朱塗しゆぬり)” の例文
ると、親父ちやん湯玉ゆだまはらつて、朱塗しゆぬりつて飛出とびだした、が握太にぎりぶと蒼筋あをすぢして、すね突張つツぱつて、髯旦ひげだんかたへ突立つツたつた。
銭湯 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
古い朱塗しゆぬりの机の上には室生犀星むろふさいせいの詩集が一冊、仮綴かりとじペエジを開いてゐる。「われ筆とることをしとなす」——これはこの詩人の歎きばかりではない。
わが散文詩 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
掛たり引馬ひきうま一疋銀拵ぎんごしらへの茶辨當には高岡玄純付添ふ其餘は合羽籠兩掛等なり繼いて朱塗しゆぬりに十六葉のきくもんを付紫の化粧紐を掛たる先箱二ツ徒士五人打物うちもの
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それからまた調子附てふしづいて、雪中せつちう雨中うちうかましにつて、三十五ねんの十二ぐわつ三十にち棹尾たうび成功せいかうとしては望蜀生ぼうしよくせいが、第貳圖だいにづロのごと口唇具こうしんぐした。朱塗しゆぬりである。
燒け殘りたる築垣ついがきの蔭より、屋方やかたの跡をながむれば、朱塗しゆぬり中門ちゆうもんのみ半殘なかばのこりて、かどもる人もなし。嗚呼あゝ被官ひくわん郎黨らうたう日頃ひごろちように誇り恩をほしいまゝにせる者、そも幾百千人の多きぞや。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
松と杉との茂つた河原の彼方に朱塗しゆぬりの鳥居が見える。下加茂の鳥居である。
十年振:一名京都紀行 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
枕元まくらもと朱塗しゆぬりぼん散藥さんやくふくろ洋杯こつぷつてゐて、その洋杯こつぷみづ半分はんぶんのこつてゐるところあさおなじであつた。あたまとこはうけて、ひだりほゝ芥子からしつた襟元えりもとすこえるところあさおなじであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かの古りし朱塗しゆぬりのうつは
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
その身体からだいろばかりがそれである、小鳥ことりではない、ほんとうママ可愛かあいらしい、うつくしいのがちやうどこんな工合ぐあひ朱塗しゆぬり欄干らんかんのついた二階にかいまどからえたさうで。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
それから一ぱうせうなる横穴よこあなのシキからは、ひと大腿骨だいたいこつ指骨しこつの一小部分せうぶぶんとがで、直刀ちよくたう折片せつべんつば鐵製てつせい寶珠形ほうじゆがたすかし)脛巾金はゞきおよ朱塗しゆぬり土器どき彌生式土器やよひしきどき類似るゐじす)とうでた。
朱塗しゆぬりになし其上に黒漆くろうるしを掛るは是日輪の光りに簇雲の覆し容をあらはしたるにて是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
嗚呼ああ愉楽ゆらく朱塗しゆぬりたる
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
こゝに一夜いちやあけのはる女中頭ぢよちうがしらのおぬひ?さん(ねえさんのいまつまびらかならず、大方おほかたうだらうとおもふ。)朱塗しゆぬり金蒔繪きんまきゑ三組みつぐみさかづきかざりつきの銚子てうしへ、喰摘くひつみぜん八分はちぶさゝげてきたる。
熱海の春 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ちりばめ言語ごんごぜつせし結構けつこうの座敷にてまづ唐紙からかみは金銀のはく張付はりつけにて中央には雲間縁うんげんべりの二でふだいまうけ其上に紺純子こんどんすの布團を二ツかさかたはらに同じ夜具が一ツ唐紗羅紗たうざらさ掻卷かいまきひとツありでふの左右には朱塗しゆぬり燭臺しよくだい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
大野助手おほのぢよしゆ顏色がんしよくは、朱塗しゆぬりつたり祝部色いはひべいろつたりしてる。