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煩悶
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はんもん
ふりがな文庫
“
煩悶
(
はんもん
)” の例文
ぜひお話ししたく存じますこともあるのでございますが、さてそれも申し上げられませんで
煩悶
(
はんもん
)
をしております心をお察しください。
源氏物語:12 須磨
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
彼らも
喧嘩
(
けんか
)
をするだろう。
煩悶
(
はんもん
)
するだろう。泣くだろう。その平生を見れば
毫
(
ごう
)
も凡衆と異なるところなくふるまっているかも知れぬ。
写生文
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それにテワスが近藤巡査の妻になれば、自分自身も大人の兄になれる。そういう誘惑にも心がひかれる。モーナルーダオは
煩悶
(
はんもん
)
した。
霧の蕃社
(新字新仮名)
/
中村地平
(著)
しかもかくのごときはただこれ困窮の
余
(
あまり
)
に
出
(
い
)
でたことで、他に何等の
煩悶
(
はんもん
)
があってでもない。この煩悶の
裡
(
うち
)
に「鐘声夜半録」は成った。
おばけずきのいわれ少々と処女作
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
お縫の苦衷や、痛々しい
煩悶
(
はんもん
)
。それを振り捨てて、お萬に乘り換へた民彌の輕佻さが、平次の言葉でハツキリと判つて來るのです。
銭形平次捕物控:187 二人娘
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
▼ もっと見る
そしてかかる創作的
煩悶
(
はんもん
)
の混乱中にあって、彼は自分が創作するすべてのもののうちで、いずれが最も価値あるかを知らなかった。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
国へ帰って、もと通りの生活をし、やがて世間並みの女としての、きまった生活を予想すればこそ、いろいろの
煩悶
(
はんもん
)
もありました。
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
興奮と
煩悶
(
はんもん
)
とに
労
(
つか
)
れた勝平の頭も、四時を打つ時計の音を聴いた後は、
何時
(
いつ
)
しか
朦朧
(
もうろう
)
としてしまって、寝苦しい眠りに落ちていた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
突然の高熱、突然の腹痛、突然の
煩悶
(
はんもん
)
、それは激しい
驟雨
(
しゅうう
)
が西風に伴われてあらしがかった天気模様になったその夕方の事だった。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
コゼットはこの家に着いて、吸い取り紙を
食器棚
(
しょっきだな
)
の上の鏡の前に置いたまま、
煩悶
(
はんもん
)
のうちに沈み込んでそれを忘れてしまっていた。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
独身者のこと
故
(
ゆえ
)
、家庭的な
煩悶
(
はんもん
)
があったというでもなく、そうかといって、痴情の自殺、
例
(
たと
)
えば失恋という様なことでもなかったのです。
目羅博士の不思議な犯罪
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
しかるに人が一たび何ゆえにかくのごとくであるかを
訝
(
いぶか
)
り問わんとするに及んで、学問それ自身がかなり
煩悶
(
はんもん
)
をしたようである。
地名の研究
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
理想の生活、文学的の生活、堪え難き創作の
煩悶
(
はんもん
)
をも慰めてくれるだろう。今の荒涼たる胸をも救ってくれる事が出来るだろう。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
長いこと沈鬱な心境を辿り、懊悩と
煩悶
(
はんもん
)
との月日を送って来た捨吉には、
齷齪
(
あくせく
)
とした自分を嘲り笑いたいような心が起って来た。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
自分の力が信じられぬ。そこに天才の
煩悶
(
はんもん
)
と、深い祈りがあるのであろうが、僕は俗人の凡才だから、その辺のことは正確に説明できない。
水仙
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
私はそのためにこの何日か、
煩悶
(
はんもん
)
に煩悶を重ねて参りました。どうかあなたの
下部
(
しもべ
)
、オルガンティノに、勇気と忍耐とを御授け下さい。——
神神の微笑
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
種彦は
忽
(
たちま
)
ち今までの恐怖と
煩悶
(
はんもん
)
に引替えていかなる危険を
冒
(
おか
)
しても、この
年月
(
としつき
)
精魂を
籠
(
こ
)
めて書きつづけて来た長い長い物語を
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
