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ろくろく
ふりがな文庫
“
碌々
(
ろくろく
)” の例文
わたし達が子供のときに何か取留めのない化物話などを始めると、叔父はいつでも
苦
(
にが
)
い顏をして
碌々
(
ろくろく
)
に相手にもなつて呉れなかつた。
半七捕物帳:01 お文の魂
(旧字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
一夜に庭をつくる
放
(
はな
)
れ
業
(
わざ
)
を演じているが、武蔵は二十八で試合をやめて花々しい青春の幕をとじた後でも、一生
碌々
(
ろくろく
)
たる剣術使いで
青春論
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
それから、三人
揃
(
そろ
)
って、
芝居
(
しばい
)
を見に行きました。なにをやっていたか、もう忘れています。多分、
碌々
(
ろくろく
)
、見ていなかったのでしょう。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
碌々
(
ろくろく
)
飲みもせずに提げて来た石油缶の水を
尽
(
ことごと
)
く彼の積み上げた石に
灑
(
そそ
)
いで甲武信岳の霊に手向け、四時頂上を辞して下山の途に就いた。
奥秩父の山旅日記
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
朝から晩まで朝野の名流を訪うて露国に関する外交上及び産業貿易上の意見を叩き、
碌々
(
ろくろく
)
家人と語る暇がなかったほどに奔走した。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
▼ もっと見る
「えろう、沈んで、ござって、
碌々
(
ろくろく
)
口も利きませんがの、いつか見た時に、あんまり、美しいので、よう憶えていましたが——」
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
彼は
碌々
(
ろくろく
)
話も交えない労働者らの間にあって、人
馴
(
な
)
れない
気圧
(
けお
)
されたような様子をしてる
凸額
(
おでこ
)
の少年の病的な顔つきを、始終観察していた。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
お島は浜屋で父親に昼飯の給仕をすると、
碌々
(
ろくろく
)
男と口を利くひまもなく、
直
(
じき
)
に
停車場
(
ステーション
)
の方へ向ったが、主人も裏通りの方から見送りに来た。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
余輩、あに
碌々
(
ろくろく
)
として徒食するに忍びんや。ここにおいて、積年研究せる妖怪学の結果を編述して、世人に報告するに至る。
妖怪学講義:02 緒言
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
と気の早い男があったもので、
碌々
(
ろくろく
)
聞きもしないうちからもうグンニャリして、
椅子
(
いす
)
に
蹲
(
うずくま
)
った。そして恐る恐る顔を
擡
(
もた
)
げて
葛根湯
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
其他は
碌々
(
ろくろく
)
の輩、関白殿下の重量が十分に圧倒するに足りて居たが、北条氏は兎に角八州に手が延びて居たので、ムザとは圧倒され無かった。
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
何を思って吹いたのかと尋ねたら何でもいいと何時になく
邪慳
(
じゃけん
)
な返事をした。その日は
碌々
(
ろくろく
)
口もきかないで
塞
(
ふさ
)
ぎ込んでいた。
幻影の盾
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「勿体ないお
宥
(
いた
)
わりです。戦いに参っては病躯、陣後に帰っては、
碌々
(
ろくろく
)
御恩に浴すのみで、何ひとつ、御奉公らしいこともならぬこの病骨へ」
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
もし慈君の激励に会わずばその身は
碌々
(
ろくろく
)
として
郷閭
(
きょうりょ
)
に老いたのであろうと語っていた。これは下谷の鷲津氏の家について聞き得たことである。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
あれほど便りをするのに
碌々
(
ろくろく
)
返事もくれない叔父さんの心は今になって自分に解った、と節子は力の
籠
(
こも
)
った調子で書いた手紙を送ってよこした。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
いうまでもなくこの三人の者は常々不和の仲で、途上で
出遇
(
であ
)
っても
碌々
(
ろくろく
)
挨拶
(
あいさつ
)
も
交
(
かわ
)
したことのないほどの間柄なのである。
吊籠と月光と
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
お政は始終顔を
皺
(
しか
)
めていて口も
碌々
(
ろくろく
)
聞かず、文三もその通り。独りお勢
而已
(
のみ
)
はソワソワしていて更らに
沈着
(
おちつ
)
かず、
端手
(
はした
)
なく
囀
(
さえず
)
ッて
他愛
(
たわい
)
もなく笑う。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
僕はかういふ壮士芝居の中に「
大悪僧
(
だいあくそう
)
」とか云ふものを見、
一場
(
ひとば
