トップ
>
喰
>
は
ふりがな文庫
“
喰
(
は
)” の例文
「行列が動き出そうとするとき、乗物の
扉
(
と
)
の隙間から、花嫁の
裾
(
すそ
)
が
喰
(
は
)
み出していることに気が付いて、私が直してやりましたが——」
銭形平次捕物控:200 死骸の花嫁
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
その儒教倫理(とばかりは言えない。その儒教道徳と、それからやや
喰
(
は
)
み出した、彼の強烈な自己中心的な感情との混合体である。)
斗南先生
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
「電気学講義録」がポケットから
喰
(
は
)
み出している制服オウバアの
襟
(
えり
)
の中で、茶っポい
一重瞼
(
ひとえまぶた
)
の眼がノンキそうにまたたいているのだ。
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
猶
(
なお
)
其袂
(
そのたもと
)
から
手巾
(
はんかちーふ
)
を
取出
(
とりだ
)
して、声立てさせじと口に
喰
(
は
)
ませた。
斯
(
か
)
くして冬子は、
彼
(
か
)
の
空屋
(
あきや
)
まで
手取
(
てど
)
り
足取
(
あしど
)
りに担ぎ去られたのであった。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
厚い
膝頭
(
ひざがしら
)
が
坐布団
(
ざぶとん
)
から
喰
(
は
)
み出して軽く畳を抑えたところは、血が
退
(
ひ
)
いて肉が落ちた孤堂先生の顔に比べると威風堂々たるものである。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
「遠くは
近江
(
おうみ
)
の佐々木が一族と聞いておりますなれど、室町殿滅亡後、母方の里へひそみました由で、吉川家の
禄
(
ろく
)
は
喰
(
は
)
んでおりませぬ」
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
あなたは代々織田家の家臣で、代々織田家の扶持を
喰
(
は
)
み、その恩顧を受けている。だから織田家のために不惜身命の覚悟はあるであろう。
夜明けの辻
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
去年の草の立ち枯れたのと、今年生えて
稍
(
やや
)
茎を立て初めたのとがまじりあって、屋敷地から
喰
(
は
)
み出し、道の上までも延びて居る。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
襖
(
ふすま
)
が開いて閉って、そこに
絢爛
(
けんらん
)
な一つくねの
絹布
(
きぬぎ
)
れがひれ伏した。紅紫と卵黄の色彩の
喰
(
は
)
み合いはまだ何の模様とも判らない。
雛妓
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
伸子は、芸術家の運命、特色ある性格と環境との
喰
(
は
)
み合いを、よそごとと思えぬ年齢になっていた。彼女は、待っていた。そして見て。——
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
處々裂けた襖、だらしなく吊下つた壁の衣服、煤ばんで雨漏の
痕跡
(
かた
)
がついた天井、片隅に積んだ自分の夜具からは薄汚い古綿が
喰
(
は
)
み出してる。
病院の窓
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
飯も赤ん坊の
茶碗
(
ちゃわん
)
ほどなのに、
手甲盛
(
てこも
)
りやおかわりの二杯以上は許されず、それから
喰
(
は
)
み出せば、お神の横目が冷たく
睨
(
にら
)
み
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
ぎざぎざになって赤い土から
喰
(
は
)
み出してゐたのです。それは昔山の方から流れて走って来て又火山灰に
埋
(
うづ
)
もれた五層の古い
熔岩流
(
ようがんりう
)
だったのです。
谷
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
さすがは奥地第一の雄藩に禄を
喰
(
は
)
む若侍だけあって、どうやらこの道の相当
強
(
ごう
)
の者らしいのです。と見えたのはしかし四本目までのことでした。
旗本退屈男:07 第七話 仙台に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
……『
菘翁随筆
(
しゅうおうずいひつ
)
』に、『鶴を飼はんとすれば、粗食を以て飼ふべし。餌以前のものより劣れば、鶴は
喰
(
は
)
まずして死す』
顎十郎捕物帳:09 丹頂の鶴
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
大き過ぎる袋で稍始末が悪く、半分以上ポケツトから
喰
(
は
)
み出してゐたとは云へ、余程わたしは夢中になつて蝶々を追ひかけてゐたに違ひなかつたのだ。
或るハイカーの記
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
馬や水牛は草を
喰
(
は
)
