“生命:いのち” の例文
“生命:いのち”を含む作品の著者(上位)作品数
泉鏡花72
吉川英治62
夢野久作48
海野十三27
中里介山26
“生命:いのち”を含む作品のジャンル比率
文学 > 日本文学 > 小説 物語12.5%
文学 > 日本文学 > 戯曲11.8%
文学 > 日本文学 > 小説 物語(児童)5.0%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
半から腕の切り放されてある裸の女は云ひ樣もない清い面貌おもわをして今や白熱の樣な生命いのちを與へられようとして居る。
巴里の旅窓より (旧字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
君も知ってる、生命いのちは、あの人も助かったんだが、そののち影を隠してしまって、いまだにようとして消息がない。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
折よく拙者来合わせて、貴殿をお呼びしたればこそ、このように生命いのちがあるものの、迂濶うかつにさわりでもなされたなら
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
仮令たとえ母の生命いのちを奪ってまでも生きようとするようなその小さなものを実際人の力でどうすることも出来なかった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
又、それ程左様にこの崑崙茶が、古今無双の、生命いのちがけの魅力を持っているらしい事は、モウ大抵おわかりになったでしょう。
狂人は笑う (新字新仮名) / 夢野久作(著)
その額と頬は、僅かの間に生命いのちを削り取られたかのように蒼白く骨張って、力ない皺の波が、彫刻のようにコビリ付いていた。
白菊 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
あはれげな歌を歌ひ、鈴振鳴らし、長途の艱難を修行の生命いのちにして、日に焼けて罪滅つみほろぼし顔な巡礼の親子もあつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
生命いのちものは、これをうしない、がために生命いのちうしなものは、これをべし
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
彼女かのぢよは、生命いのちの、えるまへあかるさで、めづらしくK夫人ふじんはなしかけた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
生命いのちなき砂の悲しさよさらさらと握れば指の間より落つ」「高きより飛び下りる如き心もてこの一生を終るすべなきか」と。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
不思議に、一人だけ生命いのちを助かった女が、震災の、あの劫火ごうかに追われ追われ、縁あって、玄庵というのに助けられた。
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と云う、あの、容子ようすばかりも、見て生命いのちが続けたさに、実際、成田へも中山へも、池上、堀の内は申すに及ばず。
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼等両岸の村々の者が、その収穫のために水を得ようとするのは、その生活のために生命いのちを守ろうとするのと同じことだ。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
と双方とも、まず、そこで食い止められたことによって、生命いのちに別条のないことを認識しつつ、ほっと安心の息をつくと共に、
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「ちょいとだよ。何でもないんだよ、何をそんなに。たかがりゅうまちだもの、生命いのちを取られるほどのことは無いから。」
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
滝太はその可愛い、品のある容子ようすに似ず、また極めて殺伐さつばつで、ものの生命いのちを取ることを事ともしない。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
されど我もし眞理にむかひて卑怯の友たらんには、今を昔と呼ぶ人々の間に生命いのちを失ふの恐れあり。 一一八―一二〇
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
是時ベアトリーチェ微笑ほゝゑみて曰ふ。われらの王宮の惠みのゆたかなるをしるしゝなだゝる生命いのちよ 二八―三〇
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
それはみずおぼれた五さいくらいおとこ生命いのちたすけたおはなしでございます。
かくの如き榮位をうるも慾心なほ飽かずまた飽かすべき地位なきを見て我は永遠の生命いのちまことの幸を愛するにいたれり
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
「おおこの光に比べては、名誉も身分も、財産も生命いのちさえも劣って見える。……あれだ! たしかに! 探していたあれだ!」
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「はい、一つだけございました。……大金剛石の光を見た時、名誉も身分も財産も、生命いのちもいらないと思いましたことで」
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
まずお互い様に生命いのちに別条なく不幸中の幸い……しかし、我々は逃げくなって実にひどい目にいやした。
飛上とびあがつて、紫玉をおさへて、生命いのち取留とりとめたのも此の下男で、同時に狩衣かりぎぬ
