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其奴
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そいつ
ふりがな文庫
“
其奴
(
そいつ
)” の例文
はて、不思議だと思いながら、
抜足
(
ぬきあし
)
をして
窃
(
そっ
)
と
尾
(
つ
)
けて行くと、不意に赤児の泣声が聞えた。
熟
(
よく
)
視
(
み
)
ると、
其奴
(
そいつ
)
が赤児を抱えていたのだ。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
スルト
其奴
(
そいつ
)
が矢庭にペタリ尻餠を
搗
(
つ
)
いて、
狼狽
(
うろたえ
)
た眼を円くして、ウッとおれの
面
(
かお
)
を看た其口から血が
滴々々
(
たらたらたら
)
……いや眼に見えるようだ。
四日間
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
それと同じ様なことが外に二三軒あつたので足がついて、
其奴
(
そいつ
)
が警察へ引かれる。お糸さんもかかりあひとあつて警察へ呼び出された。
二黒の巳
(新字旧仮名)
/
平出修
(著)
しかも
其奴
(
そいつ
)
が不良青年なので、しかも奥さんより年下だったので、それだのに彼女は——奥さんですがね、誘惑されたのでございますよ。
奥さんの家出
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
其奴
(
そいつ
)
を此処へ引摺り出しておくれ、私も
独身
(
ひとりみ
)
じゃアなし、
亭主
(
ていしゅ
)
もあるからそんな事をされては亭主に対して済みません、引出しておくれよ
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
▼ もっと見る
代助は
其奴
(
そいつ
)
に体をごしごし
遣
(
や
)
られる度に、どうしても、
埃及人
(
エジプトじん
)
に遣られている様な気がした。いくら思い返しても日本人とは思えなかった。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
しかし
其奴
(
そいつ
)
は死ななかったらしく、今でも図々しく俺を追いまわしているが、そんな奴を恐れる俺じゃない。唯気にかかるのは非国民の名だ。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「そうか、
其奴
(
そいつ
)
が、僕の『
天母生上の雲湖
(
ハーモ・サムバ・チョウ
)
』における経験を聴きたいというのだね。よろしい、今夜そのちんまりとした探検屋に逢ってやろう」
人外魔境:03 天母峰
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
トその樹の下に、
笊
(
ざる
)
か何か手に持って、まあ、膝ぐらいな処まで、その水へ入って、そっと、目高か鮒か、
掬
(
すく
)
ってる
小児
(
こども
)
がある。
其奴
(
そいつ
)
が自分で。
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その声は
何処
(
どこ
)
からした? 私は
其奴
(
そいつ
)
らの
背後
(
うしろ
)
を差覗くやうに幾度か蒼い光の中を透かして見た。猫児一匹ゐさうにもない。
桐の花
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
そうしてあなた、たった一と晩ですっかり
馴
(
な
)
れ馴れしくなっちまって、ナオミさんは
其奴
(
そいつ
)
のことを『ウイリー、ウイリー』ッて呼ぶんだそうです
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「何に、つい二、三日前にね、山の中で林務官を殺して逃げた奴があるでね、
其奴
(
そいつ
)
が何でも坊様の
風
(
ふう
)
をして逃げたって事だで、其奴を探すんずらい。」
木曽御嶽の両面
(新字新仮名)
/
吉江喬松
(著)
「アハハハ
其奴
(
そいつ
)
は大笑いだ……しかし可笑しく思ッているのは鍋ばかりじゃア有りますまい、
必
(
きっ
)
と
母親
(
おっか
)
さんも……」
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
が、それを聞いて、しんじつ眉をひそめるものよりも、手を打って「
其奴
(
そいつ
)
ァいゝ」と喜ぶものゝほうが多かった。
春泥
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
若し途中で、或は
蹇
(
あしなへ
)
、或は
盲目
(
めくら
)
、或は癩を病む者、などに逢つたら、(その前に能く催眠術の奥義を究めて置いて、)
其奴
(
そいつ
)
の頭に手が触つた丈で癒してやる。
葬列
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
「
其奴
(
そいつ
)
が外国の軍事探偵だ、そして春田式C・C・D潜水艦の機密図を盗むために貴様を見張に雇ったのだ」
危し‼ 潜水艦の秘密
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「私の姉を殺し、父親を牢に入れ、家を潰した上、私を騙して、水野様を殺させようとした大悪人は
