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嫉妬
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ふりがな文庫
“
嫉妬
(
しっと
)” の例文
その顔が、毒々しい嫌悪と侮蔑と
嫉妬
(
しっと
)
に、しわだらけにゆがんでいる。……再びヒョッと顔を動かして、洞窟のあちこちを見まわす。
胎内
(新字新仮名)
/
三好十郎
(著)
実をいうと、私は、彼の作品が喝采される
毎
(
ごと
)
に、云い様のない
嫉妬
(
しっと
)
を感じずにはいられなかった。私は子供らしい敵意をさえ抱いた。
陰獣
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
ところが、ブロム・ボーンズときたら、恋と
嫉妬
(
しっと
)
ですっかりいためつけられて、ひとりで片隅に
坐
(
すわ
)
りこみ、
怏々
(
おうおう
)
としていたのである。
スリーピー・ホローの伝説:故ディードリッヒ・ニッカボッカーの遺稿より
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
可憐
(
かれん
)
に素直にして、
嫉妬
(
しっと
)
も知らぬふうを見せていたから、宮はいっそう深い愛をお覚えになり、思いやりをうれしくお感じになって
源氏物語:51 宿り木
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
なんらか
嫉妬
(
しっと
)
に似た不快な感情を刺戟され、それがために多少やけ気味で、ふて返っているのかと見ると、それは大きな誤解でした。
大菩薩峠:36 新月の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
▼ もっと見る
ちょうど女の歩きつきの形のままに脱いだ跡が
可愛
(
かわい
)
らしく
嬌態
(
しな
)
をしている。それを見ると私はたちまち何ともいえない
嫉妬
(
しっと
)
を感じた。
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
爽
(
さわや
)
かな
五月
(
さつき
)
の流が、
蒼
(
あお
)
い野を走るように、瑠璃子は雄弁だった。黙って聴いていた勝平の顔は、
怒
(
いかり
)
と
嫉妬
(
しっと
)
のために、黒ずんで見えた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
僕は始めから千代子と一つ
薄縁
(
うすべり
)
の上に坐るのを快く思わなかった。僕の高木に対して
嫉妬
(
しっと
)
を起した事はすでに明かに自白しておいた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ただお蝶と率八があまり仲よく話し込む時に、とろんと睨みつける
嫉妬
(
しっと
)
らしい眼だけは、多少本性にたがわぬところがないでもない。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
取るに足らぬ女性の
嫉妬
(
しっと
)
から、
些
(
いささ
)
かの
掠
(
かす
)
り傷を受けても、彼は
怨
(
うら
)
みの
刃
(
やいば
)
を受けたように得意になり、たかだか二万
法
(
フラン
)
の借金にも、彼は
虚構の春
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
それは軽い
嫉妬
(
しっと
)
のようなものであるかも知れないが、それくらいの関心は彼もこのお嬢さんに持っていたと言ってもいいのである。
ルウベンスの偽画
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
だが他の青年たちは同じ意味でよけい反感を
唆
(
そそ
)
られ、その侮辱に対して、婦人たちが報復しないことでも
嫉妬
(
しっと
)
しているようだった。
いさましい話
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
白状するが、それがもし小説か戯曲であったら、その時の私の顔には微笑の代わりに
苦
(
にが
)
い
嫉妬
(
しっと
)
の色が濃くみなぎっていたかもしれない。
生まれいずる悩み
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
そんな旅館を一代が知っていたのかと寺田はふと
嫉妬
(
しっと
)
の血を燃やしたが、しかしそんな瞬間の想いは一代の
魅力
(
みりょく
)
ですぐ消えてしまった。
競馬
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
嫉妬
(
しっと
)
、
猜疑
(
さいぎ
)
、朋党異伐、
金銭
(
かね
)
に対する
狂人
(
きちがい
)
のような執着、そのために起こる殺人兇行——あるものと云えばこんなものばかりです。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
その奇怪な家庭における男の
嫉妬
(
しっと
)
が、極端に強烈なものであって、わが子をさえ信じえなかったほどの不安を与えていたこととである。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
途中のある旅館における雨の
侘
(
わび
)
しい晩に、従兄への葉子の素振りの
媚
(
なま
)
めかしさが、いきなり松川の
嫉妬
(
