如来にょらい)” の例文
旧字:如來
「は」というと四十二、三、胸毛の多いさむらいが、「天帝如来にょらいを信仰し、現世においては安心を得、死して天国へうまれよう……」
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
薬師如来にょらいの流麗な光りの線をみると、祈念の音声が何の抵抗もなくなだらかに調和して、おのずから吸いこまれて行くように思われる。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
尼提にだいはこう言う如来にょらいの前に糞器ふんき背負せおった彼自身をじ、万が一にも無礼のないように倉皇そうこうほかみちへ曲ってしまった。
尼提 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ところがまた八王子の極楽寺ごくらくじという寺でも、これは地蔵ではないが、本尊の阿弥陀様あみださまを、鼻取如来にょらいと呼んでおりました。
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
門をはいると、庫裡くり藁葺わらぶき屋根と風雨ふううにさらされた黒い窓障子が見えた。本堂の如来にょらい様は黒く光って、木魚もくぎょが赤いメリンスの敷き物の上にのせてある。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
如来にょらいは酒はよくないものであると言って在家の人にさえ戒めた位でありますのにいかにツァーランの出家にもせよ
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
如来にょらいさまの教えのうちには殺生戒せっしょうかいとやら申すことがあるんじゃそうにござりますけれど、わたくしとふたりできんとんをないしょにいただいたほかには
二人は、かがやくあかしへ向って、並んで坐った。善光寺如来にょらいの分身が、新らしいお厨子ずしの内に、皎々こうこうと仰がれた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とあるは、柳村、びん博士のことである。その他に一葉の周囲の男性は、戸川秋骨とがわしゅうこつ、島崎藤村、星野天知てんち、関如来にょらい正直正太夫しょうじきしょうだゆう、村上浪六なみろくの諸氏が足近かった。
樋口一葉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
というのはこのほど、両国の回向院えこういんに信州善光寺如来にょらいのお開帳があるということ。そのお開帳と前後して、回向院の広場をかりて広大な小屋がけがはじまったこと。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ただ如来にょらいのはからいに任せて自然の解決を待つと、心を長くするの覚悟かくごが何よりたいせつと存じ候う。
廃める (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
ある大きな本家では、いつもきゅうの八月のはじめに、如来にょらいさまのおまつりで分家の子供らをよぶのでしたが、ある年その一人の子が、はしかにかかってやすんでいました。
ざしき童子のはなし (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
如来にょらいこの辺を経行した時猴が蜜を奉ると仏これに水を和してあまねく大衆に施さしめ、猴大いに喜び躍ってあなちて死んだが、この福力に由って人間に生まれたと載す。
東の空の低い棚雲たなぐものふちが、だいだい色を帯びた金色こんじきに光り、その反映で、大仏岳の頂上の岩肌がほの明るく浮き彫りになった。頂上の北側に、如来にょらいノ峰というのがそびえている。
ちくしょう谷 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
念仏ねんぶつの法語は繰り返して云う。弥陀みだ誓願せいがんを信ぜよ。その誓いに誤りはなく洩れはなく怠りはない。済度さいどこそは如来にょらい本願ほんがんである。救うことと如来たることとは同じ意である。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
すすぼけた仏壇には一体の木彫りの如来にょらいが立っていて、南向きのあかり障子のきわに小机が一脚、その上には法華経一巻のほかに硯と筆二、三本、書き捨ての反古ほごのようなものが三
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
氷見鯖ひみさばの塩味、放生津鱈ほうじょうづだら善悪よしあし、糸魚川の流れ塩梅あんばい、五智の如来にょらい海豚いるか参詣さんけいを致しまする様子、その鳴声、もそっと遠くは、越後の八百八後家はっぴゃくやごけの因縁でも、信濃川の橋の間数まかずでも
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
武蔵野むさしのなどを散歩していますと、よく路傍の石碑いしにきざんである、この仏のおすがたを見うけるのですが、とにかく、仏さまなら、もう阿弥陀如来にょらいだけでよい、大日如来だけでよい
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
... その底意そこい如何いかに?』フルコム答ふ—『わが南蛮四十二国、みなデウス如来にょらいを拝むによつて、苦患くげんなく乞食なく病者なし、なんぞ貧者を駆つて施物を集めんや。いま却つて我らが底意を ...
