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ゆいわた
ふりがな文庫
“
結綿
(
ゆいわた
)” の例文
父親の声に、丁寧に頭を下げたのは、
結綿
(
ゆいわた
)
の髪に、桃色の
手絡
(
てがら
)
をかけた、姉に似たキリョウよし、しかもなかなかのしっかり者らしかった。
乳を刺す:黒門町伝七捕物帳
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
髪を
結綿
(
ゆいわた
)
というものにして、
紅
(
あか
)
い
鹿
(
か
)
の
子
(
こ
)
の帯なぞをしめた若いさかりの娘の洗練された風俗も、こうした都会でなければ見られないものだ。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「へッ、へッ、どうも今日はまんがよかったよ、
紅
(
あか
)
い
結綿
(
ゆいわた
)
で足を縛った
烏
(
からす
)
なんてものは、滅多に見られる
代物
(
しろもの
)
じゃねえ」
銭形平次捕物控:005 幽霊にされた女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
花簪や花櫛の
摘
(
つ
)
み細工、と云っても、現代人には通じ難いが、下町娘の
結綿
(
ゆいわた
)
や
桃割
(
ももわれ
)
などの髪によく挿したそれの造花仕事を、一家中でやっていた。
忘れ残りの記:――四半自叙伝――
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
大きなる
潰島田
(
つぶししまだ
)
に紫色の
結綿
(
ゆいわた
)
かけ、まだ
肩揚
(
かたあげ
)
つけし
浴衣
(
ゆかた
)
の
撫肩
(
なぜかた
)
ほつそりとして小づくりなれば十四、五にも見えたり。
葡萄棚
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
▼ もっと見る
水のたれる様な
結綿
(
ゆいわた
)
の美少女が、何とも云えぬ
嬌羞
(
きょうしゅう
)
を含んで、その老人の洋服の
膝
(
ひざ
)
にしなだれかかっている、
謂
(
い
)
わば芝居の濡れ場に類する画面であった。
押絵と旅する男
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
どうしたんだろうと変に思ったけれど、言われるままに私が
鏡台
(
きょうだい
)
の前に座ると、髪結さんは、紅いてがらをかけた
結綿
(
ゆいわた
)
を崩して
高島田
(
たかしまだ
)
に結い上げたのです。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
ト長火鉢のさしの向いに、
結綿
(
ゆいわた
)
と
円髷
(
まげ
)
が、ぽっと映って、火箸が、よろよろとして、鉄瓶がぽっかり大きい。
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
あの虹の中の「葉ちゃん」はハッキリは見えなかったけれど、どうやら
結綿
(
ゆいわた
)
を結っていたようだ——。
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
結綿
(
ゆいわた
)
に結った
振袖
(
ふりそで
)
の娘の羽子板を持った立ち姿を製作すべく熱中していたが、妙子が夙川へ出向かない時は蘆屋の家へ押しかけて来て指導を受けたりしていたので
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
年は十九か、
二十
(
はたち
)
にはまだなるまいと思われるが、それにしても思いきってはでな下町作りで、頭は
結綿
(
ゆいわた
)
にモール細工の
前揷
(
まえざ
)
し、羽織はなしで友禅の腹合せ、着物は滝縞の糸織らしい。
深川女房
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
玉村の——お菓子屋の——お島ちゃんは面長な美女で、好んで黄八丈の着物に黒じゅすと鹿の子の帯をしめ、鹿の子や
金紗
(
きんしゃ
)
を、
結綿
(
ゆいわた
)
島田の上にかけているので、白木屋お駒という
仇名
(
あだな
)
だった。
旧聞日本橋:19 明治座今昔
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
やがて出来上ったお雪ちゃんの
粧
(
よそお
)
いは、
結綿
(
ゆいわた
)
の島田に、紫縮緬の
曙染
(
あけぼのぞめ
)
の大振袖という、目もさめるばかりの豪華版でありました。この姿で
山駕籠
(
やまかご
)
に揺られて行くと、山駕籠が
宝恵駕籠
(
ほえかご
)
に見えます。
大菩薩峠:38 農奴の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
髪も
結綿
(
ゆいわた
)
に取り上げられていた。
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
その頃まではこの辺の風俗も若きは
天神髷
(
てんじんまげ
)
三
(
み
)
ツ
輪
(
わ
)
またつぶしに
結綿
(
ゆいわた
)
なぞかけ
年増
(
としま
)
はおさふねお
盥
(
たらい
)
なぞにゆふもあり
