トップ
>
憂鬱
>
ゆううつ
ふりがな文庫
“
憂鬱
(
ゆううつ
)” の例文
言いようのない
憂鬱
(
ゆううつ
)
が、しばしば絶望のどん底から感じられた。しかも狂犬のように執念深く、自分はこの問題に
囓
(
か
)
じりついていた。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
これでは今日も、
日本空軍
(
にっぽんくうぐん
)
のはげしい爆撃があるだろうと思って
憂鬱
(
ゆううつ
)
になったとたんに、ぷーっという
空襲警報
(
くうしゅうけいほう
)
のサイレンであった。
今昔ばなし抱合兵団:――金博士シリーズ・4――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
尤
(
もつと
)
も、負けても
實
(
じつ
)
はおごつて
頂
(
いたゞ
)
く方が
多
(
おほ
)
かつたがどういふのかこの
師弟
(
してい
)
の
勝負
(
せうふ
)
はとかくだれ
勝
(
か
)
ちで、
仕舞
(
しま
)
ひには
兩
(
れう
)
方
共
(
とも
)
憂鬱
(
ゆううつ
)
になつて
文壇球突物語
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
クリストフは、彼女が控え目な口をきいてるにもかかわらず、彼女の快活さと活発さとの下に隠されてる、底深い
憂鬱
(
ゆううつ
)
を見てとった。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
長い
懊悩
(
おうのう
)
も、
憂鬱
(
ゆううつ
)
も、忍耐も、寂しい寂しい異郷の
独
(
ひと
)
り旅も、すべては皆この一つを感知するために有ったかのように思われて来た。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
▼ もっと見る
急に
憂鬱
(
ゆううつ
)
になった彼の目の前には、
頭髪
(
かみ
)
の毛の
数多
(
たくさん
)
ある頭を心持ち左へかしげる癖のある
壮
(
わか
)
い女の顔がちらとしたように思われた。
水郷異聞
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
ところが、
遽
(
あわただ
)
しい旅の仕度が整うにつれ、かの女は、むす子の落着いた姿と
見較
(
みくら
)
べて
憂鬱
(
ゆううつ
)
になり出した。とうとうかの女はいい出した。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
たとえばこの胸の冬の空にたまたま過ぎてゆくこれらの暖い雲の影は常に
憂鬱
(
ゆううつ
)
な私をしておぼえず寂しくほほえませることがある。
小品四つ
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
月日
(
つきひ
)
がたつにつれて、ガラスのびんはしぜんに
汚
(
よご
)
れ、また、ちりがかかったりしました。
飴
(
あめ
)
チョコは、
憂鬱
(
ゆううつ
)
な
日
(
ひ
)
を
送
(
おく
)
ったのであります。
飴チョコの天使
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
大黒様のついた黄色い
財布
(
さいふ
)
は次第に銭で
膨
(
ふく
)
れて行ったが、彼は次第に先刻からの気分を失いはじめて、だんだん
憂鬱
(
ゆううつ
)
になっていた。
糞尿譚
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
洗練
(
せんれん
)
された近代フランス人の「
憂鬱
(
ゆううつ
)
な朗らかさ」が、大気のように軽く、
虻
(
にじ
)
のように鮮麗に、そして夢のように
果敢
(
はか
)
なく動くのである。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
そして彼は突然
憂鬱
(
ゆううつ
)
に襲われた。あたかもピストルの心を動かそうとしてるかのような非難の様子で、ピストルをじっとながめた。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
ここには妻の一日の
憂鬱
(
ゆううつ
)
がすっかり
立籠
(
たちこも
)
っている。妻もまたこの二三年を病の床で暮し、来る日来る日をさびしく見送っているのだった。
冬日記
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
くちびるの色が著しくあかく見えた事、長い髪を手でなで上げるかたちがこの人の印象をいっそう
憂鬱
(
ゆううつ
)
にした事などが目に浮かんで来る。
備忘録
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
十畳ばかりのその部屋には、彼の
侘
(
わび
)
しい部屋とは似ても似つかぬ、何か
憂鬱
(
ゆううつ
)
な
媚
(
なま
)
めかしさの
雰囲気
(
ふんいき
)
がそこはかとなく
漾
(
ただよ
)
っていた。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
あってよいわけのものでもないとお思いになることで、御自身の運命がお悲しまれになり、
憂鬱
(
ゆううつ
)
にされておいでになったが、夕方にまた
源氏物語:39 夕霧一
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
安二郎を見る眼つきが変った。安二郎の背中で拳骨を振りまわした。
憂鬱
(
ゆううつ
)
にもなった。母は毎晩安二郎の肩をいそいそと
揉
(
も
)
んだ。
雨
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
升屋の老人の推測は、お政の
天性
(
うまれつき
)
憂鬱
(
ゆううつ
)
である上に病身でとかく健康
勝
(
すぐ
)
れず、それが為に気がふれたに違いないということである。
酒中日記
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
花聟は、
憂鬱
(
ゆううつ
)
らしい。初めから気のない縁談だった。叔父が、いい気持で、でッち上げた今夜なのである。目出度いのは、いったい誰だ?