)
々々の血なまぐささに夜も
碌々
(
ろくろく
)
眠られなかつた。
本所両国
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
美奈子は、最初青年に対して、口も
碌々
(
ろくろく
)
利
(
き
)
けなかった。たゞ、折々母を介して簡単な二言三言を交える丈だった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
己
(
おのれ
)
の
珠
(
たま
)
に
非
(
あら
)
ざることを
惧
(
おそ
)
れるが
故
(
ゆえ
)
に、
敢
(
あえ
)
て刻苦して
磨
(
みが
)
こうともせず、又、己の珠なるべきを半ば信ずるが故に、
碌々
(
ろくろく
)
として
瓦
(
かわら
)
に伍することも出来なかった。
山月記
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
まだ根も
碌々
(
ろくろく
)
張っていないらしく、下の方に三角形に
突支棒
(
つっかいぼう
)
を組んで植えてあるだけで、その突支棒がまた恐ろしく奇麗に緑いろのペンキで塗りたててある。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
夕刻中島さんの家を出る時は
悄
(
しょ
)
げ返っていたけれど、無事に首が
繋
(
つな
)
がると共に、もう好い気になって、お礼さえ
碌々
(
ろくろく
)
言わなかったのである。しかし中島さんは
ガラマサどん
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
会っても不愛想でまるで相手をうるさがっているような顔つきをして(実際はそうじゃなかったのですけれど)
碌々
(
ろくろく
)
口もきかなかったので、尋常一様の手段では
華やかな罪過
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
かのソールズベリのよく罵る、チャーチルの傾危なるもちろん弱敵にあらざれども、グラッドストン氏の眼中よりすればこれ
児曹
(
じそう
)
のみ。いわゆる公ら
碌々
(
ろくろく
)
の輩のみ。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
しかし身体が大きく強健であるとも、必ずしもその人が強いとは限らぬ。大男にしてすこぶる健全なもので、人の前に出ると、声が
顫
(
ふる
)
え、
碌々
(
ろくろく
)
物を言えぬものもある。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
私は三時半まで起きてゐ、二たび寝て大小数匹の南京虫を捕へ、
碌々
(
ろくろく
)
眠らずして一夜を明かした。
南京虫日記
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
急いで
頬
(
ほっ
)
ぺたの汚れているのも拭かずに、飛んで来て介抱をしたので
褒
(
ほ
)
められ、燕は
黒繻子
(
くろじゅす
)
の引掛け帯などをしているうちに、少し遅くなって
碌々
(
ろくろく
)
死水も取らなかった。
野草雑記・野鳥雑記:02 野鳥雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
ある人が、彼女の花の盛りから今日まで、親しく交わっての感慨に、彼女の美は衰えを知らぬのに、それにくらべて自分が男子として、
碌々
(
ろくろく
)
と日を過して来たと嘆息して
大橋須磨子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
ところが、入りしなに三人の沈鬱な様子を
一瞥
(
いちべつ
)
したとみえて、あの見たところ温和そうなセレナ夫人が、
碌々
(
ろくろく
)
に挨拶も返さず、石卓の上に荒々しい片手突きをして云った。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
苦を抜かんが為に、我は値無き死を辞せざるべきか、
過
(
あやまち
)
を償はんが為に、我は楽まざる生を忍ぶべきか。
碌々
(
ろくろく
)
の生は
易
(
やす
)
し、死は
即
(
すなは
)
ち
難
(
かた
)
し。碌々の死は易し、生は
則
(
すなは
)
ち難し。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
碌々
(
ろくろく
)
お為にもならずあんな事になりまして、皆さんの前にお詑びの致しようもございません
無頼は討たず
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
余りにも不意の
血腥
(
ちなまぐさ
)
い出来事の
為
(
た
)
めに
碌々
(
ろくろく
)
口も利けず、
唯
(
ただ
)
おろおろ顔の色を変えて震えているボーイに、兎も角急を警察へ知らせるように
吩咐
(
いいつ
)
けて置いて、さて、寝台の
傍
(
そば
)
を離れると
火縄銃
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
其の話を
碌々
(
ろくろく
)
耳にも入れず、返辞一点張りにて応戦し、隙も有らば逃げ出さんと、其の機を待てども、封鎖厳重にして、意の如くならず、時々の欠伸を咳に紛らし、足をもぢ/″\して
元日の釣
(新字旧仮名)
/
石井研堂
(著)
碌々
(
ろくろく
)
熟睡する暇もなく愛の限りを尽したお前たちの母上が、四十一度という恐ろしい熱を出してどっと床についた時の驚きもさる事ではあるが、診察に来てくれた二人の医師が口を
揃
(
そろ
)
えて
小さき者へ
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
しように田沼ごときの、隠密となって
碌々
(
ろくろく
)
たる与力、貝十郎、惜しく思うぞ!