其奴
(
そいつ
)
だ」
礫心中
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
呼んでいる……ああ
其奴
(
そいつ
)
がおれを引きずりこんでおれを押しつつんでしまった……おれは今引金をひく……
ピストルの蠱惑
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
穴はかなり大きかったので、前夜家の中にはいり込んできて扉の所で立ち聞きした
其奴
(
そいつ
)
が通ってゆく所を、見て取ってやろうと思ったのである。果してそれは男であった。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
それから、第四条の、その小僧のことが聞きてえんならだ、畜生! 言ってくれるが、
其奴
(
そいつ
)
は人質じゃねえか? 人質をなくしちまおうってえのか? いいや、いけねえ。
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
其奴
(
そいつ
)
を別に恐れるわけではないが、それでは円満に事務がとれないだろうじゃないか。そこで己がつまり今日は課一同の懇親会を開いたのだ。どこでって、料理屋はT——さ。
地上:地に潜むもの
(新字新仮名)
/
島田清次郎
(著)
「
其奴
(
そいつ
)
はよつぽど太い奴だね」彼はそんな事を答へて置いて、「
然
(
さ
)
うだ」とひとり考へた。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
(根本的に言えば、彼はすべてをあざけって何物をも信じなかった。)しかし彼は自分の老友クリストフの悪口をあえて言う者があれば、
其奴
(
そいつ
)
の頭を打ち破ったかもしれない。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
昌允
其奴
(
そいつ
)
は、留守番なんかしとらんです。須貝さんと、一ん日テニスしてたんですよ。
華々しき一族
(新字新仮名)
/
森本薫
(著)
「
誰
(
たれ
)
か
其奴
(
そいつ
)
には
尻押
(
しりおし
)
が有るのだらう。亭主が有るのか、
或
(
あるひ
)
は
情夫
(
いろ
)
か、何か有るのだらう」
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
其奴
(
そいつ
)
ア判ら無えがナ、今度ア今迄来た様な道庁の
木
(
こ
)
ッ
葉
(
ぱ
)
役人たア違うから、何とか目鼻はつけて呉れるだろう、何時も何時も胡麻化されちゃア
返
(
けえ
)
るんだが、今度ア
左様
(
そう
)
は
往
(
い
)
くめエ
監獄部屋
(新字新仮名)
/
羽志主水
(著)
「ならぬッ。こうなれば山手組の意地としても、
其奴
(
そいつ
)
を渡すことは金輪際ならぬわい」
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「ヒヤヒヤ僕も同説だ、忠君愛国だってなんだって牛肉と両立しないことはない、それが両立しないというなら両立さすことが出来ないんだ、
其奴
(
そいつ
)
が馬鹿なんだ」と綿貫は大に
敦圉
(
いきま
)
いた。
牛肉と馬鈴薯
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
電車の車掌なども、轢死者があつた場合は、
其奴
(
そいつ
)
が男か女か、
老人
(
としより
)
か子供か、馬鹿か悧巧かを吟味する前に、先づ履物を調べる。そして履物がちやんと揃へて脱ぎ捨ててあるのを見ると
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
私は徹夜をしてもきっと間に合わせると約束をして
其奴
(
そいつ
)
を撃退してやったが
鳥料理
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
昨夜なぞは、
林檎畠
(
りんごばたけ
)
のようなところへ追詰められて、樹と樹の間へ私の身体が
挾
(
はさま
)
って、どうにも逃げ場を失って了った……もうすこしで
其奴
(
そいつ
)
に捕まるかしらん……と思ったら目が
覚
(
さ
)
めました。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
またこんな人間もいるだろう。
其奴
(
そいつ
)
はきょうあたり大丈夫で、
息張
(
いば
)
って歩いている。ところが詰まらない、偶然の出来事で、
此奴
(
こいつ
)
は一二週間の内に死んでしまうのだ。そのくせ死という事なんぞを
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
其奴
(
そいつ
)
はいけない、
己
(
お
)
れは
何
(
ど
)
うしても
出世
(
しゆつせ
)
なんぞは
爲
(
し
)
ないのだから。
わかれ道
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
昨夜
(
ゆうべ
)
の羽織や袴を畳んで箪笥にしまい込もうとした時、「
其奴
(
そいつ
)
は小野が、
余所
(
よそ
)
から借りて来てくれたんだから……。」と
低声
(
こごえ
)
に言って風呂敷を出して、自分で叮寧に包んだ、
虚栄
(
みえ
)
も人前もない様子が
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