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
落ちては生命いのちがないように、必死になって、足をからんだり、しびれる手を持ちかえたり、自分の体をもてあましている。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
じょうの先が、赤いあとになっているでしょう。もう少し入ったら、恐らく拙者の生命いのちはなかったに違いない」
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その理由が、うすうす彼自身に解けて来たことは、実は彼自身で自分の生命いのちを、危険な方向へさらしてゆく事だった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まあ、お前さんは泣き出すし、爺さまもお念仏をお唱えだって。内の人はその恐しい浪の中で、生命いのちがけで飛込んでさ。
海異記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ですからね、照吉さんのは、気病きやみだって。それから大事の人の生命いのちに代って身代みがわりに死ぬんですって。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
▼人に忘られ世に忘られて。狂い藻掻もがいて生命いのちを終る。あわれな精神病者が助かる……ポコチャカポコチャカ……
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
もっともこのおはらいの文句の意味が、そんなに早くからわかってたら、あっしの生命いのちは無かったかも知れません。
人間腸詰 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「……また……生命いのち生命いのちって……そんなに生命いのちの事が気になるのだったら、サッサとお帰んなさいよ」
ココナットの実 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「毒婦だ毒婦だ……貴様は俺の伯父をそそのかして、俺の両親の財産を横領させた上に生命いのちまでも奪ってしまったろう……」
冥土行進曲 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
山ながら、川ながら、御前様おんまえさまが、お座をお移しなさりますれば、幾万、何千の生類の生命いのちを絶たねばなりませぬ。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それ故に、御方様の、たっての御願い、生命いのちにもかかることと思召おぼしめして、どうぞが手に戻るようの御計らいをと
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
はてをめざして飛びゆく生命いのちの短き旅を終へんためわれ世に歸らば、汝の詞報酬むくいをえざることあらじ。 三七―三九
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
「何、荷物の番をしてるんだ? 途方もない。ぐつぐつしてると、荷物より先に手前の生命いのちがないぞ、早く逃げろ、早く逃げろ」
「うん、僕も生命いのちがけで急いでいるんだ。潜水艦としては、すっかり出来上っているんだがね。肝心のあの点がまだ出来ない。」
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
美しいといふ事は、生命いのちがあるといふ事以上に大切だいじなのを思ふと、馬は男と一緒に女にとつては目のかたきである。
お蔭で生命いのちだけは取り止めた。それ以来氏は夏蜜柑の顔を見ると、急に虫がかぶるやうに顔を真青にするやうになつた。
たとい剣において、望むがごとき大豪となったところで、それがどれほど偉大か、どれほどこの地上で持ち得る生命いのちか。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何かにつけ、「……生命いのちなくば」と大切に思い、そのいのちも「……長からねば」と、心がけるようになってきたのは争えない。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「その眼だ。人の生命いのちを狙っているその眼。察するところ、汝は刺客しかくだ。父上のお命をうかがいに来たな」
柳生月影抄 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
弁天島べんてんじまだよ、弁天島の〓な後家神ごけがみに、いたぶられたろう、ぐずぐずしよると生命いのちがないぜ」
牡蠣船 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
それは、その蔭にある、無数の庶民が、きょうを生きるために描き出している膨大ぼうだい生命いのちの絵図とも見えるのである。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「――が、一歩つまずけば、中国攻略の大事は、織田家の生命いのちとりになるというところまで、ふかくお考えにございましょうか」
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
捨ててしまっても勿体もったいない、取ろうかとすれば水中のぬし生命いのちがけで執念深く握っているのでした。
幻談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
何となくその根のつくと、つかないとが、これから先の二人の生命いのちに関係でもあるかのように思われて成らなかった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そうして今更に青眼先生の介抱の上手なのに感心をしまして、紅矢のみならず私共の生命いのちの親と云って深く深く御礼を申しました。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
