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頽
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くず
ふりがな文庫
“
頽
(
くず
)” の例文
国中に内乱の起った場合で取り
頽
(
くず
)
す人夫も無く其のまま主人を見殺し、イヤ聞き殺しにした、けれど
真逆
(
まさか
)
に
爾
(
そう
)
とも発表が出来ぬから
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
稲荷町へ行き着いてみると、富蔵の家は半焼けのままで
頽
(
くず
)
れ落ちて、
咽
(
む
)
せるような白い煙りは狭い露路の奥にうずまいて
漲
(
みなぎ
)
っていた。
半七捕物帳:17 三河万歳
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
ただ
一呑
(
ひとのみ
)
と
屏風倒
(
びょうぶだおし
)
に
頽
(
くず
)
れんずる
凄
(
すさま
)
じさに、
剛気
(
ごうき
)
の
船子
(
ふなこ
)
も
啊呀
(
あなや
)
と驚き、
腕
(
かいな
)
の力を失う
隙
(
ひま
)
に、
艫
(
へさき
)
はくるりと波に
曳
(
ひか
)
れて、船は
危
(
あやう
)
く
傾
(
かたぶ
)
きぬ。
取舵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
二百米近く下った所から両側に崩岩の
頽
(
くず
)
れを押し下した薄ぺらな鎌尾根と変って、縦走の意外に困難なるべきを偲ばせるものがある。
利根川水源地の山々
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
頭も
頽
(
くず
)
れて来たし、
懈
(
だる
)
い体も次第に
蝕
(
むしば
)
まれて行くようであった。酒、女、莨、
放肆
(
ほうし
)
な生活、それらのせいとばかりも思えなかった。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
▼ もっと見る
親ゆずりである
繻珍
(
しゅちん
)
の丸帯をひろげて
頽
(
くず
)
れた模様の上に泣き伏した。それでも思いかえして、裏の井戸に行き清水にすすいでみた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
そして、これらのものは、ときにじっと眼をとめていると、絶え間なしに磨り減り、
頽
(
くず
)
れ朽ちてゆくのが、見えるようであった。
山彦乙女
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
方々が
頽
(
くず
)
れて、谷底へと揺落してしまう、そうしてその分身が、水陸両棲の
爬行
(
はこう
)
動物のように、岩を蜿ねり、谷に下って、見えなくなる。
白峰山脈縦断記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
横川よりゆくての方は、山の
頽
(
くず
)
れおちて全く軌道を
埋
(
うず
)
めたるあり、橋のおちたるありて、車かよわずといえば、
鞋
(
わらじ
)
はきていず。
みちの記
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
彼は、飛行帽の中で、厚い唇をペラペラ舐めずると、さも嬉しそうに、醜い顔をにたにたと
頽
(
くず
)
しながら、倦かず葉子の淫らな姿に見入るのだった。
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
老人はこんなことを言いながらやっとこさと腰をあげ、すこし
頽
(
くず
)
れて時おり隣の灯の漏れてくる壁の処へ行って顔をぴったりつけて
好奇
(
ものずき
)
に覗いて見た。
牡丹灯記
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
「そうか、」と立ちながら足を
叩
(
たた
)
いて
頽
(
くず
)
れるように笑った。「
宜
(
よ
)
かった、宜かった、
最少
(
もすこ
)
し遅れようもんなら復た怒られる処だった。さあ、来給え、」
鴎外博士の追憶
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
おのが
庵
(
いお
)
の壁の
頽
(
くず
)
れかかれるをつくろはす来つる男のこまめやかなる者にて、このわたりはさておけよかめりとおのがいふところどころをもゆるしなう
曙覧の歌
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
もしあなたがたがそれを見たらば、魂は消え、息は止まり、
総身
(
そうみ
)
は海綿のように骨なしになって、からだの奥までぐずぐずに
頽
(
くず
)
れてしまうことでしょう。
世界怪談名作集:15 幽霊
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
あの気持のわるい位
頽
(
くず
)
れたところは、病院生活でいくらか単純化されている。やっぱり鼻の頭にしわをよせて、ピカント〔鋭い、刺激的〕な笑いかたをする。
日記:27 一九四四年(昭和十九年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
ぼろぼろに
頽
(
くず
)
れて、戸をあけて内へ入ると、一種嫌な臭気がプーンと鼻をつく、それ
故
(
ゆえ
)
以前
(
まえ
)
に居た人なども、物置にでもつかったものらしい形跡がある、こんな風に
怪物屋敷
(新字新仮名)
/
柳川春葉
(著)
それがさらに
頽
(
くず
)
れて、現に妻として夫を持っている者にも、巫女の資格は認められていたと見える。
