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ぼくとつ
ふりがな文庫
“
朴訥
(
ぼくとつ
)” の例文
朴訥
(
ぼくとつ
)
な調子で話り了ると、石津右門はホツと溜息を吐きます。鬼の
霍亂
(
くわくらん
)
が
萎
(
しを
)
れ返つた樣子は、物の哀れを通り越して可笑しくなる位。
銭形平次捕物控:062 城の絵図面
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
そして、そこに光っている
夥
(
おびただ
)
しい眼の中には、どれもこれも、
朴訥
(
ぼくとつ
)
な誠意があふれて、微塵でも、彼の正体を疑うものはありません。
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
坂田省吾というのは、荻窪や阿佐ヶ谷のへんを清浄野菜を売って歩く、色の黒い
朴訥
(
ぼくとつ
)
な青年で、去年の夏ごろからの馴染みだった。
あなたも私も
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
そこに並んでいるなまめかしい令嬢たちは割かた
朴訥
(
ぼくとつ
)
で飾り気がないから、そんな客には遠慮ぬきで
嘲弄
(
ちょうろう
)
と
悪罵
(
あくば
)
をあびせかける。
若殿女難記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そして真率
朴訥
(
ぼくとつ
)
という事から出て来る無限の大勢力の前に虚飾や権謀が意気地なく敗亡する事を痛快に感じないではいられない。
津田青楓君の画と南画の芸術的価値
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
▼ もっと見る
さて奥まった部屋に通されて、やっと食事も済ませて人心地ついたからだを伸ばしている時に、
朴訥
(
ぼくとつ
)
そうな四十五、六の亭主が
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
それほど、その二人の男には密林の形容が具わってきて、
朴訥
(
ぼくとつ
)
な信心深い
杣人
(
そまびと
)
のような偉観が、すでに動かしがたいものとなってしまった。
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
「
朴訥
(
ぼくとつ
)
な孝行者が
忽
(
たちま
)
ち小気の利いた苦労人になつてしまひ、これでは妹もわが道楽のために売つたのかとまで思はる」といひ
両座の「山門」評
(新字旧仮名)
/
三木竹二
(著)
三河者の
朴訥
(
ぼくとつ
)
を、そのまま自分としている平六には、そのよろこびが、嘘かほんとかなどと疑ってみることもできなかった。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
主人夫婦は
朴訥
(
ぼくとつ
)
な老人で去年和田垣博士と知つて以来大の日本
贔屓
(
びいき
)
に成つて居る。主人は
頻
(
しき
)
りに僕に
向
(
むか
)
つてツウルの言葉の美しい事を話した。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
朴訥
(
ぼくとつ
)
な言葉で、
前棒
(
さきぼう
)
をかついでいた若いのが、駕籠の中の竜之助に問いかけたものですから、竜之助もむずがゆい心持で
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
その表情の
朴訥
(
ぼくとつ
)
穏和なことは、殆ど皆一様で、
何処
(
どこ
)
となくその運命と境遇とに甘んじているようにも見られるところから
寺じまの記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
簡素な木造の、
何処
(
どこ
)
か
瑞西
(
スイス
)
の寒村にでもありそうな、
朴訥
(
ぼくとつ
)
な美しさに富んだ、何ともいえず好い感じのする建物である。
木の十字架
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
やがてまもなく、ばあやに伴われてきたのは、
朴訥
(
ぼくとつ
)
らしい寺男でした。見るなり、幸吉のことばは火のつくようでした。
右門捕物帖:32 朱彫りの花嫁
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
そして彼は元気な
朴訥
(
ぼくとつ
)
さをもって、また地勢についての賢明な叙述——(その叙事詩的な物語の中に
変梃
(
へんてこ
)
に
插入
(
そうにゅう
)
される)
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
そして其側に四十近くのこれも丸髷に結つた、円顔の、色の稍〻黒い、
朴訥
(
ぼくとつ
)
さうな女が、長煙管で煙草を
喫
(
す
)
つて居た。
世の中へ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
もと公証人書記をやった
朴訥
(
ぼくとつ
)
なフォーシュルヴァンは、物に動じない百姓とでも言うべき人物だった。一種の巧妙な無知というものは一つの力である。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
然し少しセンシブルな人であれば、往来で逢う
朴訥
(
ぼくとつ
)
な村人の顔にも隠すことの出来ない喜びを見出すだろう。
続スウィス日記(千九百二十三年稿)
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
