くら)” の例文
かゞみにらくらをしてあごをなでる唐琴屋からことやよ、惣て世間一切の善男子、若し遊んで暮すが御執心ならば、直ちにお宗旨を変へて文学者となれ。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
見ると、べつな一列が横から出て来て、道誉の列の先頭と交叉こうさしかけ、どっちも道をゆずろうとせず、威嚇いかくのしくらべになったものらしい。
「堀さんは問題外よ。堀さんはどうでもいいとして、正直のいっくらよ。なんぼ秀子さんだって、気の多い人が好きな訳はないでしょう」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
賀茂かもくらべ馬で勝負の木、またはしるしの木といったかえでの木も公けの文書には標と書いてある。『延喜式』巻四十八、五月六日競馬の条に
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「経づくえ」は小説としては「にごり江」や「たけくらべ」にくらべようもない、その他の諸作よりも決してすぐれてはいない。
樋口一葉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
わななく手頭てさきを引手へ懸けて、胸と共に障子を躍らしながら開けてみれば、お勢は机の前に端坐かしこまッて、一心に壁とにらくら
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「こういう人間が出るのだから、探偵もウカウカしてはいられないね。両方でまるで、駆けっくらをしてるようなもんだ」
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
裔一と漢文の作りくらをする。それがこうじて、是非本当の漢文の先生に就いてって見たいということになる。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
さるほどにある夜の事、今までは見なれぬ一人の男のつとこの角力場に来りて我も力くらべんといふ。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
彼奴きゃつをかばうほどに、お前等はめしい果てているのだ。だが俺は、どんなことがあろうと、きっと彼奴をやっつけて見せる。今日が駄目なら明日こそ力くらべをしてやろう。
木曾の松本平の倉科くらしな様ちゅう長者が、都へ宝くらべにとて、あまたの財宝を馬に積んで木曾街道を上り、妻籠つまごの宿に泊った晩、三人の強盗、途中でその宝を奪おうと企て
「野暮は垣根の外がまへ、三千楼の色くらべ、意気地いきじくらべや張競べ」というように、「いき」は媚態でありながらなお異性に対して一種の反抗を示す強味をもった意識である。
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
羽子はねが有れば羽子突き、駈けツくらや、飛びツ競のやうな單純な事をしても、心が其の事イツパイ、其の事が心イツパイで、そして嬉々洋々として、遊技もすれば、學問もしたのが
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
バアンス氏は胸をわく/\させながら、この自動車のけつくら見惚みとれてゐた。
ムーサを侮りこれと歌をくらべんことを求む、カルリオペ即ちムーサの代表者となりこれに應じて勝ち、彼等のなほ罵るを惡み變じて鵲となす(オウィディウスの『メタモルフォセス』五・三〇二以下)
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
私も黙りくらをするような気になって、いつまでも黙っていた。
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
わたしはあなたとどちらが一ぞくが多いかくらべて見ましよう。
ちょいと句切ってめッくら、双方しばらく無言なり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
星が飛びっくらをしている。闕けた月が明るく
「まるでへたくらべだねこれは」
足軽奉公 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
くらべ馬一騎遊びてはじまらず
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
する身の上なればありとあらゆる品物しなものは大小までもしちに入たるは道理もつともなり其日々々にさへ差支さしつかへる有樣ゆゑ如何に大切の品なり共いま勿々なか/\受出うけだす事も成まじ質屋しちやよりは流れの催促さいそくさぞかし難澁なんじふの事ならんと己れが身分にもくらべて考へしが長八はこゝぞと思ひて廿五兩の金子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
機嫌きげんのいい時に、彼を向うへ廻して軽口かるくちくらをやるくらいは、今の彼女にとって何の努力もらない第二の天性のようなものであった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
なんの、都の白拍子にも、江口えぐち神崎かんざき遊君きみたちにも、くらぶべきは無いといわるる御内方おんうちかたを、ちょっと、招かれれば、みな、気がすむというものだ。
と、それは、思いやりのある暗い眼つきをしたが——ああ、やっぱり、くらべものにはならないのだ。好い気になって、のんきな気持ちで聴いていたが——
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
或る日城外の調練場で武芸を試みようと云ふことになつて、備前組と備中組とが分かれて技をくらべた。しかるに撃剣の上手は備中組に多かつたので、備前組がしきりまけを取つた。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
お互に憎みっくらをして
生田いくたの馬場のくらうまも終ったと見えて、群集の藺笠いがさ市女笠いちめがさなどが、流れにまかす花かのように、暮れかかる夕霞ゆうがすみの道を、城下の方へなだれて帰った。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だから、これらはまるで野蛮人の芸術である。子供がまま事に天下をくらをしているところを書いた脚本である。
現今いまの金に算して幾両の金数きんすは安く見えはするが、百文あれば蕎麦そばが食えて洗湯にはいれて吉原なかへゆけたという。くらべものでないほど今日より金の高かった時代である。
するとむこうに見える柳の下で、真裸まっぱだかな男が三人代る代るおおき沢庵石たくあんいしの持ち上げくらをしていた。やっと云うのは両手へ力を入れて差し上げる時の声なんだよ。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「婆よ、あの神馬しんめ小屋にいる馬は、よい馬ぞよ。加茂のくらうまに出したら、あれこそ第一でがなあろうに」
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたしが子供のころ、イツチヤイツチヤ、イツチヤナ、とか唱へながら角力をした、女力者をんなちからもちの見世ものがあつたが、どうして一三八〇年位も前の、この二女力士のすさまじさにくらべやうもない。
春宵戯語 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
「では、こうしよう。わしも書く。そなたも書く。恥のかきくらべ。取り換えッことしようではないか」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
呼ばれた本人は、知らぬに、来る人をけて早足に行く。抜きくらをして飛んで来た二りょう人力じんりきさえぎられて、間はますます遠くなる。宗近むねちか君は胸を出してけ出した。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
墨のカケラをおいて、交りばんこに、墨で墨を起しくらするのである。これは見つかると叱られた。
そうしてしばらくの間じっと彼とにらめっくらをしていた。すると小林の方からまた口をき出した。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
くらべならまだしものこと——真剣しんけん白刃交しらはまぜをするには、悲しいかな、まだそれだけの骨組もできていず、剣をとってのわざもなし、第一、腰に差してる刀というのが
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あばたを研究しているのか、鏡とにらくらをしているのかその辺は少々不明である。気の多い主人の事だから見ているうちにいろいろになると見える。それどころではない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あたりにくらぶべき絢爛けんらんがないだけに、その妖姿はよけいにみだらな美を独り誇ってみえる。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わしは僧侶そうりょだから、死んでも、僧侶のお経は欲しゅうないなあ。法衣ころものすそから、を出している大僧正だの、大法師、小法師どものくらべなど、日ごろに描いておるでの。
「君イ。勉強はお互いにしようよ。ひとつ年頭の約に、群書類従の第一巻から順に、どこまでつづくか、君と読みくらしようじゃないか。そして、時々会って、飲みながら論じるのさ」
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「掘りくらしようか」
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
くらうま