の肘を衝く。
上瞼
(
うはまぶた
)
が重くなる。八は寝てはならないと思ふのと、蚊に
螫
(
さ
)
されるのとで、
塞
(
ふさ
)
がる目を強ひて
開
(
あ
)
く。上瞼が又重くなる。又強ひて目を開く。
金貨
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
「
蝮蛇
(
ふくだ
)
手を
螫
(
さ
)
せば壮士
疾
(
と
)
く
己
(
おの
)
が腕を断つ」それを声を
立
(
たて
)
て云い、彼はふと自分の腕を見まわした。目をつぶると腕を斬る
疼
(
いた
)
みが伝わって来るようであった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
それで、蛇はひがんで、のたのた這い廻るし、
蛙
(
かえる
)
はがあがあ騒ぐのだし、蜂はぶんぶん腹立ちまぎれに
螫
(
さ
)
しに来るし、狼や獅子は、鋭い牙を研ぎ出したのだよ。
トシオの見たもの
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
娘の眼はその瞬間にやさしい
猾
(
ず
)
るさを、その可愛げな頬ににっとうかべた。——眠元朗はちくりと胸を
螫
(
さ
)
されたような気がした。かるい不快が伴うた気分だった。
みずうみ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
蚊に
螫
(
さ
)
された
痕
(
あと
)
のある手の甲で額の汗を
拭
(
ふ
)
き拭き、ぐっと腰の
蝶番
(
ちょうつがい
)
を伸ばしながら身を
反
(
そ
)
らした。
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
かの人を
螫
(
さ
)
しては
燄
(
ほのほ
)
に入り、一たびは烟となれど、又「フヨニツクス」(自ら
焚
(
や
)
けて後、再び灰より生るゝ怪鳥)の如く生れ出でゝ、毒を吐き人を
傷
(
やぶ
)
るといふ蛇の
刺
(
はり
)
をば
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
私はある騎兵が右手の小指を蝎に
螫
(
さ
)
されて、すぐに剣をぬいてその小指を切断したのを見た。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「
蚋
(
ぶよ
)
が
螫
(
さ
)
す、蚋が螫すわ。どうじゃ、歩き出そうでないか。
堪
(
たま
)
らん、こりゃ、立っとッちゃあ
埒
(
らち
)
明かん、さあ
前
(
さき
)
へ
行
(
い
)
ね、貴公。美人は
真中
(
まんなか
)
よ、
私
(
わし
)
は
殿
(
しんがり
)
を打つじゃ、早うせい。」
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
声も立てないで触れるとすぐ
螫
(
さ
)
す藪蚊、蠅は殆んどいないけれども、街へ出かけるときっと二三匹ついてくる。たまたま誰か来てくれると、意識しないお土産として連れてくる。
草と虫とそして
(新字新仮名)
/
種田山頭火
(著)
常に鋭く尻を押つ立てて歩くやゝ小さな黒蟻は好んで人を
螫
(
さ
)
し、またこれに螫されると必ず二三日脹れて痛かつた。これ等のほかに、長さ一分ほどのほつそりした赤黒い蟻がゐた。
樹木とその葉:14 虻と蟻と蝉と
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
座敷
(
ざしき
)
の前を
蜂
(
はち
)
が一疋歩いて行く。
両羽
(
りょうはね
)
をつまんでも、
螫
(
さ
)
そうともせぬ。何に弱ってか、彼は
飛
(
と
)
ぶ力ももたぬのである。そっと地に下ろしたら、また芝生の方へそろ/\歩いて行く。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
その癖おそろしく
素敏
(
すばし
)
っこい
昆虫
(
むし
)
めが、とても我慢が出来ないほどチクチクと彼の
躯
(
からだ
)
を
螫
(
さ
)
すものだから、手を一杯にひろげて彼は螫された
箇所
(
ところ
)
をポリポリ掻きむしりながら、思わず
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
……内閣が代ろうが戦争が初まろうが、大地震が初まろうが、大火事になろうが、又は、暑かろうが寒かろうが、頭に蜂が
螫
(
さ
)
そうが、尻に火が付こうが、頓着している
隙
(
ひま
)
は無いのだ。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
その時セルギウスは
蝮
(
まむし
)
に
螫
(
さ
)
されたやうな気がした。娘の顔を見た時、白痴で色慾の強い女だと感じたのである。セルギウスは立ち上つて庵室に這入つた。娘はベンチに掛けて待つてゐた。
パアテル・セルギウス
(新字旧仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
蠍
(
さそり
)
が石の下にもぐり込んで気違いのようになって物を
螫
(
さ
)
したがっている時にでも、ラザルスは太陽のひかりを浴びたまま坐って動かず、灌木のような異様な髯の生えている紫色の顔を仰向けて
世界怪談名作集:14 ラザルス
(新字新仮名)
/
レオニード・ニコラーエヴィチ・アンドレーエフ
(著)
誰も
螫
(
さ
)
されない人はない、
大樺池
(
おおかんばいけ
)
を直ぐ眼の下に見て、ひた
下
(
お
)
りに下る。
白峰山脈縦断記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
泣面
(
なきつら
)
に蜂 が
螫
(
さ
)
すというような目ばかり見ましたが、これからとてもなおなおどういう難儀があるかわからん。けれどもまず進むだけ進むのが真に愉快であるという考えから一首の歌を
詠
(
よ
)
みました。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
ただまるまる
肥
(
ふと
)
った
頬
(
ほお
)
にいつも
微笑
(
びしょう
)
を浮かべている。
奉天
(