しっと
)
を抑えがたいものに
煽
(
あお
)
りたてた。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
しかし、
一休
(
いっきゅう
)
さんを
生
(
う
)
んだ
伊予局
(
いよのつぼね
)
は、
后宮
(
きさきのみや
)
の
嫉妬
(
しっと
)
のため、
身
(
み
)
に
危険
(
きけん
)
がせまったので、
自分
(
じぶん
)
から
皇居
(
こうきょ
)
をのがれることになりました。
先生と父兄の皆さまへ
(新字新仮名)
/
五十公野清一
(著)
原始人の生活に於ては、家庭というものは確立しておらず、多夫多妻野合であり、
嫉妬
(
しっと
)
もすくなく、個の対立というものは極めて
稀薄
(
きはく
)
だ。
堕落論〔続堕落論〕
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
ポリーナ わたし、
嫉妬
(
しっと
)
でくるしいのよ。そりゃ、あなたはお医者さんだから、婦人を避けるわけにはいかない。それはわかるけれど……
かもめ:――喜劇 四幕――
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
聞いて御覧、芳さんが来てからは、また考えようがいっそきびしいに
相違
(
ちがい
)
ないから。何だって、またあの位、
嫉妬
(
しっと
)
深い人もないもんだね。
化銀杏
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
おそらくこれは
嫉妬
(
しっと
)
と不信とに基づくことであろうから、この際
友誼
(
ゆうぎ
)
を結んで百事を聞き知ろうとするには、まずその心を
収攬
(
しゅうらん
)
するがいい。
夜明け前:03 第二部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
そして、栖方の云うままには動けぬ自分の
嫉妬
(
しっと
)
が淋しかった。何となく、梶は栖方の努力のすべてを否定している自分の態度が淋しかった。
微笑
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
奥方は時の老中酒井左衛門尉の息女、土佐守は一目も二目も置いておりますが、さすがに
嫉妬
(
しっと
)
がましく、それはなりませんとはいえません。
銭形平次捕物控:066 玉の輿の呪い
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
孔子からその
強靱
(
きょうじん
)
な生活力と、またその政治性とを抜き去ったような顔回という若者を、子路は余り好まない。それは決して
嫉妬
(
しっと
)
ではない。
弟子
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
だが恋愛に関する限り、たとえば、
嫉妬
(
しっと
)
だとか憎みだとかいうものは、生活に暇があって感情を
反芻
(
はんすう
)
する
贅沢
(
ぜいたく
)
者たちの取付いている感情だ。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
愚かにも気早な
嫉妬
(
しっと
)
から、彼ら同士の関係や内情はおろか、当人の人物さえよくも知らずに、婚約の夫を
罵倒
(
ばとう
)
したことである。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
そのために、
嫌悪
(
けんお
)
と愛情と
嫉妬
(
しっと
)
と熱い
憐憫
(
れんびん
)
との名状しがたい印象を心に受けた。彼女はその小さな客間の
扉口
(
とぐち
)
まで送ってきた。
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
なにしろ、御息女は、御寵愛が激しかったので、中老方の
嫉妬
(
しっと
)
も多いゆえ、これが
曝
(
あら
)
われたら、大事にもなろうというもの——
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
之
(
これ
)
に
加
(
くわ
)
うるに
羨望
(
せんぼう
)
嫉妬
(
しっと
)
の念を
以
(
もっ
)
てして、今度は政府の役人達が狙われるようになって来て、洋学者の方は
大
(
おおい
)
に楽になりました。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
それとも、それはQ語の単なる感嘆詞だつたかも知れない。僕はひそかに
嫉妬
(
しっと
)
を感じた。阿耶は
楚々
(
そそ
)
たる美しい娘であつた。
わが心の女
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
僕天性浮気の身なれば従つて
嫉妬
(
しっと
)
の執念薄く、嫉妬の執念薄きほどなれば、いやがるものを無理無体にくどきなびかせんとの執着は更になし。
桑中喜語
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
そして、お高への
嫉妬
(
しっと
)
と反感から、いっそう若松屋惣七をせっつくことであろう。かえって事態を悪くするに相違ないのだ。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
仕事の神は
嫉妬
(
しっと
)
深く、おまけに君のようにいたずら
気
(
ぎ
)
