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貶
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けな
ふりがな文庫
“
貶
(
けな
)” の例文
お父さんは水盃をした昔の癖の抜け切らない日本人は
一寸
(
ちょっと
)
のことにも見送りか出迎えが大袈裟で困ると言って
平常
(
ふだん
)
こそ
貶
(
けな
)
しているが
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
どう言う
破綻
(
はたん
)
を生じますか? 『色や形は正に美しい。が、
畢竟
(
ひっきょう
)
それだけだ』——これでは少しも桜の花を
貶
(
けな
)
したことにはなりません。
侏儒の言葉
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
また紅葉の人生観照や性格描写を凡近浅薄と
貶
(
けな
)
しながらもその文章を古今に
匹儔
(
ひっちゅう
)
なき名文であると激賞して常に反覆細読していた。
二葉亭余談
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
そのモチーフこそ作者がその作を書いた生命であって、そのほかの点で
褒
(
ほ
)
められても
貶
(
けな
)
されても作者の心には適わないものである。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
けれどもこの小學校の建築に全生命を打ち込んでゐる村の太政官を憚つて、誰一人大ぴらに、學校の普請を
貶
(
けな
)
すものはなかつた。
太政官
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
▼ もっと見る
米八が『
春色
(
しゅんしょく
)
恵
(
めぐみ
)
の
花
(
はな
)
』のうちで「そんな色気のないものをたべて」と
貶
(
けな
)
した「
附焼団子
(
つけやきだんご
)
」は味覚の効果をほとんど味覚だけに限っている。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
けれども、探偵小説を
貶
(
けな
)
すのに、ありそうにない、尤もらしくないなどという言葉を使うのは、とりわけ当を得ていないのではあるまいか。
J・D・カーの密室犯罪の研究
(新字新仮名)
/
井上良夫
(著)
坦々たる古道の尽くるあたり、
荊棘
(
けいきよく
)
路を
塞
(
ふさ
)
ぎたる原野に
対
(
むかひ
)
て、これが開拓を勤むる勇猛の徒を
貶
(
けな
)
す者は
怯
(
きよう
)
に
非
(
あ
)
らずむば惰なり。
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
我々だつて、何時でも逢坂を糞味噌に
貶
(
けな
)
してゐるが、底の底を割つてみれば彼奴と同じぢやないか? 下の者には何も遠慮をする必要がない。
我等の一団と彼
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
「何だな、
吝臭
(
けちくさ
)
え。途中で
舎
(
よ
)
すようなら始めっから出ねえがいい。お前この節はいやに
緊
(
しま
)
り
家
(
や
)
になったな。」と
貶
(
けな
)
されると
世間師
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
何と色々な事を言う奴が多いことだ! おまけに、褒める者も
貶
(
けな
)
す者も、共に誤解の上に立っているのだから遣り切れない。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
人が感心すると、
貶
(
けな
)
したくなるのが藤吉の病いである。不機嫌なときは、右と言えば左と、何によらず皮肉に出るものだ。
釘抜藤吉捕物覚書:11 影人形
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
さういふ手で筆を
執
(
と
)
るのだから、どうせろくな字を書けつこないと自分を
貶
(
けな
)
し切り、人がどんなに出来
栄
(
ば
)
えを
褒
(
ほ
)
めても決して受け容れなかつた。
上田秋成の晩年
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
けだし三月三日は仏を浴し六月六日は
狗
(
いぬ
)
を浴する当時の風だったから、自分を仏と崇め、この客を狗と
貶
(
けな
)
して嘲ったのだ。
十二支考:09 犬に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
「幾らお金になるか知りませんが、私神戸なぞの田舎に
引越
(
ひきこ
)
すのは
否
(
いや
)
です。」俳人の夫人は、神戸なぞ田舎の漁師町か何ぞのやうに言ひ
貶
(
けな
)
した。
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
彼のした
動作
(
どうさ
)
のすべてを視たのだ。彼はそれを感じて、指環を誇りながらあらゆる女の指を
貶
(
けな
)
した今の自分を、その婦人の前に恥ずかしく思った。
指と指環
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
その男というのはその時分
丁度
(
ちょうど
)
四十一二ぐらいで、
中々
(
なかなか
)
