トップ
>
脾腹
>
ひばら
ふりがな文庫
“
脾腹
(
ひばら
)” の例文
捨身の庖丁に
強
(
したた
)
か胸を刺されて、一人がだあっと
襖
(
ふすま
)
もろ共倒れる。その脇から、残った一人が短刀を抜きざま正吉の
脾腹
(
ひばら
)
へひと突き
お美津簪
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
さっと立ち上がると、懐中奥深く忍ばしていたドスを抜き払って、名人の
脾腹
(
ひばら
)
目がけながら突き刺しました。と見えたのは一瞬です。
右門捕物帖:34 首つり五人男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
十余名の
力者
(
りきしゃ
)
は一斉におどり出して、二人へ組みつき、左右から
脾腹
(
ひばら
)
に短剣を加え、袁煕、袁尚ともども無造作に首にしてしまった。
三国志:06 孔明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その声を聞いて近所の人達が駈け付けたときには、お北はもう正気を失っていた。跳ねあがった溝板で
脾腹
(
ひばら
)
を強く突かれたのであった。
半七捕物帳:06 半鐘の怪
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
そのとき、
母親
(
ははおや
)
のやせた
姿
(
すがた
)
が、
西日
(
にしび
)
を
受
(
う
)
けて、
屋根
(
やね
)
へ
灰色
(
はいいろ
)
の
長
(
なが
)
い
影
(
かげ
)
をひきました。
毛
(
け
)
のつやもなく、
脾腹
(
ひばら
)
のあたりは
骨立
(
ほねだ
)
っていました。
どこかに生きながら
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
▼ もっと見る
ダッ! と片脚あげて与吉の
脾腹
(
ひばら
)
を蹴ったと見るや、
胡麻
(
ごま
)
がら
唐桟
(
とうざん
)
のそのはんてんが、これは! とよろめく与吉の面上に舞い下って
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
鼻介が笑いながらヒジを放して、軽く
脾腹
(
ひばら
)
をつくと、飛作はググッと蛙の一声を発してグニャグニャ倒れてノビてしまった。
落語・教祖列伝:04 飛燕流開祖
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
男はすでに立ち上がっていたが、無言で、十手で新助の
脾腹
(
ひばら
)
を、一突き突いて他愛なく倒し、逃げて行くお浦の後を追った。
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
やい、しっかりしろ。と励ませば、八蔵はようように、
脾腹
(
ひばら
)
を抱えて起上り、「あ
痛
(
いつ
)
、あ痛。……おお痛え、痛え、畜生
非道
(
ひど
)
いことをしやあがる。 ...
活人形
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
わたしはまだ
今
(
いま
)
までに、あの
位
(
くらゐ
)
氣性
(
きしやう
)
の
烈
(
はげ
)
しい
女
(
をんな
)
は、
一人
(
ひとり
)
も
見
(
み
)
た
事
(
こと
)
がありません。もしその
時
(
とき
)
でも
油斷
(
ゆだん
)
してゐたらば、
一突
(
ひとつ
)
きに
脾腹
(
ひばら
)
を
突
(
つ
)
かれたでせう。
藪の中
(旧字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
然し石山の馬は、口綱をとって行く主人と調子が合わなかった為、一寸した阪路を下る車に主人は
脾腹
(
ひばら
)
と
太腿
(
ふともも
)
をうたせ、二月も寝る程の怪我をした。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
といいながら、目をつぶって、床の上に寝倒れると、木村の手を持ち添えて自分の
脾腹
(
ひばら
)
を押えさして、つらそうに歯をくいしばってシーツに顔を
埋
(
うず
)
めた。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
あつしの背後へ廻つた
味噌摺
(
みそすり
)
用人奴、小笠原流で靜々とした起ち居振舞ひだから、うつかり油斷をして居ると、横合ひから、あつしの
脾腹
(
ひばら
)
へどかんと來た。
銭形平次捕物控:289 美しき人質
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
しかしことばもなく
脾腹
(
ひばら
)
をおさえたまま、左肩はダラリと首のつけねからたれさがって、髪のみだれかかったうつくしい顔半面は、紅にそまっております。
亡霊怪猫屋敷
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
「おお、荘厳なる雷よ! さあ、万丈の天空より一瞬のうちに落下して、脳天をうち砕き、
脾腹
(
ひばら
)
をひき裂け!」
雷
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
彼は手ぬるい鞭を投げ捨てて、足を上げると、固い靴のかかとで、いやと云う程、文代の
脾腹
(
ひばら
)
を蹴りつけた。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
きゃっと云いましたから
恟
(
びっく
)
りして机から落ちたとまでは覚えておりましたが、其の折何処か
脾腹
(
ひばら
)
でも打ちましたか、それから先は夢のようでとんと解りません
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