最古日本の女性生活の根柢
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
いわゆる仁義を
仮
(
か
)
って覇業を成すの徒が現れるので、世の降り俗の
頽
(
くず
)
るると共に、王道は益々
湮没
(
いんぼつ
)
して明らかならざる事久しきを致した。けれども天道は
終
(
つい
)
に善に
与
(
くみ
)
する。
永久平和の先決問題
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
やがてミシミシという音響を発して真ン中の部分がまず
頽
(
くず
)
れ始め、続いて、
緑色
(
りょくしょく
)
の鉄と、煙を吐きつつある石炭と、真鍮製附属品と、車輪と木片と長腰掛とが、奈落の底をめがけて
臨時急行列車の紛失
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
かくのごとき美風も、西洋思想が流入してから漸く
頽
(
くず
)
れた。またあるものは、時勢に恵まれて美食し、残りを蓄えるであろう。あるものはこれに反して職を失い、暮らしに泣くであろう。
日本的童話の提唱
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
赤く
剥
(
む
)
けた樹の肌であった。高さは七八十
米
(
メートル
)
もあるかと思われたが、枝はそぎ落したように
千切
(
ちぎ
)
れ、頂き付近に僅か残る葉も白く
頽
(
くず
)
れた色であった。宇治はほっと肩を落してふり返った。
日の果て
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
根津を抜けて帰るつもりであったが頻繁に襲って来る余震で煉瓦壁の
頽
(
くず
)
れかかったのがあらたに倒れたりするのを見て低湿地の街路は危険だと思ったから
谷中三崎町
(
やなかみさきちょう
)
から団子坂へ向かった。
震災日記より
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
それは夏の燃えるような暑い時であった。その村に
周
(
しゅう
)
という家の庭園があって、
牆
(
へい
)
は
頽
(
くず
)
れ家は破れて、ただ一つの
亭
(
あずまや
)
のみが残っていたが、涼しいので村の人達がたくさんそこへ泊りにいった。
王成
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
主家
(
おもや
)
つづきに牛舎があり、中庭を隔てて、一層古びて
頽
(
くず
)
れかけた
茅舎
(
かやや
)
の穀物納屋もあった。その間の庭の突き当りに細丸太の木柵があり、その外は野菜畑やクローバーの原っぱになっていた。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
其痛みを
堪
(
こら
)
えて我
生血
(
いきち
)
に指を染め其上にて字を書くとは一通りの事に
非
(
あら
)
ず、充分に顔を蹙め充分に
相
(
そう
)
を
頽
(
くず
)
さん、
夫
(
それ
)
のみか名を書くからには
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
切明けはあるが若木が足に絡まって大に困難した。午後一時半に岩が露出して甲州方面に赭い砂の滝を
頽
(
くず
)
れ落している処に着いて一休みする。
奥秩父の山旅日記
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
一個の武士を葬った墓は、雨叩きになっても
頽
(
くず
)
れても誰も苦情は云うまい。身分の尊い人々の建てられた石碑は、粗末にしては甚だ恐れ多い。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
その
浴衣
(
ゆかた
)
は所々引き裂け、帯は半ば
解
(
ほど
)
けて
脛
(
はぎ
)
を
露
(
あら
)
わし、高島田は面影を
留
(
とど
)
めぬまでに打ち
頽
(
くず
)
れたり。こはこれ、盗難に
遇
(
あ
)
えりし滝の白糸が姿なり。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
枯れ
頽
(
くず
)
れ、——積みあげ積み重ねた数えきれないほどの春夏秋冬が、踏めば沈むような低位泥炭土をつくっていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
磯谷との間が破れて以来、お銀の心持は、ともすると
頽
(
くず
)
れかかろうとしていた。笹村は
荒
(
すさ
)
んだお銀の心持を、優しい愛情で慰めるような男ではなかった。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
泰山前に
頽
(
くず
)
るるともビクともしない
大西郷
(
だいさいごう
)
どんさえも評判に釣込まれてワザワザ見物に来て、
大
(
おおい
)
に感服して「万国一覧」という大字の扁額を
揮
(
ふる
)
ってくれた。
淡島椿岳:――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
朝から頸を
傾
(
かし
)
げさせていた空模様が、一時に
頽
(
くず
)
れて、大粒の雨が、無気味な風を含んで、ぽたりぽたり落ちて来たかと思うと、もう篠つくような豪雨に変っていた。
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
老人はこんなことを云いながらやっとこさと腰をあげ、すこし
頽
(
くず
)
れて時おり隣の
燈
(
ひ
)
の
漏
(
も
)
れて来る壁の破れの見える処へ往って顔をぴったりつけて
好奇
(
ものずき
