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枝折戸
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しおりど
ふりがな文庫
“
枝折戸
(
しおりど
)” の例文
肩
(
かた
)
を
掴
(
つか
)
んで、ぐいと
引
(
ひ
)
っ
張
(
ぱ
)
った。その
手
(
て
)
で、
顔
(
かお
)
を
逆
(
さか
)
さに
撫
(
な
)
でた八五
郎
(
ろう
)
は、もう一
度
(
ど
)
帯
(
おび
)
を
把
(
と
)
って、
藤吉
(
とうきち
)
を
枝折戸
(
しおりど
)
の
内
(
うち
)
へ
引
(
ひ
)
きずり
込
(
こ
)
んだ。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
「表の戸締りが開いていたのだ。かんぬきがかかっていなかったのだ、そして、そこから、庭へ通ずる
枝折戸
(
しおりど
)
には錠前がないのだ」
疑惑
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
先生がその肩の
聳
(
そび
)
えた、懐手のまま、片手で不精らしくとんとんと
枝折戸
(
しおりど
)
を叩くと、ばたばたと
跫音
(
あしおと
)
聞えて、縁の雨戸が細目に開いた。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
庭の
飛石
(
とびいし
)
に
下駄
(
げた
)
の音がした。平三郎は
何人
(
たれ
)
であろうと思いながら、やはり本を読んでいた。
枝折戸
(
しおりど
)
の
掛金
(
かけがね
)
をはずす音が聞えた。
水面に浮んだ女
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
脚拵
(
あしごしら
)
えも厳重に編笠を深くいただいて
枝折戸
(
しおりど
)
をあけて野路へ出た。才蔵もそこまで送って行きそこでまたもや
会釈
(
えしゃく
)
をする。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
▼ もっと見る
私たちは戯れに一方を
枝折戸
(
しおりど
)
、この方を垣根と呼んで居るが、古書には我邦では殊にこの垣根が高いのである。是と書物の価値とは固より関係が無い。
書物を愛する道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
丁度卯の花が真白に咲いている垣の間に小さい
枝折戸
(
しおりど
)
のあるのを開けて
這入
(
はい
)
ったと、先ずその境地が叙してある。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
そんなことを思いながら僕は玄関から外へ出て、あらためて玄関の傍の
枝折戸
(
しおりど
)
から庭のほうへまわり、六畳間の縁側に腰かけて青扇夫婦を待ったのである。
彼は昔の彼ならず
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
そっと一こと言って、
枝折戸
(
しおりど
)
の外を
窺
(
うかが
)
う。外には草を踏む音もせぬ。おとよはわが胸の
動悸
(
どうき
)
をまで聞きとめた。
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
よく透る男の子の声、顔を挙げると、
枝折戸
(
しおりど
)
を押しあけて、十二、三の小僧が顔を出して居ります。宗之助という十三になったばかりの、非凡の悪戯者です。
銭形平次捕物控:246 万両分限
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
果して、立戻って来て、裏の篠藪からソッと
枝折戸
(
しおりど
)
をあけて、入り込んで来たのは、千隆寺の住職の手を引いて、
跣足
(
はだし
)
で逃げて来たお絹。ホッと息をついて
大菩薩峠:23 他生の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
やがて、大きな松が、ひと本、黒く枝をひろげたのが見えるあたりの、生け垣の、小家の前まで来ると、老人は、
枝折戸
(
しおりど
)
を外からあけてはいる。狭い前庭——
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
台所は一つ小門を潜った右側の中になっていますが、わたくしたちはそっちへは行かないで、左側の方の垣の
枝折戸
(
しおりど
)
まで来て文吉だけ戸を開け庭へ入って行きます。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
玄関のわき
枝折戸
(
しおりど
)
を開けてはいってくると、いきなり庭の端まで行って、下の海を見おろした。
あなたも私も
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
近所ではこの
椿事
(
ちんじ
)
をちっとも知らなかったのであるが、かの道具屋の惣八が早朝にたずねて来て、
枝折戸
(
しおりど
)
のようになっている門を
推
(
お
)
すと、門はいつものように明いたので
半七捕物帳:36 冬の金魚
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
その時健三は日のかぎった夕暮の空の下に、広くもない庭先を
逍遥
(
あちこち
)
していた。彼の歩みが書斎の縁側の前へ来た時、細君は半分朽ち懸けた
枝折戸
(
しおりど
)
の影から急に姿を現わした。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
