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渾身
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こんしん
ふりがな文庫
“
渾身
(
こんしん
)” の例文
が、彼はそれを両手に抱くと、片膝砂へついたまま、
渾身
(
こんしん
)
の力を
揮
(
ふる
)
い起して、ともかくも岩の根を
埋
(
うず
)
めた砂の中からは抱え上げた。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
ただ父こそは、父こそは
渾身
(
こんしん
)
愛に満ちたれど、その父中将すらもさすがに母の前をばかねらるる、それも思えば慈愛の一つなり。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
それに食う方の心配がないから
凌
(
しの
)
ぎ好い。
渾身
(
こんしん
)
の力を辛抱に振り向けることが出来る。実際松浦家は大旦那の諦めで持っている。
脱線息子
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
妻は妻として今まで通りに夫を愛し、新たな愛人は愛人として、
渾身
(
こんしん
)
のあるものを捧げるということに矛盾を感じていなかったようです。
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
唖の娘が、何事か懸命に知らせようとして、
渾身
(
こんしん
)
の力をこめてさまざまの動作をする室内。行燈の
灯
(
ひ
)
がお梶の影を、大きく壁に踊らせて。
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
▼ もっと見る
お留守なのかしら?……そうも思ったが、私は何となく不安になってきた。「老師さん!……」と私は
渾身
(
こんしん
)
の力を下っ腹に入れて、叫んだ。
父の出郷
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
人々は、あの鏡に攻められ
渾身
(
こんしん
)
の脂をにじみ出して
斃死
(
へいし
)
する蟇をば、不幸にして苦痛極まるものゝように思う。だが自分は、そうではない。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
緑雨は果して
渾身
(
こんしん
)
是
(
これ
)
諷刺なるや否やを知らず。
譬喩
(
ひゆ
)
に乏しく、構想のゆかしからぬ所より言へば、未だ以て諷刺家と称するには
勝
(
た
)
へざるべし。
「油地獄」を読む:(〔斎藤〕緑雨著)
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
そして、今しも忠太の背から現はれむとする、「アンナ奴」と呼ばれたる音吐朗々のナポレオンに、
渾身
(
こんしん
)
の注意を向けた。
雲は天才である
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
太陽は有難い! 剛健強勇を生命とする快男子は、
須
(
すべか
)
らく太陽に向かって突貫し、その力ある光勢を
渾身
(
こんしん
)
に吸込む位の元気が無ければ駄目じゃ。
本州横断 癇癪徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
しかも先生は
渾身
(
こんしん
)
の力を注いで製作しないではいられなかった。そうして芸術的労力そのものが先生の心を満足させた。
夏目先生の追憶
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
で、女房を
逐出
(
おいだ
)
し得てからは、それこそせいせいした心持になって、
渾身
(
こんしん
)
の情を傾けて力寿を愛していたことであろう。
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「かーッ」と掛けた声もろとも左剣は投げ捨て右剣一本へ
渾身
(
こんしん
)
の力を
確
(
しか
)
とこめ鬼王丸の真っ向を
切尖
(
きっさき
)
下りに切りつけた。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
私は
渾身
(
こんしん
)
の力でそれを
妨
(
さまた
)
げましたけれど、
瀕死
(
ひんし
)
の彼の首は非常に強いゼンマイ仕掛けでもあるかの様に、じりじりと私の方へ捲じ向いて来るのでした。
双生児:――ある死刑囚が教誨師にうちあけた話――
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
まず何とかして手を
外
(
はず
)
したい。身体をソッと曲げて
渾身
(
こんしん
)
の力を
籠
(
こ
)
めよう……としたときに、彼は室内に思いがけない新しい人の気配を感じてギクリとした
地球盗難
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
媚
(
こ
)
ビノ呈シ方、陶酔ヘノ導キ方、
漸々
(
ぜんぜん
)
ニエクスタシーヘ引キ上ゲテ行ク技巧ノ段階、スベテハ彼女ガソノ行為ニ
渾身
(
こんしん
)
ヲ打チ込ンデイル証拠デアッタ。………
鍵
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
男は、その武者面を
渾身
(
こんしん
)
の敵意でやっと
擡
(
もた
)
げた。「天皇が何だ!」と腹のなかではいっている
面
(
つら
)
がまえである。
私本太平記:06 八荒帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
