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憫
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あわ
ふりがな文庫
“
憫
(
あわ
)” の例文
そうだ! 田舎へ帰ると、ああした事件やああした
憫
(
あわ
)
れな人々もたくさんいるだろう。そうした処にも自分の歩むべき新しい道がある。
贋物
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
当時の相場に掛けてわが悪筆を人から
憫
(
あわ
)
れまれるようになってからも、私の自信の源になっていたのだから、おかしなものである。
桜林
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
そう云って左枝は、血相の変ったお勢を、
憫
(
あわ
)
れむように眺めはじめた。ボウという汽笛、
艙水
(
そうすい
)
の流れ、窓には
靄
(
もや
)
をとおして港の灯が見える。
地虫
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
「突き出しか」と、男はいよいよ
憫
(
あわ
)
れむように言った。「うむ、それで泣くか。無理もない。今夜の花はおれが払ってやる。すぐに
家
(
うち
)
へ帰れ」
鳥辺山心中
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
手柄を友次郎に奪われて、さすがの平次も少しどうかしたのかとでも思う様子で、
凝
(
じっ
)
と見詰める眼には、何となく
憫
(
あわ
)
れむような色があります。
銭形平次捕物控:013 美女を洗い出す
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
▼ もっと見る
笹村は手紙をそこへ
投
(
ほう
)
り出して、淋しく笑った。そして「もう自分の
子供
(
もの
)
じゃない。」とそう思っている母親を
憫
(
あわ
)
れまずにはいられなかった。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
正木博士の顔には見る見る私を
憫
(
あわ
)
れむような微笑が浮かみあらわれた。幾度も幾度もうなずきつつ、葉巻の煙を吸い込んでは、又吐き出した。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
保姆さんは吐きすてるやうに言ひましたが、またチラッと千恵の顔へ走らせた眼のなかには、何か
憫
(
あわ
)
れむやうな微笑がありました。そしていきなり
死児変相
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
学生は、一寸信一郎を
憫
(
あわ
)
れむような微笑を浮べた。ホンの瞬間だったけれども、それは知るべきものを知っていない者に見せる憫れみの微笑だった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
人のためだと
血眼
(
ちまなこ
)
になっている、この天与の恩恵豊かなる清風明月が
来
(
きた
)
りめぐっても、火の車を見るようにしか受取れない奴等こそ
憫
(
あわ
)
れむべきものだ
大菩薩峠:40 山科の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
かわいそうにと、おじいさんは、
思
(
おも
)
いました。
年
(
とし
)
をとると、すべてのことに
対
(
たい
)
して、
憫
(
あわ
)
れみ
深
(
ぶか
)
くなるものです。
二百十日
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
悪人でも連添う夫婦の
情
(
じょう
)
で死のうという心になるお蘭の志を考えると、山三郎は
憫
(
あわ
)
れさに堪えられず、暫くの間
文殻
(
ふみがら
)
を繰返し/\読んで考えて居りました。
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
また家人にも取り入りてそが歓心を得んと
勉
(
つと
)
めたる心の内、よく見え
透
(
す
)
きて、
憫
(
あわ
)
れにもまた
可笑
(
おか
)
しかりし。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
... 内へ
這入
(
はいっ
)
て見ますると、可哀相に、此有様です」と
言来
(
いいきた
)
りて老女は真実
憫
(
あわ
)
れに堪えぬ如く声を
啜
(
すゝ
)
りて泣出せしかば目科は之を慰めて「いやお前が
爾
(
そう
)
まで悲むは尤もだが、 ...