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかしそれを見終わった僕はきっと
憂鬱
(
ゆううつ
)
に襲われます。僕にもし信仰が与えられていなかったら、僕は今どうなっていたかを知りません。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
しかし、浪路の、その
憂鬱
(
ゆううつ
)
の胸に、突然パアッと、赤い火が点ぜられた。老女の一人が、妙に浮き浮きした調子ではいって来て
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
すっかり
人間嫌い
(
ミザンスロピー
)
になっていて、いま熱中したかと思うとたちまち
憂鬱
(
ゆううつ
)
になるといった片意地な気分に陥りがちだ、ということがわかった。
黄金虫
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
憂鬱
(
ゆううつ
)
でなしに力を、精神の
頽廃
(
たいはい
)
でなしに緊張を、たえず摂取していったのは、彼の強烈な生命の力のゆえにほかならなかった。
ジャン・クリストフ:01 序
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
けれども、それに連れて、ヒドイ神経衰弱式の
憂鬱
(
ゆううつ
)
が、眼の前に薄暗く
蔽
(
おお
)
いかぶさって来るのを、ドウする事も出来なかった。
一足お先に
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
そうした性格が内の面にこもっている
憂鬱
(
ゆううつ
)
や、悲しみなぞといった心の動きを、あまり表面へ現さなかったものではないかと思われました。
棚田裁判長の怪死
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
その場かぎりの会話をしたあとの
憂鬱
(
ゆううつ
)
が、心にまといつき、わけもなく飲んだ白葡萄酒の酔が頭に残って、ときどき、ふっと夢心地になる。
あなたも私も
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
それが
元旦
(
がんたん
)
の夕方ちかくなると、ああ、もう日が暮れるのにと、どうしていいかわからない物足りなさが
憂鬱
(
ゆううつ
)
をもってくる。
旧聞日本橋:08 木魚の顔
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
しかしその電燈の光に照らされた夕刊の紙面を見渡しても、やはり私の
憂鬱
(
ゆううつ
)
を慰むべく、世間は余りに平凡な出来事ばかりで持ち切っていた。
蜜柑
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
このアンテナは信頼できる。一国の
憂鬱
(
ゆううつ
)
、危機、すぐにこのアンテナは、ぴりりと感ずる。
理窟
(
りくつ
)
は無いんだ。勘だけなんだ。
パンドラの匣
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
鉄管工場の人たちが観察しているように吉本が
憂鬱
(
ゆううつ
)
になったのは、永峯が彼らを裏切って行方を
晦
(
くら
)
ましたからではなかった。
街頭の偽映鏡
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
ちょいと
拗
(
す
)
ねたり、お小使いがなくてすこしばかり
憂鬱
(
ゆううつ
)
になることはあっても、こんにちかぎり僕は君とわかれる、とか
職業婦人気質
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
頭蓋骨に亀裂がはいって
爾来
(
じらい
)
二ヶ年水薬を飲みつづけたが、当座は廃人になるんじゃないかと悩みつづけて
憂鬱
(
ゆううつ
)
であった。
天才になりそこなった男の話
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
ひとり造化は富める者に
私
(
わたくし
)
せず、我家をめぐる百歩ばかりの庭園は雑草雑木四時
芳芬
(
ほうふん
)
を吐いて不幸なる貧児を
憂鬱
(
ゆううつ
)
より救はんとす。花は何々ぞ。
わが幼時の美感
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
色は
憂鬱
(
ゆううつ
)
な白さで、と云って不健康な感じではなく、
身体
(
からだ
)
は
鯨骨
(
くじらぼね
)
の様にしなやかで弾力に富み、と云ってアラビヤ馬みたいに
勇壮
(
ゆうそう
)
なのではなく
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
苦痛や
憂鬱
(
ゆううつ
)
さえもがこの男の深刻な顔にこっけいな
生真面目
(
きまじめ
)
さを加えて、お気に入りの役者に手をたたく大勢の見物人の笑いをひき起すのです。
絵のない絵本:01 絵のない絵本
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
事実、こうした新しい未知の世界に対する
憂鬱
(
ゆううつ
)