ほうてん
)
から
北京
(
ペキン
)
へ来る途中、寝台車の
南京虫
(
なんきんむし
)
に
螫
(
さ
)
された時のほかはいつも微笑を浮かべている。しかももう今は南京虫に二度と
螫
(
さ
)
される心配はない。
馬の脚
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「ア、怒ってる——
螫
(
さ
)
すぞ螫すぞ」
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
ちくちく
螫
(
さ
)
される、かじられる。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
藪蚊
(
やぶか
)
が
螫
(
さ
)
しても
臥
(
ね
)
てばかり。
とんぼの眼玉
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
悪い星
奴
(
め
)
に
螫
(
さ
)
されてる。
ランボオ詩集
(新字旧仮名)
/
ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー
(著)
蜂に
螫
(
さ
)
された時
話の種
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
大きさ柱のごとくして
長
(
たけ
)
ただ二尺余、その行くや跳び躍る、逢々として声あり、人を
螫
(
さ
)
し立ちどころに死す〉とあると同物だろうという。
十二支考:04 蛇に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
芸人といふものは、罪のないもので、
夫婦
(
めをと
)
喧嘩をしたり、批評家とか蜂とかに
螫
(
さ
)
されたりすると、直ぐに師匠の
許
(
とこ
)
に駈けつけようとする。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
眼はただ一人助かったなれど、その代り右の手の甲を毒虫に
螫
(
さ
)
されたので、それがいつまでも
痛痒
(
いたがゆ
)
くて何んとしても耐えられぬのであった。
怪異黒姫おろし
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
「
蠍
(
さそり
)
いい虫じゃないよ。
僕
(
ぼく
)
博物館
(
はくぶつかん
)
でアルコールにつけてあるの見た。
尾
(
お
)
にこんなかぎがあってそれで
螫
(
さ
)
されると
死
(
し
)
ぬって先生が
言
(
い
)
ってたよ」
銀河鉄道の夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
蜂の卵を食うのは蛆その物を食うのであるが、嫌がらぬ段になれば高い価を払ったり、または蜂に
螫
(
さ
)
されなどしてもその品を得て喜んで居る。
貧富幸不幸
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「これから覗いてみようと思うんだが、
蚤
(
のみ
)
が
螫
(
さ
)
したほどでもいいから、身体に文身のない者は入れないことになっている」
銭形平次捕物控:007 お珊文身調べ
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
自分は三千代を、平岡に対して、それだけ罪のある人にしてしまったと代助は考えた。けれどもそれはさ程に代助の良心を
螫
(
さ
)
すには至らなかった。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そんな時には自分の咽から鼾が出さうになるのと、蚊がひどく
螫
(
さ
)
すのとで、びつくりして目を開くのである。
金貨
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
蜂の方が頭とすれすれに馳つて來たり、肩先を越えたりして却つて
螫
(
さ
)
されないのである。
めたん子伝
(旧字旧仮名)
/
室生犀星
(著)
佐賀県東松浦郡の山村に於て、同じ二十日を蜂の養生というのも、蜂のためにはちっとも養生ではなくて、かえって一年中蜂に
螫
(
さ
)
されても負けないようにというまじないかと思われる。
年中行事覚書
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
お手が障った所だけは
螫
(
さ
)
しましても痛みませぬ、
竹箒
(
たけぼうき
)
で
引払
(
ひっぱた
)
いては八方へ散らばって体中に
集
(
たか
)
られてはそれは
凌
(
しの
)
げませぬ
即死
(
そくし
)
でございますがと、
微笑
(
ほほえ
)
んで控える手で無理に握ってもらい
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
刻んだ菜や、水を与えられると、籠の目を透くレモン色の小さい姿が激しく動くのが見え、田舎家の午前の
無言
(
しじま
)
の静けさは銀の蚤でも
螫
(
さ
)
すように急に品よく可愛らしくざわめき立ちました。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
昨日は庭で青白い
螟蛉
(
あおむし
)
を
褐色
(
かちいろ
)
のフウ虫二疋で
螫
(
さ
)
し殺して吸うて居るのを見た。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
その幾万匹が一度に群がって賊を
螫
(
さ
)
したので、かれらも狼狽した。ある者は体じゅうを螫され、ある者は眼を突きつぶされ、初めに掠奪した獲物をもみな打ち捨てて、転げまわって逃げ去った。
中国怪奇小説集:04 捜神後記(六朝)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
一度も二度も今朝がたから私を
螫
(
さ
)
して逃げて行つたそれである。
樹木とその葉:14 虻と蟻と蝉と
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
螫
漢検1級
部首:⾍
17画
“螫”を含む語句
乱螫
螫毛