感情が次第に激して来る。皆引っ込んだ跡に、ボルクマン夫人が残って、床の上に身を転がして
煩悶
(
はんもん
)
するところで幕になった。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
と云うのは、視覚さえ失ったら精神的の
煩悶
(
はんもん
)
が減って、ほっと重荷をおろした感じがするであろうと思っていたのが、反対の結果になった。
聞書抄:第二盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
スマ子女史がつねに「彼氏浮気もの」と称しているだけになか/\各方面に発展してスマ子女史に愉快な
煩悶
(
はんもん
)
をときどき提供するのであった。
職業婦人気質
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
そういうことはきっと考えていたにちがいない。サン・トゥースタッシュの
煩悶
(
はんもん
)
や、みんなの者の嫌疑を、彼女は予想していたにちがいない。
マリー・ロジェエの怪事件
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
大した
煩悶
(
はんもん
)
もなく住んで、名は改造といっても、その実際は何物も破壊せず、何物も創造せず、在来の範囲で単に無用の「置き換え」を試みて
婦人指導者への抗議
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
「ああ、
芸術
(
げいじゅつ
)
の
規則
(
きそく
)
なんていうもの、だれが
作
(
つく
)
ったのだろうか。」と、
彼
(
かれ
)
は、まどい、うたがい、そして、
煩悶
(
はんもん
)
しました。
しいたげられた天才
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
これよりしてイワン、デミトリチは
日夜
(
にちや
)
をただ
煩悶
(
はんもん
)
に
明
(
あか
)
し
続
(
つづ
)
ける、
窓
(
まど
)
の
傍
(
そば
)
を
通
(
とお
)
る
者
(
もの
)
、
庭
(
にわ
)
に
入
(
い
)
る
者
(
もの
)
は
皆
(
みな
)
探偵
(
たんてい
)
かと
思
(
おも
)
われる。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
圭介はそう云う自分の
煩悶
(
はんもん
)
を誰にも打ち明けずにいたが、或日、彼は或先輩の送別会のあった会場を一人の気のおけない同僚と一しょに出ながら
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
有難う。ところで問題が君に移る。溝淵閣下は義理の堅い人だから、昨今
煩悶
(
はんもん
)
しているんだ。僕から仲人を頼まれて僕を
求婚三銃士
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
(初めは、心にもなくゆるした者へも、女はいつか、月日と共に、身も心も、その男に
囚
(
とら
)
われてしまうものか)と、
遣
(
や
)
るかたなく、
煩悶
(
はんもん
)
しだした。
三国志:03 群星の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
省作はかえって、母に
逢
(
あ
)
ったら元気づいた。これで見ると、省作も出てくるまでには、いくばくの
煩悶
(
はんもん
)
をしたらしい。
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
失望
(
しつはう
)
と
煩悶
(
はんもん
)
とがごツちやになツて
耐
(
た
)
へず
胸頭
(
むなさき
)
に
押掛
(
おしか
)
ける………其の
苦惱
(
くなう
)
、其の
怨
(
うらみ
)
、誰に
訴
(
うつた
)
へやうと思ツても訴へる
對手
(
あひて
)
がない。
喧嘩
(
けんくわ
)
は、
獨
(
ひとり
)
だ。
悪腕
(
わるあがき
)
を
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
ヨブは天然物を見て神に悟り得しならんも、今の時代において
煩悶
(
はんもん
)
苦悩せる人に向って「鴉を見よ、馬を見よ」というも何らの効果あるべからずと。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
即ち男尊女卑の倫理の下に、一夫多妻主義の許容されているところには、却って一家の風波の絶間なく、男子をして常に
煩悶
(
はんもん
)
焦燥
(
しょうそう
)
せしむるものである。
現代の婦人に告ぐ
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
わたしはその
煩悶
(
はんもん
)
や恐怖を出来るだけ平気に
粧
(
よそお
)
おうとしましたが、どうしても顔には現われずにはいませんでした。
世界怪談名作集:05 クラリモンド
(新字新仮名)
/
テオフィル・ゴーチェ
(著)
いったい、その時母さんはどうなるのだ? だって、お母さんはもう今から不安を感じて、
煩悶
(
はんもん
)
しているのだもの。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
惨
(
いた
)
ましく然も偉大なる死! 先生の死は、先生が最後の勝利でした。夫人、あなたは負けました。だからあなたの
煩悶
(
はんもん
)
も、御家の
沸騰
(
ふっとう
)
