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戦
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おのの
ふりがな文庫
“
戦
(
おのの
)” の例文
旧字:
戰
儀右衛門はそこでハッとなり、鋭い苦痛を思って、
慄
(
ふる
)
え
戦
(
おのの
)
いた。彼は夜具に触れる
衣擦
(
きぬず
)
れにも、
獣
(
けだもの
)
めいた熱っぽさを覚えるのだった。
人魚謎お岩殺し
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
その刹那、
顫
(
ふる
)
い
戦
(
おのの
)
く二つの魂と魂は、しっかと相抱いて声高く叫んだ。その二つの声は幽谷に
咽
(
むせ
)
び泣く
木精
(
こだま
)
と木精とのごとく響いた。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
聖書を隅から隅にまですがりついて凡ての誘惑に対する唯一の武器とも鞭撻とも頼んだその頃を思いやると立脚の危さに肉が
戦
(
おのの
)
きます。
『聖書』の権威
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
正吉の手頸を掴んだお美津の手がわなわなと
戦
(
おのの
)
いていた。然しその眸子は、急に大胆に輝き、
朱
(
あか
)
くしめった唇は物言いたげに
痙攣
(
ひきつ
)
った。
お美津簪
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
だが夫人の明徹な脳髄は、一方に於て恐れ
戦
(
おのの
)
き、そしてまた一方に於てその意味なき幻影を意味づけようとして鋭き分析の爪をたてた。
ヒルミ夫人の冷蔵鞄
(新字新仮名)
/
海野十三
、
丘丘十郎
(著)
▼ もっと見る
「アッ」という叫び声、見る見る青ざめる顔、恐怖に
戦
(
おのの
)
く唇、箱の中の一物を見ると、川村は思わずタジタジとあとじさりをした。
白髪鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
いま熱情に燃えさかっている青年が、もし自分の老いさらぼうた後の姿を見せつけられたなら、恐れ
戦
(
おのの
)
いて飛びすさることだろう。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
何が生じて来るであろうか? 魂は姙婦のように、自分のうちに眼を向けて口をつぐみ、胎内の
戦
(
おのの
)
きに気づかわしげに耳傾ける。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
かよわい婦女子でなくとも、俯して五丈に余る水面を見、仰いで頭を圧する十丈に近い絶壁を見る時は、魂消え、心
戦
(
おのの
)
くも
理
(
ことわ
)
りであった。
恩讐の彼方に
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
そして疲れはてては
咽喉
(
のど
)
や胸腹に刃物を当てる
発作的
(
ほっさてき
)
な恐怖に
戦
(
おのの
)
きながら、夜明けごろから気色の悪い次ぎの睡りに落ちこんだ。
贋物
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
伝統や権威やに屈従する心が無意識的にもしくは恐れ
戦
(
おのの
)
きつつ建ててそれに自らを支配させようとするような種類のものでなく
語られざる哲学
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
早瀬より、忍び足する夫人の駒下駄が、かえって
戦
(
おのの
)
きに音高く、
辿々
(
たどたど
)
しく
四辺
(
あたり
)
に響いて、やがて
真暗
(
まっくら
)
な軒下に導かれて、そこで留まった。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
風が来て、葉が
戦
(
おのの
)
くたびに固まった。一団は、
鞠
(
まり
)
のようにあちらへ転じ、一団はこちらへと転って来る。そして彼等は歌った。
森の暗き夜
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
しかもその美的方則の構成には、非常に複雑な微分数的計算を要するので、あらゆる町の神経が、異常に緊張して
戦
(
おのの
)
いていた。
猫町:散文詩風な小説
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
彼等は、いま立去った旅人を人間とは見なかったように、いま捲き起った霧を、単純な天変とは見ることができないで、
戦
(
おのの
)
きはじめました。
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
重たい画帳を載せると同時に両方の膝頭がガクガクと
戦
(
おのの
)
いているのに気が付いた。画帳を開こうとすると指がわなないて自由にならなかった。
けむりを吐かぬ煙突
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
その最も
戦
(
おのの
)
かれている正体不明の魔海の中へ、しかも最難個所の東経百五度以東において捲き込まれてしまったのであった。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
