はふ)” の例文
百貫位の石をはふります。頭の上から百貫位の石が落て來ると隨分困る(笑聲起る)。四人位掛らなければ動かせない石を投るです。
元時代の蒙古人 (旧字旧仮名) / 桑原隲蔵(著)
このあひだの時に牢屋へでもはふり込んでしまへばいゝものを、町内預けにして無事に歸してよこしたお奉行樣の氣が知れないねえ。
権三と助十 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
「馬鹿にしちやいけねえ、金は小判といふものをうんと持つて居るよ。それをはふるやうな強い相手が出て來ないだけのことさ」
矢張海浜院へ入つて居た患者のことだ。若い人と見えて、海岸へ行つて石をはふつて遊んだ。すると間もなく血を吐いて死んだ。
灯火 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
冗談に紛らせたくらゐでは到底面子メンツ(体面)の保てないのを知ると、いきなり陶は——墨をたつぷり含んでゐる筆を額めがけてはふりつけた。
南京六月祭 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
と言つて、平べつたい鼻にしわを寄せた。そして畳むかはりに、くる/\と丸めて押入の隅へはふりこんでしまつた。
チビの魂 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
常子は呆れたやうに、はふりつけるやうに言つて、そのまゝ静かに歩いた。かれ等の前には肥つた半白の父親と背の低い丸髷の母親とが並んで歩いて行つてゐた。
草みち (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
遊びにふければ是非思はぬいたづらもするもので、私はこの日父のいひつけを忘れてウツカリ桃の実を屋根へはふり挙げ、二階座敷へ近ごろいれた大版のガラス二枚こはし升た。
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
一生の重荷となれば、憎くもなり、はふりだしたくなる方が道理で、これは『細君つま』であるからの退屈ではない。花火的の情熱の對手あひてなら、猶更その負擔と欠伸は早く來る。
こんな二人 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
といふがはやいか、ケンドンにはふした、卷煙草まきたばこは、ツツツと橢圓形だゑんけいなが中空なかぞら流星りうせいごといたが、𤏋ぱつ火花ひばなつて、あをくしてくろみづうへみだれてちた。
三尺角拾遺:(木精) (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
洒落しやれ御主人ごしゆじんで、それから牡丹餅ぼたもち引出ひきだしてしまつて、生きたかへるを一ぴきはふんできました。
日本の小僧 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
我国で古く屍体を始末することはハフル(葬)と云うていたが、このことばには、二つの意味が含まれていた。即ち第一ははふるの意(投げ棄てる事)で第二はほふるの意(截り断つ事)である。
本朝変態葬礼史 (新字新仮名) / 中山太郎(著)
あすこにはふり込んどきや、ねずみになるか、飢ゑ死にするか、どつちみちおれの秘密がもれることはない。おれも、ブレツをお前たちに渡しや、もう仕事もないから、いゝ加減、見切りを
ラマ塔の秘密 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
賽銭箱さいせんばこに十円札ゑんさつはふあはしてをがんでゐたときである。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
そして今しがた皆で食卓につく際にも、信徳は母親のために火絶えを用心して、石炭を沢山はふりこんで置いた、その事を今云つたのである。
朧夜 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
それは、サク/\と土を掘つて、大地へはふりあげる音でした、が、馴れない仕事に疲れたものか、時々は手を休めては、息を吐いて居ります。
もう一里も前に行つて居るといふ有様、若い者などがよく村の中央まんなか邂逅でつくはして、石などをはふりつけてる事が幾度いくたびもある相だすが、中々一人や二人ではかなはない。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
勉強べんきやう出來できず、稼業かげふ仕事しごと捗取はかどらず、持餘もてあました身體からだ春寒はるさむ炬燵こたつはふんで、引被ひつかついでぞたりけるが、時々とき/″\掛蒲團かけぶとんえりからかほして、あゝ、うゝ、と歎息ためいきして、ふう
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
すぐ風呂敷ふろしきの結び目がずつとけてしまつて、うしろへ荷物をはふり出し、すぐ匕首あひくちいて追剥おひはぎたゝかふくらゐでなければ、とて薬屋くすりや出来できませぬ、わたしけば大丈夫でございます
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
大分たつてから一度かをるに勧められて、父や母に内密で、そつともとの古巣へ行つて見た。そして勝手口から台所へあがつて見た。竹の皮や皿小鉢の散乱した食卓がはふり出されてあつた。
のらもの (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
しかして時間的に言えばはふるが先でほふるが後なのである。
本朝変態葬礼史 (新字新仮名) / 中山太郎(著)
何といふ横着わうちやくさ、半之丞があきれて默つて居ると、若い釆女は手文庫の中から二十五兩包を二つ出してポンとはふりました。
はふつたまゝにして置いた万年青おもとの鉢だの、せいの低い痩せこけた芭蕉だの、ボケだの、薔薇だのが見えた。時には明るい日影が射したり、雨がしめやかに降つてゐたりした。
紅葉山人訪問記 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
「今度一つ、はふり込んで行くところを、うまくつかまへようかな。」
姉弟と新聞配達 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
鳥冠とりかぶとの根はかねて庭から掘つて用意して居た筈だ。下女のお大がお勝手をあけると、お前はそれをなべはふり込み、自分が一番先に死ぬ氣で二杯も重ねた。
子供等は後には犬を見ると石をはふつた。
中秋の頃 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
平次はさう言つて、ふところの中の小錢こぜにを鳴らすのです。それをはふらずに濟んだのが、反つて嬉しさうでもあります。
「その刀は、私の物でございます。若い時分に持つて歩いた品ですが、今では入用もないので、納戸の箪笥たんすはふり込んで居りました。まさか、それで伜を——」
銭形平次捕物控:180 罠 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
七坪か八坪の小さい家、コジあけた雨戸は庭にはふり出して、多勢の者が立ち騷いでをります。
人の目の屆かぬ折を覗つてあの松の枝にぢ登り、主人が松の下で、月を眺め乍ら、苦吟をして居る隙を見計らつて、投げわなはふり、主人の首に絡んで松の大枝に吊り上げ
外へはふり出して、開けて置いた木戸から入つて、後を締めて置きさへすれば宜いわけだから
到頭お吉を納戸なんどはふり込んで、利助が鵜の目鷹の目で見張ることになつてしまひました。
「臼を持つて、窓から乘出し加減に、左の方へはふれば、出來ないこともありませんね」
銭形平次捕物控:260 女臼 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
「隱密なら、御用人の大垣さんへ、あんな底を割つた結び文などをはふり込む筈はない」
沖釣に行つて捨てゝ來るもあり、家の中でかまどの下か風呂場の鐵砲てつぱうはふり込むもある
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
人のうらみも隨分買つてゐるわけで、此間からたちの惡い惡戯が引つ切りなしだ、塀や羽目は落書きで一パイだし、石をはふる者、店先へ泥を飛ばす者、出入の鳶頭かしらの半次が見張つた位ぢや
「唯今、お勝手口へこんなものをはふり込んで行つた者が御座います」
「この邊は場末で、ろくな下水もなく井戸に沈める手もあるが、水を呑む者は不氣味だし、流れなどにはふり込むとすぐ見付かる。細くて小さい剃刀なら大地に突つ立てて隱すのが一番手輕ぢやないか」
「あの、今、こんなものを、お勝手へはふり込んだ人がありますが」
「どうした、今頃外へはふり出されて?」
「その矢を窓の中へはふり込んでくれ」