それから、ハガキで
朴訥
(
ぼくとつ
)
な、にじりつけたような墨筆で「北国の荒い海浜にそだった詩人に熱情あれ。」
性に眼覚める頃
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
その
垣
(
かき
)
も、惣七の
朴訥
(
ぼくとつ
)
な迫力のまえには、一たまりもなかった。そこには、ふたりの感情のほか、何もなかった。泣き叫ぶのと同時に、お高は、腰を上げていた。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
その石と石との間に
羊歯
(
しだ
)
の若葉がひろがっている。
煤竹
(
すすたけ
)
の濡縁の前に、
朴訥
(
ぼくとつ
)
な丸石の手洗鉢があり、美男かつらがからんで、そこにも艶々した新しい葉がふいている。
二つの庭
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
佛蘭西人の所謂『
まだ若いといふ奴
(
ジューヌアンコール
)
』だ。その人つてのは脊の低い、冷淡な、
朴訥
(
ぼくとつ
)
な人で?——その人の善良さといふものが徳に對して勇敢であるといふよりは寧ろ惡を
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
あゝ本当にその仙境はどんな処であらうか。山と山とが重り合つて、其処に清い水が流れて、
朴訥
(
ぼくとつ
)
な人間が
鋤
(
すき
)
を
荷
(
にな
)
つて夕日の影にてく/\と家路をさして帰つてゆく光景。
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
運転手が
朴訥
(
ぼくとつ
)
な口調で説明してくれる、
堡塁
(
ほうるい
)
やジグザグの攻撃路などが、一々丹念に復元されてゐて、廃墟といふより、何か精巧な模型の上でも歩いてゐるやうに空々しい。
夜の鳥
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
ましてや
准備
(
ようい
)
おろかなる都の
御
(
お
)
客様なんぞ命
惜
(
おし
)
くば
御逗留
(
ごとうりゅう
)
なされと
朴訥
(
ぼくとつ
)
は仁に近き親切。
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
孰方
(
どちら
)
かと云えば
愛嬌
(
あいきょう
)
に乏しい、
朴訥
(
ぼくとつ
)
な感じの、妙子が批評した通り「平凡な」顔の持ち主で、そう云えば体の
恰好
(
かっこう
)
、身長、肉附、洋服やネクタイの好み等々に至る
迄
(
まで
)
総
(
すべ
)
て平凡な
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
彼は
朴訥
(
ぼくとつ
)
で忠誠で、桂子と浮藻とのためであったら、何んでもやろうと思っていた。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
偽
(
いつわ
)
り飾りのない
朴訥
(
ぼくとつ
)
の老婆に対して、彼は深くそれを咎める気にもなれなかった。
馬妖記
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
時としては初心な
朴訥
(
ぼくとつ
)
な、控目がちな
面
(
おも
)
もちさえ見える。その美は一つとして私たちを強いようとはしない。美を
衒
(
てら
)
う今日であるから、わけてもそれらの慎ましい作が
慕
(
した
)
わしく思える。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
一 女性は最も優美を
貴
(
たっと
)
ぶが故に、学問を勉強すればとて、男書生の如く
朴訥
(
ぼくとつ
)
なる可らず、無遠慮なる可らず、不行儀なる可らず、差出がましく生意気なる可らず。人に交わるに法あり。
新女大学
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
結構な打ち菓子を
誂
(
あつら
)
へて仏前や老師に供へた。しまひには
納所
(
なっしょ
)
部屋にまでも、それを絶やさなかつた。泰念といふ
静
(
しずか
)
な
朴訥
(
ぼくとつ
)
な小僧が居て、加減よく茶を立てゝは宗右衛門によくすゝめた。
老主の一時期
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
正直
朴訥
(
ぼくとつ
)
の善人であったが、やはり信心深い盲人であり、しかも信心の力によって目が見えるようになったために、恐らくはそれから最も熱心に、海尊仙人の奇蹟を人に説いたかと思う。
雪国の春
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
おおかた、聞き伝えて、近在から寄り集まった移民のお
百姓達
(
ひゃくしょうたち
)
でありましょう。質素な
服装
(
ふくそう
)
、日に焼けた顔、その熱狂ぶりも
烈
(
はげ
)
しくて、彼等の
朴訥
(
ぼくとつ
)
な歓迎には、心打たれるものがありました。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
朴訥
(
ぼくとつ
)
なる山村の秋を飾るに最もふさわしい柿、其柿が秩父には殊に多い。
奥秩父の山旅日記
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
今
(
いま
)
の
白痴
(
ばか
)
も、
件
(
くだん
)
の
評判
(
ひやうばん
)
の
高
(
たか
)
かつた
頃
(
ころ
)
、
医者
(
いしや
)
の
内
(
うち
)
へ
来
(
き
)
た
病人
