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痒
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かゆ
ふりがな文庫
“
痒
(
かゆ
)” の例文
田山白雲の身の廻りのことは、三度の食事から、
蒲団
(
ふとん
)
の上げ下ろしまで、
痒
(
かゆ
)
いところへ手の届くように世話してくれる者があります。
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
それから急に
痒
(
かゆ
)
くなって、敵の大軍をみなごろしにするのだ、
叡山
(
えいざん
)
の焼討ちだなどと、肌着の大掃除をやっていたところでございます
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
僕等は
弘法麦
(
こうぼうむぎ
)
の茂みを
避
(
よ
)
け避け、(
滴
(
しずく
)
をためた弘法麦の中へうっかり足を踏み入れると、ふくら
脛
(
はぎ
)
の
痒
(
かゆ
)
くなるのに閉口したから。)
海のほとり
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
按摩
(
あんま
)
は
其
(
その
)
仰向
(
あをむ
)
いて
打傾
(
うちかたむ
)
いた、
耳
(
みゝ
)
の
痒
(
かゆ
)
いのを
掻
(
か
)
きさうな
手
(
て
)
つきで、
右手
(
めて
)
に
持添
(
もちそ
)
へた
杖
(
つゑ
)
の
尖
(
さき
)
を、
輕
(
かる
)
く、コト/\コト/\と
彈
(
はじ
)
きながら
三人の盲の話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
とにかく、これは誰それに話してやりたいと、思って、それを話さずにいると、胃のあたりがむず
痒
(
かゆ
)
くなってくる、そうであった。
山彦乙女
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
▼ もっと見る
実際一面からいえば、
痒
(
かゆ
)
いところへ手の届くように書きこなされてあるのであって、これは到底凡手の企て及ばざるところである。
「マリー・ロオジェ事件」の研究
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
古河の十二万五千石がどうなろうと、俺にゃ痛くも
痒
(
かゆ
)
くもねえが、こんなふうに鍔ぜりあいになった以上、どうして後へひけるものか。
顎十郎捕物帳:10 野伏大名
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
大「いや/\腹を切る血判ではない、爪の間をちょいと切って、血が
染
(
にじ
)
んだのを手前の
姓名
(
なまえ
)
の下へ
捺
(
お
)
すだけで、痛くも
痒
(
かゆ
)
くもない」
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
虱は
草臥
(
くたび
)
れはてた人のやうに、のろのろ動いてゐたが、やがて武士は自分の腕が
痒
(
かゆ
)
くなるのを覚えた。虱が血を吸ひ始めたことが解つた。
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
両掌
(
りょうて
)
をそろえて、顔をおおった。
瞼
(
まぶた
)
がしきりと
痒
(
かゆ
)
かった。坊津での傷は、ほとんどなおっていて、その跡がしわになっているらしかった。
桜島
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
しかし何分にも厳重に閉じられた建物の外から観察するのであるから、靴を
隔
(
へだ
)
てて
痒
(
かゆ
)
い足を掻くような焦燥を感じずにはいられなかった。
地球盗難
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
と、浮気ぽい根性がうず
痒
(
かゆ
)
く動いて来た。眼をあげると、女はペンキの
剥
(
は
)
げたドアにもたれて、
凝
(
じ
)
っと媚を含んだ眼をこちらに向けていた。
苦力頭の表情
(新字新仮名)
/
里村欣三
(著)
五歳になるその上の女の子は、頭から顔から
腫物
(
おでき
)
が出来て、夜になるとそれが痛いのか
痒
(
かゆ
)
いのか、これも又ヒステリイの様に泣き叫ぶのだ。
毒草
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
妖麗、艶美を極めた
痒
(
かゆ
)
いところに手の届くショパンだが、欧米の一般聴衆には、あの程度のが受けるのかも知れないのである。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
「ええ、そりゃもう、何だって言うこと聞いてくださるわよ、あたいのお臀だって
痒
(
かゆ
)
いって言えば、掻いていただけるし。」
蜜のあわれ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
正月の末に
豫感
(
よかん
)
があり、時々胸がむず
痒
(
かゆ
)
いような生温いような感じを覚えたことがあるので、変だと思っていたのであったが、二月の或る日
鍵
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「資本家は、おれたちゴンゾが
乾干
(
ひぼ
)
しになろうが、のたれ死にしようが、なんとも思わんのよ。痛うも、
痒
(
かゆ
)
うもねえとじゃ」