元気な人だったし、
且
(
か
)
つ職務柄、幽霊の話などは
初
(
てん
)
から「
何
(
な
)
んの
無稽
(
ばか
)
な」と
貶
(
けな
)
した方だった
暗夜の白髪
(新字新仮名)
/
沼田一雅
(著)
出して遣ると
貶
(
けな
)
した所に、
詞
(
ことば
)
に力を入れて呼んだのは、
流石
(
さすが
)
気が利いてゐるが、その皆さんは一向引かうとしない。
防火栓
(新字旧仮名)
/
ゲオルヒ・ヒルシュフェルド
(著)
俺は、吉野君が、同人雑誌を
貶
(
けな
)
しつけるのをきいて、いくらか安心した。そして心のうちで山野らの「×××」が、一日も早く廃刊することを祈った。
無名作家の日記
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
貶
(
けな
)
されているのか、
賞
(
ほ
)
められているのか、福子はどっちつかずの気持で、こんな良人を前にして、途方にくれた。
万年青
(新字新仮名)
/
矢田津世子
(著)
然し腹の中では、寺尾の事を誰も賞めないので、その対抗運動として、自分の方では
他
(
ひと
)
を
貶
(
けな
)
すんだろうと思った。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼が再びこの店先に立たないのをみると、やはりそれは真実の予言で、彼は夫がひと口に
貶
(
けな
)
してしまったような商売ずくの卑しい
売僧
(
まいす
)
ではないと思われた。
半七捕物帳:16 津の国屋
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
また彼らは、何かするときにはかならず隣人のやってることを
貶
(
けな
)
さずにはいられない連中です。もっとも丈夫な頭の人をも当惑させるほどのものがあります。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
しかしながら、フランスのシャンソンなり、イタリー・オペラのアリアなりを挙ぐるために、ドイツのリードを
貶
(
けな
)
すのは甚だ面白からぬことではあるまいか。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
「ま、耐らない、のむべゑが
兩人
(
ふたり
)
になられたんじや、私が
遣切
(
やりき
)
れないよ。」とお房は
無遠慮
(
ぶえんりよ
)
にかツ
貶
(
けな
)
す。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
お前
達
(
だち
)
は、まだ
齢
(
とし
)
若い血気の少年であるから、幽霊などがあるといったら、一概に
貶
(
けな
)
すことだろうが
雪の透く袖
(新字新仮名)
/
鈴木鼓村
(著)
よく友人
輩
(
たち
)
は
一口
(
ひとくち
)
に「君、それは鼠だろう」と
貶
(
けな
)
してしまう、
成程
(
なるほど
)
鼠の
居
(
お
)
るべき
処
(
ところ
)
なら鼠の
所業
(
しわざ
)
かと
合点
(
がてん
)
もするが、鼠の
居
(
お
)
るべからざる
処
(
ところ
)
でも、
往々
(
おうおう
)
にして聞くのだ
頭上の響
(新字新仮名)
/
北村四海
(著)
とは申せ「東京のうなぎは蒸して焼くから、だしがらのようなもので決してうまいとはいえない」と、よく関西のうなぎ屋が
貶
(
けな
)
しているが、聞くに耐えぬ
我田引水
(
がでんいんすい
)
だ。
握り寿司の名人
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
上げると、身体が丈夫になると云うから、初めは
貶
(
けな
)
しましたが、それでも親切な勧めだと思って参りますが、妙なもので此の頃は其の功徳かして大きに丈夫に成りました
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
なぜなら、佐原あつ子のことを、不必要に
貶
(
けな
)
さないばかりか、実に、ほどよく褒めておくではないか。これでは、いかに女の猜疑心を働かせようにも、働かせる余地がない。
悪態の心理
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
「おすぎさんはすこしおでこじゃないんですか。
貶
(
けな
)
して云っているわけじゃありませんよ。」
夕張の宿
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
お賞めやら? お
貶
(
けな
)
しやら? とにかく道誉を知る者はあなたでしかない。同時に、あなたを
私本太平記:10 風花帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「うむ。それからあの耳が削いだような貧相な厭な耳だ」私も柳沢に和してお宮を
貶
(
けな
)
した。
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
つけつけと自己崇拝の名優を
貶
(
けな
)
しつける者があるのだから、自分の本尊様の悪口でもいわれたように、非常に腹を立てて、不興な眼をして、仏頂寺の方を睨まえましたけれど
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
人により家庭の事情により夫婦とも外で働くということも、また一家のためである以上は、夫婦共稼ぎは
権道
(
けんどう
)
であって、一般には推奨すべきでないが、決して
貶
(
けな
)
すべき事ではない。
