わっち)” の例文
大勢まんぜい寄りたかって私共わっちどもに赤恥をかゝせてけえそうとするから、腹が立って堪らねえ、わっちが妹をわっちが連れてくに何も不思議はねえ
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
わっちは現在見たんでさあ。嘘も偽わりもあるものですかい。ええええ尾行つけて行きましたとも。するとどうでしょうあの騒動でさ」
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
わっちかい、」と滝太歩をとどめて振返ると、木蔭をこみちへずッと出たのは、先刻さっきから様子を伺っていた婦人おんなである。透かして見るより懐しげに
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小金吾がちちうがあつたら許さぬといふを「そりやあ何がさて、お荷物にちちうがあつたら、旦那、わっちやあ台座でえざわかれでございます」と右手にて軽く首筋をたたく。
わっち癇性かんしょうでね、どうも、こうやって、逆剃さかずりをかけて、一本一本ひげの穴を掘らなくっちゃ、気が済まねえんだから、——なあに今時いまどきの職人なあ、るんじゃねえ、でるんだ。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
一体あんな馬鹿野郎を親方の可愛がるというがわっちにはてんからわかりませぬ、仕事といえば馬鹿丁寧ではこびは一向つきはせず、柱一本鴫居しきい一ツで嘘をいえばかんなを三度もぐような緩慢のろまな奴
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
わっちがへい、このお客さんをのっけて……」
日は輝けり (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
長「嘘をいたッて仕方がねえ、わっちが京都で修業をして名人になッたって、己の弟子だと云わねえように縁切えんきり書付かきつけをおくんなせえ」
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「ほんとに迷惑というものだ」次郎吉は変に薄笑いをしたが、「人もあろうにわっちのことを、鼠小僧だっていうんですからね」
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
御奉公のおなごりに、皆さんお酌、と来たから、難有ありがてえ、大日如来、おらが車に乗せてやる、いや、わっちが、と戦だね。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
つい御馳走になり過ぎていつか知らず寝てしまいました、姉御、昨夜わっちは何か悪いことでもしはしませぬか、と心配そうに尋ぬるもおかしく、まあ何でも好いわ、飯でも食って仕事に行きやれ
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「こうえて、わっちも江戸っ子だからね」
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
勝「それがね、先生大変なんで、今狸公のお若さんが、あの伊之助野郎と一緒にわっちうちへ来ているんですから、変挺じゃげえせんか」
「どう致しまして、反対あべこべだ、恐縮するのはわっちの方で。……さて、お訪ねのご用の筋は? とこう一つゆきやしょうかな」
戯作者 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「こう、情無いことを謂いなさんな。わっちゃこんなものでもね、日本が大の贔屓ひいきさ。何の赤髯あかひげ、糞でもくらえだ。ええその金時計はすぐ強奪ひったくって持って来やす。」
金時計 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
だがしかし姉御、内の親方には眼玉をもらってもわっちは嬉しいとおもっています、なにも姉御の前だからとて軽薄を云うではありませぬが、真実ほんとに内の親方は茶袋よりもありがたいとおもっています
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
甚「カラうも云う事は子供でげすねえ、幾らア五拾両、けれども、エヽと、二拾両ばかりわっちが目の出た時けえして、三拾両あります」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
お見受け申せばお二人ながら、どうして立派なお武家様、わっちふぜいにおなのりくださるのは、勿体至極もったいしごくもございません。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「一体うぬあ何者だい、尋常ただねずみじゃなさそうだ。」「あい、わっちあ、鮫ヶ橋で丹という、金箔きんぱく附の乞食だよ。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
由「そう/\おっかさんが来ておい/\泣いて居た時には、流石さすがわっちも気の毒に思いましたが、おたきの死骸はいまだに知れませんかえ」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「知ってる段じゃございません。わっちらはそいつらと張り合ってるので」「誰だな? そいつは? え、誰だな?」「赤格子九郎右衛門でございますよ」
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
と抱起さんとすれば、鉄蔵慌てて身を起し、「ええ、勿体ねえ。お前様まえさんわっち身体からだけがれておりやす。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
やい盗人ぬすびと峯松、其方そちは何うもふてええ奴だなア、七年以前に此の伊香保へ湯治に来た時、渋川の達磨茶屋で、わっちア江戸ッ子でござえます
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「従兄妹であろうとハトコであろうと、これには差別はござんせんからね。……わっちはこの眼で見たんでさあ」
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それもよ、行儀なら行儀をしつけようてえ真実からした事なら、どうせお前達めえたちはお夏さんにゃあお師匠様だ、先生だ、わっちが紋床の拭掃除ふきそうじをするのとかわりはねえ、体操でも何でもすら。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
