トップ
>
油壺
>
あぶらつぼ
ふりがな文庫
“
油壺
(
あぶらつぼ
)” の例文
その洋燈は細長い竹の台の上に
油壺
(
あぶらつぼ
)
を
篏
(
は
)
め込むように
拵
(
こしら
)
えたもので、
鼓
(
つづみ
)
の胴の
恰形
(
かっこう
)
に似た平たい底が畳へ据わるように出来ていた。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
公郷
(
くごう
)
の浦とも、大田津とも言ったそうです。この半島には
油壺
(
あぶらつぼ
)
というところがありますが、三浦
道寸
(
どうすん
)
父子の墓石なぞもあそこに残っていますよ。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
その
際
(
さい
)
小櫻姫
(
こざくらひめ
)
がいかなる
行動
(
こうどう
)
に
出
(
で
)
たかは、
歴史
(
れきし
)
や
口碑
(
こうひ
)
の
上
(
うえ
)
ではあまり
明
(
あきら
)
らかでないが、
彼女自身
(
かのじょじしん
)
の
通信
(
つうしん
)
によれば、
落城後
(
らくじょうご
)
間
(
ま
)
もなく
病
(
やまい
)
にかかり、
油壺
(
あぶらつぼ
)
の
南岸
(
なんがん
)
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
ある時
過
(
あやま
)
ってランプの火が
油壺
(
あぶらつぼ
)
に移り、
大火傷
(
おおやけど
)
をしたのが原因で、これも死んでしまってから、独り取り残された彼女は、親類へ預けられることになった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
そこは伯母の家で、竹筒を立てた先端に、ニッケル製の
油壺
(
あぶらつぼ
)
を置いたランプが数台部屋の隅に並べてあった。
洋灯
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
▼ もっと見る
飴
(
あめ
)
も
買
(
か
)
わずに、おせん
坊
(
ぼう
)
へ
突
(
つ
)
ッ
走
(
ぱし
)
ったな
豪勢
(
ごうせい
)
だ。こんな
鉄錆
(
てつさび
)
のような
顔
(
かお
)
をしたおいらより、
油壺
(
あぶらつぼ
)
から
出
(
で
)
たよなおせん
坊
(
ぼう
)
の
方
(
ほう
)
が、どれだけいいか
知
(
し
)
れねえからの。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
何
(
なに
)
も、
油堀
(
あぶらぼり
)
だつて、そこにづらりと
並
(
なら
)
んだ
藏
(
くら
)
が——
中
(
なか
)
には
破壁
(
やれかべ
)
に
草
(
くさ
)
の
生
(
は
)
えたのも
交
(
まじ
)
つて——
油藏
(
あぶらぐら
)
とも
限
(
かぎ
)
るまいが、
妙
(
めう
)
に
油壺
(
あぶらつぼ
)
、
油瓶
(
あぶらがめ
)
でも
積
(
つ
)
んであるやうで、
一倍
(
いちばい
)
陰氣
(
いんき
)
で
深川浅景
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
油壺
(
あぶらつぼ
)
になったりして人を害するを本業としたかの観がありますが、終始この鬼とは併行して、別に一派の山中の鬼があって、往々にして勇将猛士に退治せられております。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
新蔵は、師の薄い背中をさすりながら、ふと、消えかける
短檠
(
たんけい
)
を見て、
油壺
(
あぶらつぼ
)
を取りに起った。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
味噌桶
(
みそおけ
)
、米俵、酒の
瓶
(
かめ
)
、塩鮭の
切肉
(
きりみ
)
、
醤油
(
しょうゆ
)
桶、
帚
(
ほうき
)
、
埃
(
ちり
)
取り、
油壺
(
あぶらつぼ
)
、綿だの布だの糸や針やで室一杯に取り乱してあり、弓だの鉄砲だの
匕首
(
あいくち
)
だの、こうした物まで隠されてあるが
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
そうしてみんな
顎
(
あご
)
を伝って胸に滑り込み、その気持のわるさったら、ちょうど
油壺
(
あぶらつぼ
)
一ぱいの
椿油
(
つばきあぶら
)
を頭からどろどろ浴びせかけられる思いで、老博士も、これには参ってしまいました。
愛と美について
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
すると彼は
硝子
(
ガラス
)
窓の下に人一倍細い
頸
(
くび
)
を曲げながら、いつもトランプの運だめしをしていた。そのまた彼の頭の上には
真鍮
(
しんちゅう
)
の
油壺
(
あぶらつぼ
)
の
吊
(
つ
)
りランプが一つ、いつも
円
(
まる
)
い影を落していた。……
彼
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
長い年月が過ぎて行った一夏、日比野皆三博士が、学生たちを指導している間、葉山の別荘に夫人の涌子は子供たちと避暑に来ていて、土曜日毎に
