活々いき/\)” の例文
やうやあさはなれてそら居据ゐすわつた。すべてのものあかるいひかりへた。しかしながら周圍しうゐ何處いづこにも活々いき/\したみどりえてうつらなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
丑松が胸の中に戦ふ懊悩あうなうを感ずれば感ずる程、余計に他界そとの自然は活々いき/\として、身にみるやうに思はるゝ。南の空には星一つあらはれた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
そこに活々いき/\ひそやかに萠える感情は、彼の權力にもはゞまれず、彼の整然たる行軍の足下にも踏みひしがれることはないであらう。
茘枝の小さきも活々いき/\して、藤豆の如き早や蔓の端も見えむるを、いたづらに名のおほいにして、其の実の小なる、葉の形さへさだかならず。
草あやめ (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
萠黄色もえぎいろの、活々いき/\としたうつくしい眼附めつきわしよりも立派りっぱぢゃ。ほんに/\、こんどのお配偶つれあひこそ貴孃こなたのお幸福しあはせであらうぞ、まへのよりはずっとましぢゃ。
たゞパッチリして眼だけは、處女むすめの時其のまゝの濕みを有ツて、活々いき/\として奈何にも人を引付ける力があツた。
昔の女 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
先方は洋行帰りの会社員、西洋の派手な活々いき/\した社交を経て来た男。土産のトランクの中には指環やらブロッチやら露西亜更紗ロシアさらさの派手な模様もあつたと聞く。
茗荷畠 (新字旧仮名) / 真山青果(著)
表情が活溌に動いたりすると操り人形に魂が入つたやうに、活々いき/\としたあだつぽさと美しさを發揮するのです。
う言つて小池は、自分の住む東京の郊外の村の、せて荒れて艷氣つやけのないのとは違つて、この村のふツくりと暖かさうで、野にも家にも活々いき/\とした光のちてゐるのを思つた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
くちもとはちいさからねどしまりたればみにくからず、一つ一つにとりたてゝは美人びじんかゞみとほけれど、ものいふこゑほそすゞしき、ひと愛嬌あいけうあふれて、のこなしの活々いき/\したるはこゝろよものなり
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
健全に、活々いき/\した生命を養はなきやなりますまい。
計画 (旧字旧仮名) / 平出修(著)
の寺のも矢張同じ型ではあつたが、多少創意のある画家ゑかきの筆に成つたものと見えて、ありふれた図に比べると余程活々いき/\して居た。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
晴着はれぎを着た、女中のやうななりをした、お内儀かみさん風の、まだ若くて大層縹緻きりやうのよい、髮と眼の黒い、活々いき/\とした顏色の女だ。
黒目勝くろめがちな、意味いみふかい、活々いき/\としたひとみうつると、なにおもひけむ、むらさきぐるみ、ほんへて、すらすらとつて椅子いすかへつた。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さうして活々いき/\としたものは自分じぶんのみであることをほこるものゝごとく、秋風あきかぜかれつゝしろぬのやうにふは/\とうごいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
紫の羽織を着た十五六の娘の肖像畫だ。描寫も色彩も舊式の油繪で、紫の色もボケたやうになつて見えたが、何かじツと仰ぎ見てゐるやうな眼だけは活々いき/\としてゐた。
昔の女 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
されどもとほ東方ひんがしの、曙姫あけぼのひめ寢所ねどころから、あの活々いき/\した太陽たいやう小昏をぐらとばりけかくれば、おもこゝろせがれめはそのあかるさから迯戻にげもどり、まどぢ、きらうて、れからよるをばつくりをる。
さう言ふ平次の胸には、戀女房お靜の純情な淨らかさが、活々いき/\浮彫うきぼりされてゐるのでした。
珈琲コーヒーが出された。貴婦人たちは紳士たちが入つて來てから、雲雀ひばりのやうに快活になつて、話は活々いき/\と面白く榮えて行つた。
活々いき/\とした力のある山塊の輪郭と、深い鉛紫えんしの色を帯びた谷々の影とは、一層その眺望に崇高な趣を添へる。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
それで歳男としをとこやくかざり勘次かんじにさせた。すゝつたたなあたらしいわらえび活々いき/\としてえた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
一色友衞の眼は藝術的な陶醉からさめて、現實の世界のあこがれに活々いき/\と輝きます。
中には活々いき/\青草あをくさえている古いくづれかけた屋根を見える。屋根は恰で波濤なみのやうに高くなツたり低くなツたりして際限さいげんも無く續いてゐた。日光の具合で、處々光ツて、そしてくろくなツてゐる。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
默つて見上げた病人の眼は、不思議に活々いき/\と光つて居ります。
お靜の顏も活々いき/\と輝きました。