歎息ためいき)” の例文
おほはれ、左右の輪及びながえもまたたゞちに——その早きこと一の歎息ためいきの口を開く間にまされり——これにおほはる 一三九—一四一
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
倉蔵は目礼したまま大急ぎで庭の方へわった。村長は腕を組んで暫時しばらく考えていたが歎息ためいきをして、自分の家の方へ引返ひっかえした。
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
そう云ううちに若林博士は軽い、感傷的な歎息ためいきをしたが、やがてその長大な顔に、深い感銘の色をあらわしつつ、悠々と私の方に近付いて来た。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
紫玉は敗竄はいざんした芸人と、荒涼たる見世ものに対して、深い歎息ためいきを漏らした。且つあわれみ、且つ可忌いまわしがったのである。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ふふーン」兄は大きい歎息ためいきをついて、白木警部のさし出す懐中電灯の下に、その得態えたいの知れない白毛しらげに見入りました。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
... 此様な作に執着しうちやくがあるやうじや、俺もあはれな人間だ………」と思ふ。そして、「あゝ。」と萎頽がツかりしたやうな歎息ためいきする。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
と寂しそうに御笑なすって、湧上がる胸の嫉妬しっとを隠そうとなさいました。御顔こそ御笑なすっても、深い歎息ためいき玻璃盞コップを御持ちなさる手の戦慄ふるえばかりは隠せません。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
しかし成信にはその話しは楽しかった、楽しいといっては違うかもしれない、事実はいたましく哀れなのだ、聞いて思わず歎息ためいきのでるようなことがしばしばであった。
泥棒と若殿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
此雪いくばくのちからをつひやし、いくばくの銭をつひやし、終日しゆうじつほりたるあとへその夜大雪あけて見ればもとのごとし。かゝる時は主人あるじはさら也、下人しもべかしらたれ歎息ためいきをつくのみ也。
この雪いくばくの力をつひやし、いくばくの銭を費し、終日ほりたる跡へその夜大雪降り夜明て見れば元のごとし。かゝる時は主人あるじはさらなり、下人しもべかしらたれ歎息ためいきをつくのみなり。
(新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
こんなふうなつうな左馬頭にも決定的なことは言えないと見えて、深い歎息ためいきをした。
源氏物語:02 帚木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
何かいおうとして言いかねるように、出そうと思う言葉は一々長い歎息ためいきになって、心にたたまってる思いの数々が胸に波を打たせて、僕をジット抱〆だきしめようとして、モウそれもかなわぬほどに弱ったお手は
忘れ形見 (新字新仮名) / 若松賤子(著)
祖父おじいさんは𤢖に殺されたのだ。」と、父は思わず歎息ためいきいた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ゆるやかな歎息ためいきかなぞ聴いてでもいるようだったぜ。
この水の下に民あることを、かれらその歎息ためいきをもて水の面に泡立たしむ、こはいづこにむかふとも汝の目汝に告ぐる如し 一一八—一二〇
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
紫玉は敗竄はいざんした芸人と、荒涼たる見世ものに対して、深い歎息ためいきらした。つあはれみ、且つ可忌いまわしがつたのである。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「この頃はめっきりお弱りになって始終床にばかり就ていらっしゃるが、別に此処ここというて悪るい風にも見えねえだ。然し最早もう長くは有りますめえよ!」と倉蔵は歎息ためいきをした。
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
名譽めいよよりも地位よりも妻よりも娘よりも、また自分の命よりも大事な財産は、何か事業を起す度毎たびごとに幾らかづつ減つた。減る度に大きな歎息ためいきだ。それでも事業熱は冷めなかつた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
「だって、あんまりじゃごわせんか。誰から聞きなすったか知りゃせんが、今更そんなことを持出して私を責めたって……」とお隅はさもさもはかないという目付で、深い歎息ためいきいて
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
歎息ためいきが聞える。
諜報中継局 (新字新仮名) / 海野十三(著)
憂ひのあゝに終らしむる深き歎息ためいきをつきて後彼曰ひけるは。兄弟よ、世はめしひなり、しかして汝まことにかしこより來る 六四—六六
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
むねれたやうにうなづいてつたが、汽車きしやられていさゝかの疲勞つかれまじつて、やまうつくしさにせられて萎々なえ/\つた、歎息ためいきのやうにもきこえた。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
刈取らずに置いた蕎麦の素枯すがれに月の光の沈んだ有様を見ると、楽しい記憶おもいでが母親の胸の中を往ったり来たりせずにはおりません。母親は夢のようにながめて幾度か深い歎息ためいきを吐きました。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「埃の力は偉大ゐだいだ!」と周三は、ツと歎息ためいきして、少時埃に就いて考へた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
母親はその後姿を見送ってそっと歎息ためいきをした。
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
下に一の處あり、苛責のために憂きにあらねどたゞ暗く、そこにきこゆる悲しみの聲は歎息ためいきにして叫喚さけびにあらず 二八—三〇
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
歎息ためいきして、力なげにほとんどよろめいたかと見えて、うしろざまに壁のごとき山腹の土にもたれかかり
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私はあの七年住慣れた小楼に、土の気息いきにまじって通って来るかすかな風の歎息ためいきのようにして、悲しい憤怒いきどおりの言葉を残して来た。そうだ。光と熱と夢の無いねむりの願い、と言った人もある。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
我を責むるおごそかなる正義は、我に歎息ためいきをいよ/\しげく飛ばさしめんとてその手段てだてをわが罪を犯せる處に得たり 七〇—七二
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
勉強べんきやう出來できず、稼業かげふ仕事しごと捗取はかどらず、持餘もてあました身體からだ春寒はるさむ炬燵こたつはふんで、引被ひつかついでぞたりけるが、時々とき/″\掛蒲團かけぶとんえりからかほして、あゝ、うゝ、と歎息ためいきして、ふう
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しかし畜生ながらに賢いもので、その日の失敗しくじり口惜くちおしく思うものと見え、ただ悄々しおしおとして、首を垂れておりました。二重※ふたえまぶちの大な眼は紫色に潤んで来る。かすかもらす声は深い歎息ためいきのようにも聞える。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
我、師よ、これらの墓の中に葬られ、たゞ憂ひの歎息ためいきを洩すのみなるこれらの民は何なりや 一二四—一二六
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
はッと声に出して、思わず歎息ためいきをすると、にじむ涙を、両の腕。……おもてをひしとおおうていた。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
奥様はまだ何か言いたそうにして、それを言得ないで、深い歎息ためいき御吐おつきなさるばかりでした。危い絶壁がけの上に立って、谷底でも御覧なさるような目付をなさりながら、左右を見廻して震えました。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と思入ったらしく歎息ためいきしたので、成程、服装みなりとても秋日和の遊びと見えぬ。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
やがて、旦那様は御盃を取上げて、熟々つくづく眺めながら歎息ためいきいて
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
いといと深き歎息ためいき
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
歎息ためいきも弱々と
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
酒か涙か歎息ためいき
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)