山姥やまうば)” の例文
髪は、ほどけて、しかもその髪には、杉の朽葉が一ぱいついて、獅子の精の髪のように、山姥やまうばの髪のように、荒く大きく乱れていた。
姥捨 (新字新仮名) / 太宰治(著)
と、山姥やまうばは木の上を見上みあげて、きょうだいをしかりました。そのこえくと、きょうだいはひとちぢみにちぢみがってしまいました。
物のいわれ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
或いは山男やまおとこだとか、山姥やまうばだとか、はては鬼などとか呼ばれて、まるで人間ではない、妖怪変化ようかいへんげの仲間の様に思われてしまいました。
一一五 御伽話おとぎばなしのことを昔々むかしむかしという。ヤマハハの話最も多くあり。ヤマハハは山姥やまうばのことなるべし。その一つ二つを次に記すべし。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
ちょうど山姥やまうばがもう少しで上がるところで、銀子はざっと稽古けいこをしてもらい、三味線しゃみせんそばへおくかおかぬに、いきなり切り出してみた。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「何だねえ、お前、大袈裟おおげさな。」と立身たちみに頭から叱られて、山姥やまうばに逢ったように、くしゃくしゃとすくんで、松小僧は土間へしゃがむ。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
山姥やまうばの子のように、てまえは、倶利伽羅くりからのつづら折で生れましたので、幼い頃から、里を知らずに育ちましてござりまする」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
日本にては山姥やまうば鬼婆おにばば共に純然たるウイツチならず。支那にてはかの夜譚随録やたんずゐろく載する所の夜星子やせいしなるもの、ほぼ妖婆たるに近かるべし。(二月八日)
山姥やまうば』の曲が終ると同時に、彼は死ななければならなかった。そうして殺し手が白刄をげ、彼の背後に立っていた。
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
小児こどもの時から人も通わぬの窟を天地として、人間らしい(?)のは阿母おふくろ一人で、昔物語に聞く山姥やまうばと金太郎とをのままに、山𤢖や猿や鹿や蝙蝠かわほりを友としつつ
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
余はまず天狗巌をながめて、次に婆さんを眺めて、三度目には半々はんはんに両方を見比みくらべた。画家として余が頭のなかに存在する婆さんの顔は高砂たかさごばばと、蘆雪ろせつのかいた山姥やまうばのみである。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その先祖犬山姥やまうばを殺し自分耳にその血を塗って後日の証としたのが今にのこったと言う、米国住黒人の談に昔青橿鳥その長子を鷹につかみ去られ追踪すれど見当らずつかれて野に臥す。
今ま直ぐと云ふわけにもなるまいが、何卒どうぞ伯母の健康たつしやな中に左様さうしなさい、山姥やまうば金時きんときで、猿や熊と遊んで暮らさうわ、——其れは左様さうと、今度は少し裕然ゆつくり泊つて行けるだらうの——
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
笠鉾の上には金無垢きんむく烏帽子えぼしを着用いたしました女夫猿めおとざるをあしらい、赤坂今井町は山姥やまうば坂田金時さかたのきんとき、芝愛宕あたご下町は千羽づるに塩みの引き物、四谷大木戸は鹿島かしま明神の大鯰おおなまずで、弓町は大弓
もちっとあとのことで、九女八はこの大阪から帰ってから後、大正二年の七月に、浅草公園の活動劇場しばいみくに座で、一日三回興業に、山姥やまうば保名やすなを踊り、楽屋で衣裳いしょうを脱ごうとしかけて卒倒し
市川九女八 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
第五種(異人編)異人、山男、山女、山姥やまうば、雪女、仙人、天人
妖怪学講義:02 緒言 (新字新仮名) / 井上円了(著)
まみはお山の山姥やまうば
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
よし足引あしびき山姥やまうば
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
山姥やまうばがいい心持こころもちそうに、ぱちぱちいうえだおとあめおとだとおもっていていますと、その馬吉うまきちえだに火をつけました。
山姥の話 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
元より怪鳥けちょう走獣そうじゅうの声ばかりな深山なので、そこに住む遊女といってはみな年老いたのが多く、旅人たちはそれを「山姥やまうば」などとんでいた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
裸形にしてただ腰のまわりに、草の葉をまとうていたとある。山姥やまうばの話の通りであるが、しかも当時の事実譚じじつだんであった。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
山尼というのは何んだろう? いわゆる山姥やまうばの別名なのだろうか? それはハッキリ解らない。とにかく山間に住んでいる、一種の神秘的の人間らしい。
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
山𤢖のわろはおそら和郎わろという意味であろう。で、おおきいのを山男といい、小さいのを山𤢖と云うらしいが、くは判らぬ。まだ其他そのほか山姥やまうばといい、山女郎やまじょろうと云う者もある。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
山姥やまうば山男やまおとこ、或いは天狗というが如きは、それが伝説化されたものにほかならぬ。
人身御供と人柱 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
見るからにわびしい戸の、その蜘蛛くもの巣は、山姥やまうばの髪のみだれなり。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
山姥やまうばなんぞも団十郎のいきで、彫刻ほりもののようにりあげてゆきたい方だが、野田安のだやすさんて、松駒連まつこまれんの幹事さんで芝居に夢中な人が、川上さんのお貞さんを助けて出ろと、なんといってもきかないのでね
市川九女八 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
とうとうおかまが上までけました。その時分じぶんには、山姥やまうばもとうにからだじゅうになって、やがてほねばかりになってしまいました。
山姥の話 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
山中に入って山姥やまうばのオツクネという物を拾い、それから物持ものもちになったかわりに、またこういう出来事があったという。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
うむ、曲は『山姥やまうば』だな。……唄声にも乱れがない。ばちさばきもあざやかなものだ。……いい度胸だな。感心な度胸だ。人はすべからくこうなくてはならない。蠢動するばかりが能ではない。
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
内のよしすだれをサラとかかげて、白髪のおうながふと半身をあらわした。つづれの帯に半上着はんうわぎ、貧しげなこと、山姥やまうばといってもよいが、かすみ目皺めじわあかくち、どこやら姿態しないやしくない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
山鬼は日本で云う山男或は山𤢖のたぐいで、野婆は即ち山姥やまうばでしょう。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
後世に山男やまおとことか、山姥やまうばとかいう名で、化物ばけものででもあるかの如く思われたり、山番やまばんとか云って、非人視されている輩の如きは、奈良朝・平安朝の頃には山人やまびとと云って、一向珍しくないことでありました。
おじいさんがわざと、「あそこに。」といって、こうにんであるしばをゆびさしますと、山姥やまうばはいきなりそのしばにきつきました。
山姥の話 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
古来多くの新米しんまい山姥やまうば、すなわちこれから自分の述べたいと思う山中の狂女の中には、何か今なお不明なる原因から、こういう錯覚を起こして、欣然きんぜんとして自ら進んで
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
その翌日の午後であったが、小堀義哉こぼりよしやは裏座敷で、清元きよもとの『山姥やまうば』をさらっていた。
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
足柄山の山姥やまうばよりこれは生やさしい山中生活ではない。都会なら未亡人問題も叫べようし、この子にミルクを与えよということもできるが、この人は、母であること以外何も思っていないらしい。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いいえ。あけない、あけない。おかあさんはもっとつるつるしてやわらかな手をしている。おまえ山姥やまうばにちがいない。」
物のいわれ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
とうとういちばん上のてっぺんまでのぼって行って、もうこれよりさきへ行きようがないところまでのぼりましたが、やはり山姥やまうばはどんどん上までのぼってます。
物のいわれ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)