却々なか/\)” の例文
うちにも前方まへかたからこんな出来のが一幅欲しい欲しい思つてましたんやが、さて欲しいとなると、却々なか/\手に入りよらんでなあ。」
此所こゝ餘裕よゆうると、これひらくのをこばんで、一狂言ひときやうげんするのであるが、そんな却々なか/\ぬ。ぶる/\ふるへさうで、いやアな氣持きもちがしてた。
日本人種にほんじんしゆといふものは却々なか/\器用きようでござりますから、たちまち一つの発明はつめいをいたし、器械きかい出来できて見ると、これいて一つの新商法しんしやうはふ目論見もくろみおこしました。
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
阿諛おべつかを使はんのが一つぢや。却々なか/\頑としたところがある。そいから、我々新聞記者の通弊たる自己廣告をせんこつちや。
我等の一団と彼 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
有難ありがたう、てると却々なか/\面白おもしろ舞踏ぶたうだわ』とつてあいちやんは、やうやくそれがんだのをうれしくおもひました、『わたし奇妙きめう胡粉ごふんうた大好だいすきよ!』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
午後になつてからも、却々なか/\来る様子はなかつた。瑠璃子は絶えずいら/\しながら厭な呪はしい来客を待つてゐた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
それは泊るとなれば草庵なんぞに寝なくても好いのです。あそこの僧院には宿泊所があります。而も却々なか/\立派な宿泊所です。わたしはあのマキンと云ふ男の辯護を
「ふん、君の話では奴却々なか/\用心して尻尾を掴ませないと云う事だったが、屑籠のような誰でも覗きそうな所に、封筒の書損いが抛り込んであったのは可笑しいね」
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
さうして、組みついて来る弟を抱き絞めてグルグル振り回したり、倒しかけて又引き起したりしながら、煽てる為に「此奴は却々なか/\強いぞ。うツかりすると負けさうだ。」
眠い一日 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
芥川君の教へてくれた豆板といふ砂糖と豆とで固めた菓子を買つたが、却々なか/\しつかりした味があつて旨かつた。みすやの針は宿のおかみさんに頼んで置いたから買はぬことにした。
京洛日記 (旧字旧仮名) / 室生犀星(著)
ロチスター氏は、外科醫の命によつて、その晩は早く床に入つた容子であつたが、翌朝になつても却々なか/\起きては來なかつた。彼が階下へ下りて來たのは、事務をる爲めであつた。
『蓬莱曲』は透谷全集には入つて居るが、併し初版の原本は却々なか/\見つからない。
明治詩壇の回顧 (新字旧仮名) / 三木露風(著)
くさ邪魔じやまをして、却々なか/\にくい。それにあたらぬ。さむくてたまらぬ。蠻勇ばんゆうふるつてやうやあせおぼえたころに、玄子げんし石劒せきけん柄部へいぶした。
『さうぢや。僕も聞いとつた。何しろ彼の男あ一癖あるな。第一まあつらを見い。ぽかんとして人の話を聞いとるが、却々なか/\油斷ならん人相があるんぢや。』
我等の一団と彼 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
むかし徳川初代の頃に本願寺の役人に下間某しもつまなにがしといふものがあつた。乱舞らつぷにかけては却々なか/\巧者人かうしやじんで、徳川家の前などでも、いつも召されて乱舞を舞つてゐた。
が、此女性が、信一郎の心の裡に起した動揺は、お経の声などに依つて却々なか/\静まりさうにも見えなかつた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
却々なか/\そんな機會きくわいさうにもありませんでした、あいちやんは所在しよざいなさに四邊あたりながはじめました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
然し、彼の書信或いは上願書の類を見ると、彼は決して狂気とは思えない。却々なか/\計画的な所があり、理路も時に辻棲の合わない事はあるが、多くは整然として乱れていない。
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
山籠の暮しは却々なか/\つらい。断食をしたり、祈祷をしたりするのがつらいのではない。そんなことはセルギウスの為めには造作ぞうさはない。つらいのは、思も掛けぬ精神上の煩悶があるからである。
博士「交際は大分広いらしいですが、却々なか/\自尊心が強いと見えて……」
風媒結婚 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
だが、その日の牛肉は男爵にもなれないで、一生き使はれた古牛ひねうしの肉だつたので、齲歯むしばの多い岩村男にとつては、噛み切るだけが却々なか/\容易な事ではなかつた。
瑠璃子に、さう言はれても、青年は却々なか/\話し出さうとはしなかつた。沈黙が、二三分間彼等の間に在つた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
電車でんしやし、汽車きしや大森おほもりまでく。それからくるまはしらせるなど、却々なか/\手間取てまとるのだが、それでもく。
いゝえ、構ひませんから、も少し借して下さい。』と言つて却々なか/\放さない。母親は笑つて居た。
札幌 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
最初さいしよやつと一二ふんかんそれをいてたのも、却々なか/\容易よういなことではありませんでした。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
「人間の性慾といふものは、却々なか/\おさへ切れないものだから、それを遂げさす機関も無くてはならない。」
後に聞いたが、編輯長は松永の退社に就いて、最初却々なか/\聞き入れなかつたさうだ。半年なり、一年なりゆつくり保養してゐても、社の方では別に苦しく思はない、さう言つたさうだ。
我等の一団と彼 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
路傍ろばうくさうへこしけて、握米飯にぎりめしきつし、それからまたテクリしたが、却々なか/\あつい。
十億長者——一口に言つてしまふと何でもないが、実際それだけの概念をるのは却々なか/\容易ならぬ事だ。
いくら注意ちういはらつても、却々なか/\我々われ/\に——其遺物そのゐぶつの一破片はへんでも——れることむづかしからうとかんがへてたのが、う、容易ようゐ發見はつけんせられてると、おほいに趣味しゆみかんぜずんばあらずである。
『初めて乞食をして歩いてみると、却々なか/\辛いものですなア。』と言つた。
葉書 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
幻花子げんくわし種々いろ/\珍品ちんぴんれたことから、地主ぢぬしとの衝突奇談しようとつきだん小作人こさくにんとの大喧嘩おほけんぐわ小南保之助氏こみなみやすのすけし貝塚かひづか奇遇談きぐうだんやら、足立博士あだちはかせ學士時代がくしじだい此所こゝはちされたはなしやら、却々なか/\面白おもしろい。
「岡本さん、あんたは却々なか/\食へん男ぢやな。」