がみ)” の例文
それで、時々とき/″\お手がみやおうたをおおくりになると、それにはいち/\お返事へんじをさしげますので、やう/\おこゝろなぐさめておいでになりました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
けれど、ちょうど、えいちゃんのうえにいさんが、いたずらざかりであって、このはさみで、ボールがみったり、またたけなどをったりしたのです。
古いはさみ (新字新仮名) / 小川未明(著)
だが、加茂かもの堤に出ると、咸陽宮かんようきゅう唐画からえにでもありそうな柳樹やなぎの並木に、清冽せいれつな水がながめられて、ひやりと、顔へ、がみのような風があたる。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
時として何地名産とか、何々堂製などとがみの附いている場合もありますが、個人の名は何処にも記してありません。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
彼女かのぢよ毎晩まいばんぐつしよりと、寢汗ねあせをかいてをさました。寢卷ねまきがみのやうにはだにへばりついてゐた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
たぶんこんな大きな牡丹は、今日こんにち日本のどこを捜しても見つからぬであろう。もし果たしてそうだとすれば、これは日本一の牡丹であるとがみをつけてよかろう。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
数馬はがみでござりまする。しかしあの試合に勝って居りましたら、目録をさずかったはずでございまする。もっともこれは多門にもせよ、同じ羽目はめになって居りました。
三右衛門の罪 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
それでちょっとでも身動きしようとするとこの飴が痛むからだには無限の抵抗となって運動を阻止する。蠅取はえとがみにかかった蠅の気持ちはこんなものかという気がする。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
袖子そでこほうでもよくその光子みつこさんをって、ひまさえあれば一緒いっしょがみたたんだり、お手玉てだまをついたりしてあそんだものだ。そういうとき二人ふたり相手あいては、いつでもあの人形にんぎょうだった。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
かりそめながら戦ったわがを十分に洗って、ふところがみ三、四枚でそれをぬぐい、そのまま海へ捨てますと、白い紙玉かみだまたましいででもあるようにふわふわと夕闇の中を流れ去りまして
幻談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ふと中六なかろくとほりの南外堂なんぐわいだう菓子屋くわしやみせの、このところ砂糖氣さたうけもしめり鹽氣しほけもない、からりとして、たゞ箱道具はこだうぐみだれた天井てんじやうに、つゝみがみいと手繰たぐつて、くる/\と𢌞まはりさうに
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……雛形は出来たがこれは骨ばかり、ちょっと見ると何んだかさっぱり分らない。変なものが出来ましたが、張り子がみで上から張って見ますと、案外、ありありと大仏さまの姿が現われて来ました。
ハツとおもふはればかり、わざとつくるかまこと見忘みわすれてからずがほかれて、ろすむねにむら/\とかんじるはさても人情にんじやうこそうすきものなれかみといはゞよしがみえすいたやうななかなり
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「なぜこんなに毒々しい顔だろう」と少々不審のていで鏡を眼を去る三寸ばかりの所へ引き寄せる。右の人指しゆびで小鼻をでて、撫でた指の頭を机の上にあった吸取すいとがみの上へ、うんと押しつける。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「では今のうちに一つ、がみでもするか。」
姉弟と新聞配達 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
ふたりの振分ふりわけまで自分のかたに持ってやって、もくもくとあるき、もくもくとあたりの山をながめ、時には立ちどまって、地理山川さんせんをふところがみにうつしている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
えいちゃんの、いちばんうえのおねえさんがちいさいときに、そのはさみでがみったり、また、お人形にんぎょう着物きものつくるために、あかきれむらさききれなどをるときに使つかいなされたのですから
古いはさみ (新字新仮名) / 小川未明(著)
「おとっさん、この請願書にはだいぶがみがしてありますよ。」
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
あらず! そこへったのは数枚のふところがみで、みなの視線しせんが、それにみだされて散らかったせつな、じん中宮ちゅうぐうにいた星川余一ほしかわよいちが、風でりついた一枚の白紙はくしを片手で取りのけながら
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
げたの鼻緒はなおてたり、つめをったりするときだけにしか使つかわれなかったけれど、としとったはさみは、わかいころ、おじょうさんが人形にんぎょう着物きものをつくるときに、うつくしい千代紙ちよがみや、がみったり、また
古いはさみ (新字新仮名) / 小川未明(著)