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
数学的観念のない半開人のすることは実に
憫
(
あわ
)
れなもので、噴き出すような馬鹿な仕方であるです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
常に遠くを見つめているような・何物かに対する
憫
(
あわ
)
れみをいつも
湛
(
たた
)
えているような眼である。
悟浄歎異:―沙門悟浄の手記―
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
そして不思議にも、勝子は相手のどぎまぎしているのを見ると、
却
(
かえ
)
ってそれに反比例した心の落着きがたもてて、単なる好奇心のほかに、
憫
(
あわ
)
れみと同情の念さえ起きるのであった。
凍るアラベスク
(新字新仮名)
/
妹尾アキ夫
(著)
先刻、計らざるご対面、あと定めし、ご立腹と存じ候えど、浅ましの新九郎が境界、どの
面
(
つら
)
下げてお名乗り申すべくもなく、悩乱狼狽の後ろ姿、
憫
(
あわ
)
れ
笑止
(
しょうし
)
ともお見のがし下されたく候
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
祇園精舎
(
ぎおんしょうじゃ
)
に在す
釈迦牟尼
(
しゃかむに
)
仏よ。あなたのあわれな弟子は、今危難の淵に
溺
(
おぼ
)
れかかって居ます。
恥辱
(
ちじょく
)
の縄に亡びかかって居ります。どうぞ
憫
(
あわ
)
れなこの声をお聴き取り下さい。お救い下さい。
阿難と呪術師の娘
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「おぬいさん逃げるなら今のうちだ。早く逃げないと僕は何をするか、自分でも分らないよ」と
憫
(
あわ
)
れむがごとくに自分の前にうずくまる豊麗な新鮮な肉体に心の中でささやいたが、同時に
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
悪い事とは知りつつも、そっと隣家の田に行って、
掛稲
(
かけいね
)
の穂を五六本盗んで来る。または大根を畠から抜いて還る。大師はその志を
憫
(
あわ
)
れんで、雪を降らせてその老女の足跡を隠してやった。
年中行事覚書
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「あいつがおれの思うこと一切を世間へ告げ散らしている、あの
兇鳥
(
まがどり
)
が……あいつはおれの臆病な敵の
間諜
(
かんちょう
)
だ……」彼にはまたしてもこの電流のようにすばやい
閃
(
ひらめ
)
きが
憫
(
あわ
)
れにも感じられて来た。
あめんちあ
(新字新仮名)
/
富ノ沢麟太郎
(著)
如何
(
いか
)
に絶対平和主義を持する国家の
憫
(
あわ
)
れむべきものであるかが分かる。
世界平和の趨勢
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
宗像博士も流石に
憫
(
あわ
)
れみを催したらしく、無言のまま、相手の激情の静まるのを待っていた。すると、ややあって、彼女は
漸
(
ようや
)
く泣きじゃくりをやめ、さも悲しげな細い声で、幽に呟くのであった。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
他人はことごとく無情である、自分のこの切なる心を到底察してくれない。そんな他人に同情してもらったり、
憫
(
あわ
)
れんでもらったりしようとはかけても思わぬ。自分の大切な大切な魂の問題である。
霜凍る宵
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
「そうだ! 田舎へ帰るとああした事件や、ああした
憫
(
あわ
)
れな人々もたくさんいるだろう。そうした処にも自分の歩むべき新しい道がある……」
贋物
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
その声の低く顫えているのは、彼女が疎匆を悔いているものと播磨は一図に解釈したので、彼は
憫
(
あわ
)
れむようにいい慰めた。
番町皿屋敷
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
そう言うお雪の横顔が、お増の目に
惨
(
みじ
)
めに見えた。張合いのなさそうな、
懈
(
だる
)
いその生活がそぞろに
憫
(
あわ
)
れまれもした。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
彼女には
纔
(
わず
)
かにその
輪廓
(
りんかく
)
だけしか想像されずにゐた長い争闘によつて
傷
(
きずつ
)
いた青年がそこに
横
(
よこた
)
はつてゐた。彼女は
憫
(
あわ
)
れむやうに青年の姿を改めて見直した。
青いポアン
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
ところがそれからも、私の不仕合せはいつから尽きようとはいたしませず、慈悲も
憫
(
あわ
)
れみもない親族どもは、私をカゴツ(中欧から北にかけて住む一種の
賤民
(
せんみん
)
)
紅毛傾城
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
其の次の間に、年齢十六七の娘が縛られ、
猿轡
(
さるぐつわ
)
をかけられて声も出す事が出来ませんで、唯涙をはら/\
零
(
こぼ
)
して、島田髷を振りみだし、殊に
憫
(
あわ
)
れな姿でおります。
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
一文字に結ばれた唇が見る見る
弛
(
ゆる
)
んで、私を
憫
(
あわ
)
れむような
微笑
(
ほほえみ
)
にかわって行くのを見た……と思うと、無雑作に投げ出すような言葉が葉巻の煙と一緒に飛び出した。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
人間は、一度は
光輝
(
こうき
)
な世界を有していたことがあったのを
憫
(
あわ
)
れむべくも
自
(
みずか
)
ら知らない不明な
輩
(
やから
)
です。
『小さな草と太陽』序
