“燈(とう)” の例文
新字:灯
押(おし)入の暗闇(くらがり)で赤色燈(とう)に現像皿(げんぞうさら)をかざしてみながら、いかに私(わたし)は歡喜(くわんき)の笑みを浮(う)かべたことであらうか?それからけふまでもう二十余(よ)年
そこここのへいとへいとの間にガス燈(とう)がちらちらしていた。親方は立ち止まったとき、かれがいよいよ力のつきたことをわたしは知った。
十畳敷ほどの間が二つ、障子(しょうじ)があいていた。薄ぼんやりと明りがついている。小さいネオン燈(とう)が、シェードのうちに、桃色(ももいろ)の微(かす)かな光線をだしていた。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
日比谷(ひびや)公園の樹(こ)の間に、薄紫のアーク燈(とう)が、ほのめき始めた頃から幾台も幾台もの自動車が、北から南から、西から東から、軽快な車台で夕暮の空気を切りながら
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
時計屋(とけいや)の店には明るくネオン燈(とう)がついて、一秒(びょう)ごとに石でこさえたふくろうの赤い眼(め)が、くるっくるっとうごいたり、いろいろな宝石(ほうせき)が海のような色をした厚(あつ)い硝子(ガラス)の盤(ばん)に載(の)って
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
大日如来件(くだん)の四仏を供養せんとて香(こう)華(げ)燈(とう)塗(ず)の四菩薩を流出す(外四供養(そとのしくよう))、塗(ず)とは、〈不空成就仏、塗香を以て供養す、釈迦穢土に出で、衆生を利益せんと、濁乱の境界に親近す
余(よ)が友人(いうじん)これをみたるをきゝしに、かの西遊記にしるしたるつくしのしらぬ火とおなじさまなり。近年湖水(こすゐ)を北海へおとし新田となりしゆゑ、湖中(こちゆう)の万燈(とう)も今は人家(じんか)の億燈(おくとう)となれり。
安全(あんぜん)進航(しんかう)の表章(ひやうしよう)となるべき球形(きゆうけい)の檣燈(しやうとう)が、何(なに)かの機會(はづみ)で糸(いと)の縁(えん)を離(はな)れて、檣上(しやうじやう)二十呎(フヒート)ばかりの所(ところ)から流星(りうせい)の如(ごと)く落下(らくか)して、あはやと言(い)ふ間(ま)に船長(せんちやう)が立(た)てる船橋(せんけう)に衝(あた)つて、燈(とう)は微塵(みじん)に碎(くだ)け
遠山(とおやま)の形が夕靄(ゆうもや)とともに近づいて、麓(ふもと)の影に暗く住む伏家(ふせや)の数々、小商(こあきない)する店には、早(は)や佗(わび)しい灯(ひ)が点(とも)れたが、此(こ)の小路(こうじ)にかゝると、樹立(こだち)に深く、壁に潜(ひそ)んで、一燈(とう)の影も漏(も)れずに寂(さみ)しい。
雨ばけ (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
彼は毎年正月十五日から五日のあいだは、明州府の城内に元霄(げんしょう)(陰暦正月十五日の夜)燈(とう)をかけつらねて、諸人に見物を許すことにしていたので、その宵(よい)よいの賑わいはひと通りでなかった。
世界怪談名作集:18 牡丹灯記 (新字新仮名) / 瞿佑(著)
〔譯〕一燈(とう)を提(ひつさ)げて、暗夜(あんや)を行く。暗夜を憂(うれ)ふる勿れ、只だ一燈(とう)を頼(たの)め。
「光(こう)」もいけない。その後また「燈(とう)」も「燭(しょく)」も皆いけなくなった。
阿Q正伝 (新字新仮名) / 魯迅(著)
元宵節(げんしょうせつ)の千万燈(とう)、一時にこの世の修羅を現出すること
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
吾れ来(きた)つて燈(とう)を挑(かか)げて往昔を思ふ
ちらちら風にまばたきながら、ガス燈(とう)がぼんやり往来(おうらい)を照(て)らしていた。一足ごとにわたしたちは氷のはったしき石の上ですべった。親方がしじゅうわたしの手を引いていた。
余(よ)が友人(いうじん)これをみたるをきゝしに、かの西遊記にしるしたるつくしのしらぬ火とおなじさまなり。近年湖水(こすゐ)を北海へおとし新田となりしゆゑ、湖中(こちゆう)の万燈(とう)も今は人家(じんか)の億燈(おくとう)となれり。
藥屋(くすりや)が主(しゆ)の寫眞材料店(しやしんざいれうてん)、名刺(し)形(かた)の乾(かん)板の半(はん)ダース、現像液(げんぞうえき)に定(てい)着液(えき)、皿(さら)、赤色燈(とう)、それだけは懇願(こんぐわん)の末(すゑ)、祖(そ)母から資(し)金を貰(もら)つたのだつたが、胸(むね)を躍(をど)らせながら、押(おし)入へもぐり込(こ)んで乾(かん)板を裝置(そうち)して
神職 神のおおせじゃ、婦(おんな)、下におれ。——誰(た)ぞ御灯(みあかし)をかかげい——(村人一人、燈(とう)を開(ひら)く。灯(ひ)にすかして)それは何だ。穿出(ほりだ)したものか、ちびりと濡(ぬ)れておる。や、(足を爪立(つまだ)つ)蛇(へび)が絡(から)んだな。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)