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
その頃は小供の事で今のように
色気
(
いろけ
)
もなにもなかったものだから、
痒
(
かゆ
)
い痒いと云いながら
無暗
(
むやみ
)
に顔中引き
掻
(
か
)
いたのだそうだ。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
夜寝に就いて蒲団の中で温まると
痒
(
かゆ
)
さがひどくなった。「いまにもっとひどくなる。くずれて骨が出るようになる。」と雑役の一人が私を
嚇
(
おど
)
した。
その人
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
アハハハ……これは身どもが
不念
(
ぶねん
)
じゃった。貴殿の行末を思う余りに、要らざる事を尋ねた。『
予
(
あらかじ
)
め
掻
(
か
)
いて
痒
(
かゆ
)
きを待つ』
斬られたさに
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
これも芭蕉が旅中で遭遇した事実で、非常に汚い
百姓家
(
ひゃくしょうや
)
に泊った。そうすると蚤や虱が盛んに食って
痒
(
かゆ
)
くって眠れない。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
と
恍
(
とぼ
)
けて訊いてやりますと、母は今度は両袖の口を指先で掴んで背中が
痒
(
かゆ
)
いように左右に引いて、上体をやけのように身揺ぎ一つさせると同時に
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
けれどもどうもチベットの内地に入って見ないと靴を隔てて
痒
(
かゆ
)
きを
掻
(
か
)
くという歎に堪えぬというところから、内地へ入ろうという考えを起したが
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
彼は
其処
(
そこ
)
から見えるあらゆる樹木がすっかり若葉を出しているのに
眺
(
なが
)
め入りながら、目が
痒
(
かゆ
)
くなるのを我慢していた。
恢復期
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
だが、一貫して現はれてゐるのは、小柄の者がさうである場合特に目立つ、そして見る者の咽喉のあたりを
痒
(
かゆ
)
くさせるやうな、あの
横柄
(
わうへい
)
さであつた。
医師高間房一氏
(新字旧仮名)
/
田畑修一郎
(著)
文吾はぞつと身慄ひをして、母の寢息の籠つた
紙帳
(
しちやう
)
の中へ
潛
(
もぐ
)
り込んだ。寺で蚊に食はれた痕が、急に
痒
(
かゆ
)
くなつて來た。
石川五右衛門の生立
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
眼を
瞑
(
ねぶ
)
つた様な積りで生活といふものゝ中へ深入りして行く気持は、時として
恰度
(
ちやうど
)
痒
(
かゆ
)
い
腫物
(
しゆもつ
)
を自分でメスを執つて切開する様な快感を伴ふ事もあつた。
弓町より
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
時にはその大きくあいた口の横わきをさも
痒
(
かゆ
)
いやうなふりをして指でこすりながらはあはあ息だけで笑ひました。
虔十公園林
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
田舎の縁類の人の
噂
(
うわさ
)
も出た。お庄はどこか父親に
肖
(
に
)
ているとか、ここが母親に肖ているとか言って、顔をじろじろ見られるのが、むず
痒
(
かゆ
)
いようであった。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
夫人の身体を掩うてゐる金紗縮緬のいぢり
痒
(
かゆ
)
いやうな触感が、
衣服
(
きもの
)
越しに、彼の身体に浸みるやうに感ぜられた。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
何んだか、何を聞いてももう痛くも
痒
(
かゆ
)
くもありませんね。隅から隅まで知れた方がよござんすね、面白くつて。
書簡 大杉栄宛:(一九一六年五月九日 一信)
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
私はよく汗のついた手首に、その繪の女王や昆虫の彩色を
痒
(
かゆ
)
いほど押しては貼り、
剥
(
はが
)
してはそつと貼りつけて、水路の小舟に
伊蘇普
(
いそつぷ
)
物語の
奇
(
あや
)
しい頁を
飜
(
か
)
へした。
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
と
痒
(
かゆ
)
いところへよく届かす手は口をきくその
間
(
ひま
)
に、がたぴしさせず
膳
(
ぜん
)
ごしらえ、三輪漬は
柚
(
ゆ
)
の香ゆかしく、
大根卸
(
おろし
)
で食わする
鮏卵
(
はららご
)
は無造作にして気が利きたり。
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
痒
(
かゆ
)
いところに手の屆くやうにしてくれた思ひ遣りも、その夜を境に掌を返すやうに變つてしまつた。
崖の下
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
「
痒
(
かゆ
)
い痒いと思ったら、こんなに食いからかいて」とお種は
単衣
(
ひとえ
)