夫婦共稼ぎと女子の学問
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
「あんたのおはこだよ、それ」とおつぎが云った、「なにかっていうと自分を
貶
(
けな
)
すんだ、よくない癖だよ、繁さん、あんたはいい人だけれど、それだけは直さなくちゃいけないよ」
落葉の隣り
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
かつて
芥川竜之介
(
あくたがわりゅうのすけ
)
君と俳句を論じた時、芥川君は芭蕉をあげて蕪村を
貶
(
けな
)
した。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
由子は、思いがけぬほど強い口調で、吐出すように「お客様」を
貶
(
けな
)
しつけた。
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
ラッパチーニのごとき非常に優れた医者の、適当と思われる賞讃に対して、それを
貶
(
けな
)
すようなことを言うのは悪いことであろう。しかし一方において、ジョヴァンニ君。君は旧友の子息である。
世界怪談名作集:08 ラッパチーニの娘 アウペパンの作から
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
二番目は「河内山」で蝶昇が勤めた。雷蔵の松江侯と三千歳、高麗三郎の
直侍
(
なおざむらい
)
などで、
清元
(
きよもと
)
の出語りは若い女で、これは馬鹿に
拙
(
まず
)
い。延久代という
名取名
(
なとりな
)
を貰っている阿久は一々節廻しを
貶
(
けな
)
した。
深川の散歩
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
そのなかに
慥
(
たし
)
か、『陰陽二物』の何のと云つて日本国を
貶
(
けな
)
してゐたとおもふが、あれは無理だ。
羅馬
(
ロオマ
)
は無論
巴里
(
パリ
)
に行つても、
倫敦
(
ロンドン
)
、
伯林
(
ベルリン
)
に行つても、さういふ邪気の無い絵はいくつも描いてある。
念珠集
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
されば褒むるも
貶
(
けな
)
すも、遂に甲斐なき業ならずや。唯だ
訝
(
いぶ
)
かしきは、君はまだ讀まぬ書をいひおとし給ふことの苛酷なることぞといふ。われは心に
慙
(
は
)
ぢて、我詞の全く師の口眞似なるを白状したり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
何も西洋の焼物の模様性を
貶
(
けな
)
すのではない。それはそれで素晴らしいものがあるが、しかし「日本の眼」が見ればその模様の中で際立って美しいものは、やはりその奥に簡素の性質があるのである。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
馬越は投げ付けるやうにさう云つて、わざと自分を
貶
(
けな
)
した。
仮面
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
とその折広瀬君が
貶
(
けな
)
しつけたのは痛快だった。但馬君のお母さんは独り息子が死んだと思って、狂乱のようになっていたのである。
妻の秘密筥
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
但
(
た
)
だ異なるは前者の口舌の
較
(
や
)
や
謇渋
(
けんじゅう
)
なるに反して後者は座談に長じ云々と、
看方
(
みかた
)
に由れば多少鴎外を
貶
(
けな
)
して私を揚げるような筆法を
弄
(
ろう
)
した。
鴎外博士の追憶
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
「
侏儒
(
しゅじゅ
)
の言葉」十二月号の「佐佐木茂索君の為に」は佐佐木君を
貶
(
けな
)
したのではありません。佐佐木君を認めない批評家を
嘲
(
あざけ
)
ったものであります。
侏儒の言葉
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
彼は
慎
(
つつ
)
ましやかな苦笑を
洩
(
もら
)
しながら「
実事
(
じつごと
)
の奥義の解せぬ人達のする事じゃ。また実事の面白さの解せぬ人達の見る芝居じゃ」と、一言の下に
貶
(
けな
)
し去った。
藤十郎の恋
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
然し腹の中では、寺尾の事を
誰
(
だれ
)
も
賞
(
ほ
)
めないので、其対抗運動として、自分の方では
他
(
ひと
)
を
貶
(
けな
)
すんだらうと思つた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
七八年
前
(
ぜん
)
僕が滋賀商業の実習生で、君の
家
(
とこ
)
へ
行商
(
かうしやう
)
に往つたら、君は僕の
石鹸
(
しやぼん
)
を石ころか何ぞのやうに
貶
(
けな
)
しつけて、
加之
(
おまけ
)
に僕に外国行を勧めて呉れたつけが
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
貶
漢検1級
部首:⾙
12画
“貶”を含む語句
貶黜
毀誉褒貶
褒貶
見貶
貶謫
貶斥
人間褒貶事千古
天主怒而貶入地獄
美刺褒貶
褒貶毀誉
貶意
貶所
貶称
貶竄
貶辭