)” の例文
倒れた傷跡が大きな紫色のあざになってるれた顔を見た時、そこにいる人は死にかかってるのだとわかった時、彼はふるえだした。
朝になっても、体中がれふさがっているような痛みを感じて、お島はうんうんうなりながら、寝床を離れずにいるような事が多かった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
平次は隣の室へ声をかけると、すっかり目を泣きらしたお倉は、平次の女房のお静に手を引かれて転げるように出て来ました。
ある時佐助齲歯むしばを病み右の頬がおびただしくれ上り夜に入ってから苦痛え難きほどであったのをいてこらえて色に表わさず折々そっと合嗽うがい
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
と激しく叱責しっせきされたが、その時に乳母が眼を真赤にらして、オイ/\泣声を上げたので、野村は之は大へんな事が起ったのだなと思った。
八時少し前に起きたので、眼の周囲がれぼったくて少し心持が悪い。さぞ荒れたような皮膚をして居ることだろうと思う。
おまけにおれのなぐつた所が、小鬢こびんの禿から顋へかけて、まるで面がゆがんだやうに、れ上つてゐようと云ふものだ。
鼠小僧次郎吉 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
右の頬が見る間にれふくらんで来るのだつた。信一郎は、ボンヤリつツ立つてゐる運転手を、再び叱り付けた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
「どうです。何か見付かりましたか」彼は捜査課長の不眠にれぼったくなった顔を見ると、う声をかけた。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
癌は一時小さくなって、また前よりれを増した。とうとう痛みが来るようになった。医者も隠し切れなくなったか肺臓癌はいぞうがんがここに吹出したものだと宣告した。
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「さア次はんだす。たんと塗つてあげなはれ。」と、お駒も眼の縁を赤く泣きらして、背後うしろを向いた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「おお可哀そうに。おお恐ろしい。肩からあんなに血が出ているよ。紫色にれ上がっているよ——」
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
頓狂とんきょうな返事がして、うたた寝でもしていたのか、一人の女中がれぼったい顔をして出て来た。
お勢登場 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
お岩の顔は紫色にれあがっているうえに、左のまぶたが三日月形に突きつぶしたように垂れていた。それは二目と見られない物凄い顔であった。伊右衛門はさすがに驚いた。
南北の東海道四谷怪談 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
葉子は、泣いたために妙にれぼったく赤くなって、てらてらと光る木村の鼻の先が急に気になり出して、悪いとは知りながらも、ともするとそこへばかり目が行った。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
顔は硫酸で火傷したので、三つ四つ膏薬こうやくってある。鼻は二倍程大きくれ上っている。お春さんは笑い出した。無論乃公も笑った。けれども姉さんは転げるくらい笑った。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
この間から歯が痛いとかほおれたとかいって、それは大騒ぎをしているんですよ。……もう一遍いって雪岡さんがいらしったんですから、そのままでいいから降りておいでッて
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
きのう耳下腺じかせんのあたりがれる痛みで悩んでた母は脹れてしまったきょうは痛みもなくらくらくとしてまたみみずく顔になった。ぶくぶくしたところにしわがすいすいとよっている。
母の死 (新字新仮名) / 中勘助(著)
井戸端で足を洗っているらしく、釣瓶つるべの音や水のはじける音がし、それに交って何かひそかに話し合っている。納戸に寝ていたいねはれ物のひいたように初めて大きな息をした。
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
ただまるでおけのようにれあがって、体が痩せてしまったのですよ。以前はどうしてどうして、とても太ってましたけど、今はもうまるで針でも飲んだように痩せてしまいましてね
丸顔で、眉と目とのあいだがひろく、一重瞼の目がいささかれぼったい。指尖ゆびさきでつまみあげたような、ちんまりとした小さな鼻。色が白く、口紅のほかにはお化粧のあとのない肌。
軍国歌謡集 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
これ以上、まだ、あなたは、わたしらに、なにをこらえろというのかね? 若い男と女、惚れたれたの浮気はつきもの、一時の気まぐれとして、忘れてしまえば、ええじゃないですか
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
花子は定の腕の中に仰向あおむけに抱きかかへられたまま薄眼を開いてゐた。れぼつたい唇が暗紫色に染まりその間から小さな舌のさきがあらはれてゐた。定はもすそをひき上げて花子の創痕きずあとをしらべた。
水に沈むロメオとユリヤ (新字旧仮名) / 神西清(著)
午前も午後も教室で為事をし、夕食のとき維也納ウインナから来たきのふのT翁に逢つたところが、私の世話した“Hospitzホスピツツ”で昨夜南京虫に襲はれたことを報じ、頸のあたりの赤くれたあとを示した。
南京虫日記 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
と言つて、肌が紫色にれ上るまで笞を続けさせたといふ事だ。
土手には一ぱいさわれば手足もれ痛む鬼薊おにあざみが茂っています。
監獄署の裏 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
目を泣きらす八重ざくら
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
れてるんじゃァない?