聞くともなく耳傾けし浪子は、またこの室を
出
(
い
)
でて庭におり立ち、
枝折戸
(
しおりど
)
あけて浜に
出
(
い
)
でぬ。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
次郎は思いきって
枝折戸
(
しおりど
)
のところまで行き、その上から眼だけをのぞかせて、声をかけた。
次郎物語:04 第四部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
するとこの時、そばの一軒の家の
枝折戸
(
しおりど
)
が開いて、ひとりの美しい少女が小走りに出て来た。そして、平馬が鶯をつかんでいるのを見ると、少女は嬉しそうにかけ寄って言った。
平馬と鶯
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
いつ見てもしまっていた
枝折戸
(
しおりど
)
が草ぼうぼうのなかに開かれている 屍臭がする
死の淵より
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
愚にも附かぬことを言いながら、内庭と外庭の間の
枝折戸
(
しおりど
)
の辺まで近づいた。
初恋
(新字新仮名)
/
矢崎嵯峨の舎
(著)
ちょうど
卯
(
う
)
の花の真っ白に咲いている
垣
(
かき
)
の間に、小さい
枝折戸
(
しおりど
)
のあるのをあけてはいって、権右衛門は芝生の上に
突居
(
ついい
)
た。光尚が見て、「手を負ったな、一段骨折りであった」と声をかけた。
阿部一族
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
だが、おえつは
欣
(
よろこ
)
ばなかった。
枝折戸
(
しおりど
)
まで、良人を送り出しながら
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そう云い捨てて飛び石づたいに
枝折戸
(
しおりど
)
から表へ廻ると
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
別に厳重な塀がある訳ではなく、押せば開く
枝折戸
(
しおりど
)
をあけて、不思議なお豊は、雑草の茂るに任せた別荘の庭へと這入って行く。
白髪鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
山番の爺がいいたるごとく駕籠は来て、われよりさきに庵の
枝折戸
(
しおりど
)
にひたと立てられたり。
壮佼
(
わかもの
)
居て一人は棒に
頤
(
おとがい
)
つき、他は下に居て
煙草
(
たばこ
)
のみつ。
清心庵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ありあう庭下駄を突っ掛けると、ポンと
枝折戸
(
しおりど
)
を押し開けた。往来へ出ると一散に、桝形の方へ走って行った。
名人地獄
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ガラッ八が誘うまま、平次も勝手口の方から
枝折戸
(
しおりど
)
を押して、石巻左陣の浪宅の前に立っておりました。
銭形平次捕物控:137 紅い扱帯
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
と言いながら庭の
枝折戸
(
しおりど
)
から小走りに走ってやって来られて、そうしてその眼には、涙が光っていた。
斜陽
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
駕籠
(
かご
)
を
帰
(
かえ
)
したおせんの
姿
(
すがた
)
は、
小溝
(
こどぶ
)
へ
架
(
か
)
けた
土橋
(
どばし
)
を
渡
(
わた
)
って、
逃
(
のが
)
れるように
枝折戸
(
しおりど
)
の
中
(
なか
)
へ
消
(
き
)
えて
行
(
い
)
った。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
裏の行きとまりに低い
珊瑚樹
(
さんごじゅ
)
の
生垣
(
いけがき
)
、中ほどに形ばかりの
枝折戸
(
しおりど
)
、枝折戸の外は三尺ばかりの流れに一枚板の小橋を渡して広い
田圃
(
たんぼ
)
を見晴らすのである。左右の隣家は
椎森
(
しいもり
)
の中に
萱
(
かや
)
屋根
(
やね
)
が見える。
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
山楽は、庭越しの
枝折戸
(
しおりど
)
のほうへ、耳をすまして
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
芸者の姿は
枝折戸
(
しおりど
)
を伸上った。池を
取廻
(
とりま
)
わした廊下には、
欄干越
(
てすりごし
)
に、
燈籠
(
とうろう
)
の数ほど、ずらりと並ぶ、女中の半身。
妖術
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
彼はそのまま立去ることが出来ず、
枝折戸
(
しおりど
)
を開いて庭へ這入って行った。8の字は砂場の真中から、一間程の距離を置いて、点々と西洋館の向側へ続いている。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
八五郎は裏へ回ってささやかな
枝折戸
(
しおりど
)
を押して入ると、西向の狭い縁端で、
懐中
(
ふところ
)
煙草入を取出しました。
銭形平次捕物控:243 猿回し
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