油壺
(
あぶらつぼ
)
から帰って来る
良人
(
おっと
)
を待受けていた。
蝙蝠
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
焚きつけは硫黄付け木の小枝で間に合せ、油はほんの少しばかりの灯油が、
行灯
(
あんどん
)
の皿と古い小さい
油壺
(
あぶらつぼ
)
にあるだけ、綿は
蒲団
(
ふとん
)
でも引っ
剥
(
ぱ
)
がしたら古いのが出て来るかも知れないといった程度です。
銭形平次捕物控:059 酒屋火事
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
とある街燈の
油壺
(
あぶらつぼ
)
には灰色な波の
太陽の子
(旧字旧仮名)
/
福士幸次郎
(著)
深く
黙
(
もだ
)
した
油壺
(
あぶらつぼ
)
の
入江
(
いりえ
)
に
畑の祭
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
しかもその
神社
(
じんじゃ
)
の
所在地
(
しょざいち
)
は、あの
油壺
(
あぶらつぼ
)
の
対岸
(
たいがん
)
の
隠
(
かく
)
れ
家
(
が
)
の
跡
(
あと
)
とやら、この
上
(
うえ
)
ともしっかりやって
貰
(
もら
)
いますぞ……。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
下宿からは、さしあたり必要な古火鉢や
茶呑
(
ちゃの
)
み
茶碗
(
ぢゃわん
)
、雑巾のような物が運ばれ、父親は通りからランプや
油壺
(
あぶらつぼ
)
、七輪のような物を、一つ一つ買っては
提
(
さ
)
げ込んで来た。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
何か原稿用紙のようなもので、
油壺
(
あぶらつぼ
)
を
拭
(
ふ
)
き、ほやを拭き、最後に
心
(
しん
)
の黒い所を好い加減になすくって、丸めた紙は庭へ
棄
(
す
)
てた。庭は暗くなって様子が
頓
(
とん
)
とわからない。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
長い年月が過ぎて行つた一夏、日比野皆三博士が、学生たちを指導してゐる間、葉山の別荘に夫人の涌子は子供たちと避暑に来てゐて、土曜日
毎
(
ごと
)
に
油壺
(
あぶらつぼ
)
から帰つて来る
良人
(
おっと
)
を待受けてゐた。
蝙蝠
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
飜然
(
ひらり
)
と映って、
行燈
(
あんどう
)
へ、中から透いて影がさしたのを、女の手ほどの
大
(
おおき
)
な
蜘蛛
(
くも
)
、と
咄嗟
(
とっさ
)
に首を
縮
(
すく
)
めたが、あらず、
非
(
あら
)
ず、柱に触って、やがて
油壺
(
あぶらつぼ
)
の前へこぼれたのは、
木
(
こ
)
の葉であった、
青楓
(
あおかえで
)
の。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
私
(
わたくし
)
の
隠
(
かく
)
れていた
所
(
ところ
)
は
油壺
(
あぶらつぼ
)
の
狭
(
せま
)
い
入江
(
いりえ
)
を
隔
(
へだ
)
てた
南岸
(
なんがん
)
の
森
(
もり
)
の
蔭
(
かげ
)
、そこにホンの
形
(
かた
)
ばかりの
仮家
(
かりや
)
を
建
(
た
)
てて、一
族
(
ぞく
)
の
安否
(
あんぴ
)
を
気
(
き
)
づかいながら
侘
(
わび
)
ずまいをして
居
(
お
)
りました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
「いい恰好なの? それが? あんまりよかあないわ?
油壺
(
あぶらつぼ
)
なんか何で持っていらっしったの?」
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
同時に豊かな
灯
(
ひ
)
が宗近家の座敷に
点
(
とも
)
る。静かなる夜を陽に返す
洋灯
(
ランプ
)
の笠に白き光りをゆかしく
罩
(
こ
)
めて、
唐草
(
からくさ
)
を一面に高く
敲
(
たた
)
き出した白銅の
油壺
(
あぶらつぼ
)
が晴がましくも
宵
(
よい
)
に曇らぬ色を誇る。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
水のなかに紛れ込んだ
一雫
(
ひとしずく
)
の油は容易に
油壺
(
あぶらつぼ
)
の中へ帰る事は出来ない。いやでも応でも水と共に流れねばならぬ。夢を捨てようか。捨てられるものならば明海へ出ぬうちに捨ててしまう。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
“油壺”の解説
油壺(あぶらつぼ)は、神奈川県三浦半島に存在する湾(油壺湾)とその付近(三浦市三崎町小網代の一部)を指す地名。古くから観光地や別荘地として、また日本水準原点の標高を検定するための国土地理院の油壺験潮場があることで有名。
(出典:Wikipedia)
油
常用漢字
小3
部首:⽔
8画
壺
漢検準1級
部首:⼠
12画
“油”で始まる語句
油
油揚
油断
油然
油画
油斷
油火
油蝉
油単
油煙