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遥々
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はるばる
ふりがな文庫
“
遥々
(
はるばる
)” の例文
「ここは寝室ではございませんか。
遥々
(
はるばる
)
参られた里のお客様を、このような所へお通しするとは、何んという失礼でございましょう」
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
里馴れたものといえば、ただ
遥々
(
はるばる
)
と
畷
(
なわて
)
を奥下りに連った稲塚の数ばかりであるのに。——しかも村里の女性の風情では断じてない。
遺稿:02 遺稿
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
山犬などの毛皮を携へて
遥々
(
はるばる
)
前橋まで集まつてきたが明治になつてからはこれを神戸の商館へ持ち込んで外国へ輸出してゐる。
たぬき汁
(新字旧仮名)
/
佐藤垢石
(著)
懐
(
ふところ
)
に抱く珠の光りを
夜
(
よ
)
に抜いて、二百里の道を
遥々
(
はるばる
)
と闇の袋より取り出した時、珠は現実の
明海
(
あかるみ
)
に幾分か
往昔
(
そのかみ
)
の輝きを失った。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「——お取次ぎを
賜
(
たま
)
われ。
遥々
(
はるばる
)
、
奥州
(
みちのく
)
より駈け下って参った弟の九郎です。兄頼朝へ、九郎が参ったと、お伝え下されませ」
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
まず、ロッテナム美人術というものが、実にただお兄上を狂人に仕立てる目的のために
遥々
(
はるばる
)
日本へよばれてきたものでした
明治開化 安吾捕物:15 その十四 ロッテナム美人術
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
遥々
(
はるばる
)
と夢を見る気持で、どことなく流れて行く、高い塔、赤い
煉瓦
(
れんが
)
造りの家、光る海……それらを見ることが出来た。……
森の暗き夜
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
奈良田の湯まで看病に行った時の熱が冷めないでいるならば、
遥々
(
はるばる
)
かけた呼出しに応じないというはずはありません。お徳の目的はわかりました。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
日本が好きで
遥々
(
はるばる
)
独乙から、やつて来てペン画を
描
(
か
)
いてる、フリードリッヒ・グライルといふのがやつて来たからだ。
散歩生活
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
翌朝は
遥々
(
はるばる
)
と、下北沢の
親戚
(
しんせき
)
の家に厄介になりにいった。老母をリヤカーに乗せ、これを押しながら妻や子供は
焼土
(
しょうど
)
の町を行く。これは先発隊である。
親は眺めて考えている
(新字新仮名)
/
金森徳次郎
(著)
余
(
よ
)
——いや
小生
(
しょうせい
)
はこのたびぜひとも
博士
(
せんせい
)
にお願いをして、
毒瓦斯
(
どくガス
)
をマスターいたしたいと決心しまして、そのことで
遥々
(
はるばる
)
南海の
孤島
(
ことう
)
からやって参りました
毒瓦斯発明官:――金博士シリーズ・5――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
カステラ一箱持って
遥々
(
はるばる
)
錦城館のお富(この艶婦の事は、昨年四月一日の『日本及日本人』に出でおり艦長などがわざわざ面を見に来るとて当人鼻高し)
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
百歩を
隔
(
へだ
)
てて
柳葉
(
りゅうよう
)
を射るに百発百中するという達人だそうである。紀昌は
遥々
(
はるばる
)
飛衛をたずねてその門に入った。
名人伝
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
露国のマキシモヴィッチ氏はこれに対し非常に中の図が正確であるといって、
遥々
(
はるばる
)
絶讃の辞を送ってきた。
牧野富太郎自叙伝:01 第一部 牧野富太郎自叙伝
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
島尻の真壁村の伊敷の城主が大和へ瓦その他の品物を買いにやったとあるから、古くは沖縄では瓦を買うために
遥々
(
はるばる
)
日本本土まで出かけたということがわかった。
土塊石片録
(新字新仮名)
/
伊波普猷
(著)
其処には先きにいったように
遥々
(
はるばる
)
とした大洋があった。あの光のない、ただ明るいだけの波濤の連続が。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
遥々
(
はるばる
)
この岩屋島を訪れたのも、深く思えば、私の為でもなく、初代の復讐などの為では無論なく、その実は、親子という絆のさせた業であったかも知れないのだ。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
それから湖のもくもくから
遥々
(
はるばる
)
採って来た柳のひげ根の消毒したものを大事そうに
縄
(
なわ
)
に