と、
薙
(
な
)
いで来るのを、かわしてやりすごすと同時に、左手の拳がパッと伸びて、十分に、
脾腹
(
ひばら
)
にはいった。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
牡牛が、羆の前足で、
搏
(
う
)
たれない裡に、その鉄のような角を、敵の
脾腹
(
ひばら
)
へ突き通せば牡牛の勝利です、妾も、自分の
操
(
みさお
)
を汚されない裡に、立派にあの男を倒してやりたいと思います。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
脾腹
(
ひばら
)
が痛む、そして高い熱が出る。
峻
(
たかし
)
は腸チブスではないかと思った。枕元で兄が
城のある町にて
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
透明人間がま近にきたな、と感じた
瞬間
(
しゅんかん
)
、ケンプ博士は、したたかに
顎
(
あご
)
に一
撃
(
げき
)
をくらった。倒れたところを
脾腹
(
ひばら
)
をけられ、つづいて胸を重いものがおさえつけ、のどをしめつけられた。
透明人間
(新字新仮名)
/
ハーバート・ジョージ・ウェルズ
(著)
お角は我を忘れてがんりきを呼ぶ途端に、一人の覆面のために烈しく地上へ投げ出され、その拍子に路傍の石で
脾腹
(
ひばら
)
を打ってウンと気絶してしまったから、その後のことは何とも分りません。
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
黄金丸は鷲郎と
面
(
おもて
)
を見合せ、「
脱
(
ぬかり
)
給ふな」「脱りはせじ」ト、互に励ましつ励まされつ。やがて両犬進み入りて、今しも
照射
(
ともし
)
ともろともに、
岩角
(
いわかど
)
を枕として
睡
(
ねぶ
)
りゐる、金眸が
脾腹
(
ひばら
)
を
丁
(
ちょう
)
と
蹴
(
け
)
れば。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
脾腹
(
ひばら
)
へ
突込
(
つゝこみ
)
ぐつと一
剌
(
ゑぐ
)
りゑぐりし時重四郎は
荼比所
(
だびしよ
)
の
火影
(
ひかげ
)
に
顏
(
かほ
)
見逢
(
みあは
)
せヤア三五郎か重四郎殿
好機
(
しつくり
)
參つて
重疊々々
(
ちようでふ/\
)
扨此樣子は
先刻
(
さつき
)
用事
(
ようじ
)
有
(
あつ
)
て貴殿の宅へ參りし所何か人聲がする故樣子有んと
窺
(
うかゞ
)
へば金兵衞が
子分共
(
こぶんども
)
我を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
長助はぐさりと一突き
脾腹
(
ひばら
)
をやられてすでにまったくこと切れていたので、いっせいに人たちの口からは驚きの声が上がりました。
右門捕物帖:01 南蛮幽霊
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
其角が伸上って、助けてくれ! と叫ぼうとしたとたん、駕籠の垂の間から、すっと白刃が出て、其角の
脾腹
(
ひばら
)
へぐいと差しつけられた。
其角と山賊と殿様
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
下からは、
槍
(
やり
)
をならべた一隊がせまり、そのなかなる、まッ先のひとりは、流星のごとく忍剣の
脾腹
(
ひばら
)
をねらって、
槍
(
やり
)
をくりだした。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
かれは武士に手ひどく投げつけられたはずみに、樹の根か杭かで
脾腹
(
ひばら
)
を打たれたのであろう、片足を水にひたして息が絶えていた。
半七捕物帳:19 お照の父
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
五兵衛の
脾腹
(
ひばら
)
に突きささっている一本の
小柄
(
こづか
)
。手裏剣に用いるものだ。刃の根元まで突きこんでいるが出血は少い。
明治開化 安吾捕物:02 その一 舞踏会殺人事件
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
わたしはまだ今までに、あのくらい気性の
烈
(
はげ
)
しい女は、一人も見た事がありません。もしその時でも油断していたらば、一突きに
脾腹
(
ひばら
)
を突かれたでしょう。
藪の中
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
これは火事でも起ったのかと思い、戸口を開けて
闇
(
やみ
)
の
戸外
(
そと
)
へ一歩踏み出した
途端
(
とたん
)
に、
脾腹
(
ひばら
)
をドスンと一つきやられて、その
儘
(
まま
)
何もかも判らなくなりました。
赤外線男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
と
擦
(
こす
)
っては消し擦っては消し、ようよう
点
(
つ
)
けたる提灯の
燈明
(
あかり
)
に
照
(
てら
)
せば、
煉瓦
(
れんが
)
の塀と土蔵の壁との間なる細き小路に、
窶
(
やつ
)
れたる婦人
俯伏
(
うつぶし
)
になりて
脾腹
(
ひばら
)
を
押
(
おさ
)
え
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と陸奥守が、喚きを上げて起き上がり、逃げようとする
脾腹
(
ひばら
)
の
辺
(
あた
)
りを、金剛杖の二度目の突きが突いた。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