ハビアン説法 (新字旧仮名) / 神西清(著)
他のものは大概あらまし批評の標準が立っていて、特に私が見出みいだすまでもないことで、奈良の新薬師寺の薬師如来にょらいなど木彫りとして結構なものの中でも特にすぐれていると思って見たことであった。
小さな如来にょらいを安置した佛壇の中に「江東院正岫因公大禅定門」と記した位牌いはいがある、それぞまさしく三成の法名であったから、源太夫すなわってその前に至り、うや/\しく香をねんじて礼をした。
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
父子二代の積悪せきあくはたして如来にょらいの許したもうやいなや。
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
釈迦しゃか如来にょらいになられた。清姫は蛇になった。
二つの道 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
いきなり如来にょらいてのひらの上におどり上がった。
「長者よ。それはわたくしが悪かったわけではございませぬ。ただどの路へ曲っても、必ずその路へおいでになった如来にょらいがお悪かったのでございまする。」
尼提 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そうしているうちにその汚い乞食は薬師如来にょらいの姿を現し、私は上人の行いを試して見る為に、仮に病人になってここに寝ていたのだといって、有馬の山の方へ
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
無明むみょうの病をする ように修業するということは、医者をやるよりも急務である。だから、私は医者をして此にいることは出来ない。じつに如来にょらいは大医王である。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
古きひじりの伝などには、よく、誕生の奇瑞きずいがあったり、また幼少のうちからあたかも如来にょらいの再来のような超人間的な奇蹟が必ずあって、雲をくだし、龍を呼ぶようなことが
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
現在その右方にいます薬師如来にょらい像も鳥の作と推定されているが、元来このみ仏が本尊であったのを、上宮太子じょうぐうたいしへの思慕と釈迦像の荘厳の故に後世置きかえられたと云われる。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
ただ願ふらくはかの如来にょらい大慈だいじ大悲だいひ我が小願の中において大神力を現じ給ひ妄言まうげん綺語きご淤泥おでいして光明顕色けんじき浄瑠璃じゃうるりとなし、浮華ふくわの中より清浄しゃうじゃう青蓮華しゃうれんげを開かしめ給はんことを。
二十六夜 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
かく次第してついに須抜陀羅長者すばつだらちょうじゃの男児が食わるる番に中った。長者何とも情けない。如来にょらい我子を救えと念ずると、仏すなわち来て鬼神殿中に坐った。鬼神、仏に去れというと仏出で去る。
有磯海ありそうみから親不知おやしらずの浜を、五智の如来にょらいもうずるという、泳ぐのに半身を波の上にあらわして、列を造ってくとか聞く、海豚いるかの群が、毒気を吐掛けたような入道雲の低いのが、むくむくと推並おしならんで
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
まずその一通りというところを話して行くと、第一に如来にょらいです。
「それがくまという名の人じゃやら、けだもののくまじゃやらわかりませぬゆえ、毎朝おときのおりにいっしょうけんめい如来にょらいさまにもお尋ねするのだけれど、どうしたことやら、阿弥陀あみださまはなんともおっしゃってくださりませぬ」
如来にょらいノ峰のちょっと手前を
ちくしょう谷 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
白比丘尼は、ある時眼の病にかかって、この寺の薬師如来にょらいに、百日の間願かけをしました。そうして信心のしるしに、杉の箸を地に立てたともいっております。
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
親鸞が、自身信州へ赴いて乞いけてきた一光三尊の善光寺如来にょらいの御分身を出迎えたのである。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただ願うらくはかの如来にょらい大慈だいじ大悲だいひ我が小願の中において大神力を現じ給い妄言もうげん綺語きご淤泥おでいして光明顕色けんじき浄瑠璃じょうるりとなし、浮華ふかの中より清浄しょうじょう青蓮華しょうれんげを開かしめ給わんことを。
二十六夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
釈迦牟尼如来にょらいの心を大いに誘惑しようと掛ってその素振みぶり、その眼付、如来を色情に誘惑する様子のあらゆる限り、その時代のいわゆる誘惑手段の三十二法を尽したけれども
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
また本尊大仏の尊貌そんぼうも、現在とは同日の談ではなく、薬師寺に現存する白鳳の薬師如来にょらい乃至ないしは三月堂の不空羂索ふくうけんじゃく観音等の傑作から想像する以外にないとのことであるから
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
あれがうわさうけたまわった南蛮なんばん如来にょらいでございますか? せがれの命さえ助かりますれば、わたくしはあの磔仏はりきぼとけに一生つかえるのもかまいません。どうか冥護みょうごを賜るように御祈祷をお捧げ下さいまし。
おしの (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
華氏国王、すなわち馬鳴菩薩と、仏鉢ぶつばつと、一の慈心鶏を以て各三億金銭に当て、罽昵吒王に献じた。馬鳴菩薩は智慧殊勝で、仏鉢は如来にょらいが持った霊宝たり。かの鶏は慈心あり。虫の住む水を飲まず。
「うちのお師匠さまが申されました。仏の道に仕える者は、みんな如来にょらいさまと同じ国に生まれた者じゃとおっしゃいましたので、おじさんとても万一わたくしのお弟子になるようなことがござりますれば、やはり天竺の生まれになります」
「まことの天主、南蛮なんばん如来にょらいとはそう云うものでございますか?」
おしの (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
我今見聞得受持 願解如来にょらい第一義
柳沢 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)