に富んでいるから、おれはもう一日というところでその神にたたられることをおそれる。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
その
自体
(
じたい
)
中毒
(
ちゅうどく
)
で脳を刺撃するから人の神経が過敏症の病的となって不平
怨嗟
(
えんさ
)
嫉妬
(
しっと
)
愚痴
(
ぐち
)
そんな事ばかり言って日を送る有様だ。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
幼い私に聞かせるのは
憚
(
はばか
)
って、祖母が言葉を濁していた、そのお手討ちというのも横恋慕を聞かれなかった家老の
嫉妬
(
しっと
)
心からだったのでしょう。
棚田裁判長の怪死
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
が、彼女は同情は勿論、
憎悪
(
ぞうお
)
も
嫉妬
(
しっと
)
も感じなかった。ただその想像に伴うのは、多少の好奇心ばかりだった。どう云う夫婦喧嘩をするのかしら。
奇怪な再会
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
であるのに再び
寂寞
(
せきばく
)
荒涼たる以前の平凡なる生活にかえらなければならぬとは……。不平よりも、
嫉妬
(
しっと
)
よりも、熱い熱い涙がかれの
頬
(
ほお
)
を伝った。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
「足もとの土台がぐらついているぞ」と
嫉妬
(
しっと
)
屋のレアリストたちが中傷する。けっこうだ。その代わりに重荷もないよ。
二十歳のエチュード
(新字新仮名)
/
原口統三
(著)
それなのに実枝とのことについては、姉としての気持をいってくれるでもなく、こっちからいいだすと皮肉とも
嫉妬
(
しっと
)
ともとれるようなことをいう。
暦
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
私は別に
嫉妬
(
しっと
)
を感じるようなことはなかった。私はただ、何もかも知り合った友だちのように、叔父を思っていたのだ。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
それは彼に
嫉妬
(
しっと
)
の念を燃やさした。そして彼はマドレーヌを
害
(
そこな
)
うために機会あるごとにできるだけのことをした。そのうちに彼は破産してしまった。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
そこまで考えると、恭一のやり方の愚劣さに対する怒りは、その底に、自分で意識しない
嫉妬
(
しっと
)
の感情を波うたせて、いよいよ
昂
(
こう
)
じて行くのであった。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
茫然
(
ぼうぜん
)
と見守っていた亀吉は、歌麿の姿が吸いこまれたのを見定めると、
嫉妬
(
しっと
)
まじりの舌打を頬冠りの中に残して、
元来
(
もとき
)
た
縁生院
(
えんじょういん
)
の
土塀
(
どべい
)
の方へ引返した。
歌麿懺悔:江戸名人伝
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
自分の方がどれぐらい
嫉妬
(
しっと
)
感じたか分れへん、利用しられたとしたら自分の方がしられてるぐらいやいうのんです。
卍
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
とにかく、みんなは、たがいに
欲深
(
よくぶか
)
であったり、
嫉妬
(
しっと
)
しあったり、
争
(
あらそ
)
い
合
(
あ
)
ったりする
生活
(
せいかつ
)
に
愛想
(
あいそう
)
をつかしました。
明るき世界へ
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
そしてその不愉快が
嫉妬
(
しっと
)
ではないと云うことを、純一の意識は証明しようとするが、それがなかなかむずかしい。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
その不幸をオセロにうちあけないでいるうちに、イヤゴーはオセロの
猜疑
(
さいぎ
)
と
嫉妬
(
しっと
)
をかきたてることに成功した。
女性の歴史:文学にそって
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
驚くべき
濫費
(
らんぴ
)
だ。私はこの男の計り知れざる財力に一種の
崇拝
(
すうはい
)
を感じた。不思議なもので、こんな時には、
嫉妬
(
しっと
)
の念よりも、崇拝の念が先におこるものだ。
動物園の一夜
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
芸術の神は
嫉妬
(
しっと
)
深いものだという。涙に裂くパンの味を知らない幸福なものには
窺
(
うかが
)
い知れない殿堂だという。
柳原燁子(白蓮)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
“嫉妬”の解説
嫉妬(しっと)とは、自分よりも優れていると感じる人に対して妬みや嫉みといった感情を抱く悪徳である。
(出典:Wikipedia)
嫉
常用漢字
中学
部首:⼥
13画
妬
常用漢字
中学
部首:⼥
8画
“嫉妬”で始まる語句
嫉妬心
嫉妬家
嫉妬深
嫉妬焼
嫉妬男
嫉妬喧嘩
嫉妬陣
嫉妬燒
嫉妬的
嫉妬紛