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獺
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かわうそ
ふりがな文庫
“
獺
(
かわうそ
)” の例文
ところがそれからまた二日置いて、三日目の暮れ方に、
獺
(
かわうそ
)
の
襟
(
えり
)
の着いた暖かそうな
外套
(
マント
)
を着て、突然坂井が宗助の所へやって来た。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
……ねえ、仁科さん……たとえ、どう理が合わなくとも、これが
獺
(
かわうそ
)
や、
怨霊
(
おんりょう
)
のしわざだなぞと、そんな馬鹿気たことはわたしらは考えない。
顎十郎捕物帳:14 蕃拉布
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
多くは、
川裳
(
かわすそ
)
を、すぐに
獺
(
かわうそ
)
にして、河の神だとも思っていて、——実は、私が、むしろその方だったのです。——恐縮しなければなりません。
河伯令嬢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
獺
(
かわうそ
)
とか
鼬
(
いたち
)
などが
棲
(
す
)
んでいて、よく人をおどろかしたり、なにごとでもすぐに信ずるような、昔ふうの住民を「
隙
(
すき
)
さえあれば化かそうと思っている」
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
紫木綿
(
むらさきもめん
)
の包みを胸に、稽古を終えて帰って来たお次は、星明りの水に、
獺
(
かわうそ
)
みたいな人影が、ざぶざぶ動いているので
下頭橋由来
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
ゲエルの説明するところによれば、
河童
(
かっぱ
)
はいつも
獺
(
かわうそ
)
を仮設敵にしているということです。しかも獺は河童に負けない軍備を
具
(
そな
)
えているということです。
河童
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
その男の水の上の好きなことと申しましたら、まるで海亀か
獺
(
かわうそ
)
のような男でございます。陸へ上って一日もするともう頭が痛くなると申すのでございます。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
それでもこの頃は
屍体
(
したい
)
の解剖などが厳禁せられていたので、
獺
(
かわうそ
)
などを用いてそれをしらべたりしていましたが、これでは人体のことはまだよくわかりません。
杉田玄白
(新字新仮名)
/
石原純
(著)
物の本にある狐狸の業か、それとも、
獺
(
かわうそ
)
か
大蛇
(
おろち
)
の怪か、いずれにしても、
正面
(
まとも
)
の人間とは思われません。
新奇談クラブ:03 第三夜 お化け若衆
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
鷹
(
たか
)
だの
狼
(
おおかみ
)
だの
獺
(
かわうそ
)
だのの
霊
(
れい
)
が
哀
(
あわ
)
れなシャクにのり移って、不思議な言葉を
吐
(
は
)
かせるということである。
狐憑
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
また、浜田辺りでは
獺
(
かわうそ
)
つきの迷信もあるそうだ。その他、海浜には船幽霊の話がたくさんある。その話に、難船の後には海上に呼び声を聞き、また光を見ると申している。
迷信と宗教
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
そうだろうな
獺
(
かわうそ
)
の毛皮だからなあ、とひねくり𢌞し撫で𢌞し冠ったり掴んだりして見ていた。
〈我が愛する詩人の伝記〉(補遺)
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
獺
(
かわうそ
)
を
媒
(
なかだち
)
として文通するを、かねてかの魚を慕いいた
蛸入道
(
たこにゅうどう
)
安からず思い、
烏賊
(
いか
)
や
鰕
(
えび
)
を率いて襲い奪わんとし、オコゼ怖れて山奥に逃げ行き山の神に具して妻となる物語絵を見出し
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
その内四人は、東西南北の四ツの国から、一人
宛
(
ずつ
)
選
(
よ
)
り抜かれて集まった女で、皆
各自
(
めいめい
)
の国の自慢の冬の風俗をしておりました。北の国の女は、美事な
獺
(
かわうそ
)
の皮の外套を着ておりました。
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
獺
(
かわうそ
)
を見せられたり、初めて来た活動写真で、汽車から降りた人の煙草の煙が本物同様にたなびくのを、珍しがって見たものだが、
何
(
いず
)
れ二度と再び帰って来ない、馬鹿気た昔の話である。
四谷、赤坂
(新字新仮名)
/
宮島資夫
(著)
それに似たような怪談は
獺
(
かわうそ
)
か亀のたぐいが名代を勤めているようである。
妖怪漫談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
○「アヽ、
何
(