挟
(
はさ
)
んで沈めた。
金魚撩乱
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
なぜだろう? なぜ彼は
遥々
(
はるばる
)
友を訪問して戸を叩くことが出来ないのだろう? 叩いたからと云って
咎
(
とが
)
められるのでもなければ彼が叩こうとする手を止めるのでもない
愛か
(新字新仮名)
/
李光洙
(著)
ところが
生憎
(
あいにく
)
不漁
(
しけ
)
で休みの札が掛っていたので、「折角
暴風雨
(
あらし
)
の中を
遥々
(
はるばる
)
車を飛ばして来たのに残念だ」と、
悄気返
(
しょげかえ
)
って
頻
(
しきり
)
に愚痴ったので、帳場の主人が気の毒がって
二葉亭余談
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
遥々
(
はるばる
)
太子の後を慕ってボンベイから日本へ来朝したばかりの身の上だということなのであった。
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
遥々
(
はるばる
)
と是を一処に寄せ集めた、人間意力の
逞
(
たく
)
ましさには感動するが、是を大昔の世の常と見、今ある離れ小島の竹玉ツシ玉、貝や木の実を珠に貫くわざを、
零落
(
れいらく
)
退歩の姿
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
何をいうにも内地から
遥々
(
はるばる
)
の海上を吾輩が自身に
水先案内
(
パイロテージ
)
して、それぞれの漁場に居付かせてやった、
吾児
(
わがこ
)
同然の荒くれ漁師どもだ。その可愛さといったら何ともいえない。
爆弾太平記
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
先
(
ま
)
ず初め、層々と
聳
(
そび
)
えている
峰巒
(
ほうらん
)
の
相
(
すがた
)
が現れた。その山が尽きる辺から、落葉し尽くした
疎林
(
そりん
)
が淡々と、浮かんでいる。疎林の間には一筋の
小径
(
こみち
)
が、
遥々
(
はるばる
)
と遠く続いている。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
実は、どうもあまり気がすすまなかったのであるが、せっかくわざわざ傍聴券を手に入れて、そうして
遥々
(
はるばる
)
迎えにまで来てくれたのだから、勉強してともかくも出掛ける事にした。
議会の印象
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
持っているさればどこの
誰
(
だれ
)
氏の家にはしかじかの名鳥がいると云うことになれば鶯を
飼
(
か
)
っている者は我が鶯のために
遥々
(
はるばる
)
とその名鳥の
許
(
もと
)
を訪ね啼き方を教えてもらうこの稽古を声を
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
綾麻呂 衛門! 長い旅路を
遥々
(
はるばる
)
ここまでやって来た
甲斐
(
かい
)
があったろう? ん?
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
この絵は
宋初
(
そうしょ
)
のものとされているので、本当の
玄奘三蔵
(
げんじょうさんぞう
)
法師が、
唐
(
とう
)
の
太宗
(
たいそう
)
の
貞観
(
じょうがん
)
三年に
長安
(
ちょうあん
)
の都を辞して、
遥々
(
はるばる
)
印度への旅についた頃から見ると、三百年くらいも後に描かれたことになる。
『西遊記』の夢
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
その噂を聞いて、私は
遥々
(
はるばる
)
支那から帰って来たのです。私も殺されるかも知れませんが、殺されるまでに、お母様や伯父様やお姉様の志を継いで、この城趾の謎を解かなければならないんです
古城の真昼
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
或
(
あるい
)
は
遥々
(
はるばる
)
この寺を訪れた旅人が、仏前へまいる前に、しばし身を寄せかけてあたりの風光をめでたのではなかろうか。
乃至
(
ないし
)
はこの
蔭
(
かげ
)
に身をひそめて恋人を待つ平城の男女があったかもしれぬ。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
それでも母はくじけることなく、ドミトリを大学に入学させたいと思って、トボルスクから
遥々
(
はるばる
)
とモスクワを目指して旅に出ました。そしてモスクワに到着して、大学の入学試験を受けさせました。
メンデレーエフ
(新字新仮名)
/
石原純
(著)
何里
歩行
(
ある
)
いたとも分らぬ気がして、一まわり、足を
摺
(
す
)
って、手探りに
遥々
(
はるばる
)
と渡って来ますと、一歩上へ浮いてつく、その、その
蹈心地
(
ふみごこち
)
。
菊あわせ
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
修吉が北越山中の秋山家を訪ねたとき、
恰
(
あたか
)
もそれを見るために
遥々
(
はるばる
)
やつてきたやうに、まづ仏像のことを尋ねた。
木々の精、谷の精
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
越前から柴田勝家の使いが、
荷駄行装
(
にだこうそう
)
に北国の雪をかぶって、
遥々
(
はるばる
)