かの女はよろめく
度
(
たび
)
に、幾度かたぎり立つ地獄の中に落ちこもうとしては、
渾身
(
こんしん
)
の力をもって
僅
(
わずか
)
に支えている。けれどもかの女の顔色は
自若
(
じじゃく
)
として変らない。
雲仙岳
(新字新仮名)
/
菊池幽芳
(著)
それとも死体と見たあの猫が、実はまだ生きていて、
渾身
(
こんしん
)
の勇をふるって、みずからそこを立ち去ったのか。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
後代の歌人等は、
渾身
(
こんしん
)
を以て自然に参入してその写生をするだけの意力に乏しかったためで、この実質と単純化とが遂に後代の歌には見られなかったのである。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
恐ろしい
渾身
(
こんしん
)
の力であった。が、若い者も娘も一斉に笑いだした。それは、腰をきる際に無理な筋肉の緊張のために、プッと
屁
(
へ
)
を放ったのが
可笑
(
おか
)
しかったらしい。
あまり者
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
彼女は、すでに
渾身
(
こんしん
)
の精力を使い尽くし、静かに、いまや氷原の真っただ中で、眠りゆこうとするのだ。
紅毛傾城
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
最後の五百メエトルに日本選手は
渾身
(
こんしん
)
の勇を
揮
(
ふる
)
って、ピッチを四十に上げ、見る見る中に伊太利へ追い着くと見え伊太利の
舵手
(
だしゅ
)
ガゼッチも
大喝
(
だいかつ
)
一声、漕手を
励
(
はげ
)
まし
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
勁
(
つよ
)
い雑草の根の張った地面は、虎之助の
渾身
(
こんしん
)
の力を平然とはね返してしまう、老躰の閑右衛門にはごく楽々と出来ることが、彼の壮年の力量をまるで受付けないのだ。
内蔵允留守
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そして一瞬時の後には、それが
渾身
(
こんしん
)
を傾けて山を懐しむ情と変って行く。私は
若
(
も
)
し自分が画家であったならば之を描きたい、詩人であったならば之を歌いたいと思った。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
われはその接吻の
渾身
(
こんしん
)
の血に
浸
(
し
)
み渡る心地して、
遽
(
あわたゞ
)
しく我手を引き退け、酒店の軒に馳せ入りぬ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
ゴメズ君、へとへとになって、しかしそこは鈍重な性格だけに文句一つ言わず、再び
渾身
(
こんしん
)
の膂力を奮い起して、函の一角を引っ剥がし取ってしまったこと、また前のごとし。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
総入れ歯をカッと
剥
(
む
)
き出して笑うところまで、満身これ精力、全身これ
胆
(
たん
)
、
渾身
(
こんしん
)
これ智……。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
われらは
渾身
(
こんしん
)
の気力を挙げて、われらが過去を破壊しつつ、
斃
(
たお
)
れるまで前進するのである。
マードック先生の『日本歴史』
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
渾身
(
こんしん
)
の力でコジ開けて見ましたが、雨戸の
印籠抉
(
いんろうじやくり
)
がよく出來てゐる上、建物が新しいので、雨戸全體が大きい音を立ててミシミシ動くだけ、一枚の戸も外れさうもありません。
銭形平次捕物控:225 女護の島異変
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
老婆は
魂消
(
たまげ
)
たと云わぬばかりにぶつくさ呟きつつ台所の方へ消え失せた。文素玉はひとりで当惑してしまったが、やっと気を立て直し
渾身
(
こんしん
)
の力をふりしぼって彼を抱き起した。
天馬
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
雪之丞は、冷たく心に笑って、やがて、専念に、役の
性根
(
しょうね
)
に
渾身
(
こんしん
)
を傾け出すことが出来た。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
活
(
い
)
きがひありしといふべけれ。
石橋
(
いしばし
)
をたたいて五十年無事に世を渡り得しものは誠に結構と申すの外なし。
一度
(
ひとたび
)
足踏みすべらせて
橋下
(
きょうか
)
の激流に
陥
(
おちい
)
れば
渾身
(
こんしん
)
の力尽して泳がんのみ。
矢はずぐさ
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
渾身
(
こんしん
)
これ熱これ力といった有様で指揮棒を振り、私達にあの歌詞(相馬御風氏作)と曲譜とを教えたのであったが、記念祭の当日大隈故侯の銅像除幕式をはじめ色々の祝典が催され
早稲田神楽坂
(新字新仮名)
/
加能作次郎
(著)
炎々たる猛火の
裏
(
うち
)
に、その父と母とは
苦
(
くるし
)
み
悶
(
もだ
)
えて
援
(
たすけ
)
を呼びけんは
幾許
(
いかばかり
)
ぞ。彼等は果して誰をか呼びつらん。思ここに到りて、直道が
哀咽
(
あいえつ
)
は
渾身
(
