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髣髴
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ほうふつ
ふりがな文庫
“
髣髴
(
ほうふつ
)” の例文
学者である以上、その態度は誠に立派なもので、
悉
(
ことごと
)
く書を信ぜば書無きに
如
(
し
)
かずといった孟子の
雄々
(
おお
)
しさを
髣髴
(
ほうふつ
)
させるのであります。
新案探偵法
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
奇怪にも曲馬団の交渉報告等に不必要な暗号電報で、しかも国際文書に
髣髴
(
ほうふつ
)
とした非常な長文電報である事を確かめた一事であった。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
この城山つづきを東山一帯に
見做
(
みな
)
すことも決して無理ではない。無論、京都の規模には及ばないが、その情趣の
髣髴
(
ほうふつ
)
は無いではない。
大菩薩峠:31 勿来の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
小ぢんまりした宮廷生活を
髣髴
(
ほうふつ
)
たらしめるものであろうし、また反面には、従えた
召使
(
バトラー
)
の数に、彼等の病的な恐怖が窺えるのだった。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
よそに行っていて不図わが家の情景が
髣髴
(
ほうふつ
)
する、そんな鮮やかさで、西日を受け赤銅色に燃え立っている
欅
(
けやき
)
の梢や校舎の白い正面。
雑沓
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
▼ もっと見る
その後、樗牛の墓というと、必ず自分の記憶には、この雨にぬれている菫の紫が四角な大理石といっしょに
髣髴
(
ほうふつ
)
されたものである。
樗牛の事
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
かくの如く嘉靖または万暦の初年と康煕の初年との間、
殆
(
ほとん
)
ど百年
乃至
(
ないし
)
百五十年のうちにも
髣髴
(
ほうふつ
)
として
如此
(
かくのごとき
)
の音韻変化の迹がたどられる。
南嶋を思いて:――伊波文学士の『古琉球』に及ぶ――
(新字新仮名)
/
新村出
(著)
羽目
(
はめ
)
には、天女——
迦陵頻伽
(
かりょうびんが
)
が
髣髴
(
ほうふつ
)
として舞いつつ、かなでつつ
浮出
(
うきで
)
ている。影をうけた
束
(
つか
)
、
貫
(
ぬき
)
の材は、鈴と草の花の玉の
螺鈿
(
らでん
)
である。
七宝の柱
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
顔しかめたりとも額に
皺
(
しわ
)
よせたりともかく印象を明瞭ならしめじ、事は同じけれど「眉あつめたる」の一語、美人
髣髴
(
ほうふつ
)
として前にあり。
俳人蕪村
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
その夜の情景は
髣髴
(
ほうふつ
)
と浮んで来たが、にぎやかな和気より、別のものがまず彼をおそって来た。あんまはしずかな口調で話題を変えた。
幻化
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
春章
(
しゅんしょう
)
写楽
(
しゃらく
)
豊国
(
とよくに
)
は江戸盛時の演劇を眼前に
髣髴
(
ほうふつ
)
たらしめ、
歌麿
(
うたまろ
)
栄之
(
えいし
)
は不夜城の歓楽に人を
誘
(
いざな
)
ひ、
北斎
(
ほくさい
)
広重
(
ひろしげ
)
は閑雅なる
市中
(
しちゅう
)
の風景に遊ばしむ。
浮世絵の鑑賞
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
しかし、一重ながら同じふっくりと開く黄色い花は、紅の勝った紫色の花底を覗くまでもなく、友太にネリの畑を
髣髴
(
ほうふつ
)
させたのであった。
和紙
(新字新仮名)
/
東野辺薫
(著)
消える印象の
名残
(
なごり
)
——すべて人間の神秘を叙述すべき表現を数え尽してようやく
髣髴
(
ほうふつ
)
すべき霊妙な
境界
(
きょうがい
)
を通過したとは無論考えなかった。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
牡丹の妖艶
嬌冶
(
きょうや
)
の態は単に「美しき人」だけでは十分に現れない。「帯せぬ」の一語あって、はじめてこれを心裏に
髣髴
(
ほうふつ
)
し得るのである。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
市平の心には、昔の思い出が
髣髴
(
ほうふつ
)
として湧きあがった。自分の生まれた土地の尊さが、彼の今の心には、不思議な力で神秘なものとされた。
土竜
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
彼は到底現実の真佐子を得られない
代償
(
だいしょう
)
としてほとんど真佐子を
髣髴
(
ほうふつ
)
させる美魚を創造したいという意慾がむしろ初めの覚悟に勝って来た。
金魚撩乱
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
彼の目の前に、再び現実のそれよりはなお一層高き神秘なる美と権威とにおいて、長老と、モニカの結合体が