さりとてこの大事だいじ生命いのちつなを、むさ/″\海中かいちう投棄なげすてるにはしのびず
「こんな別嬪べっぴんになるんだと知っていたら、あんな薄情な女に生命いのちを打ち込んでれるんじゃなかった」
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
時分じぶんしなうちではさういふ食料しよくれう生命いのちつないでたのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
生命いのちが惜しくて名誉が欲しくて、かねや職業が、げつくほど欲しい浪人が滔々として天下に満ち満ちている状態である。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
農は国の本だ、宝は「田から」である、土から出づる物のほかに、人間の生命いのちをつなぐべきものはない、と呼号する者もあります。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
つまり、人間の生命いのちのぬけがらを納めた墓地という安楽所の一角へ、思わずお銀様は足を踏み入れてしまったのです。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
この黒い焼餅こそは、先刻、このマドロスが生命いのちがけで渡頭の船頭小屋へ闖入ちんにゅうして、そこから掠奪して来たものです。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それは、棄児すてごであった自分の一身を拾い取って、衣食を与えた生命いのちの恩人というだけの観念ではないのです。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
生命いのちが大切という事を弁別わきまえておらん人ばかりだから、そこで木製の蛇の運動を起すのを見てきたまえと云うんだ。
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
戀は我等を一の死にみちびきぬ、我等の生命いのちを斷てる者をばカイーナ待つなり、これらの語を彼等われらに送りき 一〇六―一〇八
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
わしおどろいた、此方こツち生命いのち別条べつでうはないが、先方様さきさま形相ぎやうさう
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
草鞋わらぢ穿いてまたつちをついて、次男坊じなんばう生命いのちたすかりまするやうに、ねえ/\
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
鱶との距離、あと三メートル、あと、二メートル、あと一メートル! 今太郎君の生命いのちは風前の燈火ともしびです!
動く海底 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
私の友よ、友の霊よ、この歌の一つ一つが、貴女あなたの息から生れたものなのだ、それぞれに生命いのちがあるのだ――
九条武子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「でも、駈落ちをしたおかげで、無事に生命いのちを助かつたんです。思つた同士は、道行みちゆきに限るのねえ。」
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
昼の時は、まだ私という少年こどもも、その生命いのち日南ひなたで、暑さに苦しい中に、陽気も元気もありました。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
二の烏 生命いのちがけでものを食つて、一分いちぶんが立つと思ふか、高蒔絵たかまきえのおととを待て。
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
お前さま先刻さきのほど、血相けっそうをかへてはしつた、何か珍しいことでもあらうかと、生命いのちがけでござつたとの。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
その人間になろうと思い立った途端に、俺は、なにものよりも、この身にけている生命いのちというものが大事になってしまった。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
武蔵は、兵法者の生命いのちというものが、あしたに生れてゆうべには分らないものであるという覚悟だけは、常に持っていた。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その一滴一滴が、お通の生命いのちの分解されたものかと思うと、彼はふらふらとめまいを感じ、見るに、顔が青ざめてきた。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いくら祭だって、お酒も程々にしたがいい。――生命いのちが危ないのも知らず、よく外で、刃物につまずかなかったね」
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「もし、生命いのちがあったら、訪ねてゆくよ。それにしても、猿とだけでは心細い。何とか名があったら、訊かしてくれ」
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
槍は、深股ふかももの辺を、突きいていた。ひどく出血はしたが、生命いのちは取りとめた。痛みなどは、少しも覚えなかった。
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「……おれはこの先困ることがあれば、割長屋の紙屑屋の隣りに住んでもいゝ、殘飯で生命いのちをつないでもいゝ。……」
