しち)” の例文
一体、何家どこを捜す? いやさ捜さずともだが、仮にだ。いやさ、しちくどう云う事はない、何で俺が門をうかごうた。唐突だしぬけに窓をのぞいたんだい。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
丈「いや実にどうもしばらくであった、どうしたかと思っていたが、しちねん以来このかたなん音信おとずれもないから様子がとんと分らんで心配して居ったのよ」
「何かしちむずかしいことを言っているが、何かい、酒を一杯飲ませてくれて、五十貰えば八景の名所案内をしてくれるとでもいうのかい」
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ただ読んでさえしちむずかしいのに弱らせられるんだから、あの気難かし屋に捉まったら災難だ、頭からガミガミと叱られるなら我慢し易いが
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
コレ吉兵衛きちべえ談義流の御説諭をおれに聞かせるでもなかろう、御気の毒だが道理と命と二つならべてぶんなげのしち様、昔は密男まおとこ拐帯かどわかしてのけたが
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
この模様風の背景をひかへし人物もまたきわめて人形らしく、その男は小姓こしょう吉三きちざその女は娘おしちならんか。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
昔の八百屋やおやしちの世界から、女性の放火と云うものは、何となく激しい熱情的なものを感じさせますが、女の罪名にも、強盗なんて云うのは聞いても怖い感じです。
「ばかだなあ、あんな女を思って。思ったってしかたがないよ。第一、君と同年おないどしぐらいじゃないか。同年ぐらいの男にほれるのは昔の事だ。八百屋やおやしち時代の恋だ」
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
恋桜反魂香こいざくらはんごんこう」——つまり、おしちが、吉三きちざの絵姿をくと、煙の中に吉三が姿を現わして、所作になる——という、あの「傾城浅間嶽けいせいあさまだけ」を翻あんしたもの——そして
京鹿子娘道成寺 (新字新仮名) / 酒井嘉七(著)
まだ下谷したや長者町ちょうじゃまちで薬を売っていた山崎の家へ、五郎作はわざわざ八百屋やおやしちのふくさというものを見せに往った。ふくさは数代まえ真志屋ましやへ嫁入したしまという女の遺物である。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
でも、三十五氏はまだいいが、三十六みそろく、三十しち、三十はち、それから三十はをかしい。
三十五氏 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
とき神學しんがく議論ぎろんまであらはれて一しきりはシガーのけむ熢々濛々ぼう/\もう/\たるなかろくしち人面じんめん隱見いんけん出沒しゆつぼつして、甲走かんばしつた肉聲にくせい幾種いくしゆ一高一低いつかういつてい縱横じゆうわうみだれ、これにともな音樂おんがくはドスンとたくおと
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
しちおき八おきして、しまひにその男のために年期を増すなんて逆上のぼせ方をして、そのためにお客がすつかり落ちてしまつて、男にも棄てられてしまふつて言つた風なの。そんなのが江戸児に多いのよ。
或売笑婦の話 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
なぜなら、この森が私へこの話をしたあとで、私は財布からありつきりの銅貨をしち銭出して、お礼にやつたのでしたが、この森は仲々受け取りませんでした、この位気性がさつぱりとしてゐますから。
狼森と笊森、盗森 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
油絵が万能しちりんの代用はしないはずだ。
油絵新技法 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
「黙りやがれッ、しちッくどいッ」
監獄部屋 (新字新仮名) / 羽志主水(著)
八百屋やほやしちがおしおきの
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
五感がしち感にえる
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
しち年前ねんぜんの事があらわれてはのががたわが身の上ゆえ、いっそ荒々しく云って帰した方がよろしかろうと思いまして
赤ら顔の大入道おおにゅうどうの、首抜きの浴衣ゆかたの尻を、しちのづまでひきめくつたのが、にがり切つたる顔して、つか/\と、きざはしを踏んであがつた、金方きんかたなんぞであらう、芝居もので。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
一 説明しちくどき時は肩が張り描写長たらしき時は欠伸あくびの種となる。いづれも上手とはいひがたし。
小説作法 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
運はさいの眼の出所でどころ分らぬ者にてお辰の叔父おじぶんなげのしち諢名あだな取りし蕩楽者どうらくもの、男はけれど根性図太くたれにも彼にもうとまれて大の字に寝たとて一坪には足らぬ小さき身を
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
老妻お百とよめのお道との三角葛藤はしばしば問題となるが、馬琴に後暗い弱点がなくとも一家の主人が些細な家事にまでアアしちむずかしい理窟をこねるようでは家がめる。
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
「第しちとうしやう、なまりのメタル。」
かしはばやしの夜 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
わがあるしち階のいへ
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
男「井生森又作という者、しちねんぜんに他県へ参って身を隠して居たが、今度東京へ出て参ったから、春見君に御面会いたしたいと心得て参ったのだ、取次いでおくんなせえ」
田舎者のはなしはしちくどくして欠伸あくびの種となり江戸児えどっこの早口は話の前後多くは顛倒てんとうしてその意を得がたし。談話の善悪上品下品下手へた上手じょうずはその人にあり。学ぶも得やすからず。
小説作法 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
女郎屋の朝の居残りに遊女おんなどもの顔をあたって、虎口ここうのがれた床屋がある。——それから見れば、旅籠屋や、温泉宿で、上手な仕立は重宝ちょうほうで、六の名はしち同然、融通ゆうずうは利き過ぎる。
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しち、七、しずかにしろ、一体貴様が分らぬわ、貴様の姪だが貴様と違って宿中しゅくじゅうでの誉者ほまれもの妙齢としごろになっても白粉おしろいトつつけず、盆正月にもあらゝ木の下駄げた一足新規に買おうでもないあのお辰
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「第しちとうしょう、なまりのメタル。」
かしわばやしの夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
それでも竹、へい、あのいきがった年増としまの女中でござります。あれは貴女、二階のしち番からおぜんを下げまして、ちょうど表階子おもてばしご下口おりぐちへかかりました処で、ソレ地震でござりましょう。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
塩辛しおからき浮世のさまかしち
突貫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
お三輪といって今年がしち、年よりはまだ仇気あどけない、このお才の娘分。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)