髣髴
(
ほうふつ
)
と現われた。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
何か奇怪な
幻影
(
げんえい
)
のようなものが頭の隅にこびりついていて、それが少しずつ
髣髴
(
ほうふつ
)
とよみがえって来、朝の光が次第に明るさを増すのにつれて
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
髣髴
(
ほうふつ
)
として意気な声や微妙な節廻しの上に
顕
(
あら
)
われて、吾心の底に潜む何かに触れて、何かが想い出されて、何とも言えぬ懐かしい心持になる。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
以上
(
いじやう
)
で、
吾
(
わ
)
が
敬愛
(
けいあい
)
する
讀者
(
どくしや
)
諸君
(
しよくん
)
は
髣髴
(
ほうふつ
)
として、
此
(
この
)
艇
(
てい
)
の
構造
(
かうざう
)
と
其
(
その
)
驚
(
おどろ
)
くべき
戰鬪力
(
せんとうりよく
)
について、
或
(
ある
)
想像
(
さうざう
)
を
腦裡
(
こゝろ
)
に
描
(
えが
)
かれたであらう。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
がしかしそれも、脱ぎ棄てた宿屋の
褞袍
(
どてら
)
がいつしか自分自身の身体をそのなかに
髣髴
(
ほうふつ
)
させて来る作用とわずかもちがったことはないではないか。
冬の日
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
それから、京極の宿所の
釣殿
(
つりどの
)
や、鹿ヶ谷の山荘の
泉石
(
せんせき
)
のたたずまいなどが、
髣髴
(
ほうふつ
)
として思い出される。都会生活に対するあこがれが心を
爛
(
ただ
)
らせる。
俊寛
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
今の細君が大きい
桃割
(
ももわれ
)
に結って、このすぐ下の家に娘で居た時、
渠
(
かれ
)
はその
微
(
かす
)
かな琴の
音
(
ね
)
の
髣髴
(
ほうふつ
)
をだに得たいと思ってよくこの八幡の高台に登った。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
と斬りつけますと、パッと立ちます一団の陰火が、
髣髴
(
ほうふつ
)
として
生垣
(
いけがき
)
を越えて隣の諏訪部三十郎様のお屋敷へ落ちました。
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
私は別項「漱石氏と私」中に掲げた漱石氏の手紙を点検している間に明治四十年の春漱石氏と京都で出会った時の事を昨日の如く目前に
髣髴
(
ほうふつ
)
した。
漱石氏と私
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
この様子は、内地の昔を
髣髴
(
ほうふつ
)
させるではないか。沖縄本島では聞得大君を君主と同格に見た史実がない。が、島々の旧記にはその痕跡が残っている。
最古日本の女性生活の根柢
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
そう言って、
凝然
(
じっ
)
として
見戍
(
みまも
)
っている児太郎は、しだいに、その眼底に
髣髴
(
ほうふつ
)
する焦燥をありありと燃え立てさせた。弥吉は、からだの
竦
(
すく
)
みを感じた。
お小姓児太郎
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
治外の法権
撤
(
と
)
れしはやや心安きに似たれど、今もかの水色眼鏡の顔見るごとに、
髣髴
(
ほうふつ
)
墓中の人の
出
(
い
)
で来たりてわれと
良人
(
おっと
)
を争い、主婦の権力を争い
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
本田は仲々雄弁に、春泥の面影を
髣髴
(
ほうふつ
)
させるのであった。そして、彼は最後に実に奇妙な事実を報告したのである。
陰獣
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
吶々
(
とつとつ
)
ということばには真実があって、むしろ、妹思いな兄と、兄思いな妹とが、
髣髴
(
ほうふつ
)
として、眼を閉じて聞いている人々の
瞼
(
まぶた
)
に迫ってくるほどなのである。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
人の動物と違うところは思想あるがためで、この思想なるものを養わない以上は、
禽獣
(
きんじゅう
)
に
髣髴
(
ほうふつ
)
たるものである。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
若
(
も
)
しそれらを掴むのが不可能のことならば、公平な観察者鑑賞者となって、両極の持味を
髣髴
(
ほうふつ
)
して死のう。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
この時において
御朱印船
(
ごしゅいんせん
)
なる貿易特許を得たるもの、西南洋に
輻輳
(
ふくそう
)
するのみならず、到る所日本の植民なきはあらざりしは、今日においても、なお
髣髴
(
ほうふつ
)
として
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