みながら絶えず尻尾を振っている。小虫の集まるのを防ぐためだ。火を焚いている土人がある。
沙漠の古都
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
投げつけられた箸を拾って見ると、なるほど箸は中ほどのところを虫に
喰
(
は
)
まれて二つも大きな穴が開いていた。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
光線に突刺された首や、
喰
(
く
)
いしばって白くのぞく歯や、盛りあがって
喰
(
は
)
みだす内臓や……。一瞬に引裂かれ、一瞬にむかって
挑
(
いど
)
もうとする無数のリズム……。
鎮魂歌
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
指頭大の穴が三つばかり明いて、その周囲から
喰
(
は
)
み出した繊維がその穴を
塞
(
ふさ
)
ごうとして手を延ばしていた。
浅草紙
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
殊
(
こと
)
に高い方のM百貨店は、僕の先祖代々
碌
(
ろく
)
を
喰
(
は
)
んだ北越百万石の領主が、
東照神君
(
とうしょうしんくん
)
の
御霊
(
みたま
)
詣での
途次
(
とじ
)
、お供先が往来の真ン中で、
鳶
(
とび
)
の者と喧嘩になった為めに
青バスの女
(新字新仮名)
/
辰野九紫
(著)
だが、なぜそうならそうと訳を聞かせておいてから、手に懸けようとはしてくださらぬ。身分こそ
卑
(
いや
)
しけれ、わたしも浅野家の
禄
(
ろく
)
を
喰
(
は
)
んだものの娘でござんす。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
喰
(
は
)
まうつちふやつか! どうぢや? 手を拍つことにするだか? うん、よかつぺえ、それぢやあ、ほやほやの花聟どん、お祝ひに一杯やらかすことにすべいか!
ディカーニカ近郷夜話 前篇:03 ソロチンツイの定期市
(新字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
一切の恩愛義理をも
犠牲
(
ぎせい
)
にしようとするような人間に対しては、利害一途で、相い争わせ、相い
喰
(
は
)
ませ、骨髄まで傷つけ合せるのこそ、最大苦痛をあたえることだと
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
血走ったぐりぐりする眼で草を
喰
(
は
)
んでいるが、人が近づくと遠くの方からちゃんと知っていて、だんだん頭を地面に下げる。うっかりすると、角を持ち上げてぬっと迫ってくる。
石ころ路
(新字新仮名)
/
田畑修一郎
(著)
筆者の祖先は代々黒田藩の
禄
(
ろく
)
を
喰
(
は
)
んでいた者だから黒田様の事はあまり云いたくない。
近世快人伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
病室からながめられる生理学教室の三階の窓、密閉された
部屋
(
へや
)
、しごき帯、……なんでもかでもが自分の肉を
喰
(
は
)
む
毒蛇
(
どくじゃ
)
のごとく
鎌首
(
かまくび
)
を立てて自分を待ち伏せしているように思えた。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
名馬はもはや昔に戻らぬ姿のまま、怒り狂う宗盛の前でまぐさを
喰
(
は
)
んでいた。
現代語訳 平家物語:04 第四巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
まして
僻陬
(
へきすう
)
の地にあるそれらのものを見出すことはほとんど望み難いからです。それに大部分はつまらない作として物置のような所に放置せられ、守る僧もなく虫の
喰
(
は
)
むに任せてあるからです。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
見る見るうちに霧に
喰
(
は
)
み取られて、半分位持って行かれてしまったかと思ったが、また繋ぎ合わされて立っている、西に
間
(
あい
)
の
岳
(
たけ
)
(赤石山脈)が立ち、東に富士山が、二筋ばかりの白い雪を放射して
白峰山脈縦断記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
葉を
喰
(
は
)
めば馬も醉ふとふ春日野の
馬醉木
(
あしび
)
が原の春すぎにけり
樹木とその葉:08 若葉の頃と旅
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
いづこに氷を
喰
(
は
)
まむとして賣る店を見ず
純情小曲集:02 純情小曲集
(旧字旧仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
むさゝびの小鳥
喰
(
は
)
み
居
(
を
)
る枯野かな
俳人蕪村
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
「行列が動き出さうとする時、乘物の
扉
(
と
)
の隙間から、花嫁の
裾
(
すそ
)
が
喰
(
は
)
み出して居ることに氣が附いて、私が直してやりましたが——」
銭形平次捕物控:200 死骸の花嫁
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