の
裾
(
すそ
)
の方を
掲
(
から
)
げながら捜してみた。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
崖をうしろにした此の窪地は風も吹き通はず小鳥の声も聞えず、小春の日光の照り輝くばかり。その
暖
(
あたゝか
)
なことは帽子を冠つた頭が
忽
(
たちま
)
ちむづ/\
痒
(
かゆ
)
くなつて来るほどでした。
畦道
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
痛
(
いた
)
し
痒
(
かゆ
)
しというわけで、親達もまだ迷っているうちに、婿取りの姉の方がこんなことになってしまったから、妹をよそへやるという訳には行きますめえ。どうなりますかね
半七捕物帳:22 筆屋の娘
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「どうもな、いくら御寄付は戴いても、ああいう御病気の方では村にとっては住んで戴いて有難いのやら迷惑なのやら、とんと痛し
痒
(
かゆ
)
しのようなわけでございまして……」
逗子物語
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
……ああ、両
肘
(
ひじ
)
が
痒
(
かゆ
)
くなった。……ああ膝頭が痒くなった。……皆様、どうしたのでございましょう。……眉の上が痒くなりました。……むくんだようでございましょう。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「そんなことではくすぐるようで
痒
(
かゆ
)
くてならん、もっと力を入れて! もっと! もっと!」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
ナポレオンの田虫は
頑癬
(
がんせん
)
の一種であった。それは
総
(
あら
)
ゆる皮膚病の中で、最も
頑強
(
がんきょう
)
な
痒
(
かゆ
)
さを与えて輪郭的に拡がる性質をもっていた。
掻
(
か
)
けば花弁を踏みにじったような汁が出た。
ナポレオンと田虫
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
痒
(
かゆ
)
いところへ手が届くとは漱石の知と理のことで、人間関係のあらゆる外部の枝葉末節に実にまんべんなく
思惟
(
しい
)
が行きとどいているのだが、肉体というものだけがないのである。
戯作者文学論:――平野謙へ・手紙に代えて――
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
登勢はいやな顔一つ見せなかったから、
痒
(
かゆ
)
いところへ届かせるその手の左利きをお定はふとあわれみそうなものだのに、やはり三角の眼を光らせて、
鈍臭
(
どんくさ
)
い、右の手使いなはれ。
蛍
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
彼は、最初から、苦しい欠乏に堪え、一大難関を突破しなければならぬと覚悟した。それが、いっこう、痛くも
痒
(
かゆ
)
くもないのである。以前よりも、からだの調子はいいくらいだ。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
しかるに不折君に向つての注文は大主意だに説明し置けば
些末
(
さまつ
)
の事は言はずとも
痒
(
かゆ
)
き処に手の届くやうに出来るなり、
否
(
いな
)
余ら素人の考の及ばざる処まで一々巧妙の意匠を
尽
(
つく
)
せり。
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
夜は茶の間に集つてるみんなのそばでおもちやをぶちまけて遊んでるうちに、睡けがさしてくればあれもこれも癪にさはるので
痒
(
かゆ
)
い眼玉をこすりこすりむづかつてると、伯母さんは
銀の匙
(新字旧仮名)
/
中勘助
(著)
「ウフフ。安い酒がそろそろ廻り出した模様じゃな。傷もむずむずとむず
痒
(
かゆ
)
くなって参ったようじゃ。まさかにこの祝い酒、大工共を首尾よく血祭りにあげた祝い酒ではあるまいな」
旗本退屈男:09 第九話 江戸に帰った退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
そのために元来はさほど
下手
(
へた
)
でなくても、いかにも
痒
(
かゆ
)
い所に手の届かぬというような、多少
謎
(
なぞ
)
に近い地名の附け方をするようになったのかも知れない。たとえば横田という地名がある。
地名の研究
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
不図
(
ふと
)
太鼓の音が南京虫にくわれて
痒
(
かゆ
)
い耳についた。ドーン、ドン。ドン、ドン……段々近づいて来るのをきくと、それはキリスト教の伝道であった。益々早く太鼓をうち、何とかして
刻々
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
それは、甘える愛猫が彼の指を優しく噛む時ほどの
痒
(
かゆ
)
さを感じさせた。彼は枝を
撓
(
たわ
)
めてそれを己の身近くひき寄せた。その唯一つの花は、
嗟
(
ああ
)
! ちやうどアネモネの花ほど大きかつた。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
痒
漢検1級
部首:⽧
11画
“痒”を含む語句
痛痒
歯痒
羞痒
齒痒
隔靴掻痒
痛痒相冒
齒痒相
齋痒
閔致痒
薄痒
羽痒
痾痒
催痒性
痒序
擽痒感覚
擽痒
揩磨苛痒風助威
掻痒記
掻痒
奇痒