叩頭おじぎ)” の例文
式台わきの横口にこう、ひょこりと出るなり、モオニングのひょろりとしたのが、とまずシルクハットを取って高慢に叩頭おじぎしたのは……
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
植木が大きな声で叫ぶと、嘉助さんは持ち上らぬ頭を一寸あげて、叩頭おじぎをした積りであらう、口の中で何かまご/\云うて居た。
と、いつもの和尚樣が拂子ほつすを持つて出て來て、綺麗なお姫樣の前へ行つて叩頭おじぎをしたと思ふと、自分の方へ歩いて來た。高い足駄を穿いてゐる。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
ハッと気が付いて、「しまった。向後きょうこう気をつけます、御免なさいまし」と叩頭おじぎしたが、それから「片鐙かたあぶみの金八」という渾名あだなを付けられたということである。
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
世間並のお世辞上手な利口者なら町内の交際つきあいぐらいは格別つらくも思わないはずだが、毎年の元旦に町名主まちなぬしの玄関で叩頭おじぎをして御慶ぎょけいべるのを何よりも辛がっていた
前牧師ウィリアムソンは、私たちに変に人を馬鹿にしたような鄭重さで、叩頭おじぎをした。暴漢のウードレーはまた、気狂いのような叫びと、突拍子もない笑い声を上げた。
私はそのまま列席の諸君と白鷹氏にアッサリと叩頭おじぎしただけで、無言のままサッサと部屋を出た。
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
わたくしはこのときほどびっくりしたことはめったにございませぬ。わたくしいそいで座布団ざぶとんはずして、両手りょうてをついて叩頭おじぎをしたまま、しばらくはなん御挨拶ごあいさつ言葉ことばくちからないのでした。
セメントの床を踏む靴音までも畏れて謹んでそうして叩頭おじぎしてゆく。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
宇兵衛は、膝の上へ頭をすりつけるように叩頭おじぎした。
大岡越前の独立 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
宵をちと出遅れて、店と店との間へ、脚がめ込みになる卓子テエブルや、箱車をそのまま、場所が取れないのに、両方へ、叩頭おじぎをして
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と、いつもの和尚様が払子ほつすを持つて出て来て、綺麗なお姫様の前へ行つて叩頭おじぎをしたと思ふと、自分の方へ歩いて来た。高い足駄を穿いてゐる。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
そして叩頭おじぎして御願い申せば、直ちに其の日から生徒になれた訳で、例の世話焼をして呉れる先輩が宿所姓名を登門簿へ記入する、それで入学は済んだ訳なのです。
学生時代 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
自分が書画会をする時には自筆の扇子せんすを持って叩頭おじぎに来たと、馬琴の義理知らずと罵っている。
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
そうして、謹直な叩頭おじぎ
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
親仁おやじは抱しめもしたそうに、手探りに出した手を、火傷やけどしたかと慌てて引いて、その手を片手おがみに、あたりを拝んで、誰ともなしに叩頭おじぎをして
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
『さあ何卒どうぞ。』と内儀さんも言つて、不思議相に二人を見た。二人は人形の様に其処に坐つた。お八重が叩頭おじぎをしたので、お定も遅れじと真似した。源助は
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
大器氏は慌てゝ足を拭つて上ると、老僧はジーッと細い眼を据ゑて其顔を見詰めた。晩成先生は急に挨拶の言葉も出ずに、何か知らず叮嚀に叩頭おじぎをさせられて仕舞つた。
観画談 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
くるまよこに、つか/\と、くろへ、いて乗掛のつかけると、しろに、かげもなく、ぽんとつて、ぺこ/\と叩頭おじぎをした。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あの男は、自分が巡回して來た時、生徒が門まで出て來て叩頭おじぎすれば、徳育の盛んな村だと思ひ、帳簿を澤山備へて置けば整理のついた學校だと思ふに違ひない。
葉書 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
大噐氏はあわてて足をぬぐって上ると、老僧はジーッと細い眼を据えてその顔を見詰めた。晩成先生は急に挨拶の言葉も出ずに、何か知らず叮嚀ていねい叩頭おじぎをさせられてしまった。
観画談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
葛木の背後うしろに迫って、のそっと前へ廻ると、両手をった不器用な、意気地の無い叩頭おじぎをして、がくりと腰を折って
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あの男は、自分が巡回に来た時、生徒が門まで出て来て叩頭おじぎをすれば、徳育の盛んな村だと思ひ、帳簿を沢山備へて置けば整理のついた学校だと思ふに違ひない。
葉書 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
ト老僧は奥を指さして極めて物静ものしずかに優しくいってくれた。大噐氏は自然に叩頭おじぎをさせられて、その言葉通りになるよりほかはなかった。洋燈ランプを手にしてオズオズ立上たちあがった。
観画談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
茶屋のがしきりに、小声でわびを云って叩頭おじぎをしたのは、御威勢でもこの外に場所は取れません、と詫びたんだろう。(構いまへんで、お入りなされ。)
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
『さあ、何卒どうぞ。』と内儀おかみさんも言つて、不思議相に二人を見た。二人は人形の樣に其處に坐つた。お八重が叩頭おじぎをしたので、お定も遲れじと眞似まねをした。源助は
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
