ぎり)” の例文
うでしやう」とつたぎり物指ものさしさきを、とまつたところいたなり、わたつたそらひとしきりながつた。宗助そうすけ細君さいくんかほずに
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
世帯を持つとなると肚もきまり、馬喰町の店へいって事情を話した。森口屋の主人は承知をし、六十日ぎりで品物を貸してくれることになった。
赤ひげ診療譚:06 鶯ばか (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
一度ぎりで何の音沙汰もないところを見ると、その求婚を、恐ろしい復讐の企てでもあるやうに思つたのは、自分の邪推であつたやうにさへ、瑠璃子は思つた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
つい夫ぎりに打ちつたやうなものゝ、腹のなかでは私かに作者の根氣と精力に驚ろいてゐた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
いゝえ、死んだのなら却て斷念あきらめがつきますが別れたぎり、如何なつたのか行方いきがたが知れないのですよ。
少年の悲哀 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
少しやかましい事が有るとぎりで締切ります、此の木戸の脇に番太郎がございまして、町内には自身番が有り、それへ皆町内から町内の家主いえぬし(差配人さん)がお勤めに成って
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それで夢中になって金ばかりつかっていたから、一度申訳にいささかばかり送金したぎりで、不覚つい国へは無沙汰になっているうちに、父の病気が矢張やっぱり好くないとて母からは又送金を求めて来る。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
出たぎりかう便たよりもないゆゑ私しも兄弟きやうだいじやうにて今頃は何國いづくに何をして居けるやら行當り爲撥ばつたりしにはせぬかなどと案じて見たが其後三年ばかり立と不※ふと讃岐さぬきの丸龜より書状しよじやうが屆いたゆゑ夫を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
其話はそれぎりになつた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
一度ぎりで何の音沙汰おとさたもないところを見ると、その求婚を、恐ろしい復讐ふくしゅうの企てでもあるように思ったのは、自分の邪推であったようにさえ、瑠璃子は思った。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「えゝ」と左右をながめたぎりである。腰をげない。しばらく椽を見廻はしたを、三四郎に移すや否や
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
由「御覧なさい、お小さいうちに逢ったぎりで、昔馴染と云うものはねえ旦那」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
用達ようたしには誰よりも早く、十日ぎり、六日限などという期限つきの飛脚は彼の役ときまっているくらいなのに、酒癖が悪くて時どき失敗し、店を逐われてはまたびを入れて戻るという風だった。
柳橋物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
見れば昔し由縁よしある人なる可し親子の立擧動たちふるまひ尋常じんじやうならず親は篤實とくじつおもてあらはれ娘は孝行自然しぜんと知れまた容貌もすぐれたれば忠兵衞ほと/\感心かんしんなし主個あるじかたのうち向ひお見申せばお宅樣たくさまはお二個ぎりにてお孃樣ぢやうさま失禮しつれいながら美麗うつくしきお生れつきにて御座りますが定めしお婿樣むこさま
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
門野かどのたゞへえゝと云つたぎり、代助の光沢つや顔色かほいろにくゆたかな肩のあたりを羽織の上から眺めてゐる。代助はこんな場合になると何時いつでも此青年を気の毒に思ふ。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
つい夫ぎりに打ちつたやうなものゝ、腹のなかでは私かに作者の根氣と精力に驚ろいてゐた。
「土」に就て (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
社會しやくわいはう彼等かれら二人ふたりぎりめて、その二人ふたりひやゝかなそびらけた結果けつくわほかならなかつた。そとむかつて生長せいちやうする餘地よち見出みいだなかつた二人ふたりは、うちむかつてふかはじめたのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「ぢや、よろしい」と云つたぎりであつた。門野かどのは物足りなさうに入口いりぐちに立つてゐたが
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
あにつたので、はなしそれぎり頓挫とんざして、小六ころくはとう/\本郷ほんがうかへつてつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「東京」とゆつくり云つたぎりである。何だか中学校の先生らしく無くなつて来た。けれども三等へ乗つてゐる位だからたいしたものでない事はあきらかである。三四郎はそれで談話を切り上げた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
広田先生は「当り前さ」と云つたぎりである。すると与次郎が石の門の歴史を話しした。此間このあひだ迄ある出入りの屋敷の入口いりぐちにあつたのを、改築のときもらつて来て、すぐあすこへ立てたのだと云ふ。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そこで、かずはなれずに、高木たかぎと佐川のむすめの評判をした。高木には十年程まへに一遍つたぎりであつたが、妙なもので、何処どこかに覚があつて、此間このあひだ歌舞伎座でいたときは、はてなと思つた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
と答えたら、婆さんは、それぎり何にも云わずに、降りて行った。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「音は一遍したぎりなのかい」
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)