葡萄棚
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
「おい露八、向うへ行く十八、九の
結綿
(
ゆいわた
)
に結った娘の
髷
(
まげ
)
に射あてたら、今の十倍——五十両
遣
(
や
)
るが、あたるまいな」
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
私、目についているのは、
結綿
(
ゆいわた
)
に
鹿
(
か
)
の子の
切
(
きれ
)
、襟のかかった
衣
(
きもの
)
に
前垂
(
まえだれ
)
がけで、絵双紙屋の店に居た姿だ。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
十九世紀の古風なプリズム双眼鏡の玉の向う側には、全く私達の思いも及ばぬ別世界があって、そこに
結綿
(
ゆいわた
)
の
色娘
(
いろむすめ
)
と、古風な洋服の白髪男とが、奇怪な生活を営んでいる。
押絵と旅する男
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
背中の見えるまでグッと
抜衣紋
(
ぬきえもん
)
にして、真白に塗った
頸
(
くび
)
にマガレットに結って、
薔薇
(
ばら
)
の
簪
(
かんざし
)
を挿したり、
結綿
(
ゆいわた
)
島田に結って、赤と水浅黄の鹿の子をねじりがけにしたりして、お酒をのんでいた。
旧聞日本橋:23 鉄くそぶとり(続旧聞日本橋・その二)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
舞台で見る信濃屋お半みたいな、
結綿
(
ゆいわた
)
に
鹿
(
か
)
の子帯の娘が、よく海軍士官やお客と暖簾の蔭でふざけていた。
忘れ残りの記:――四半自叙伝――
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
お三輪は気軽に
衝
(
つ
)
と立って、襟脚を白々と、
結綿
(
ゆいわた
)
の赤い
手絡
(
てがら
)
を障子の
桟
(
さん
)
へ浮出したように窓を
覗
(
のぞ
)
いた。
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
この間に時勢の変ったことは、半玉のような此娘の着物の肩揚がとれ、桃割が
結綿
(
ゆいわた
)
をかけた島田になった其変りかたとは、同じ見方を以て見るべきものではあるまい。
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
あ、あ、あ、あの池の向うの、
大
(
おおき
)
な松の幹を、
結綿
(
ゆいわた
)
の娘と、
折重
(
おりかさな
)
って、
絣
(
かすり
)
の
単衣
(
ひとえ
)
の少年が這っている。
河伯令嬢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
僧形
(
そうぎょう
)
の雲水、
結綿
(
ゆいわた
)
の娘、
﨟
(
ろう
)
たけたる貴女、魔に似たる兇漢、遊女、
博徒
(
ばくと
)
、不具者、覆面の武士、腕のない浪人、
刺青
(
ほりもの
)
のある百姓、虚無僧、
乞食
(
ものごい
)
、
鮓箱
(
すしばこ
)
をかついだ男、等、等
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
名代福山
(
なだいふくやま
)
の
蕎麦
(
そば
)
(中巻第一図)さては「
菊蝶
(
きくちょう
)
の紋所花の露にふけり
結綿
(
ゆいわた
)
のやはらかみ
鬢付
(
びんつけ
)
にたよる」
瀬川
(
せがわ
)
の
白粉店
(
おしろいみせ
)
(中巻第八図)また「
大港
(
おおみなと
)
の
渦巻
(
うずまき
)
さざれ石の
巌
(
いわお
)
に遊ぶ
亀蔵
(
かめぞう
)
せんべい」
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
用意が出来て、一旦ずり下りて、それから誘って、こう、
斜
(
はす
)
の
大
(
おおき
)
な幹ですから、私が先へ、順に上へ
這
(
は
)
ったのですが、
結綿
(
ゆいわた
)
の島田へ、べったりと男の足を継いだようで変です。
河伯令嬢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
髪は、たしか、
結綿
(
ゆいわた
)
と覚えている。
掛
(
か
)
け
布
(
ぎれ
)
の
緋
(
ひ
)
の
絞
(
しぼ
)
り鹿の子は、少し寝くずれた首すじに、濃むらさきの襟が余りにも似合っていたし、
早熟
(
ませ
)
な十九の男には、眼に痛いほど、
蠱惑
(
こわく
)
だった。
雲霧閻魔帳
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その
長
(
なが
)
六畳の、成りたけ暗そうな壁の処へ、
紅入友染
(
べにいりゆうぜん
)
の薄いお太鼓を
押着
(
おッつ
)
けて、小さくなったが、顔の
明
(
あかる
)
い、眉の
判然
(
はっきり
)
した、ふっくり
結綿
(
ゆいわた
)
に
緋
(
ひ
)
の
角絞
(
つのしぼ
)
りで、柄も中形も大きいが
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