宏大な建物を
囲繞
(
いにょう
)
して、林のようにこんもりと、植え込みが茂っている庭であり、諸所に築山や泉水や、石橋などが出来ており、隔ての生垣には
枝折戸
(
しおりど
)
などがあったが
十二神貝十郎手柄話
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「お師匠さん、その御遠慮には及びませんよ」といいながら、庭先の
枝折戸
(
しおりど
)
を開けて、つかつかとはいって来たのは、大
丸髭
(
まるまげ
)
に
結
(
い
)
った二十七八の水も垂れるような美女であった。
歌麿懺悔:江戸名人伝
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
おとよは今日の
長閑
(
のどか
)
さに
蚕籠
(
こかご
)
を洗うべく、かつて省作を迎えた
枝折戸
(
しおりど
)
の外に出ているのである。抑え難き憂愁を包む身の、洗う蚕籠には念も入らず、幾度も立っては田圃の遠くを眺めるのである。
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
まごまごしていたら、庭の
枝折戸
(
しおりど
)
から
正義と微笑
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
向う側は、
袖垣
(
そでがき
)
、
枝折戸
(
しおりど
)
、夏草の茂きが中に
早咲
(
はやざき
)
の秋の花。いずれも
此方
(
こなた
)
を背戸にして別荘だちが二三軒、
廂
(
ひさし
)
に
海原
(
うなばら
)
の緑をかけて、
簾
(
すだれ
)
に沖の船を縫わせた
拵
(
こしら
)
え。
悪獣篇
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「で、そこにある石燈籠だが、これはこの
室
(
へや
)
と
枝折戸
(
しおりど
)
との、真ん中に置くのが本格なのだ」
名人地獄
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
枝折戸
(
しおりど
)
の
外
(
そと
)
に、
外道
(
げどう
)
の
面
(
つら
)
のような
顔
(
かお
)
をして、ずんぐり
立
(
た
)
って
待
(
ま
)
っていた
藤吉
(
とうきち
)
は、
駕籠
(
かご
)
の
中
(
なか
)
からこぼれ
出
(
で
)
たおせんの
裾
(
すそ
)
の
乱
(
みだ
)
れに、
今
(
いま
)
しもきょろりと、
団栗
(
どんぐり
)
まなこを
見張
(
みは
)
ったところだった。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
一太郎君は表の方からお庭へ入る
枝折戸
(
しおりど
)
のところへ行って、それを開きながら
智恵の一太郎
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
振り返ると、小僧の宗之助、たった十三になったばかりの、色の浅黒い小汚いのが、
枝折戸
(
しおりど
)
のところに顔を出して、円い顎をしゃくり加減に、富山七之助を呼び留めて居るではありませんか。
銭形平次捕物控:246 万両分限
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
枝折戸
(
しおりど
)
の外を、柳の下を、がさがさと
箒
(
ほうき
)
を当てる、
印半纏
(
しるしばんてん
)
の円い
背
(
せなか
)
が、
蹲
(
うずく
)
まって、はじめから見えていた。
妖術
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その時、形ばかりの
枝折戸
(
しおりど
)
が、外から開いてその隙からスルリと庭先へはいって来たのは、昨日から影のようにお霜の家に付きまとっていた
傀儡師
(
かいらいし
)
、体に隙のない男であった。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ここに別に滝の
四阿
(
あずまや
)
と称うるのがあって、八ツ橋を掛け、飛石を置いて、
枝折戸
(
しおりど
)
を
鎖
(
とざ
)
さぬのである。
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
こゝに別に滝の
四阿
(
あずまや
)
と
称
(
とな
)
ふるのがあつて、
八
(
や
)
ツ
橋
(
はし
)
を掛け、
飛石
(
とびいし
)
を置いて、
枝折戸
(
しおりど
)
を
鎖
(
とざ
)
さぬのである。
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
いつも松露の香がたつようで、実際、
初茸
(
はつたけ
)
、しめじ茸は、この落葉に生えるのである。入口に萩の
枝折戸
(
しおりど
)
、屋根なしに
網代
(
あじろ
)
の
扉
(
と
)
がついている。また松の樹を
五
(
いつ
)
株、
六
(
む
)
株。
古狢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
この
枝折戸
(
しおりど
)
の掛金は外ずしてありましょう。表へだと、大廻りですものね。さあ、いらっしゃい。まこと開かなけりゃ四目垣ぐらい、破るか、
乗越
(
のっこ
)
すかしちまいますわ。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
枝
常用漢字
小5
部首:⽊
8画
折
常用漢字
小4
部首:⼿
7画
戸
常用漢字
小2
部首:⼾
4画
“枝折”で始まる語句
枝折
枝折門
枝折形