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ところで父は変人ですから、人に勧められるままに、御経も
碌々
(
ろくろく
)
読めない癖に、淡島堂の
堂守
(
どうもり
)
となりました。それで堂守には、坊主の方がいいといって、頭をクリクリ坊主にした事がありました。
寺内の奇人団
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
私は余りに駆けたので、
急込
(
せきこ
)
んで、
碌々
(
ろくろく
)
声も出なかったが
口早
(
くちばや
)
に
黄色い晩
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
濡れたからだを
碌々
(
ろくろく
)
拭きもせず、そのまま着物を引っかけて帯を廻し、近くの縁から庭下駄を突っかけて
転
(
まろ
)
ぶがごとく、その、たったいま喬さまのお顔の見えた窓の下へ来てみる——と、人影もない。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
新年早々であるから、
碌々
(
ろくろく
)
に会葬者もあるまいと予期していたが、それでも近所の人々その他を合わせて五、六十人が送ってくれた。
正月の思い出
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「何を言っているんだ」と云うような顔をして、お島は
碌々
(
ろくろく
)
それには耳も仮さなかった。そしてやっぱり自分一人のことに思い
耽
(
ふけ
)
っていた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
どう間違ったって浩さんが
碌々
(
ろくろく
)
として頭角をあらわさないなどと云う不見識な事は予期出来んのである。——それだからあの旗持は浩さんだ。
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
漁師の家に生まれて貧しいために、学校の教育も
碌々
(
ろくろく
)
受けられないで、子供の時から漁師仕事ばかりしていたというのです。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
「なんのなんの、足下は江東の豪傑、
碌々
(
ろくろく
)
たる鈍才孔明ごときが、お教えするなどとは思いもよらぬ。僭越です。良策など、あろう筈もない」
三国志:07 赤壁の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
丁度
往時
(
むかし
)
故郷の広い楽しい
炉辺
(
ろばた
)
で、ややもすると
嫌味
(
いやみ
)
なことを言う
老祖母
(
おばあ
)
さんを前に置いて、
碌々
(
ろくろく
)
口も
利
(
き
)
かずに食った若夫婦の時代と同じように
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
それは折から、用事があって、池の尾の寺を訪れた
侍
(
さむらい
)
が、前よりも一層
可笑
(
おか
)
しそうな顔をして、話も
碌々
(
ろくろく
)
せずに、じろじろ内供の鼻ばかり眺めていた事である。
鼻
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
沼南と仕事を
侶
(
とも
)
にした提携者や門下生的関係ある
昵近
(
じっきん
)
者さえが「復たユックリ来給え」で
碌々
(
ろくろく
)
用談も済まない
中
(
うち
)
に撃退されてブツクサいうのは珍らしくなかった。
三十年前の島田沼南
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
此方
(
こっち
)
はその『アイドル』の顔が視たいばかりで、気まりの悪いのも
堪
(
こら
)
えて毎日々々その家へ遊びに往けば、
先方
(
さき
)
じゃ
五月蠅
(
うるさい
)
と云ッたような顔をして口も
碌々
(
ろくろく
)
きかない
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
彼は、そう答えると、軽く
会釈
(
えしゃく
)
したまゝで、相手の顔も、
碌々
(
ろくろく
)
見ないで、そのまゝ階段を馳け上った。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
子路が他の所ではあくまで人の下風に立つを潔しとしない独立
不羈
(
ふき
)
の男であり、
一諾千金
(
いちだくせんきん
)
の快男児であるだけに、
碌々
(
ろくろく
)
たる
凡弟子然
(
ぼんていしぜん
)
として孔子の前に
侍
(
はんべ
)
っている姿は
弟子
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
平生
(
へいぜい
)
天下有用の人物たらんことを欲していたが、志を得る機会なく
碌々
(
ろくろく
)
たる小吏を以て身を終った。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
碌
漢検1級
部首:⽯
13画
々
3画
“碌”で始まる語句
碌
碌碌
碌米
碌素法