私たちは
戦
(
おのの
)
きを身に覚えました。もはや今の画家には近づくことさえ出来ぬ画境なのを感じます。墳墓の霊の住所なのです。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
相互の約束を取り決めると、小次郎はそこの
木挽小屋
(
こびきごや
)
の戸をたたき、中へはいって行って、
戦
(
おのの
)
いている二人の木挽に命じた。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
葉子は途切れ途切れに言って、激情に体を
戦
(
おのの
)
かせていた。庸三は驚き
傍
(
そば
)
へ寄って、
宥
(
なだ
)
めの言葉をかけたが、
効
(
かい
)
がなかった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
譲治は段々気が落ちついて来ると、余りにも恐しい罪に
戦
(
おのの
)
きました。咄嗟の間に人間を二人も殺し、しかも、一人は命にも代え難い愛妻なのです。
深夜の客
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
気味の悪いお米の笑い声が、すぐその後から追っかけて、こう座敷へ響き渡った時には、豪雄の勾坂甚内さえ何がなしにゾッと
戦
(
おのの
)
かれたのである。
三甚内
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
主馬頭
(
モンテイロ
)
の旧屋敷へ馬の脚が通ってくるなんて、私もこの恐ろしい
偶一致
(
コインシデンス
)
にはひそかに
戦
(
おのの
)
いていたんだが、通うと言えば
踊る地平線:07 血と砂の接吻
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
動揺する瀑の水よりも、其下に湛えた藍色の水に恐る
可
(
べ
)
き秘密の力が籠っている。私達は底光りのする青黒い淵を覗いて今更のように怖れ
戦
(
おのの
)
いた。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
彼は喜びに
戦
(
おのの
)
いた。戦きながらその言葉の威力の前に圧倒された。彼はしまいには砂に伏して、必死に耳を
塞
(
ふさ
)
ごうとした。が、自然は語り続けた。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
板壁は断末魔の胸のように震え
戦
(
おのの
)
いた。その間にも私は、寸刻も早く看守が来て、——なぜ乱暴するか——と
咎
(
とが
)
めるのを待った。が、誰も来なかった。
牢獄の半日
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
破戒の罪に
戦
(
おのの
)
きながらも煩悩の火の燃えさかるまま、終いには毒食わば皿までもと住職の眼を掠めては己が部屋へ引き入れ、
女犯
(
にょぼん
)
地獄の恐しい
快楽
(
けらく
)
に
釘抜藤吉捕物覚書:02 梅雨に咲く花
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
避け難い危急が切迫しているかのように心を
戦
(
おのの
)
かせながら、
珈琲
(
コーヒー
)
を注いでまわる。小さい丸い水溜りが光を反射し、そして、茶碗の中で湯気を立てる。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
幸いにして明るくなかったからよかったものの、もし電燈の下にでも立ったなら、いかに顔が青ざめていたであろう。とにかくも、
戦
(
おのの
)
きを
抑
(
おさ
)
えられぬ。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
わけて明暦の大火は江戸未曽有の大火であったから、市民は由比丸橋の残当の放火であろうと言って恐れ
戦
(
おのの
)
いた。
日本天変地異記
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
さう思つて彼が或る部屋へ這入つて行くと疲れ衰へた胡乱なその姿があまりに甚しく心の
戦
(
おのの
)
きがあまりに外に
露
(
あらは
)
に見えてゐるので、妹などもしまひには
吸血鬼
(新字旧仮名)
/
ジョン・ウィリアム・ポリドリ
(著)
殊勝の
筵
(
えん
)
に
列
(
つらな
)
れる月卿雲客、
貴嬪采女
(
きひんさいじょ
)
、僧徒等をして、身
戦
(
おのの
)
き色失い、
慙汗憤涙
(
ざんかんふんるい
)
、身をおくところ無からしめたのも、うそでは無かったろうと思われる。
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
このあたりは一面の荒涼たる枯葦原。遠くには夕陽に燃えあがるペエ・ドオトの山の斜面、風に
戦
(
おのの
)
くものは枯草と野薔薇の枝、鳴くものは
嘴
(
くちばし
)
の赤い
鴉
(
からす
)
ばかり。
ノンシャラン道中記:02 合乗り乳母車 ――仏蘭西縦断の巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
ああ、一たび怒れば
海神
(
かいじん
)
も
戦
(
おのの
)
く『富士』よ。ただこの一回の砲撃で、敵の四機は影もなし。見えるものはただ白い
波頭
(
なみがしら
)
、聞えるものはただ黒潮の
高鳴
(
たかなり