逆にこの画の芸術的価値にもとづいて古代への愛と空想とを刺戟され、この画を通じてこの画よりもさらに偉大な多くの画のあった時代を
髣髴
(
ほうふつ
)
し得るのである。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
図442は船上の我々の炉、図443は舟夫の二人が飯を食っている光景を
髣髴
(
ほうふつ
)
たらしめんとしたもの。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
大異の家ではそこで大異を葬ったが、葬る時その柩の周囲に、大異の霊の
髣髴
(
ほうふつ
)
としているのを感じた。
太虚司法伝
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
親父の圓太郎が師匠の二代目三遊亭圓生の身振りうれしき芝居噺の画面の姿を
髣髴
(
ほうふつ
)
と目に躍らした。
小説 円朝
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
彼は
今日
(
きょう
)
学校から帰って、
直
(
す
)
ぐ浜へ遊びに行ったのですが、ふといつもの福浦岬の端の水天
髣髴
(
ほうふつ
)
としているところに、白山の恐ろしい姿が薄青く浮んでいるのを見とめたので
少年と海
(新字新仮名)
/
加能作次郎
(著)
わが邦の玄猪神に
髣髴
(
ほうふつ
)
たる穀精の信念が今も欧州に存しいるので、かかる獣形の穀精が進んでデメテルごとき人形の農神となった事、狐は老翁形の稲荷大明神となったに同じ。
十二支考:06 羊に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
こうやって書いているうちにも、あの男の姿は
髣髴
(
ほうふつ
)
として眼の前にある。
丈
(
たけ
)
は並よりも低いくらいで、足早に背中をまるめて、うしろに廻した両手でステッキを持ちながら歩く。
幻滅
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
そこに、くさ
草紙
(
ぞうし
)
の世界が現われ綿絵の姿が
髣髴
(
ほうふつ
)
とした。
田之助
(
たのすけ
)
が動き、
秀佳
(
しゅうか
)
が語る——
旧聞日本橋:18 神田附木店
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
何だかこう国民の精粋というようなものが
髣髴
(
ほうふつ
)
としてイキな声や微妙の節廻しの上に現れて、わが心の底に潜む何かに触れて何かが想い出されて何ともいえぬ
懐
(
なつ
)
かしい心持になる。
二葉亭余談
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
そうして、それはやはり日本の化け物のようでもあるが、その中のあるものたとえば「
古椿
(
ふるつばき
)
」や「雪女」や「離魂病」の絵にはどこかに西欧の
妖精
(
ようせい
)
らしい面影が
髣髴
(
ほうふつ
)
と浮かんでいる。
小泉八雲秘稿画本「妖魔詩話」
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
ノアノパリの
絶壁
(
ぜっぺき
)
上に立ち、世界で三番目に強いと言われる風速何十
米
(
メエトル
)
かの
突風
(
とっぷう
)
、顔をたえず
叩
(
たた
)
かれ
上衣
(
うわぎ
)
をしょっちゅう
捲
(
ま
)
くられているような烈風を受けつつ、眺めた景色は
髣髴
(
ほうふつ
)
と
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
このときの消息はウォルムスにおけるルーテルの行動をわれわれに
髣髴
(
ほうふつ
)
せしめる。
学生と先哲:――予言僧日蓮――
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
モコウの指さすほうを望み見ると、水天
髣髴
(
ほうふつ
)
のあいだに一点の小さな白点がある。
少年連盟
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
あまり上手でない、それだけかえって厳粛感を与える、その聞きなれたラッパの音は、応召者を先頭に立てて町内の人たちが神社へ参拝に行く、その行列の姿を
髣髴
(
ほうふつ
)
とさせるのである。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
私が念仏するのではまだ本当の念仏とは申されません。「しかれば名号が名号を聞くなり」とも同じ上人は申されました。こう思いみて、土瓶絵の性質が
髣髴
(
ほうふつ
)
と浮ぶように感じられます。
益子の絵土瓶
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
徳川末期趣味を
髣髴
(
ほうふつ
)
とさせているが、その趣味だけに停滞しないで、愛慾心理を
追窮
(
ついきゅう
)
しているところに作者自身が意識するしないに関わらず、シリアスな感じが読者の心に伝わるのである。
武州公秘話:02 跋
(新字新仮名)
/
正宗白鳥
(著)
入道の宮の十三絃の技は現今第一であると思うのは、はなやかにきれいな音で、聞く者の心も朗らかになって、弾き手の美しさも目に
髣髴
(
ほうふつ
)
と描かれる点などが非常な名手と思われる点である。
源氏物語:13 明石
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
髣
漢検1級
部首:⾽
14画
髴
漢検1級
部首:⾽
15画
“髣髴”で始まる語句
髣髴著