あつ)” の例文
と、乳人や女房たちが額をあつめて相談しながら溜息をついたり、それとなく人を出して捜索させたりしていることも珍しくなかった。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
こうして、三傑が額をあつめて密談いよよたけなわにして、いつ果つべしとも見えない時分、次の間から、恐る恐る三太夫の声として
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
三人の若い矢取女は、どうしていゝのか見當も付かぬらしく部屋の隅つこに額をあつめて、脈絡もないことをヒソヒソと話してゐる樣子です。
三人連れだって両国の旅籠屋はたごやまでもどって来た時は、互いに街道の推し移りを語り合って、今後の成り行きにひたいあつめた。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
男湯の方の出来事に注意をあつめていた警官連や他の男達は、どっと、その声に誘われて女湯の方へ雪崩なだれ込んで来た。
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「何だ、何を見てゐるんだ」と云ひながら廊下へた。三人はくびあつめて画帖を一枚毎につてつた。色々な批評が出る。みんな好加減いゝかげんである。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
彼等は両々、三々頭をあつめ、声をひそめ、歎声を洩らして曰く、斯かる有様にては国の滅するも遠からじと。
鉱毒飛沫 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
へいげんは金時計を失いて、たちまち散策の興覚め、すごすご家に帰りて、燈下に愛妾と額をあつめつつ、その失策を悔い且つ悲しみ、怏々おうおうとしてたのしまざりし。
金時計 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
となって、三人寄れば文珠もんじゅの智恵、伴大次郎、江上佐助、有森利七の三人が、あたまをあつめて考えた末。
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
閑さえあれば夫婦で額をあつめて婿探しの工夫をらしておりますうちに、叔父と叔母とのドチラが先に気が附くともなく、私たち二人の事を思い出したのだそうです。
霊感! (新字新仮名) / 夢野久作(著)
これには裁判官もはたと当惑し、如何にしてこの裁判の強制執行をしたものかと、額をあつめて小田原評議に日をうつす中に、毛虫は残らず蝶と化して飛び去ってしまった。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
そとあまりにさむいからといふので念佛ねんぶつんでからたれかゞ雨戸あまどを二三まいいたのでれううち薄闇うすぐらくなつてた。佛壇ぶつだんまへにはばあさんが三四にんでひそ/″\とひたひあつめてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
今朝、漁師急馳して海に出で、村媼そんあう囂々がう/\として漁獲を論ず。ひるを過ぐる頃、先づかへるの船は吉報をもたらし来る。之に次ぐものは鰹魚を積んで帰り、村中の老弱海浜にあつまる。
客居偶録 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
当時取急ぎて普請せししばの新宅は、いまだ人の住着かざるに、はや日にくろみ、或所は雨に朽ちて、薄暗き一間に留守居の老夫婦の額をあつめては、寂しげに彼等の昔を語るのみ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
姉さん達は額をあつめて弱っていると、突然だしぬけ呼鈴ベルが鳴った。愈〻来たか、やれやれとみんなが急に元気づくと、何の事だ馬鹿馬鹿しい。お島が澄まして名刺を持って入って来た。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
お庄は隙になった茶ので、今やっと裏口から届けて来た、着物の包みをほどきながら、母親と額をあつめて話し合った。包みのなかには、正雄に着せる紋附や袴も入っていた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
室内の温気うんきの耐へ難きに、吾はそつと此処を滑り出でゝ喫煙室の方に行きぬ。婦人室の前を過ぐる時、不図ふと室内を見入れたれば、寂々せき/\たる室の一隅の暖炉をようし首をあつめて物語る二人の美人。
燕尾服着初めの記 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
分れた組は再びひたひあつめた。明かに彼等はこの場面の現はした言葉または文句に就いて意見が合はないのであつた。代表者のデント大佐は要求した。「全體の場面を。」そこで幕は再びりた。
時ありて梁山泊の豪傑連が額をあつめてひそかに勢力拡張策を講ずるなど随分変梃来へんてこな事ありてその都度提調先生ひそかに自ら当代の蕭何しょうかを以てるといふ、こんな学堂が世間にまたとあるべくも覚えず候
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
