うき)” の例文
何時いつ貴方あなたがお堅くしておられますから、すこしは、うきうきなされるようにと、それで奥様からくだされたものでございましょう」
水面に浮んだ女 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
足音あしおとつたのに、子供こどもだらう、おそもなく、葉先はさきうきだし、くちばしを、ちよんとくろく、かほをだして、ちよ、ちよツ、とやる。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
何だか先におもりのようななまりがぶら下がってるだけだ。うきがない。浮がなくって釣をするのは寒暖計なしで熱度をはかるようなものだ。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
朝鮮から海を越して来る鶴は、足に一種の植物を持っていて、海上に降りる時にはこの植物をうきに使用すると信じられている。
是程の麗わしきお辰、何とてさもしき心もつべき、さりし日亀屋かめやの奥坐敷ざしきに一生の大事と我も彼もうきたる言葉なく、たがいに飾らず疑わず固めし約束
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
そこへ当時の内蔵助の風俗が、墨染の法衣姿ころもすがたで、あの祇園の桜がちる中を、うきさま浮さまとそやされながら、酔って歩くと云うのでございましょう。
或日の大石内蔵助 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
およわたくしの釣れたためしが無いというんだからいけません、私達わたくしたちのアただぽん/\放り込んでうきの動くのを見て居るだけですから面白くも何とも有りません
で今、東海岸散歩道パイラマールうきカフェーからぶらりと出た折竹が、折からの椰子やしの葉ずれを聴かせるその夕暮の風を浴びながら、雑踏のなかを丘通りのほうへ歩いてゆく。
人外魔境:05 水棲人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
金は這入はいるが、「蝴蝶」を発表当時ほど言文一致派の気焔きえんは上らないで、西鶴さいかく研究派の方が、頭角を出して来たうえに、言文一致は、二葉亭四迷ふたばていしめいの「うきくさ」の方が
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
七月が來て觀音樣の晩になれば、町のわかい娘たちはいつも奇麗な踊り小屋をこさへて、華やかな引幕をひきその中で投げやりな風俗のうき々とさへづりかはしながら踊つた。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
乃公は退屈だったから、ワッフルを喰べ、ビスケットを食い、林檎まで平げて、最早もうい加減にして切上げようとしていると、うきが頻りに動く。竿が絞れる程グイグイ引く。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
夜ははや十時を過ぎたり。されどうき立たざる心には、臥床ふしどを伸べんことさえ、いとものうし。
一夜のうれい (新字新仮名) / 田山花袋(著)
島は、うき島、八十やそ島。浜は、長浜ながはま。浦は、おうの浦、和歌の浦。寺は、壺坂、笠置、法輪。森は、しのびの森、仮寝うたたねの森、立聞たちぎきの森。関は、なこそ、白川。古典ではないが、着物の名称など。
古典竜頭蛇尾 (新字新仮名) / 太宰治(著)
うきヶ島の近くへ来ると、発動機艇モーター・ボートは速力を落として、岬の鼻のところでとまった。
キャラコさん:03 蘆と木笛 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
さはいへど人妻ひとづまならばおよぶまじことなりたしかめてのち斷念だんねんせんのみ、うきたるこひこゝろをくす輕忽あわつけしさよともおぼさんなれど、父祖傳來ふそでんらい舊交きうかうありとて、其人そのひとこゝろみゆるものならず、家格かかくしたが門地もんちたつと
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ば爲ん物と朝暮思ひ消光くらしけるが長三郎は若きに似氣にげなくうきたるこゝろすこしもあらで物見遊山は更にもはず戸外おもてへ出る事をきらひたゞ奧まりたる一室ひとまこもり書籍をひもと讀事よむことを此上もなき快樂たのしみと爲しつゝ月日を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あとから、あとからとうき出して来る
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
何だか先におもりの様な鉛がぶら下がつてる丈だ。うきがない。浮がなくつて釣をするのは寒暖計なしで熱度をはかる様なものだ。
坊っちやん (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かえって心配の種子たねにて我をも其等それらうきたる人々と同じようおぼいずらんかとあんそうろうてはに/\頼み薄く口惜くちおしゅう覚えて、あわれ歳月としつきの早くたてかし
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ある時その時も大川おおかわに近い怪しい家に一泊して、苦しいそうしてうきうきした心で家へ帰って来て、横に寝そべって新聞を読んでいると女の声が玄関でした。
水郷異聞 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
と五味君は少時しばらくうきを睨んでいて、一ぴきり上げた。それをびくに納めてから
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
只今大膳よりきゝ及び承知したりしか箇樣かやう大望たいまうは中々うきたる事にては成就じやうじゆ覺束おぼつかなしまづ根本こんぽんより申合せてたくまねば萬一まんいち中折なかをれして半途はんと露顯ろけんに及ぶ時は千辛萬苦せんしんばんくも水のあわなるばかりか其身の一大事に及ぶべし先名乘なのり出る時は必ず其生れ所とそだちし所を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)