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癒
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いや
ふりがな文庫
“
癒
(
いや
)” の例文
私は、愛や
赦
(
ゆる
)
しや
癒
(
いや
)
しや労働やのキリスト教的徳を尊ぶ心は深くなるばかりです。けれどそれだけではキリスト信者ではありません。
青春の息の痕
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
彼は堪りかねて、さりげなくルバシュカに近寄つて行き、彼の吐き出すバットの煙を鼻の穴を膨らまして吸ひ取つては渇を
癒
(
いや
)
した。
崖の下
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
いや、金花はこの瞬間、彼女の体に起つた奇蹟が、一夜の中に跡方もなく、悪性を極めた
楊梅瘡
(
やうばいさう
)
を
癒
(
いや
)
した事に気づいたのであつた。
南京の基督
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
またエッキス線で照らして皮膚や血液の病を
癒
(
いや
)
す事も往々あるが、しかしこの線のために
癌腫
(
がんしゅ
)
を生じた例があるから注意を要するとの事。
話の種
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
此の時河内介に取っては、父の
膝下
(
しっか
)
へ戻る
嬉
(
うれ
)
しさもさることながら、
桔梗
(
ききょう
)
の
方
(
かた
)
との別離の悲しみも当分は
癒
(
いや
)
し難い
痛手
(
いたで
)
であった。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
▼ もっと見る
それでは、魂は
癒
(
いや
)
され得るが運命はいかんともし難いということは、果たして真実なのか。不治の宿命! 恐るべきことである。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
だが、黙々として心をむしばむ憂愁は彼女の魂のなかにはいりこんでしまっていて、何ものもそれを
癒
(
いや
)
すことはできなかった。
傷心
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
彼はガリラヤの町々村々を巡回して、福音を宣べ伝え、多くの病をいやした。多くの群衆が彼の跡を追うて、彼の
癒
(
いや
)
しにあずかろうとした。
キリスト教入門
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
頭脳の疲れを
癒
(
いや
)
し、新しい勇気を盛り返したばかりでなく、うっかり遊び過したりすると、「こうしていては、ベートーヴェンにすまない」
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
われ人共に、何をもってしても
癒
(
いや
)
し難い無限に続く人生の哀音なるものが僕の
弛緩
(
しかん
)
した精神の
鎧
(
よろい
)
の合せ目から浸み込むためか。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
汝の
癒
(
いや
)
しゝわが魂が汝の
意
(
こゝろ
)
にかなふさまにて肉體より解かるゝことをえんため、願はくは汝の賜をわが
衷
(
うち
)
に
護
(
まも
)
れ。 八八—九〇
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
心にまかせざること二ツ三ツあれば、怨みもし憂ひもするは人の常なるが、心
敦
(
あつ
)
げなるこの花に対ひて願はくは憂ひを忘れ愁ひを
癒
(
いや
)
さんかな。
花のいろ/\
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
人間に
慰藉
(
なぐさめ
)
を給はる父よ。精霊よ。願くはわたくしの此胸にお
宿下
(
やどりくだ
)
さい。そしてあらゆる罪悪をお
癒
(
いや
)
し下さつて、わたくしの霊をお救下さい。
パアテル・セルギウス
(新字旧仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
いま天下の大乱は、重病者の気脈のごとく、万民の窮状は、瀕死の者の気息にも似ている。これを医し
癒
(
いや
)
さんに、なんで短兵急にまいろうか。
三国志:07 赤壁の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それ故医者がその智慧と技術とを傾けて、人々を
癒
(
いや
)
そうとする如く、吾々もまた美しさの性質を出来るだけ健全なものに育てねばなりません。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
濡
(
ぬ
)
れた町々の屋根は
僅
(
わず
)
かに白い。雪は彼女の
足許
(
あしもと
)
へも来て溶けた。この快感は、湯気で蒸された眼ばかりでなく、彼女の
肌膚
(
はだ
)
の
渇
(
かわき
)
をも
癒
(
いや
)
した。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「…………、こんどが初めてじゃないんだ。何度もあったもんだよ。——それに君ァ病気じゃないか、落ちついてそれからまず