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
ただ七八〇番のような人には、長者として、この若者が好ましく思えたのであろう、彼にしてみれば、この若者を
憫
(
あわ
)
れみ、惜しむ情を抱かずにはいられなかったのであろう。
その人
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
天竜
(
てんりゅう
)
・
夜叉
(
やしゃ
)
・
乾闥婆
(
けんだつば
)
より、
阿脩羅
(
あしゅら
)
・
迦楼羅
(
かるら
)
・
緊那羅
(
きんなら
)
・
摩睺羅伽
(
まごらか
)
・人・非人に至るまで等しく
憫
(
あわ
)
れみを垂れさせたもうわが師父には、このたび、
爾
(
なんじ
)
、悟浄が
苦悩
(
くるしみ
)
をみそなわして
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
憫
(
あわ
)
れなる生活 さて上等僧侶の住所は第一等あるいは第二等の住所をその所属の寺からもらって居るばかりでなく、また自分で別荘を拵えたりあるいは自分で寺を持ってる者もある。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
わたくしは
憫
(
あわ
)
れを覚えて、「えーえー、いいですよ」と約束の言葉を
番
(
つが
)
えた。
雛妓
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
何とか
三下奴
(
さんしたやっこ
)
を
憫
(
あわ
)
れんでやっておくんなさいましよ。
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
私がはいって行くと、笹川は例の
憫
(
あわ
)
れむようなまた
皮肉
(
ひにく
)
な眼つきして「今日はたいそうおめかしでいらっしゃいますね」
遁走
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
前に少しく
懲
(
こ
)
りてはいるが、その老いたるを
憫
(
あわ
)
れんで、楊は再び載せてやると、老人は
王戒
(
おうかい
)
という者であるとみずから名乗った。楊は途中で話した。
中国怪奇小説集:03 捜神記(六朝)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
均平は銀子を
憫
(
あわ
)
れみ、しばしば自分が独りになる時のことを考え、孤独に堪え得るかどうかを、自身に検討してみるのだったが、それは老年の
僻
(
ひが
)
みに見えるだけで
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
やさしい
姉
(
あね
)
は、
不幸
(
ふこう
)
な
弟
(
おとうと
)
を
心
(
こころ
)
から
憫
(
あわ
)
れみました。
自分
(
じぶん
)
の
命
(
いのち
)
に
換
(
か
)
えても、
弟
(
おとうと
)
のために
尽
(
つ
)
くそうと
思
(
おも
)
いました。この
二人
(
ふたり
)
は、この
世
(
よ
)
にも
珍
(
めずら
)
しい
仲
(
なか
)
のよい
姉弟
(
きょうだい
)
でありました。
港に着いた黒んぼ
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
そうして私を
憫
(
あわ
)
れむように……又は云い訳をするように、見え透いた空笑いをした。
冗談に殺す
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
立ち去るきわに「自分でもへんだと思わないかい。」と云って、さげすむような笑いを見せました。それは自分の思い過ごしを弁解するもののようにも、また僕を
憫
(
あわ
)
れむもののようにもとれました。
わが師への書
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
聾
(
つんぼ
)
か
但
(
たゞ
)
しは言葉の通ぜぬためか、何程手を合わして頼み入っても
肯入
(
きゝい
)
れず、又も飛び来る
矢勢
(
やせい
)
鋭く、
殊
(
こと
)
に矢頃近くなりましたから、
憫
(
あわ
)
れむべし、文治は胸のあたりを射通されて其の儘打倒れました。
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
お
憫
(
あわ
)
れみ下さい。
大菩薩峠:38 農奴の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
人か獣か判らぬような生活をしている
此
(
こ
)
の
青年
(
わかもの
)
にも恋は有った。彼は
何日
(
いつ
)
か柳屋のお葉を見染めたものと思われる。お杉は
憫
(
あわ
)
れむように我子の顔を見た。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
私は主人からひどく叱られた
憫
(
あわ
)
れな犬のような気持で、不機嫌なかれの側を、思いきって離れえないのだ。
遁走
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
うぐいすは、やさしいすみれのいうことを、
同情
(
どうじょう
)
して
聞
(
き
)
いていました。そして、どうして、この
二人
(
ふたり
)
は、たがいに、
不
(
ふ
)
しあわせに
生
(
う
)
まれてきたのだろうと
憫
(
あわ
)
れみ
合
(
あ
)
ったのです。
すみれとうぐいすの話
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
それでイクラか安心して淋しく笑うと『自分の罪の姿』も自分を見て、
憫
(
あわ
)
れむように微苦笑している。それを見ると又、いくらか気が落付いて来る……これが吾輩の
所謂
(
いわゆる
)
自白心理だ……いいかい……。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
憫
漢検1級
部首:⼼
15画
“憫”を含む語句
憫然
憐憫
可憫
不憫
御憐憫
御不憫
憫殺
憫笑
燐憫
憫察
恭憫恵
相憫
憫憐
御憫笑可被下度候
御憫笑
御憫察
御憫
不憫千万