これへ着いたのは、十二月の十一日であった。
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「遠方より来るは、こっちの言い分だ、君が
遥々
(
はるばる
)
江戸から来てくれたんだから、これから僕が大いに飲ませるよ」
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
とさも
無雑作
(
むぞうさ
)
に云っちまった。ちょうど炭屋が
土釜
(
どがま
)
を台所へ
担
(
かつ
)
ぎ込んだ時のように思われた。人間が
遥々
(
はるばる
)
山越
(
やまごえ
)
をして坑夫になりに来たんだとは認めていない。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それはかつて欧洲大戦の
砌
(
みぎり
)
、
遥々
(
はるばる
)
欧洲の戦場に参戦して不幸にも陣歿したわが義勇兵たちのため
建立
(
こんりゅう
)
してあった忠魂塔と、同じ形同じ大きさの記念塔をもう一つ作って
東京要塞
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
遥々
(
はるばる
)
亜剌比亜
(
アラビア
)
へ送り返されたとも、元の持主の千賀子のもとで、保存されたとも云われている。
生死卍巴
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
東京から
遥々
(
はるばる
)
見送って来た安兵衛という男が、宿屋で毎日朝から酒ばかり飲んでいて
箱根熱海バス紀行
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
智馬商主に向い、貴公が
遥々
(
はるばる
)
将
(
つ
)
れて来た馬五百疋がいかほどに売れたか、我は一身を一億金に売って瓦師に報じたという。さては大変な馬成金に成り
損
(
そこ
)
なったと落胆の余り気絶する。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
または
狼
(
おおかみ
)
を母としたというような発祥談であるならば、認めるか認めないかの二つの
岐
(
わか
)
れ
路
(
みち
)
しかないだろうが、沖へ
遥々
(
はるばる
)
と出て見たけれども、そういう宝の島は見えないときまると
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
夫人は
遥々
(
はるばる
)
東京より来訪せる夫君の親友井沢判事
饗応
(
きょうおう
)
のため、
小女
(
こおんな
)
玉木うめ(十九歳)を連れて、長崎市まで料理材料の買い出しに出かけて行ったが、夕方五時七分着の列車で大村駅へ帰着
棚田裁判長の怪死
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
その人も都から
遥々
(
はるばる
)
諸戸屋敷を尋ねて来た。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
青芒
(
あおすすき
)
の茂った、葉越しの谷底の一方が、水田に開けて、
遥々
(
はるばる
)
と連る山が、都に遠い雲の形で、
蒼空
(
あおぞら
)
に、離れ島かと流れている。
灯明之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
法縁
(
ほうえん
)
によって、——
大和島根
(
やまとしまね
)
にまで
遥々
(
はるばる
)
その仏典や根本教義など、すべてを舶載して来て、この国の土に新しい文化を築き、この国の民の体血をとおして
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この詩と句とによって考えると、平五郎という
俳諧師
(
はいかいし
)
が、
遥々
(
はるばる
)
ここへ旅に来て、同好の士がこれを迎えた。
大菩薩峠:34 白雲の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
唯このために丹波路
遥々
(
はるばる
)
(でもないが)汽車に揺られて来たのだから、
豈
(
あに
)
目的を達せずんばあるべからずと、鉄条網を乗り越えて、王仁三郎の夢の跡へ踏みこんだ。
日本文化私観
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
「
拙者
(
せっしゃ
)
こそは浪人にて人丸左陣と申す者。
御意
(
ぎょい
)
得たきことござりまして
遥々
(
はるばる
)
参ってござります」
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
先へ行くのは、
遥々
(
はるばる
)
と来た二人を案内するためではなく、時候
後
(
おく
)
れの親子を追い越して
馳
(
か
)
け抜けるためのように見える。
割符
(
わりふ
)
とは
瓜
(
うり
)
二つを取ってつけて
較
(
くら
)
べるための
証拠
(
しるし
)
である。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
思わずその跡をつけて、
遥々
(
はるばる
)
と
船越
(
ふなこし
)
村の方へ行く崎の
洞
(
ほこら
)
あるところまで追い行き、名を呼びたるに、振り返りてにこと笑いたり。男はとみればこれも同じ里の者にて海嘯の難に死せし者なり。
遠野物語
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
遥
漢検準1級
部首:⾡
12画
々
3画
“遥”で始まる語句
遥
遥拝
遥任
遥向
遥曳
遥望
遥拝所