左膳をめがけて跳躍にうつろうとしていた大垣七郎右衛門の
脾腹
(
ひばら
)
を、ななめに斬りさげた。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
ビッショリと汗を掻いたその掻いた汗の中から、また冷たいものがたらたらと脇の下から
脾腹
(
ひばら
)
へかけて伝わってきた。そしてこの時ほど私は人家の灯を恋しく思ったことはなかった。
逗子物語
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
この有様を見ると、お蘭は「あゝなさけない」と机を下りにかゝると、踏み外ずすとたんに
脾腹
(
ひばら
)
を打ちまして、お蘭は気絶致しましたが、是から何うなりますか、次の
条
(
くだり
)
に申し上げます。
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
最初に出た小姓頭の男はかねがね忠直卿の猛勇を恐れているだけに、槍を合わすか合わさぬかに、早くも持っていた槍を巻き落されて、
脾腹
(
ひばら
)
の辺を突かれると、悶絶せんばかりにへたばってしまった。
忠直卿行状記
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
喉
(
のど
)
を掻き切って、なお、手から離さずにいた短刀で、光安入道は、云い終るなり、
鎧
(
よろい
)
の胴のすきまから
脾腹
(
ひばら
)
へそれを突き立てて果てた。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
真向と
脾腹
(
ひばら
)
を存分に斬られて、二人の
躰
(
からだ
)
が
毬
(
まり
)
のように飛ぶ、と見た次の刹那には、三樹八郎の躰は左手の一団のまっただ中へ
武道宵節句
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
よし重量のある鉄扇で急所の
脾腹
(
ひばら
)
を襲われたとしても、距離は少なくも六七間以上離れた遠方からでしたから、どんなに心得ある達人が打ったにしても
旗本退屈男:03 第三話 後の旗本退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
人丸堂の前まで来かかった時に、さっきの男が何処からか現われて、突然に娘の
脾腹
(
ひばら
)
を突いたのであるという。
半七捕物帳:49 大阪屋花鳥
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
相手は中々
手強
(
てごわ
)
い。私の左腕はちぎれるように痛みを増した。
急場
(
きゅうば
)
だ、ヒラリと二度目に怪漢の腕をさけると、三度目には身を沈め、下から相手の
脾腹
(
ひばら
)
を突き上げた。
空中墳墓
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ひとりは人の袖をひき、ひとりはわが口を両手に抑え、ひとりは己れの頭をたたき、またひとりは
脾腹
(
ひばら
)
を抑え、百態の限りをつくして、ののしり、笑いさざめいていた。
閑山
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
聲
(
こゑ
)
の
中
(
なか
)
に
噫
(
あツ
)
と
一聲
(
ひとこゑ
)
、
床几
(
しやうぎ
)
から
轉
(
ころ
)
げ
落
(
お
)
ちさう、
脾腹
(
ひばら
)
を
抱
(
かゝ
)
へて
呻
(
うめ
)
いたのは、
民子
(
たみこ
)
が
供
(
とも
)
の
與曾平親仁
(
よそべいおやぢ
)
。
雪の翼
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
二の太刀はわたくしの羽織の
袖
(
そで
)
を五寸ばかり斬り裂きました。わたくしはまた飛びすさりながら、抜き打ちに相手を払いました。数馬の
脾腹
(
ひばら
)
を斬られたのはこの
刹那
(
せつな
)
だったと思いまする。
三右衛門の罪
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
醜い争いが深夜まで続いた後、折柄
篠
(
しの
)
突くばかりの土砂降りの中をお銀は戸外へ不貞腐れて出たのだった。後を追って助三郎が格子へ手を掛けた時、雨に濡れた冷たい刃物が彼の
脾腹
(
ひばら
)
を
刳
(
えぐ
)
った。
釘抜藤吉捕物覚書:01 のの字の刀痕
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
脾腹
(
ひばら
)
を岩などで打ったからであろう、茅野雄は谷底で意識を失った。
生死卍巴
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
敵の突き出した鎗が、縅の裏をかいて彼の
脾腹
(
ひばら
)
を貫いていた。
形
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
足を挙げてその
脾腹
(
ひばら
)
と思うあたりを力一杯蹴上げてくれた。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
はて? と
眸
(
ひとみ
)
をさだめてみると、その
脾腹
(
ひばら
)
へうしろ抱きに
脇差
(
わきざし
)
をつきたてていたのは、いつのまに飛びよっていたか
武田伊那丸
(
たけだいなまる
)
であった。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“脾腹”の意味
《名詞》
脇腹。横腹。
(出典:Wiktionary)
脾
漢検1級
部首:⾁
12画
腹
常用漢字
小6
部首:⾁
13画
“脾”で始まる語句
脾弱
脾肉
脾
脾臓
脾疳
脾下
脾弛
脾睨
脾胃
脾骨