華々しき一族 (新字新仮名) / 森本薫(著)
平次は隣のへやへ聲をかけると、すつかり目を泣きらしたお倉は、平次の女房のお靜に手を引かれて轉げるやうに出て來ました。
背が高く、強壮で、その顔は、顳顬こめかみや額のほうは狭くてせ、下の方は広く長く、あごの下がれていて、ちょうど干乾ひからびたなしのようだった。
お庄はまだ目蓋まぶたれぼったいような顔をして、寝道具をしまったあとを掃いていた。お鳥は急いでたすきをかけて、次の間へハタキをかけ始めた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
その前の晩もやはり夜通し泣きつづけて、彼女も要もほとんど寝られなかったので、さし向いになった夫婦は孰方どっちれぼったい眼をしていた。
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
殊にくびが細かったの、腹がれていたのと云うのは、地獄変じごくへんからでも思いついたのでしょう。つまり鬼界が島と云う所から、餓鬼がきの形容を使ったのです。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
全身、蒼黒あおぐろくなりその上、やせさらばう骨のくぼみの皮膚にはうす紫のくままで、漂い出した中年過ぎの男は嵩張かさばったうしろくびこぶに背をくぐめられ侏儒しゅじゅにして餓鬼のようである。
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
見る見るうちに眉がれた。そうして獅子顔を現じ出した。ポロリと小指が一本取れた。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
口から流れている血の筋は、何時いつの間にか、段々太くなっていた。右の頬が見る間にれふくらんで来るのだった。信一郎は、ボンヤリつッ立っている運転手を、再びしかり付けた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
彼女の涼しい目は眠られないふた晩に醜くがり、かわいいえくぼの宿った豊頬ほうきょうはげっそりとせて、耳の上から崩れ落ちたひと握りの縺毛もつれげが、そのとが頬骨ほおぼねにはらりとかかっていた。
五階の窓:04 合作の四 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
胆石です といって、出てしまえばなんでもない と腹部をあちらこちら ここはどうです とおさえられるのがまとにあたって痛い。苦しさにまぎれて見もしなかったが肝臓のへんがれてるらしい。
胆石 (新字新仮名) / 中勘助(著)
「だって歯が痛いとか、頬がれたとかいっているんでしょう」
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
れぼつたいやうな目遣めづかひの
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
顏立ちもよく整つて、恰幅も見事ですが、戀に狂ふ型の人間によくある、やゝふとじしの多血質でれつぽい眼、多い毛などが妙に人目につきます。
気が向くと徹夜で仕事して翌朝れぼったい顔をして帰って来ることもあり、寝泊りはさせないはずだったのが、だんだんそうも行かなくなっていた。
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ひるごろまで床にはいっていて、たがいの室のとびらを開け放しながら、たがいに話し合った。鏡の中でたがいに見合わして、疲れにれたうれしい顔をながめた。
叔母の母親は、ひとしきり仏の前へ行って来ると、ただれたような目縁まぶちを赤くして、茶のの方へ入って来た。そして母親と一緒に茶を飲んだり、煮物をつまんだりしていた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ところが彼是かれこれひる時分、ふと顔をもたげたのを見ると、腫物のあつた下唇だけ、丁度赤いお薩のやうにれ上つてゐるではございませんか? しかも熱の高いことは妙に輝いた眼の色だけでも
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
細クテスッキリシテイルノダケレドモ、膝ノ下カラくるぶしニ至ル線ガ外側ヘ曲ッテイテ、靴ヲ穿イタ足首トすねトノ接合点ガ妙ニレボッタクふくランデイル。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
平次の馴れた眼で見ると、死に顏に苦惱の痕があり、——顏も少しはれてゐると——それはお角が平靜な心持にかへつた時、平次の引出した言葉でした。
身体がずんぐりしていて、頭が大きく、まっ白なほどの金褐色きんかっしょくをした頭髪と眉毛まゆげ、ごくうすい青色の眼、広い蒼白あおじろほお、太いくちびる、多少れた顔、赤い小さな手をしていた
その家では、みんながぞろぞろ起きて、れぼッたいような顔をして茶のへ集まった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
くび細くして腹大きにれ、色黒うして足手細し。人にして人に非ず。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)