(
びやうにん
)
、
其頃
(
そのころ
)
は
未
(
ま
)
だ
子供
(
こども
)
、
朴訥
(
ぼくとつ
)
な
父親
(
てゝおや
)
が
附添
(
つきそ
)
ひ、
髪
(
かみ
)
の
長
(
なが
)
い、
兄貴
(
あにき
)
がおぶつて
山
(
やま
)
から
出
(
で
)
て
来
(
き
)
た。
脚
(
あし
)
に
難渋
(
なんじう
)
な
腫物
(
しゆもつ
)
があつた、
其
(
そ
)
の
療治
(
れうぢ
)
を
頼
(
たの
)
んだので。
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「いや、どうもお世話樣になりやした!」と、
朴訥
(
ぼくとつ
)
な挨拶を背後に投げて、男は溜息をつきながら自分の
兵兒帶
(
へこおび
)
を解きにかかつた。さうして
浮腫
(
むくみ
)
のあるやうな青ぶくれた赤兒の死骸をその肌に抱いた。
嘘をつく日
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
親爺は、
朴訥
(
ぼくとつ
)
で、真面目だった。
浮動する地価
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
大沢が
朴訥
(
ぼくとつ
)
に答えた。
次郎物語:03 第三部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
手代の吉五郎は主人の遠縁にあたり、商売下手ですが、正直一途の
朴訥
(
ぼくとつ
)
な男。連れ子の福松はちょっと意気な男で、弁舌も才智も相当。
銭形平次捕物控:129 お吉お雪
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
やがて亭主と一緒に入って来たのは、四十七、八、これも同じように、田舎者まる出しの
朴訥
(
ぼくとつ
)
そうな、
印半纏
(
しるしばんてん
)
を着た
小肥
(
こぶと
)
りのオヤジでした。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
そういわんばかりに、弁政は、山国から風で飛んで来てそこへ座ったような
朴訥
(
ぼくとつ
)
な甥を、いつまでも黙って、眺めていた。
脚
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
口ぶりでは老夫婦はこの近くの者らしい、性質もわるぎのない
朴訥
(
ぼくとつ
)
なようすで、ばあいによっては力になって貰えそうな、頼もしい感じがした。
追いついた夢
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
こんな
朴訥
(
ぼくとつ
)
な、無心な老人が、まだこの世に生きているということすらが、すでに信じられないほどのことだった。
キャラコさん:10 馬と老人
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
彼女らの眼は室の中のあたりを見回し、探索し拾い上げ書き取っていた。彼女らは騒々しいわざとらしい話振りをして冷やかな
朴訥
(
ぼくとつ
)
さを失わなかった。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
滋養に富んだ牛肉とお行儀のいい鯛の塩焼を美味のかぎりと思っている健全な
朴訥
(
ぼくとつ
)
な無邪気な人たちは幸福だ。
妾宅
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
自分を
推
(
お
)
しては問わず、女もまた好んで語ろうともしなかったが、雨の山駕籠を揺りながら、
朴訥
(
ぼくとつ
)
な土地の者の口から無心に語り出でられようとする情味を
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
多かれ少なかれ持っている田舎の
朴訥
(
ぼくとつ
)
さ、一本気が段々くずされて都会に
所謂
(
いわゆる
)
馴らされてゆく過程にも、痛々しいものがないとは決して云えぬことを、私は感じたのである。
村からの娘
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
朴訥
(
ぼくとつ
)
な人の
好
(
よ
)
ささうな
老爺
(
おやぢ
)
が、大きな鍵を持つて
私
(
わたし
)
の前に立つた。
私
(
わたし
)
は線香と花とを買つた。
父の墓
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
ニキビなどが出来て居て、綺麗な顔ではなかつたが、
朴訥
(
ぼくとつ
)
な素直な、人懐つこい女だつた。私は他の誰よりも彼女に脈を取つて貰つたり、体温を計つて貰つたりすることを好んだ。
世の中へ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
今の
白痴
(
ばか
)
も、
件
(
くだん
)
の評判の高かった頃、医者の
内
(
うち
)
へ来た病人、その頃はまだ子供、
朴訥
(
ぼくとつ
)
な父親が
附添
(
つきそ
)
い、髪の長い、兄貴がおぶって山から出て来た。脚に
難渋
(
なんじゅう
)
な
腫物
(
はれもの
)
があった、その
療治
(
りょうじ
)
を頼んだので。
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
“朴訥”の意味
《名詞》
朴訥(ぼくとつ)
素朴で無口であること。また、そのようなさま。飾り気がないこと。
(出典:Wiktionary)
朴
常用漢字
中学
部首:⽊
6画
訥
漢検1級
部首:⾔
11画
“朴訥”で始まる語句
朴訥漢
朴訥者