)
である。
昭和遊撃隊
(新字新仮名)
/
平田晋策
(著)
私は爆弾や
焼夷弾
(
しょういだん
)
に
戦
(
おのの
)
きながら、狂暴な破壊に
劇
(
はげ
)
しく
亢奮
(
こうふん
)
していたが、それにも拘らず、このときほど人間を愛しなつかしんでいた時はないような思いがする。
堕落論
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
昨日は親しき者の健康について
戦
(
おのの
)
き、今日はおのれの健康について気づかっている。明日は金銭上の心配、明後日は
誹謗者
(
ひぼうしゃ
)
の陰口、次の日は友人の不幸が来る。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
避妊に至っては己の島の絶滅を予感してその前に
戦
(
おのの
)
いているものが、そんな事をする訳が無いのである。
環礁:――ミクロネシヤ巡島記抄――
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
そうかと
思
(
おも
)
えば、
次
(
つ
)
ぎの
瞬間
(
しゅんかん
)
には、
私
(
わたくし
)
はこれから
先
(
さ
)
きの
未知
(
みち
)
の
世界
(
せかい
)
の
心細
(
こころぼそ
)
さに
慄
(
ふる
)
い
戦
(
おのの
)
いているのでした。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
見物席は自分の場合のこととしての実感でうけ入れ、批判し、緊張している精神の
戦
(
おのの
)
きが感じられた。
広場
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
そして全世界は
戦
(
おのの
)
き震え、着古した衣をかなぐり棄てて、新しい驚くべき美しさを以て立ち現われる。
紅い花
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
しかし広大無辺の曠野には
闃
(
げき
)
として声なく、岩上の文字は『沈黙』というのであった。彼は
戦
(
おのの
)
き震え、
面
(
おもて
)
をそむけ、
愴惶
(
そうこう
)
として遠く逃げ去って、再び帰って来なかった
沈黙:——神話
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
ジャン・クリストフは、そういう国家的利己主義の前に
戦
(
おのの
)
いた。彼にいわすれば、ドイツとフランスとは、たがいに相補って欧州文明の双翼となるべきものであった。
ジャン・クリストフ:01 序
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
あの夜、火の手はすぐ近くまで襲って来るので、病気の義兄は動かせなかったが、姉たちは
壕
(
ごう
)
の中で
戦
(
おのの
)
きつづけた。それからまた、先日の
颱風
(
たいふう
)
もここでは大変だった。
廃墟から
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
そして、紀久子は泥沼の底のような不気味な沈黙の中に、歯の根も合わないまでに
顫
(
ふる
)
え
戦
(
おのの
)
いていた。
恐怖城
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
すると毛並は荒々しくさか毛立って、強い潮風に
戦
(
おのの
)
いた。私の胸は取り返しのつかない間違いをしてしまった後悔の心で重たく沈んで、そして俄に泪がこみ上げて来た。
シルクハット
(新字新仮名)
/
渡辺温
(著)
さて、このふぐという奴、猛毒魚だというので、人を撃ち、人を恐れ
戦
(
おのの
)
かしめているが、それがためにふぐの存在は、古来広く鳴り響き、人の好奇心も動かされている。
河豚のこと
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
少し
戦
(
おのの
)
く様な語調で「実は貴方が御存じの様に聞きます松谷秀子の件も大場氏から聞きましたが」
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
あとからあとからとこみあげてくる昂奮のために心の平衡をうしなった彼の眼がどうにも収拾のつかないほど湧きかえる空想の焦点を定めかねて
戦
(
おのの
)
くように顫えているのを
菎蒻
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
圓太郎夫婦の、玄正の、期せずして六つの目が、桐庵先生の無精鬚だらけの
塩鰤
(
しおぶり
)
をおもわせる顔の上へと集まった、紅か白粉かと胸
戦
(
おのの
)
かして最後の宣告を待つもののように。
小説 円朝
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
思い出にわなわなと
戦
(
おのの
)
くと、彼は女の髪を撫でてじっとその顔に見入りながら、この不幸な罪の女こそ自分の唯一の隣人、親身の、かけがえのない人間であることを覚った。
決闘
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
戦
常用漢字
小4
部首:⼽
13画
“戦”を含む語句
戦慄
合戦
戦闘
戦争
戦々兢々
大戦
戦場
挑戦
戦袍
戦人
打戦
戦車
戦死
勝戦
戦線
戦争中
一戦
復讐戦
戦争後
戦巧者
...