高島田たかしまだ)” の例文
おとなしく高島田たかしまだに結って、つれに来たその夫についていったアグリであったが、次の年に長女を生み、一週間目にはもう死んでしまった。
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
橋本のいさちゃんが、浜田のばあさんに連れられ、高島田たかしまだ紋付もんつき、真白にって、婚礼こんれい挨拶あいさつに来たそうだ。うつくしゅうござんした、とおんなが云う。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
仮令たとえ美術家にもせよ、髪まで結うとは、驚いた男だ。しかも、一時間程で結い上げたのは、専門家でも骨の折れる、立派やかな高島田たかしまだであった。
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「源さん、わたしゃ、お嫁入りのときの姿が、まだ眼前めさきに散らついている。裾模様すそもよう振袖ふりそでに、高島田たかしまだで、馬に乗って……」
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ときは、めうなもので……また此處こゝをんな一連ひとつれ、これは丸顏まるがほのぱつちりした、二重瞼ふたへまぶた愛嬌あいけうづいた、高島田たかしまだで、あらい棒縞ぼうじま銘仙めいせん羽織はおりあゐつた。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
どうしたんだろうと変に思ったけれど、言われるままに私が鏡台きょうだいの前に座ると、髪結さんは、紅いてがらをかけた結綿ゆいわたを崩して高島田たかしまだに結い上げたのです。
經文きやうもん讀誦どくじゆ抹香まつかうくさくなりて、むすめらしきにほひはとほかるべしとおもひしに、そのやうのぶりもなく、柳髮りうはついつも高島田たかしまだむすげて、おくすぢえりにださぬたしなみのよさ
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
鴛鴦おしどり鹿をかけたり、ゆいわた島田にいったり、高島田たかしまだだったり、赤い襟に、着ものには黒繻子くろじゅすをかけ、どんなよい着物でも、町家ちょうかだからまえかけをかけているのが多かった。
「山だって海だって、奥さん、その娘を一目あなたに見せたいと思うくらいですよ、文金ぶんきん高島田たかしまだに髪をいましてね」「へえー」と細君はあっけに取られている。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
せいたかいのは、きはめて、ひんつややかな圓髷まるまげあらはれる。わかいのは時々より/\かみちがふ、銀杏返いてふがへしのときもあつた、高島田たかしまだときもあつた、三輪みつわふのにつてもた。
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あし田鶴たづよはひながゝれとにや千代ちよとなづけし親心おやごゝろにぞゆらんものよ栴檀せんだん二葉ふたば三ツ四ツより行末ゆくすゑさぞとひとのほめものにせし姿すがたはなあめさそふ弥生やよひやまほころびめしつぼみにながめそはりてさかりはいつとまつのごしのつきいざよふといふも可愛かあいらしき十六さい高島田たかしまだにかくるやさしきなまこしぼりくれなゐは
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
高島田たかしまだ前髮まへがみつめたやいばあり、まどつらぬくはすだれなす氷柱つらゝにこそ。カチリとおとしてつてかしぬ。ひとのもしうかゞはば、いとめてほとばしらす匕首あひくちとやおどろかん。新婦よめぎみくちびるふくみて微笑ほゝゑみぬ。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
此時このとき白襟しろえり衣紋えもんたゞしく、いお納戸なんど單衣ひとへて、紺地こんぢおびむなたかう、高島田たかしまだひんよきに、ぎん平打ひらうちかうがいのみ、たゞ黒髮くろかみなかあはくかざしたるが、手車てぐるまえたり、小豆色あづきいろひざかけして
森の紫陽花 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)