なん
)
だい
突然
(
だしぬけ
)
に
恟
(
びっく
)
りした、どうも
此処等
(
こゝら
)
へは
獺
(
かわうそ
)
が出るから……」
政談月の鏡
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
動物学の方からいうと、狸は犬科に属しているけれど、貛は貉や
獺
(
かわうそ
)
と同じに、
鼬鼠
(
いたち
)
科に属している。貛は、本州、四国、九州など至るところに棲んでいて、体の長さは尾と共に六百三十ミリ内外。
老狸伝
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
自分宇野のもみ上げ、永い顔と、あの
獺
(
かわうそ
)
のカラーとを知って居る。
日記:15 一九二九年(昭和四年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
そらの鳥にも、人間の眼を持つ
海豹
(
あざらし
)
にも、
獺
(
かわうそ
)
にまでも
魚と蠅の祝日
(新字新仮名)
/
フィオナ・マクラウド
(著)
獺
(
かわうそ
)
が自ら歌った謡「カッパ レウレウ カッパ」
アイヌ神謡集
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
「俺、湯ん中から
獺
(
かわうそ
)
が出てきたかと思った」
寄席
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
一、浅草花屋敷の
狒々
(
ひひ
)
及び
獺
(
かわうそ
)
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
獺
(
かわうそ
)
と
蝙蝠
(
こうもり
)
じゃないか。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
輻
(
やぼね
)
の下に流るる道は、細き水銀の川のごとく、柱の黒い家の
状
(
さま
)
、あたかも
獺
(
かわうそ
)
が
祭礼
(
まつり
)
をして、
白張
(
しらはり
)
の
地口行燈
(
じぐちあんどん
)
を掛連ねた、鉄橋を渡るようである。
歌行灯
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
獺
(
かわうそ
)
とか
鼬
(
いたち
)
などが
棲
(
す
)
んでいて、よく人をおどろかしたり、なにごとでもすぐに信ずるような、昔ふうの住民を「隙さえあれば化かそうと思っている」ということであった。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
父が初めてこの寺へきたときは、この寺が小さな辻堂にすぎなかったことや、夜、よく
獺
(
かわうそ
)
がうしろの川で鮭をとりそこなったりして夜中に水音を立てたということなどを聞いた。
幼年時代
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
蛭
(
ひる
)
が数時間後の暴風を予知して水底に沈み、
蜘蛛
(
くも
)
が巣を張って
明日
(
あす
)
の好天気を知らせ、象が月の色を見て
狼群
(
ろうぐん
)
の大襲来を察し、星を仰いだ
獺
(
かわうそ
)
が上流から来る大洪水を恐れて丘に登る。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
次の日宗助が役所の帰りがけに、電車を降りて横町の道具屋の前まで来ると、例の
獺
(
かわうそ
)
の
襟
(
えり
)
を着けた坂井の
外套
(
マント
)
がちょっと眼に着いた。横顔を往来の方へ向けて、主人を相手に何か云っている。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
獺
(
かわうそ
)
の内臓は人間とよく似ていると申し、過ぐる頃、山脇東洋などは
度々
(
どど
)
解剖の資料にいたしたよしでござった。肝臓、腎臓が似ているなら、ふぐりの構造も同様であろうと思われる。手始めに獺を
玉取物語
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
正しく彼の小僧は河童であろう、イヤ
獺
(
かわうそ
)
であろうと、知る者
何
(
いず
)
れも云い伝えて、
其
(
その
)
当分は夜に入って
彼
(
か
)
のドンドンの
畔
(
ほとり
)
を通る者もない位で、葵阪のドンドンには河童が住むという評判
盛
(
さかん
)
であったが
河童小僧
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
これを川僧と書いておるけれども、
獺
(
かわうそ
)
から転化したる語かと思わる。
迷信と宗教
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
「いおうならお前さんそれも
獺
(
かわうそ
)
だろう」
小説 円朝
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
獺
(
かわうそ
)
が自ら歌った謡
アイヌ神謡集
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
……妖怪、変化、
狐狸
(
こり
)
、
獺
(
かわうそ
)
、鬼、天狗、魔ものの
類
(
たぐい
)
、陰火、人魂、あやし火一切、生霊、死霊、幽霊、怨念、何でも構わねえ。順に其処へ
顕
(
あら
)
わかせろ。
露萩