其奴
(
そいつ
)
へ
合
(
あは
)
せて
唄
(
うた
)
あんだからゆつくり
行
(
や
)
んなくつちやなんねえな
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
「ヘエー
其奴
(
そいつ
)
ア便利だ、電車の三銭どころの話ヂヤねいや」
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
「でも……どんな男だ、
其奴
(
そいつ
)
は……」
大脳手術
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
何しろ、
其奴
(
そいつ
)
の正体を見届けようと思って、講師は
先
(
ま
)
ず
燐寸
(
まっち
)
を
擦付
(
すりつ
)
けると、
対手
(
あいて
)
は
俄
(
にわか
)
に刃物を
投
(
ほう
)
り出して、両手で顔を隠して
了
(
しま
)
った。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
代助は
其奴
(
そいつ
)
に
体
(
からだ
)
をごし/\
遣
(
や
)
られる
度
(
たび
)
に、どうしても、
埃及人
(
エジプトじん
)
に
遣
(
や
)
られてゐる様な気がした。いくら思ひ返しても日本人とは思へなかつた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
宮野邊源次郎と云って
旗下
(
はたもと
)
の次男だが、
其奴
(
そいつ
)
が悪人で、萩原新三郎さんを
恋慕
(
こいした
)
った娘の
親御
(
おやご
)
飯島平左衞門という旗下の奥様
附
(
づき
)
で来た女中で
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「ドニメ」と私は
厳
(
いかつ
)
い声で「少しお前に訊きたいものだ。今から丁度二十日程前だ、ボヘミアの奴等が来ただろう?
其奴
(
そいつ
)
等
何方
(
どっち
)
へ突っ走った?」
西班牙の恋
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
するとだ……まだその踏切を越えて
腕車
(
くるま
)
を捜したッてまでにも
行
(
ゆ
)
かず……
其奴
(
そいつ
)
の
風采
(
ふうつき
)
なんぞ
悉
(
くわ
)
しく乗出して聞くのがあるから、私は薄暗がりの中だ。
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「アッ……ナルホドね。そんな人間がもし居るとすれば、
其奴
(
そいつ
)
はトテモ素晴しい新式の犯罪者だよ。たしかに君の受持だね。そいつを探り出すのは……」
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
すると一軒の絵双紙屋の
店前
(
みせさき
)
で、ひょッと眼に付いたのは、今の雑誌のビラだ。さア、
其奴
(
そいつ
)
の垂れてるのを一寸瞥見しただけなんだが、私は胸がむかついて来た。
予が半生の懺悔
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
「よし、
其奴
(
そいつ
)
は任せた。縛りあげておきたまえ、すぐ警視庁からやってくるから、僕は横浜へ行くぞ‼」
黒襟飾組の魔手
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
甲田は
愈
(
いよいよ
)
俺は
訛
(
だま
)
されたと思つた。そして、
其奴
(
そいつ
)
が何か学校の話でもしなかつたかと言つた。
葉書
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
この何者かの非常に横柄な口調は、
其奴
(
そいつ
)
が闇で覆面して居るからだと思ふと、彼は非常に
憤
(
いきどほ
)
ろしかつた。彼はいきなり其処にあつた杖をとると、傘もささずに道の方へ飛び出した。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
彼奴の家へ談判するにも
其奴
(
そいつ
)
を確かめた上でなければ軽率過ぎるし、そうかと云って秘密探偵でも頼まなければ、ちょっと確かめる方法はなし、………と、散々思案に余った揚句
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
それから
強
(
つえ
)
えぞ、——
獅子
(
ライオン
)
だってのっぽのジョンのそばあたりにもよれやしねえんだぜ! 己は、あの男が四人の者と取っ組み合って、
其奴
(
そいつ
)
らの頭を叩き合したのを見たことがある。
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
おお、宝井が退学を
吃
(
く
)
つたのも、
其奴
(
そいつ
)
が債権者の
重
(
おも
)
なる者だと云ふぢやないか。余程好い女ださうだね。
黄金
(
きん
)
の腕環なんぞ
篏
(
は
)
めてゐると云ふぢやないか。
酷
(
ひど
)
い奴な! 鬼神のお松だ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
其
漢検準1級
部首:⼋
8画
奴
常用漢字
中学
部首:⼥
5画
“其奴”で始まる語句
其奴等