癒
(
いや
)
したまえ……」
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
病の故に人が厭わば、その病を
癒
(
いや
)
したる医者が証人に立つのは当然の事ではないか。汝これを拒むからには、この者の病は未だ癒えざるは必定。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
恋を失った心の痛みを毎日毎晩の喧嘩で
癒
(
いや
)
していた彼は、この後どうしてその痛みを鎮めるか。それを思うと、彼はさびしかった。悲しかった。
番町皿屋敷
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
夫人がこのときの
風采
(
ふうさい
)
は、罪あるものを救うべく、
疾
(
や
)
めるものを
癒
(
いや
)
すべく、雲に
駕
(
が
)
して
往
(
ゆ
)
き
還
(
かえ
)
る神々しい姿であった。廊下を出ると、風が冷い。
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
自分で飲みつぶし、使いつぶした身代は、また観念もするが、他から侵入され、征服されて、つぶされる運命は
癪
(
しゃく
)
だ。
癒
(
いや
)
し難い無念だ、残念だ。
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
又そういう自分の心が何物によっても
癒
(
いや
)
されないということが幼い私にも予覚せられていたのだったけれど、ただそうやっていつまでもむずかり
幼年時代
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
お
傷手
(
いたで
)
が新女御の宮で
癒
(
いや
)
されたともいえないであろうが、自然に昔は昔として忘れられていくようになり、帝にまた楽しい御生活がかえってきた。
源氏物語:01 桐壺
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
私は彼女に向って、すべてを
癒
(
いや
)
す「時」の流れに従って
下
(
くだ
)
れと云った。彼女はもしそうしたらこの大切な記憶がしだいに
剥
(
は
)
げて行くだろうと嘆いた。
硝子戸の中
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「憎しみに何よりも強くうち勝つものは暴力ではないの——危害をほんたうに確かに
癒
(
いや
)
すものは復讐ではないのよ。」
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
夫人は、前川氏を意地悪く、真綿で首を
締
(
し
)
めるような
苛
(
いじ
)
め方をして、つまり精神的にサジズムによって、その不満を
癒
(
いや
)
しているような傾向があった。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「心安い多くの婦人から奪われた大事の物の紛失は
癒
(
いや
)
すに
術
(
すべ
)
なきを見てやむをえず、勝者の
愍憐
(
びんれん
)
を乞いに来ました」
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
美
(
うる
)
わしい前面。生活は実質的よりもいっそう外見的であった。その下には、あらゆる国の上流社会に共通である、
癒
(
いや
)
すべからざる
軽佻
(
けいちょう
)
さが潜んでいた。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
休茶屋で、ラムネに
渇
(
かわ
)
いた
咽喉
(
のど
)
や
熱
(
いき
)
る体を
癒
(
いや
)
しつつ、帰路についたのは、日がもう大分かげりかけてからであった。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
それから、吉原へ行こうという友人の発議に、僕もむしゃくしゃ腹を
癒
(
いや
)
すにはよかろうと思って、賛成し、二人はその道を北に向って車で駆けらした。
耽溺
(新字新仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
その折から偶然銀座の
人中
(
ひとなか
)
でお千代に
袂
(
たもと
)
を引かれ、これが噂に聞く
街娼
(
がいしょう
)
だと思った処から、日頃の渇望を一時に
癒
(
いや
)
し得たような心持になったのである。
ひかげの花
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
修治さんは、わたしなどどんなに身も心もささげつくしておつかえしても、心の
癒
(
いや
)
されることはないのでしょう。
雨の玉川心中:01 太宰治との愛と死のノート
(新字新仮名)
/
山崎富栄
(著)
彼女の
美貌
(
びぼう
)
が彼女を悲運におとしたのである。彼女はその心のいたでを
癒
(
いや
)
すには、全力をそそいで芸の道にまっしぐらとならなければならないと思った。
豊竹呂昇
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
時はあらゆるものを
掠
(
かす
)