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
凡
(
すべ
)
ての計画は破れた。余は浦安を
獺
(
かわうそ
)
のように逃げる、多くの嘲笑が余の背中に投げられるだろう。
青べか日記:――吾が生活 し・さ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
獺
(
かわうそ
)
の
襟
(
えり
)
をつけた重いとんびを
纏
(
まと
)
った父も、少し厚手の
外套
(
がいとう
)
を着た自分も、
先刻
(
さっき
)
からの運動で、少し
温気
(
うんき
)
に
蒸
(
む
)
される気味であった。その春の半日を自分は父の
御蔭
(
おかげ
)
で、珍らしく方々引っ張り廻された。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
獺
(
かわうそ
)
、化ものも同然に、とがめ
人
(
て
)
のござりませぬ、独鈷の湯へ浸ります嬉しさに、たつ野の木賃に巣をくって
山吹
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「はははは、どうやら家中の若蔵らしかったが、
獺
(
かわうそ
)
のように消えおったぞ」
松林蝙也
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
鷺
(
さぎ
)
、
獺
(
かわうそ
)
、
猿
(
ましら
)
の
類
(
たぐい
)
が、
魚
(
うお
)
を
漁
(
あさ
)
るなどとは言ふまい。……時と言ひ、場所と言ひ、
怪
(
け
)
しからず
凄
(
すさま
)
じいことは、さながら
狼
(
おおかみ
)
が出て竜宮の美女たちを
追廻
(
おいまわ
)
すやうである。
妖魔の辻占
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
鱸
(
すずき
)
は
刎
(
は
)
ねる、
鯔
(
ぼら
)
は飛ぶ。とんと類のない
趣
(
おもむき
)
のある家じゃ。ところが、時々崖裏の石垣から、
獺
(
かわうそ
)
が
這込
(
はいこ
)
んで、板廊下や
厠
(
かわや
)
に
点
(
つ
)
いた
燈
(
あかり
)
を消して、
悪戯
(
いたずら
)
をするげに言います。
歌行灯
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「千年の桑かの。川の底も
料
(
はか
)
られぬ。
燈
(
あかり
)
も暗いわ、
獺
(
かわうそ
)
も出ようず。ちと
懲
(
こ
)
りさっしゃるが
可
(
い
)
い。」
歌行灯
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
獺
(
かわうそ
)
が
銜
(
くわ
)
えたか、
鼬
(
いたち
)
が
噛
(
かじ
)
ったか知らねえが、わんぐりと歯形が残って、
蛆
(
うじ
)
がついては
堪
(
たま
)
らねえ。
先刻
(
さっき
)
も見ていりゃ、野良犬が
嗅
(
か
)
いで
嗅放
(
かぎっぱな
)
しで
失
(
う
)
せおった。犬も食わねえとはこの事だ。
山吹
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
へい、辻の橋の
玄徳稲荷
(
げんとくいなり
)
様は、御身分柄、こんな
悪戯
(
いたずら
)
はなさりません。狸か
獺
(
かわうそ
)
でござりましょう。迷児の迷児の、——と
鉦
(
かね
)
を
敲
(
たた
)
いて来やがって饂飩を八杯
攫
(
さ
)
らいました……お前さん。
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
見越
(
みこし
)
、河太郎、
獺
(
かわうそ
)
に、海坊主、天守におさかべ、化猫は
赤手拭
(
あかてぬぐい
)
、
篠田
(
しのだ
)
に
葛
(
くず
)
の葉、
野干平
(
やかんべい
)
、古狸の
腹鼓
(
はらつづみ
)
、ポコポン、ポコポン、コリャ、ポンポコポン、笛に雨を呼び、酒買小僧、
鉄漿着女
(
かねつけおんな
)
の
夜叉ヶ池
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「
人間
(
ひと
)
が落ちたか、
獺
(
かわうそ
)
でも
駈
(
か
)
け
廻
(
まわ
)
るのかと思った、えらい音で驚いたよ。」
眉かくしの霊
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「
可厭
(
いや
)
、
獺
(
かわうそ
)
に。……気味が悪いわ、口うつしに成るぢやないの。」
光籃
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
狸か、違う、
獺
(
かわうそ
)
か、違う、魔か、
天狗
(
てんぐ
)
か、違う、違う。
夜叉ヶ池
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「
獺
(
かわうそ
)
だんべい、水の中ぢや。」
光籃
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
“獺(カワウソ)”の解説
カワウソ(獺、川獺)は、食肉目イタチ科カワウソ亜科(カワウソあか、Lutrinae)に分類される構成種の総称。
(出典:Wikipedia)
獺
漢検1級
部首:⽝
19画
“獺”を含む語句
河獺
川獺
獺祭書屋俳話
海獺
獺祭書屋
妖獺
獺惰
獺橋
獺沢
獺祭
獺祭忌
白獺
群獺