)
に
覗
(
のぞ
)
いて見た。
牡丹灯籠 牡丹灯記
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
それ自らの重力に堪えがたいように、尖端が傾斜して、
頽
(
くず
)
れ落ちた大岩石を谷底までぶちまけている。
谷より峰へ峰より谷へ
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
緋
(
ひ
)
の淡き地におなじいろの濃きから草織出したる長椅子に、姫は水いろぎぬの裳のけだかきおほ
襞
(
ひだ
)
の、舞の後ながらつゆ
頽
(
くず
)
れぬを、身をひねりて横ざまに折りて腰掛け
文づかひ
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
頽
(
くず
)
れた荒い線で、ここに一人の瘠せて小さいまるむき女性が乱暴に描かれて居り、二つの眼のこりかたまった大さと、腕のつけねや腹の下のくまがそれぞれ体に不似合な猛然さで誇張されている
日々の映り
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
最早
(
もう
)
家はないのだが、
頽
(
くず
)
れて今にも
仆
(
たお
)
れそうな便所が一つ残っている、それにうまく
孟宗竹
(
もうそうちく
)
の太いのが、その屋根からぬっきり
突貫
(
つきぬ
)
けて出ているので、その
為
(
た
)
めに、それが
仆
(
たお
)
れないで立っているのだ
怪物屋敷
(新字新仮名)
/
柳川春葉
(著)
塀ばかりは昔のままのが大方は
頽
(
くず
)
れながらなほ残つて居るが、その内を見ると家はなくて竹藪が物凄きまで生ひ茂つて居る処もあり、あるいは畑になつて
茄子
(
なす
)
玉蜀黍
(
とうもろこし
)
などつくつてある傍に柿の木が四
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
此頃は其金にてトローンの近辺へ不評判なる酒店を開業し倉子は日夜酒に沈溺せる有様なれば一時美しかりし其
綺倆
(
きりょう
)
も今は
頽
(
くず
)
れて見る影なし
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
お冬の胸に燃えていた恋の火は、灰となってもう
頽
(
くず
)
れてしまったのかも知れない。彼女は過去の楽しい恋の記憶については、何も話そうとしなかった。
半七捕物帳:03 勘平の死
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
草も碌々生えていない山腹を
踰
(
こ
)
えると、赭茶化た破片岩の石滝が個々の稜角を尖らして、互に噛み合いながら底なしの池ノ谷を目懸けて
頽
(
くず
)
れ落ちている。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
どうかすると
鼻
(
はな
)
っ
張
(
ぱ
)
りの強いその気象と同じに、とても征服しきれない肉塊に対してでもいるような気がしていたが、それもだんだん
頽
(
くず
)
されそうになって来た。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
それは、
頽
(
くず
)
れた家臣団に忍びよった何かの
囁
(
ささや
)
きであったかも知れぬ。高倉の環境は、自分でものを考えるようになったときには実際に既に喪われていたのであった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
「イヤ、実に面白い作で、真に奇想天来です。」と美妙も心から喜ぶように満面笑い
頽
(
くず
)
れて
露伴の出世咄
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
頽
(
くず
)
るる潮の黒髪を洗うたびに、顔の色が、しだいに
蒼白
(
そうはく
)
にあせて、いまかえって雲を破った朝日の光に、濡蓑は、
颯
(
さっ
)
と
朱鷺色
(
ときいろ
)
に薄く燃えながら——
昨日
(
きのう
)
坊さんを払ったように
河伯令嬢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
周囲から白い尖波が、爪立つやうに小刻みに擦り寄つて、二三尺の高さの、小さい夕立となつて、水柱がザアと音して、
頽
(
くず
)
れ落ちる、その中を蹴立てる船の姿は、沙漠を走る駝鳥のやうで
天竜川
(新字旧仮名)
/
小島烏水
(著)
ともに
頽
(
くず
)
れゆくものとしての挨拶でなくてなんであろう。
二つの庭
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
電信柱に
倚
(
よ
)
り掛かってしばらく休んでいたかと思ううちに、急にぐたぐたと
頽
(
くず
)
れるように倒れてしまったんです。
ゆず湯
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
急傾斜の上に霜柱が
頽
(
くず
)
れて滑るために、邪魔はないがやはり時間はかかる。わずかに三百米足らずの登りに五十五分を費し、一時三十五分皇海山の西峰に達した。
皇海山紀行
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
成るほど身体の中の第一に位する首と云う大切の
権衡
(
つりあい
)
がなくなったのだから全体が
頽
(
くず
)
れるのは当然だ。
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
頽
漢検1級
部首:⾴
16画
“頽”を含む語句
衰頽
頽然
雪頽
頽雪
頽廃
廃頽
頽廃的
胡頽子
頽唐
人雪頽
崩頽
頽勢
敗頽
廃頽的
頽齢
頽廢
廃頽期
頽廢堂
傾頽
頽折
...