吐出はきだ)” の例文
「それはならぬ。」と吐出はきだすやうに仰有ると、急にその儘御立になつてしまひました。かやうな事が、前後四五遍もございましたらうか。
地獄変 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
チクリと来ると吐出はきだすが又、喰う。そのうちにかぎが舌に引っかかるんだが、引っかかったら最後、決して啼かないから妙だ。
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
その時はありったけの蛭が残らず吸っただけの人間の血を吐出はきだすと、それがために土がとけて山一ツ一面に血とどろとの大沼にかわるであろう
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と吉野は落着いた声で言つて、小供の両足を持つて逆様に、小い体を手荒く二三度ると、吐出はきだした水が吉野の足に掛つた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
その結果が沼南のイツモ逆さに振って見せる蟇口から社を売った身代金みのしろきんの幾分を吐出はきだして目出たく無事に落着したそうだ。
三十年前の島田沼南 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
六千四百とん巨船きよせんもすでになかばかたむき、二本にほん煙筒えんとうから眞黒まつくろ吐出はきだけぶりは、あたか斷末魔だんまつま苦悶くもんうつたへてるかのやうである。
死にかけてから縄が切れて落ちたもので、床板の上には吐出はきだした血だまりがあった。——その男の名が高木であった。
篠笹の陰の顔 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
下から突いたからめえへのめって湯を呑んだという騒ぎで、此の野郎と云うのが喧嘩のはじまりで、甚太っぽーの顳※こめかみを金次が喰取くいとってっぺいって吐出はきだしたのです
僕達は又午後五時から二時間程の間倫敦ロンドン市の中心から吐出はきだされて、テエムスに架せられた幾多の大鉄橋を対岸へ渡つてく幾万の労働者の帰路きろに混じつて歩きなが
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
富尾木氏はそれを聞くと、羅字らう屋の釜のやうに鼻から口から白い煙を吐出はきだした。
袋から吐出はきだされたゴチャゴチャとしたコロッケ、カツレツ、ジャガイモの類を妻君さいくんと二人でつくづくと眺める事だろう、どうせ二、三人の小供ものぞきに来る事かも知れない、老母というのも
楢重雑筆 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
博士は手に取って調べ、指のさきにつけて舐めたが、直ぐ吐出はきだしながら
廃灯台の怪鳥 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
こういう万一の場合にのぞんでも、ただの主観の語を吐出はきだすというようなことをせず、御自分をそのまま素直にいいあらわされて、そして結句に、「またかへり見む」という感慨の語を据えてある。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
容易たやす其錢そのぜにくちから吐出はきだしました。
吐出はきだすように三浦はいった。
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
明らかに吐出はきだす流れるたつの口さて又諸國よりの訴訟そしよう人共士農工商しのうこうしやう出家しゆつけ沙門しやもん醫者いしや山伏やまぶしの諸民に至るまで皆々相詰罷在まかりあれば程なく本多長門守領分りやうぶん遠州榛原郡はいばらごほり水呑村九助一件這入はひりませいと呼込よびこみになり一同ハツと答へ願人相手方其外村役人共付そひ白洲へ繰込くりこむ九助は領主より引渡ひきわたしのまゝいまだ足枷あしほだ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「それはならぬ。」と吐出はきだすやうに仰有ると、急にその儘御立ちになつてしまひました。かやうな事が、前後四五遍もございましたらうか。
地獄変 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
其処そこでこのむしのぞみかなときはありつたけのひる不残のこらずつたゞけの人間にんげん吐出はきだすと、それがためにつちがとけてやま一ツ一めんどろとの大沼おほぬまにかはるであらう
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
袋をたべてはいけないから只つゆを吸って吐出はきだしておしまい、筋をとって食べられるようにするから
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「イヤ二巻ふたまきです。御覧の通りマリイ夫人が吐出はきだした血が三個所に附着しております。その血痕のピッタリ重なり合う処が、マリイ夫人の首の太さになっておりますわけで……」
S岬西洋婦人絞殺事件 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
あらゆる防水ぼうすい方便てだてつくされたが、微塵みぢん打碎うちくだかれたる屹水下きつすいかからは海潮かいてうたきごとほとばしりつて、その近傍きんぼうにはこと出來できない。十だい喞筒ポンプは、全力ぜんりよくみづ吐出はきだしてるがなん效能こうのうもない。
まるで霊魂たましひでも吐出はきだしさうな欠伸だ。
とものおもさまくもた。くもは、はツ/\と、つき自分じぶん吐出はきだすやうに、むら/\としろくろい。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
かれあわたゞしくまどひらいて、呼吸いきのありたけをくちから吐出はきだすがごとくにつきあふぐ、と澄切すみきつたやまこしに、一幅ひとはゞのむら尾花をばなのこして、室内しつないけむりく。それがいは浸込しみこんで次第しだいえる。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)