仮面 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
「あってもなくッても、ゴミみたいな生命いのち。そんなに欲しいかっ。――よウしっ、欲しくばくれてやる。待ッていろ」
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
縛られ乍らも、大筒の蔭になっていた為に、気をうしなっては居りますが、これはかえって生命いのちが無事です。
江戸の火術 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
誰も物を言いません。涼しすぎる夕風が、お政の遺骸の前にともった蝋燭ろうそくを、生命いのちあるもののごとく揺るがします。
云い捨てると、渡辺天蔵のほうも、急に相手が恐くなって来たとみえ、生命いのちびろいでもしたように、足をはやめて立ち去った。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御意ぎょい。よくわかりました。めったに生命いのちは捨てぬよう、ただ懸命をこめて、行って参ります。お使いを果して来まする」
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かへつてひとなづる、これは獵師れふしあはれんで、生命いのちらず、ひえ
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
生命いのちが惜しいと思うならば、一刻も早く帰るがよい、もし生命が惜しくないならば……それにしても帰るがよい」
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
私はこの爆弾ハッパを投げて、生命いのちがけの芸当をやっつける前に、ちょっと演説の真似方を遣らしてもらいます。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
生命いのち知らずの兇状持きょうじょうもちばかりを拾い込んでいる機関部へ来て、これだけの文句を並べ得る水夫は兼の外には居ない。
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そんな訳で、風前の燈火ともしびみたような小僧の生命いのちを乗せたアラスカ丸が、無事に上海シャンハイを出た。
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ちっとは不義理、いえ、父さんやお母さんに、不義理と言うこともありませんけれど、ね、私は生命いのちかけて、きっとですよ。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「なるほど。首をまげなかったら、きみももっと深く顔に傷をこしらえていたかも知れないね。生命いのちびろいをしたのかもしれないぞ」
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
老媼は甚だしき迷信じゃなれば乞食僧の恐喝きょうかつまこととするにぞ、生命いのちに関わる大事と思いて
妖僧記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼女は、まる二た月、彼に会わずにいるうちに、刻々、自分の生命いのちがすり減つて行くような不安にかられはじめた。
光は影を (新字新仮名) / 岸田国士(著)
骨は砕けて、身体からだ血塗ちまみれになつたが、不思議と生命いのちだけは取り留めて、それからはずつと健康たつしやでゐる。
絶対的にタカムラのものさ! 畜生、生命いのち張ってもいいや、彼はふらふらと柵をはなれて馬券売場へとんで行った。
競馬 (新字新仮名) / 犬田卯(著)
もし、そんなことが、真個ほんとうにあるところなら、生命いのちがけだつてねえ、一度来て見ずには居られないとは思ひませんか。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そのほかにいま一つ、一人一人その幼児おさなご生命いのちに、それぞれにあたえられている新しい立場があります。
おさなご (新字新仮名) / 羽仁もと子(著)
もっとも長い乱世を通して、野武士はいつのまにか、怠け者で生命いのち知らずな浮浪人には、唯一の仕事になっていた。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
囁かれている彼女の顔がだんだん熱心に聞いていた。又八はなお口を極めて、世の中の広さや、自分たちの若い生命いのちたたえて、
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
内海は相手の身體には人間の生命いのちの波が極めて稀薄に打つてゐるやうに云つたが、さう云つたのには侮蔑の意味は含んでゐなかつた。
仮面 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
「取るに足らぬ男とは見えたり。この谷間を犯した罪はゆるし難いが、生命いのちだけは助けて、世間へ抛り返してやれ」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「逆臣の娘に、忠興が嫡子を、何で渡されようか。ならぬことだ! ……、そなたは身一つだ。己れの生命いのちをこそ、いとしめ!」
ただし受け入れる事のできない人に与えるくらいなら、私はむしろ私の経験を私の生命いのちと共にほうむった方がいと思います。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「うむ、こら脅迫状や。二十四時間以ないニ、ナんじの生命いのちヲ取ル。ユイ言状を用意シテ置け。蠅男はえおとこ。――へえ、蠅男?」
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
し自分の素性がお志保の耳に入つたら――』其を考へると、つく/″\穢多の生命いのちの味気なさを感ずる。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)