小間こま)” の例文
これから釣堀つりぼりへまゐりますと、男女なんによ二人連ふたりづれゆゑ先方せんぱうでもかして小間こまとほして、しゞみのおつけ、おいも煑転につころがしで一猪口いつちよこ出ました。
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
キヤツとく、と五六しやく眞黒まつくろをどあがつて、障子しやうじ小間こまからドンとた、もつとうたくはへたまゝで、ののち二日ふつかばかりかげせぬ。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
みちのつよきひとなればむなぐるしさえがたうて、まくら小抱卷こがいまき仮初かりそめにふしたまひしを、小間こまづかひのよねよりほか、えてものあらざりき。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
お庄は形の悪い鼻を気にしながら、指頭ゆびさきが時々その方へ行った。奥の小間こまでは、お庄が出る前から飲みはじめて、後を引いている組もあった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「お此さんがいつも仕事をしている六畳の障子です。なんでも猫がいたずらをしたとかいうことで、下から三、四段目の小間こまが一枚やぶけていました」
半七捕物帳:13 弁天娘 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ふと「常居じょい」の隣りの「小間こま」をのぞいて、そこに次兄がひとり坐っているのを見つけ、こわいものに引きずられるように、するすると傍へ行って坐った。
故郷 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「なんでもないこと、小間こまの牛で」「いかにもそうだ、さあここは?」「へい、横山梁よこやまにございます」「うん、そうだ、さあここは?」「ヘッヘッヘッヘッ、蹴転けころでさあ」
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
小閑を得ておとずれると、二階へともなって、箏を沢山たてた、小間こまの机の前でこういった。
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
この家の三階はあとから取り附けのもので、いはゆる「おかぐら」普請の、これだけ八畳程の小間こまだつた。トタン屋根で屋上に「いろは」の赤ガラスに白字を抜いた標識が掲げられてゐる。
人目をしのび、世を忍ぶ、公方くぼう寵姫ちょうき、権門土部三斎のむすめ浪路に、冬の長夜を、せめては、小間こまに風情を添えようと、乳母がととのえてくれた、朱塗り行灯あんどんの、ほのかな灯かげをみつめながら
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
五月雨さみだれ雨滴うてきの中に、冷々ひえびえと、そうした感傷の思い出を心に聴き、また従兄弟の光春は、彼の目に触れない遠い小間こまで、炉の火加減をのぞき、釜師かまし与次郎が作るところの名釜めいふのあたたかなたぎりを聞き
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
爐を切った八畳ほどの小間こまに白川を案内すると
雲の小径 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「金座役人の石井のお小間こまさ、——坊っちゃんがさらわれたのは私のせいだし、他の子が助けられた中に、坊っちゃん一人だけ見付からないようでは、申訳がなくて生きちゃいられないという遺書かきおきがあったんですって」
と、金と書付をひったくって、無暗むやみに手を引いて、細廊下の処を連れてくと、六畳ばかりの小間こまがありまして、其処そこに床がちゃんと敷いてある。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
上野行、浅草行、五六台も遣過やりすごして、硝子戸越がらすどごしに西洋小間こまものをのぞく人を透かしたり、横町へ曲るものを見送ったり、しきりに謀叛気むほんぎを起していた。
妖術 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これよとおほせらる、一しきりおはりての午後ひるすぎ、おちやぐわしやまかつめば大皿おほさら鐵砲てつぽうまき分捕次第ぶんどりしだい沙汰さたありて、奧樣おくさま暫時しばしのほど二かい小間こまづかれをやすたま
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
お庄らの上って行った部屋は、六畳ばかりの小間こまであった。浅山も媒介人なこうども、インバネスを脱ぎ棄て、縁側から上って行くと、やがていろいろの人がそこへ顔を出した。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
蔵前の違棚の前に、二人の唐縮緬友染めりんすゆうぜんの蒲団が設けてあったが、私と肩を別つようにして、八郎が階子段はしごだん下の小間こまへ入った。大方そこで一拝に及んだのであろう。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
帳場前の廊下へ出ると、そこから薄暗い硝子燈籠のともれた、だだッ広い庭が、お庄の目にも安ッぽく見られた。ちぐはぐのような小間こまのたくさんある家建やだちも、普請が粗雑がさつであった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
と着物を着替きかえ、友之助は二階の小間こまに入って、今に死のう、人が途断とぎれたら出ようと思って考えているから酒ものどへ通らず、只お村は流れたかと考えて居りますと、広間の方で今上って来たか
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それをおもふとわたしため仇敵あだといふひと一人ひとりくて、あの輕忽そゝくさとこましやくれて世間せけんわたしのあらを吹聽ふいちやうしてあるいたといふ小間こまづかひのはやも、口返答くちへんたふばかりしてやくたゝずであつた御飯ごはんたきのかつ
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
一層袖口を引いて襟冷く、少しこごみ腰に障子の小間こまから覗くと、鉄の大火鉢ばかり、誰も見えぬ。
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と六畳の小間こま這入はいり、差向い
そのつき正面しやうめんにかざつて、もとのかゝらぬお團子だんごだけはうづたかく、さあ、成金なりきん小判こばんんでくらべてろと、かざるのだけれど、ふすまははづれる。障子しやうじ小間こまはびり/\とみなやぶれる。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
小稿せうかう……まだ持出もちだしのかず、かまちをすぐの小間こまで……こゝをさうするとき……
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……障子の小間こまは残らず穴ばかり。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)