処々裂けた襖、だらしなく吊下つた壁の衣服、煤ばんで雨漏の
痕跡
(
かた
)
がついた天井、片隅に積んだ自分の夜具からは薄汚い古綿が
喰
(
は
)
み出してる。
病院の窓
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
ぎざぎざになって赤い土から
喰
(
は
)
み出していたのです。それは
昔
(
むかし
)
山の方から流れて走って来て
又
(
また
)
火山灰に
埋
(
うず
)
もれた五層の古い
熔岩流
(
ようがんりゅう
)
だったのです。
谷
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
子供の運命が自身の寿命と生活力の届かないところへ
喰
(
は
)
み出ることは、誰しも苦痛であつた。母性愛はそれに比べると動物的なものらしいのであつた。
チビの魂
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
そして道端の青草を見出すと、乗手の存在も忘れて草を
喰
(
は
)
み、どんなに私が
苛立
(
いらだ
)
っても素知らぬ風を示すに至った。
ゼーロン
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
町はどこを見ても、木口も壁も新しくて、ぎらぎらと眼を射るし、空地へ出ると、まだ埋めきれない土の下から、
葭
(
よし
)
や
蘆
(
あし
)
の根が枯れて
喰
(
は
)
み出している。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
子羔。しかし、もう無駄ですよ。かえって難に遭うこともないとは限らぬし。子路が声を
荒
(
あ
)
らげて言う。孔家の
禄
(
ろく
)
を
喰
(
は
)
む身ではないか。何のために難を避ける?
弟子
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
したがってその住居は特別に広く
半分
(
なかば
)
以上は岩窟から外へ
喰
(
は
)
み出して造られているのであった。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
このあたりはもはや二千六百
呎
(
フィート
)
の標高。
山毛欅
(
ヘエトル
)
の林の奥のお花畑には羊の群が草を
喰
(
は
)
み、空をきりひらくアルプスの紙ナイフは、白い象牙の
鋩子
(
ぼうし
)
を伸べる。光る若葉
山杜鵑
(
やまほととぎす
)
。
ノンシャラン道中記:07 アルプスの潜水夫 ――モンブラン登山の巻
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
すると、すぐ足許のところを、白木の大きな
函
(
はこ
)
が流れており、函から
喰
(
は
)
み出た
玉葱
(
たまねぎ
)
があたりに
漾
(
ただよ
)
っていた。私は函を引寄せ、中から玉葱を
掴
(
つか
)
み出しては、岸の方へ手渡した。
夏の花
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
千太は親方の指図だから
忌
(
いや
)
とは云われません。もちろん相当の
金轡
(
かねぐつわ
)
を
喰
(
は
)
まされたんでしょう。
半七捕物帳:53 新カチカチ山
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
声をかけられるその瞬間まで、彼は酒造家の相沢を何となくでつぷり肥つて、木綿縞の
袷
(
あはせ
)
の袖口から肉づきのいゝ手首を
喰
(
は
)
み出させた、紺の前掛でもした男を想像してゐたのだつた。
医師高間房一氏
(新字旧仮名)
/
田畑修一郎
(著)
大禄
喰
(
は
)
みながらなかなか勘定高うてな、この十年来、兎角お墨付を
蔑
(
ないがし
)
ろに致し、ここを通行致す
砌
(
みぎ
)
りも、身が
他行
(
たぎょう
)
致しておる隙を狙うとか、乃至は夜ふけになぞこっそりと通りぬけて
旗本退屈男:05 第五話 三河に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
観覧車も今は
闃
(
げき
)
として鉄骨のペンキも剥げて
赤鏽
(
あかさび
)
が吹き、土台のたたきは破れこぼちてコンクリートの砂利が
喰
(
は
)
み出している。殺風景と云うよりはただ何となくそぞろに荒れ果てた景色である。
障子の落書
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
むさゝびの小鳥
喰
(
は
)
み居る枯野かな
俳人蕪村
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
もの
喰
(
は
)
まざればみじめに青ざめ
供養
(旧字旧仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
啄
(
つい
)
ばませ
喰
(
は
)
ませ給ひて
髪切虫
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
喰
漢検準1級
部首:⼝
12画
“喰”を含む語句
漆喰
喰付
馬喰
喰込
喰物
大喰
酒喰
面喰
馬喰町
喰切
喰止
何喰
喰屍鬼
出喰
喰違
虫喰
漆喰壁
買喰
喰殺
喰気
...