も起きたのです。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
お前を見るのは
嬉
(
うれ
)
しい。
其処
(
そこ
)
へお掛け。お
互
(
たがひ
)
に芝居を打つて歩いて面白い
夜
(
よる
)
もあつた。
併
(
しか
)
し今の自分は非常に
煩悶
(
はんもん
)
を
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
千代さんは半月前までの
煩悶
(
はんもん
)
をけろりと忘れて、今はその新しい生活に充分満足しきっているらしい様子であった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
……兄さんには美術家としての苦勞があるんでせうけれど、世間の俗人には分らない藝術上の
煩悶
(
はんもん
)
があればこそ、製作に價値が増すんぢやありませんか。
仮面
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
性来憂鬱を好み、日頃
煩悶
(
はんもん
)
を口癖にして
倦
(
う
)
むことを知らない。前記の言葉はその一例であるが、これは浅間麻油の聞き
飽
(
あ
)
いた(
莫迦
(
ばか
)
の)一つ文句であった。
小さな部屋
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
こういう不安と
煩悶
(
はんもん
)
をいだきつつ、学校へ出ては発酵化学の実験をやり、バクテリヤの培養などをやっていた。
亮の追憶
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
彼が正気に立ちかえった時、わたしは彼の
煩悶
(
はんもん
)
の原因となる事柄の一部始終を書きつらねておけば、彼のこころを軽くするに違いないからと言って聞かせた。
世界怪談名作集:12 幻の人力車
(新字新仮名)
/
ラデャード・キプリング
(著)
それに対して、彼にも非常の
煩悶
(
はんもん
)
があったらしく、こんなことなら、なんのために生きているのか判らない。
青蛙堂鬼談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
心に
煩悶
(
はんもん
)
の多いときに、ないしはくふうのつかない事件なぞがあるときに、まず端然と威儀を改め、それからおもむろに心気を静めて盤に面し、しかるのちに
右門捕物帖:02 生首の進物
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
私は肺のことも考えねばならず、収入のこと、使命のことなど考えればとても決断できるわけはありません。いろいろと
煩悶
(
はんもん
)
した末私は次のごとく答えました。
青春の息の痕
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
お花が声低く
節
(
ふし
)
哀れに唱うを聞けばその沈みはてし心かすかに躍りて、その昔、失敗しながらも
煩悶
(
はんもん
)
しながらもある仕事を企ててそれに力を尽くした日の方が
河霧
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
ピザにいるはずのエドヴィナ伯爵がX市のアンジェリカの邸で
煩悶
(
はんもん
)
をかさねて瀕死の状態にあるという手紙に接して、夫人はほとんど狂気せんばかりになった。
世界怪談名作集:10 廃宅
(新字新仮名)
/
エルンスト・テオドーア・アマーデウス・ホフマン
(著)
それを一々ていねいに拝見していますが、「こうも世の中には
煩悶
(
はんもん
)
している、不幸な人たちが多いものか」
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
彼
(
かれ
)
は
只管
(
ひたすら
)
恐怖
(
きようふ
)
した。
然
(
しか
)
し
二人
(
ふたり
)
の
子
(
こ
)
を
見棄
(
みす
)
てゝ
行
(
ゆ
)
くことが
出來
(
でき
)
ないので、どうしていゝか
判斷
(
はんだん
)
もつかなかつた。さうする
内
(
うち
)
にお
品
(
しな
)
の七日も
過
(
す
)
ぎた。
彼
(
かれ
)
は
煩悶
(
はんもん
)
した。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
その動物の中にもう死期が近づいたかころげまはつて
煩悶
(
はんもん
)
して居る奴がある。すると一匹の親切な
兎
(
うさぎ
)
があつてその煩悶して居る動物の辺に往て自分の手を出した。
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
五内
(
ごない
)
渾
(
すべ
)
て燃え、
四肢
(
しし
)
直
(
ただち
)
に氷らんと覚えて、名状すべからざる感情と
煩悶
(
はんもん
)
とは新に
来
(
きた
)
りて彼を襲へるなり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
まったくこれは、春吉君にとって、この世における最初の、じぶんで処理せねばならぬ
煩悶
(
はんもん
)
であった。
屁
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
“煩悶”の意味
《名詞》
煩 悶(はんもん)
色々と悩み苦しむこと。
(出典:Wiktionary)
煩
常用漢字
中学
部首:⽕
13画
悶
漢検準1級
部首:⼼
12画
“煩悶”で始まる語句
煩悶家
煩悶性
煩悶者
煩悶懊悩
煩悶懊惱
煩悶異文弁