“打出(うちだ)” の例文
けれども、彼女(かれ)も若い娘である。流石(さすが)に胸一杯の嫉妬と怨恨(うらみ)とを明白地(あからさま)には打出(うちだ)し兼ねて、先(ま)ず遠廻しに市郎を責めているのである。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
こそならべて見(み)たしと我(われ)すら思(おも)ふに御自身(ごじしん)は尚(なほ)なるべし及(およ)ぶまじきこと打出(うちだ)して年頃(としごろ)の中(なか)うとくもならば何(なに)とせん夫(それ)こそは悲(かな)しかるべきを
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
次の間(ま)の時計が九時を打出(うちだ)した時突然(とつぜん)格子戸(かうしど)ががらりと明いた。其(そ)の明け様(やう)でお豊(とよ)はすぐに長吉(ちやうきち)の帰つて来た事を知り急に話を途切(とぎら)し其(そ)の方(はう)に振返(ふりかへ)りながら
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
何時(いつ)ぞやわたしが捉(とら)へ損(そん)じた時(とき)にも、やはりこの紺(こん)の水干(すいかん)に、打出(うちだ)しの太刀(たち)を佩(は)いて居(を)りました。唯今(ただいま)はその外(ほか)にも御覽(ごらん)の通(とほ)り、弓矢(ゆみや)の類(るゐ)さへ携(たずさ)へて居(を)ります。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
同教授(どうきようじゆ)の計算(けいさん)によると、火口(かこう)から打出(うちだ)されてから山麓(さんろく)或(あるひ)は海面(かいめん)に到達(とうたつ)して靜止(せいし)するまでの平均(へいきん)の速(はや)さは、毎秒(まいびよう)二十米以上(にじゆうめーとるいじよう)であつて、最大(さいだい)毎秒(まいびよう)百五十米(ひやくごじゆうめーとる)にも及(およ)び
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
氷山(へうざん)碎(くだ)けて玉(たま)と飛散(とびち)る如(ごと)く、すでに度(ど)を失(うしな)つて、四途路筋斗(しどろもどろ)の海賊船(かいぞくせん)に、命中(あた)るも/\、本艦々尾(ほんかんかんび)の八吋(インチ)速射砲(そくしやほう)は、忽(たちま)ち一隻(いつせき)を撃沈(げきちん)し、同時(どうじ)に打出(うちだ)す十二珊(サンチ)砲(ほう)の榴彈(りうだん)は
それからまた、びいどろといふ色硝子で鯛や花を打出(うちだ)してあるおはじきが好きになつたし、南京玉(なんきんだま)が好きになつた。またそれを嘗(な)めて見るのが私にとつて何ともいへない享樂(きようらく)だつたのだ。
檸檬 (旧字旧仮名) / 梶井基次郎(著)
又QX30ハ間諜座内ニ其儘(そのまま)止リテ、打出(うちだ)シト共(とも)ニ群衆ニ紛(まぎ)レテ脱出セヨ。
間諜座事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
亭主(ていしゆ)は法然天窓(はふねんあたま)、木綿(もめん)の筒袖(つゝそで)の中(なか)へ両手(りやうて)の先(さき)を窘(すく)まして、火鉢(ひばち)の前(まへ)でも手(て)を出(だ)さぬ、ぬうとした親仁(おやぢ)、女房(にようばう)の方(はう)は愛嬌(あいけう)のある、一寸(ちよいと)世辞(せじ)の可(い)い婆(ばあ)さん、件(くだん)の人参(にんじん)と干瓢(かんぺう)の話(はなし)を旅僧(たびそう)が打出(うちだ)すと
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
いつぞやわたしが捉(とら)え損じた時にも、やはりこの紺(こん)の水干(すいかん)に、打出(うちだ)しの太刀(たち)を佩(は)いて居りました。ただ今はそのほかにも御覧の通り、弓矢の類さえ携(たずさ)えて居ります。
藪の中 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
本艦(ほんかん)之(これ)に應(おう)じて先(ま)づ手始(てはじめ)には八吋(インチ)速射砲(そくしやほう)つゞいて打出(うちだ)す機關砲(きくわんほう)。月(つき)は慘(さん)たり、月下(げつか)の海上(かいじやう)に砲火(ほうくわ)迸(とばし)り、硝煙(せうゑん)朦朧(もうらう)と立昇(たちのぼ)る光景(くわうけい)は、昔(むかし)がたりのタラント灣(わん)の夜戰(やせん)もかくやと想(おも)はるゝばかり。
大佐(たいさ)一顧(いつこ)軍刀(ぐんたう)の鞘(さや)を拂(はら)つて、屹(きつ)と屹立(つゝた)つ司令塔上(しれいたうじやう)、一令(れい)忽(たちま)ち高(たか)く、本艦々上(ほんかんかんじやう)戰鬪喇叭(せんとうらつぱ)鳴(な)る、士官(しくわん)の肩章(けんしやう)閃(きら)めく、水兵(すいへい)其(その)配置(はいち)に就(つ)く、此時(このとき)、既(すで)に早(はや)し、既(すで)に遲(おそ)し、海賊船(かいぞくせん)から打出(うちだ)す彈丸(だんぐわん)は雨(あめ)か、霰(あられ)か。