額をあつめて、摩利信乃法師まりしのほうし中御門なかみかどの姫君とのいきさつを互に推量し合いながら、どうかしてあの天狗法師を遠ざけたいと、いろいろ評議を致しましたが、さて例の恐ろしい幻の事を思い出しますと
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
三人の若い矢取女は、どうしていいのか見当も付かぬらしく部屋の隅っこに額をあつめて、脈絡もないことをヒソヒソと話している様子です。
あとの連中はなすところを知らないでいたが、同じ旧家の佐野だとか松本だとかいう老人が飛んで来て、望月の老主人を慰めながら相談のひたいあつめていると
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
あたか加能丸かのうまる滅亡めつばう宣告せんこくせむとて、惡魔あくまつかはしたる使者ししやとしもえたりけむ、乘客等じようかくらは二にんにん彼方あなた此方こなたひたひあつめて呶々どゞしつゝ、時々とき/″\法華僧ほつけそう流眄しりめけたり。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
老臣共は寄り/\ひたいあつめて、こう殿様が引っ込んでばかりおいでになると城中の士気も衰えるし、何より忌まわしいうわさの立つのが面白くないから、一つ世直しに花やかな催しをして
炉端ろばたに額をあつめて、飽々する時間を消しかねるような怠屈な日が多かった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
半蔵は栄吉や清助をそこへ呼んで、四人でその人選にひたいあつめた。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
三人首をあつめて低声の話に移った。その話がすんだ時
と僕達は朧夜の街頭に立ち止まって、こうべあつめていた。
人生正会員 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
釆女が登城して、首尾よく御目見得を濟ませた晩、大場家の奧には、釆女と相澤半之丞と平次が首をあつめて居りました。
その時、検視の役人が二三、こそこそと額をあつめました。まもなく、右の小さい尼は、別な人に促されて、退引のっぴきならず数珠じゅずを納めて縄をとりあげたものです。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
渠らは千体仏のごとくおもてあつめ、あけらかんとおとがいを垂れて、おそらくはにもるべからざるこの不思議の為体ていたらくを奪われたりしに、その馬は奇怪なる御者と、奇怪なる美人と
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いたずらに額をあつめてどうしようこうしようと云うばかりで一向決断に至らない。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
俊一君がやって来て、親子三人少時しばらくこうべあつめた。
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
日が暮れると、一応喜八の家へ引揚げて、平次と八五郎と三人、額をあつめましたが、こうなると平次にもなかなか良い智恵が浮かばなかったのです。
薩摩屋敷の中では、一群の豪傑連が、その時分、ひたいあつめて、江戸城へ火をつけることの相談です。江戸城の西丸のどこへ、どういう手段で火をつけるかということ。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
日露開戦の当初にもまたあるいは同じ困難に陥りはせぬかという危惧きぐからして、当時の事を覚えている文学者仲間には少からぬ恐慌きょうこうき起し、額をあつめた者もなきにしもあらずであったろう。
その時分はいつも同室生が寝室に額をあつめては、夜おそくまで蝋勉と称して蝋燭をつけて勉強する(その実駄弁を弄する)のが習慣になつて居たのだが、その晩も電燈が消えてしまつてから長い間
(新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
日が暮れると、一應喜八の家へ引揚げて、平次と八五郎と三人、額をあつめましたが、斯うなると平次にもなか/\良い智慧が浮かばなかつたのです。
采女が登城して、首尾よく御目見おめみえを済ませた晩、大場家の奥には、采女と相沢半之丞と平次が首をあつめておりました。
八疊の質素な部屋に、首をあつめるやうに並んだ六人は、何を切出すかわからぬ、錢形平次の話に固唾かたづを呑みます。
平次と喜三郎は庭下駄を突つかけて、それでも八五郎に誘はるゝまゝ、植込みの蔭、土藏の横に首をあつめました。
ところ/″\に首をあつめながら、大きい聲で物も言へないやうな、不思議な壓迫感は、家中の者をすつかり縮み上がらせて、不吉な風が、眞夏の家中へ、隙間といふ隙間から
庭木戸を押し開けて入ると、中は小大名の下屋敷ほどの豪勢さ、泉石のたゝずまひも尋常でなく、縁側のすみ、座敷のくまに、二人三人の男女が、額をあつめて何やらコソコソと話して居るのです。
源太郎、源助夫婦、お銀、お徳——は首をあつめて、金釘流の判讀中。
源太郎、源助夫婦、お銀、お徳——は首をあつめて、金釘流の判読中。
母屋へ引揚げて、同心南沢鉄之進は、平次と二人額をあつめました。
平次も、石津右門も、大垣伊右衛門も首をあつめました。
平次も、石津右門も、大垣伊右衞門も首をあつめました。