あやまつたといふやうに叩頭おじぎして居るのが見えたり隠れたりしてゐる。
観画談 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
御樣子ごやうすせらるゝ、蒋生しやうせいいのち瀬戸際せとぎはよわて、たまりかねて、「お慈悲じひ、お慈悲じひかへります、おかへください。」とたらに叩頭おじぎをするのであつた。
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
すると今度は健の前に叩頭おじぎをして、子供の平生の行状やら癖やら、體の弱い事などを述べて、何分よろしくと頼む。新入生は後から/\と續いて狹い職員室に溢れた。
足跡 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
あやまったというように叩頭おじぎしているのが見えたり隠れたりしている。
観画談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
たちまちくるりとうしろ向きに、何か、もみじの散りかかる小紋の羽織の背筋を見せて、向うむきに、雪の遠山へ、やたらに叩頭おじぎをする姿で、うつむいて
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すると今度は健の前に叩頭おじぎをして、小供の平生へいぜいの行状やら癖やら、体の弱い事などを述べて、何分よろしくと頼む。新入生は後から/\と続いて狭い職員室に溢れた。
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
(はいはい、たった今、きに、)とひょこひょこと敷居に擦附ける、若衆は叩頭おじぎをしいしい、(御寮人様、行届きまへん処は、何分、)と、こう内証で云った。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
上潮に末廣の長い尾を曳く川蒸汽は、仲々異なものであつた。銀座の通り、新橋のステイション、勸工場にも幾度か入つた。二重橋は天子樣の御門と聞いて叩頭おじぎをした。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
と、破れ布子ぬのこの上から見ても骨の触って痛そうな、せた胸に、ぎしと組んだ手を解いて叩頭おじぎをして
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
上潮に末広の長い尾を曳く川蒸汽は、仲々異なものであつた。銀座の通り、新橋のステイシヨン、勧工場くわんこうばにも幾度いくたびか入つた。二重橋は天子様の御門と聞いて叩頭おじぎをした。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
まかり違ったにした処で、往生寂滅をするばかり。(ぐったりと叩頭おじぎして、頭の上へ硝子杯コップを突出す)
山吹 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私は聞えぬ位に「ハイ」と答へて叩頭おじぎをすると、先生は私の頭を撫でて、「お前は余りおとなし過ぎる。」と言つた、そして卓子の上のお盆から、麦煎餅を三枚取つて下すつたが
二筋の血 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
えらい。」と叩頭おじぎかへる。いやしくげんにしてしんぜられざらんか。屠者便令與宿焉としやすなはちともにしゆくせしむ幾遍一邑不啻名娼矣ほとんどいちいふあまねくめいしやうもたゞならず
鑑定 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
私は聞えぬ位に「ハイ」と答へて叩頭おじぎをすると、先生は私の頭を撫でて、「お前は餘りおとなし過ぎる。」と言つた、そして卓子テーブルの上のお盆から、麥煎餅を三枚取つて下すつたが
二筋の血 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
それ東京とうきやう出來できなかつたら、故郷こきやう住居すまひもとめるやうに、是非ぜひ恰好かつかうなのを心懸こゝろがける、と今朝けさ從※いとこふから、いや、つかまつりまして、とつい眞面目まじめつて叩頭おじぎをしたつけ。
月夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
菊池君は私には叩頭おじぎをして、滿々と酌を享けたが、此擧動やうすは何となく私に興を催させた。
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
紫玉の眉のひそむ時、五間ばかり軒を離れた、そこで早や、此方こなたへぐったりと叩頭おじぎをする。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
菊池君は私にも叩頭おじぎをして、満々なみなみと酌を享けたが、此挙動やうすは何となく私に興を催させた。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
紫玉のまゆひそむ時、五けんばかりのきを離れた、其処そこや、此方こなたへぐつたりと叩頭おじぎをする。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そして、私が水を注いでやつた時、ちよつ叩頭おじぎをするのは藤野さん一人であつた。
二筋の血 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
とまた叩頭おじぎをした。が、ゑみわれるやうに、もいはれぬ、成仏じやうぶつしさうな笑顔ゑがほけて
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
亭乎すらりとした體を眞直にして玄關から上つて行くと、早出の生徒は、毎朝、控所の彼方此方から驅けて來て、恭しく渠を迎へる。中には態々渠に叩頭おじぎをするばつかりに、其處に待つてゐるのもあつた。
足跡 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
また絶句して、うむと一つ、樽に呼吸いきを詰めてつかえると、ポカンとした叩頭おじぎをして
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
亭乎すらりとした体を真直まつすぐにして玄関から上つて行くと、早出の生徒は、毎朝、控所の彼方此方かなたこなたから駆けて来て、うやうやしく渠を迎へる。中には態々わざわざ渠に叩頭おじぎをするばつかりに、其処に待つてゐるのもあつた。
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)