姉の手の甘露が沖を曇らして注いだのだった。そのまま海の底へお引取りになって、現に、姉上の宮殿に、今も十七で、
紅
(
くれない
)
の珊瑚の中に、
結綿
(
ゆいわた
)
の花を咲かせているのではないか。
海神別荘
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
吹きつけて
揉
(
も
)
む風で、
颯
(
さっ
)
と
紅
(
あか
)
い
褄
(
つま
)
が
搦
(
から
)
むように、私に
縋
(
すが
)
ったのが、
結綿
(
ゆいわた
)
の、その娘です。
歌行灯
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
沢山ある髪を
結綿
(
ゆいわた
)
に結っていた、
角絞
(
つのしぼ
)
りの
鹿
(
か
)
の子の
切
(
きれ
)
、
浅葱
(
あさぎ
)
と赤と二筋を花がけにしてこれが昼過ぎに出来たので、
衣服
(
きもの
)
は薄お納戸の
棒縞
(
ぼうじま
)
糸織の
袷
(
あわせ
)
、薄紫の
裾
(
すそ
)
廻し、
唐繻子
(
とうじゅす
)
の襟を
掛
(
かけ
)
て
葛飾砂子
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
娘が夕化粧の
結綿
(
ゆいわた
)
で駆出して、是非、と云って腰を掛さして、そこは商売物です。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と
二竈
(
ふたつべッつい
)
の
大鍋
(
おおなべ
)
の下を
焚
(
たき
)
つけていた、
姉
(
あね
)
さんかぶりの
結綿
(
ゆいわた
)
の花嫁が返事をすると
卵塔場の天女
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
とか云って
遊女
(
おんな
)
が、その帯で
引張
(
ひっぱ
)
るか、
階子段
(
はしごだん
)
の下り口で、
遁
(
に
)
げる、引く、くるくる廻って、ぐいと胸で抱合った
機掛
(
きっかけ
)
に、
頬辺
(
ほっぺた
)
を
押着
(
おッつ
)
けて、大きな
結綿
(
ゆいわた
)
の紫が垂れ
掛
(
かか
)
っているじゃないか。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
両側をきれいな細流が走って、背戸、
籬
(
まがき
)
の
日向
(
ひなた
)
に、若木の藤が、
結綿
(
ゆいわた
)
の
切
(
きれ
)
をうつむけたように優しく咲き、屋根に蔭つくる樹の下に、山吹が浅く水に笑う……家ごとに申合せたようである。
半島一奇抄
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
雲の形が葉を
拡
(
ひろ
)
げて、
淡
(
うす
)
く、すいすいと飛ぶ蛍は、瓜の筋に
銀象嵌
(
ぎんぞうがん
)
をするのです。この瓜に、朝顔の白い花がぱっと咲いた……
結綿
(
ゆいわた
)
を重そうに、娘も膝に
袂
(
たもと
)
を折って、その上へ
一顆
(
ひとつ
)
のせました。
河伯令嬢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「中坂下からいらっしゃいます、紫
鹿子
(
かのこ
)
のふっさりした、
結綿
(
ゆいわた
)
のお娘ご、召した黄八丈なぞ、それがようお似合いなさいます。それで、お
袴
(
はかま
)
で、すぐお茶の水の学生さんなんでございますって。」
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と
結綿
(
ゆいわた
)
のに片端
舁
(
かつ
)
がせて、皿小鉢、大皿まで、お悦が食卓を
舁出
(
かつぎだ
)
した。
卵塔場の天女
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その都度秘蔵娘のお桂さんの
結綿
(
ゆいわた
)
島田に、
緋鹿子
(
ひがのこ
)
、
匹田
(
ひった
)
、
絞
(
しぼり
)
の
切
(
きれ
)
、色の白い
細面
(
ほそおもて
)
、目に
張
(
はり
)
のある、眉の優しい、純下町風俗のを、山が育てた白百合の精のように、袖に包んでいたのは言うまでもない。
怨霊借用
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
俯向
(
うつむ
)
けになったのは、形も崩れぬ美しい
結綿
(
ゆいわた
)
の島田
髷
(
まげ
)
。
葛飾砂子
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「
結綿
(
ゆいわた
)
の、
御容子
(
ごようす
)
のいい。」
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
“結綿”の解説
結綿(ゆいわた)は、日本髪の島田髷の一種。江戸時代後期からの髪形で、つぶし島田の髷の部分に髷かけとして緋色の鹿の子絞りの縮緬をかけたもの。名前は真綿を束ねたもの(結綿)に似ることに由来する。主に未婚の若い女性が結う272。別表記:結い綿、結ひ綿、ゆひ綿。
(出典:Wikipedia)
結
常用漢字
小4
部首:⽷
12画
綿
常用漢字
小5
部首:⽷
14画
“結綿”で始まる語句
結綿島田
結綿仮髪