裏門うらもん)” の例文
法師はれいのとおり、寝間ねまの前の、えんがわにいると、昨夜さくやのとおり、おもい足音が裏門うらもんからはいって来て、法師をつれていきました。
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
麹町三丁目庄兵衞地借瀬戸物渡世忠兵衞同人妻とみ 其方共八ヶ年以前平川天神裏門うらもん前にて町醫師村井長庵こと雨中うちうかさもた立戻たちもどり候を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それは、此方こちらとはちがつて、はじめから樣子やうすのよかつたのが、きふへんがかはつておなくなりになりました。死骸しがいは、あけがた裏門うらもんきました。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
と、けわたった菊亭家きくていけ裏門うらもんのあたりから、築土ついじをこえて、ヒラリと屋敷やしきのなかへしのびこんだ三つの人かげがある。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
先生せんせいは、年子としこがゆく時間じかんになると、学校がっこう裏門うらもんのところで、じっと一筋道ひとすじみちをながめてっていらっしゃいました。
青い星の国へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
ある時なんかは、しろの中にってあるぞう背中せなかって、裏門うらもんから町へでて行こうとまでしました。
強い賢い王様の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
実際じっさい世間せけんならわしとしてはいかにも表門おもてもんをりっぱにし裏門うらもん粗末そまつにする。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
しさぶり裏門うらもんいたとおもつたら
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
法一ほういちは、いいつけられたとおりに、えんがわにすわっていました。と、いつもの時刻じこくがきて、いつもの武士が、裏門うらもんからはいって来ました。
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
ばばあはヒラヒラとばしのそばまできて、かたくじた裏門うらもんを見まわしていたが、やがて得意とくいそうに「ひひひひひひひひ」と、ひとりで笑いをもらした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もんが、また……貴方あなたおもてでもなければくゞりでもなくつて、土塀どべいへついて一𢌞ひとまは𢌞まはりました、おほきしひがあります、裏門うらもん木戸口きどぐちだつたとまをすんです。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
裏門うらもんから、てらのおしょうさんが、にこにこしながら、はいってくるのをると、ちょっと迷惑めいわくそうな顔色かおいろをしたが、すぐわらいにまぎらして、丁寧ていねいむかえました。
子供は悲しみを知らず (新字新仮名) / 小川未明(著)
置き番人は麻上下あさがみしもの者と下役は黒羽織くろはおりを着し者をつめさせ檀家だんかの者たりとも表門の通行つうかうきん裏門うらもんより出入させ墓場への參詣さんけいをば許せども本堂ほんだうへの參詣はかたく相成ざる由を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
灰黒はひぐろの重き裏門うらもん
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
と、やがて裏門うらもんに近づく人の足音あしおとがして、だれか門をくぐると、裏庭うらにわとおって法師の方へ近づいて来ました。
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
し……大丈夫だいぢやうぶときに、主人あるじが、かねたゝきのことから、裏門うらもんはひつたことなどはなしましたツけ、——こゝろたしかで、なんにもかゝらないほど、よくつたんです。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
兩人は是ぞ屈竟くつきやうの幸ひ此をりにこそ我々が望みを達せんと竊に悦び猶彼是と心を配りしが今宵こよひは是非共過さじと女房にも此事を話し其方は御裏門うらもんに待受て藤三郎樣の御供を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ふたたびめきられた裏門うらもんは、秘密ひみつをのんでものいわぬ口のようにかたくふうじられた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中途ちうとちるのは、とゞかないので。砂利じやりが、病院びやうゐん裏門うらもんの、あの日中ひなか陰氣いんきな、枯野かれのしづむとつた、さびしいあか土塀どべいへ、トン……と……あひいては、トーンとあたるんです。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
矢來邊やらいへんは、たゞとほくまで、榎町えのきちやう牛乳屋ぎうにうや納屋なやに、トーン/\とうし跫音あしおとのするのがひゞいて、いまにも——いわしこう——酒井家さかゐけ裏門うらもんあたりで——眞夜中まよなかには——いわしこう——と三聲みこゑんで
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)