め去るものだ、どんなに大きな悲しみも苦痛も、過ぎてゆく時間に
癒
(
いや
)
されないものはない。
日本婦道記:墨丸
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
少女
(
おとめ
)
は見て、その悲哀を
癒
(
いや
)
す水はここにありと、小枝を流れに浸しこなたに向かいて振れば、冷たき
沫
(
しぶき
)
飛び来たりて青年の
頬
(
ほお
)
を打ちたり。春の夢破れぬ。
わかれ
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
寮に住居をしているのは、父母に逝かれた悲しさから、気欝の性になったのを、
癒
(
いや
)
そうとしてに他ならなかった。
十二神貝十郎手柄話
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
実を言えば、鶴見は結婚後重患にかかり、その打撃から十分に
癒
(
いや
)
されていなかったのである。そればかりか、病余の衰弱はかれの神経を過度に
昂
(
たか
)
ぶらせた。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
旅の
渇
(
かわ
)
きを
癒
(
いや
)
すため、ステファアヌ・マラルメが
愛
(
め
)
でた果実、「理想の
苦
(
にが
)
みに味つけられた
黄金色
(
こがねいろ
)
のシトロン」
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
(最近の戦争は日本人の性情の現われではなくして却ってそれを傷けたものである。)そこでその傷を
癒
(
いや
)
し破壊せられんとしたものを建てなおすことにおいて
歴史の学に於ける「人」の回復
(新字新仮名)
/
津田左右吉
(著)
ところで、この探検の費用はマヌエラの父がだし、それも座間が疲労を
癒
(
いや
)
す物見遊山としか考えていない。
人外魔境:01 有尾人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
君がただひとりで忍ばなければならない
煩悶
(
はんもん
)
——それは痛ましい陣痛の苦しみであるとは言え、それは君自身の苦しみ、君自身で
癒
(
いや
)
さなければならぬ苦しみだ。
生まれいずる悩み
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
こういう疲れ方は他の疲れとは違って
癒
(
いや
)
し様のない袋小路のどんづまりという感じである。世阿弥が佐渡へ流刑のあいだに創った謡曲に「
檜垣
(
ひがき
)
」というものがある。
青春論
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
そのようにして二三時間をすごしたあとで、ヒョイと気がつくことは、自分のうちのそれまでの混乱がしずまったり、心の疲れが
癒
(
いや
)
されたりしているということです。
歩くこと
(新字新仮名)
/
三好十郎
(著)
「そのとおり、そこでしばらく燃ゆる恋心を抑えて、身のわずらいを
癒
(
いや
)
す思案でもするがよかろう」
岩魚
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
棹さす小舟の波の中にも、嵐にむせぶ山のかげにも、日かげに踈き谷の底にも、我身は常に汝が身に添ひて、水無月の日影つち裂くる時は清水となりて渇きも
癒
(
いや
)
さん
暗夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
「このままに打ち過ぎんには、遂に生れもつかぬ跛犬となりて、親の
仇
(
あだ
)
さへ討ちがたけん。今の
間
(
あいだ
)
によき薬を得て、足を
癒
(
いや
)
さでは
叶
(
かな
)
ふまじ」ト、その薬を
索
(
たずね
)
るほどに。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
和文に漆まけを
癒
(
いや
)
しとあるのも
亦
(
また
)
さうである。父の
拵
(
こしら
)
へて呉れたものはそんなものではなかつた。
念珠集
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
時は悲みと爭ひとを
癒
(
いや
)
す。それは私達が變化するからだ。私達は最早同じ人ではなくなるのだ。傷けたものも、傷けられたものも、最早以前の同じ人々ではなくなるのだ。
パスカルの言葉
(旧字旧仮名)
/
ブレーズ・パスカル
(著)
胡瓜
(
きゅうり
)
の汁の味でも濁川の湯のものなどには比べものにはならない。空腹を
癒
(
いや
)
して
臥床
(
ふしど
)
へはいると、疲労がすぎたのか眠られない。遠くない処で馬の鼻を鳴らす音も聞える。
木曽御嶽の両面
(新字新仮名)
/
吉江喬松
(著)
草深くて、ささやかながら私たち町っ子の
渇
(
かつ
)
を
癒
(
いや
)
すに足るだけの「自然」がそこにはあった。池の面も南京藻がいっぱい浮かんでいて、ちょっと雨が降ればすぐ水が溢れた。
桜林
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
癒
常用漢字
中学
部首:⽧
18画
“癒”を含む語句
平癒
治癒
癒着
快癒
腹癒
癒合
御平癒
御癒
全癒
肚癒
御快癒
快癒迅速
除癒
自癒力
祈平癒呈
癒合双体
残欠治癒
恢癒
快癒期
回癒
...