國「えゝおはつうにお目に懸りました、わっちは下駄職國藏と申すものでごぜえやすが、お見知り置かれまして此の後とも御別懇に願います」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
さぞ皆様もお困りでしょう、ケチな野郎ではございますが、わっちがちょっと仲裁役、一肌脱ぐことに致しましょう、と云いたいんだがどう致しまして、すっぱだかになって踊ってみせます。
二人町奴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
生命いのちに別条はねえんだから騒ぐにゃあ当らねえ、おう、奥様おくさんちょいと、おい、先刻さっきのようにお暑うございますとか何とかって、その団扇でわっちをば煽いでくんねえ、煽ぎねえよ、さあ煽げ、煽げ
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
亥「えゝ皆様御免なせえ、えゝお母様ふくろさま、なぜわっちが……旦那御免なせえよ、こんな時にゃアなん挨拶あいさつしていのか私にゃア分んねえ」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「へへ、これはこれはお姫様、とんだ失礼を致しまして真っ平ご免遊ばしませ。なアんて云うのも烏滸おこがましいがわっちは泥棒の鼠小僧、お初お目見得に粗末ながら面をお目にかけやしょう」
善悪両面鼠小僧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
母様ふくろさんに願っているのにおめえさんのような事を云われると、わっちア了簡がちいせえからすくんで仕舞って、ピクーリ/\としてなんにも云えないよ
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
わっちは現在見たんでさあ。裸蝋燭を片手に持って、ヒューッ、ヒューッと口笛を吹いて、檻からえて物を呼び出すのをね。そいつを肩へひょいと載っけて、月夜の往来へ出て行ったものです。
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
人を擲殺たゝッころして内済ねえせいで済みますかえ、そりゃア済ます人もあるか知れませんが、わっちアいやだ、おっかねえ事を仰しゃるねえ、おふくろさん
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
新年はると云っても逼って居りやす。四編はどうでも書かずばなるまい。とてもわっちの手には合わず、さりとて今更断りもならず、四苦八苦の態たらくでげす。——いかがでげしょう滝沢さん、代作を
戯作者 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
一同「そりゃア旦那様、何事かは存じませんが、わっちどもの命を助けて下すった恩人の仰しゃること、何事によらず承わりましょう」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「二日、三日ないしは五日、どのように水を潜ったところで、淼々びょうびょうと広い湖のこと、そんな小さな石の棺、あるともないとも解りませぬ。が、わっち感覚かんから云えば、まずこの辺にはござんせんな」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
おれは幽霊に百両の金を持って来ておくんなせえ、わっちども夫婦は萩原様のおかげうやらうやら暮しをつけて居ります者ですから
「立派なものです。驚きやした。悠に一家を為して居りやす。京伝黙って頭を下げやす。門下などとは飛んでもない話。組合になりやしょう友達になりやしょう。いやいやわっちこそ教えを受けやしょう」
戯作者 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
吉「旦那、棄てるのならわっちに下せえまし、弁当も何も此の暴風あらしで残らず流してしまったア、旦那が上らねえなら私どもに下せえな」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
姐御に逢っちゃかなわない。わっちは案外臆病者でね。
赤格子九郎右衛門の娘 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
自分でおまんまを焚いたり何かますそれで綺麗好だから毎朝表の格子を拭きますよ、其の時其の前をわっちが通り掛ったら、うだろう
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
長「お礼ッたって、それはわっちにはいけねえから、若旦那のお気に入りの幇間たいこ正孝しょうこうはなしをして見ますから、待っておいでなさい」
嬢様じょうさま、おまえさんはおちいさい時分でありましたから、顔も忘れてしまいましたが、今年で丁度十四年あとわっちが前橋にくすぶっていた時
△「えへゝゝ殿様なんざア男がくって扮装なりだからもてやすが、わっちどもはもてた事はなく振られてばかり居ても行きえから別段で」
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
傳「へいわっちも久しく此地こちらに居りますからお顔は知って居ります、私は廣藏親分のところに居る傳次と云う魚屋でございますが親分の厄介者やっけえもので」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
表店おもてだなを立派に張って居ても内々ない/\は一両の銭に困る事もあるものだ、百両くれろと云っても、そんなにわっちはおめえさんにお恵みをする縁がねえ
男「わっちは斯んな胡散うさん形姿なりをしてえるから、怪しい奴だと思おうが、私は伊皿子台町にいる船頭で、荷足の仙太郎という者です」
兼「左様そうです、なんか深いわけがあるんです、心当りがあるんなら何も年寄の親方が行くにゃア及びません、わっちが尋ねましょう」
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
半「本心の何のとってお前さんも疑ぐりぶけえ、わっちが本心の証拠には、山三郎が来たら手初めの奉公に、一番山三郎をだまかして見せましょう」
鐵「えへゝゝゝわっちどもは曲った心が直っても、側から曲ってしまうから、旨く真直まっすぐにならねえので……えゝ其方そちらにおいでなさる方は何方どちらで」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)