こんしん
)
をして涙に化し
了
(
をは
)
らしめんとするなり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
何のせいか
渾身
(
こんしん
)
に喜びが溢れてくる。私はどこの誰れとも知らない彼らみんなの幸福を心のしん底から祈らずにはいられない気持になった。
接木
(
つぎき
)
をしたとかいう老桜よ、若返ってくれ。
祇園の枝垂桜
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
身延の駅を中心として下流が大島河原、上流が
波高島
(
はだかじま
)
である。ここが鮎釣りの本場であって、百匁に近い大ものが
渾身
(
こんしん
)
の力をこめて逸走の動作に移れば鈎も糸も、ブンと飛ばしてしまう。
香魚の讃
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
これから先も、自分が、前川には遠慮があって、思うことの三分の一も話せないのに、妹があの調子で、
渾身
(
こんしん
)
の力を振って甘えかかって行ったら……、しかも、あの奔放自在な媚態で……。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
四肢
萎
(
な
)
えて、起きあがることさえ容易でなかった。
渾身
(
こんしん
)
のちからで、起き直り、木の幹に結びつけた兵古帯をほどいて首からはずし、水たまりの中にあぐらをかいて、あたりをそっと見廻した。
姥捨
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
佃が、万々一(実に万々一、と
渾身
(
こんしん
)
の力をこめて伸子は思うのであった)
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
渾身
(
こんしん
)
の力をふるって、はね起きると、相手を前後左右に投げ飛ばした。しかし、うすい光の中に、短い白刃が何本もきらめくのを見たと思った瞬間、左股に、熱い火のようなはげしい疼痛を感じた。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
ホースの
尖端
(
せんたん
)
からは、沸騰点に近い熱湯がほとばしり出たが、それがデッキを五尺流れるうちには凍るのであった。五人の水夫は熱湯の凍らぬうちに、その
渾身
(
こんしん
)
の精力を集めて、石炭塊を掃きやった。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
彼は両手に柄を
掴
(
つか
)
んで、
渾身
(
こんしん
)
の力をこめながら、一気にその
剣
(
つるぎ
)
を引き抜いた。剣は今し方
磨
(
と
)
いだように
鍔元
(
つばもと
)
から
切先
(
きっさき
)
まで冷やかな光を放っていた。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
立会いに相手を
傲慢
(
ごうまん
)
で
呑
(
の
)
んでかかってから
軽蔑
(
けいべつ
)
の歯を
剥出
(
むきだ
)
して、意見を
噛
(
か
)
み合わす無遠慮な談敵を得て、彼等は
渾身
(
こんしん
)
の力が出し切れるように思った。
食魔
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
主膳は、むらむらとして、その時に、かの弁信法師なる者に対しての
渾身
(
こんしん
)
の
憎悪
(
ぞうお
)
を、如何ともすることができません。
大菩薩峠:31 勿来の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
勇みに勇める我が心も、かのアルペンを仰ぎ見たる時は、
小蜘蛛
(
ささがに
)
の如く小さくなりて、
渾身
(
こんしん
)
の血も凍るかと許り、口は開きたるまゝに言葉も得出でざりき。
閑天地
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
その前後の文章は、千手が
渾身
(
こんしん
)
の力をこめて、瑠璃光の道心を突き崩そうとして居るような書き方であった。
二人の稚児
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「ウーム」と、最後の一息を
呻
(
うめ
)
いた時、
反
(
そ
)
れるだけ
反
(
そ
)
り返った孫兵衛は、片手を助広の
差添
(
さしぞえ
)
へかけるや否や、
渾身
(
こんしん
)
から気合いをしぼって、ぱッと一つ身を
捻
(
ねじ
)
った。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
煙草を刻みつつ胸を
噛
(
か
)
む人間性の苦悶を
渾身
(
こんしん
)
の力によって抑圧し忍び耐えようとするあのしぐさは、苦悩の表現の一つの様式としてかなり高く評価されていいものである。
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
大地に
躓
(
つまず
)
いて倒れるかもしれないと思ったほど、
渾身
(
こんしん
)
の力を
籠
(
こ
)
めてウウンと引張った。
棺桶の花嫁
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
“渾身”の意味
《名詞》
渾 身(こんしん)
からだ全体。全身。
(出典:Wiktionary)
“渾身”の解説
『渾身』(こんしん)は、2007年8月に集英社から出版された川上健一の小説。
(出典:Wikipedia)
渾
漢検1級
部首:⽔
12画
身
常用漢字
小3
部首:⾝
7画
“渾”で始まる語句
渾名
渾然
渾沌
渾
渾力
渾良夫
渾成
渾融
渾天儀
渾河