が、彼の心にあったけれど、それでもこの瞬間、彼を悩ましているのは、全然、別なものであった。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
永遠なるものの希求に殆んど無意識に悩んでいる彼の意志は限りない闇と
憂鬱
(
ゆううつ
)
との海を彼の性格の奥底に
湛
(
たた
)
えておる。
語られざる哲学
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
いってみれば、彼が感謝しなければならない人に、軽率にも何かある苦痛を与えるようなものである。それとともに、彼は
憂鬱
(
ゆううつ
)
な気分になってしまった。
城
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
人に語ることもできない
憂鬱
(
ゆううつ
)
を心の底に抱きかかえていることが、ありありとその顔には現れているのであった。
霧の蕃社
(新字新仮名)
/
中村地平
(著)
今まで彼女につきまとつてゐた
憂鬱
(
ゆううつ
)
さが消えて、はじめて丸やかな女の肉声をその
笑
(
わらい
)
に聴くやうに伊曾は思つた。
青いポアン
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
が、この作品の調子には、これまであの方の作品についぞ見たことのないような不思議に
憂鬱
(
ゆううつ
)
なものがあった。
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
その声もまた決して
憂鬱
(
ゆううつ
)
でないのだが、いかんせん毎年その数は乏しくなり、かつその消息があまりにも突如としている故に、
終
(
つい
)
には逢う人の胸を
轟
(
とどろ
)
かせ
野草雑記・野鳥雑記:02 野鳥雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
思うに盲目の少女は幸福な家庭にあってもややもすれば
孤独
(
こどく
)
に
陥
(
おちい
)
り
易
(
やす
)
く
憂鬱
(
ゆううつ
)
になりがちであるから親たちはもちろん
下々
(
しもじも
)
の女中共まで彼女の
取扱
(
とりあつか
)
いに困り
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
彼は
機智
(
きち
)
があるというよりも滑稽に
秀
(
ひ
)
いで、にぎやかで快活というよりはのんびりと上機嫌であり、気むずかしく陰気というよりは物思わしげで
憂鬱
(
ゆううつ
)
である。
ジョン・ブル
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
第一、海東の
大日本人
(
おおやまとびと
)
である。おれには、
憂鬱
(
ゆううつ
)
な家職が、ひしひしと、肩のつまるほどかかって居るのだ。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
みんな貧乏で、お正月は支那そば会をしようと云っていた連中も、私の持って帰った札束を見ると、みんな「
憂鬱
(
ゆううつ
)
じゃのウ」と云ってひっくりかえってしまった。
落合町山川記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
その重油の皮膚へ当る初秋の風の冷たい触感は情なくも
憂鬱
(
ゆううつ
)
だ。その悪性の汗を夕方の一
風呂
(
ふろ
)
によって洗い清める幸福はいい加減な恋愛よりは高雅な価値がある。
大切な雰囲気:03 大切な雰囲気
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
帽子を
目深
(
まぶか
)
に、オーバーコートの鼠色なるを
被
(
き
)
、太き
洋杖
(
ステッキ
)
を持てる老紳士、
憂鬱
(
ゆううつ
)
なる重き態度にて登場。
紅玉
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
歌の中でも、踊を伴わないものは、全部といって良い位、
憂鬱
(
ゆううつ
)
な旋律ばかりであった。その題名にも、すこぶるおかしなものが多い。その一例。シュック島の歌。
環礁:――ミクロネシヤ巡島記抄――
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
「ああありました、
満知
(
まち
)
姫様といいます」どうしたのか左内はこの言葉をいうと、妙に
憂鬱
(
ゆううつ
)
の顔をした。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
“憂鬱(メランコリー)”の解説
メランコリー(en: melancolia, melancholy、de: melancholie、fr: mélancolie、it: malinconia)、憂鬱(ゆううつ)とは、日常的な用法では、はればれしない落ち込んだ気分、抑うつのこと。英語の「メランコリー」はギリシア語の「μελαγχολία」(melagcholia) に由来する。七つの大罪の前身となった八つの枢要罪の一つ。
(出典:Wikipedia)
憂
常用漢字
中学
部首:⼼
15画
鬱
常用漢字
中学
部首:⾿
29画
“憂鬱”で始まる語句
憂鬱症
憂鬱病
憂鬱性
憂鬱作家